アドベンチャーツーリズム(AT)とは | 市場規模・日本での可能性・北海道の事例

公開日:2020年08月17日

近年、国内外への旅行のハードルが下がったことにより、それぞれの旅行客が観光に求めるものも多様化している傾向にあります。

アドベンチャーツーリズムは、そんな「旅の目的」の一つとして注目が集まっているアクティビティ要素を盛り込んだ旅行で、地方創生オーバーツーリズムの改善など、観光地にとってもメリットの多い旅行形態としてその可能性が注目されつつあります。

さらに、アメリカのアドベンチャーツーリズムの消費額は、来年には2019年比の93%の水準に戻るとAdventure Travel Trade Association(ATTA)が予測しています。

コロナ禍で打撃を受けている旅行市場全体の回復は「2024年」までかかるというツーリズム・エコノミクスの予測と比較すると、驚異的な回復の早さといえます。

今回の記事では、「アドベンチャーツーリズム」についてと、日本国内における運営の事例について紹介します。


アドベンチャーツーリズムとは

アドベンチャーツーリズム(AT)とは、「アクティビティ」「自然」「文化体験」のうち、2つ以上の要素によって構成される旅行のことを指します。

観光客が地域におけるありのままの自然や文化を体験し、その中で自分自身を見つめ、成長につなげることを目的としています。

「アドベンチャー」という言葉から、積極的でダイナミックな旅行形態が連想されやすいですが、むしろ地域の散策や、文化体験などを中心にしていることが特徴です。

アドベンチャーツーリズムは、地域の生活や自然に直接触れることで、日常生活では味わえない特別な体験を得られる旅行となっています。

経済波及効果が高い

アドベンチャーツーリズムの特徴のひとつは、経済波及効果が大きいという点です。

アドベンチャーツーリズムを好んで行う旅行者は、教育水準の高い富裕層が大きな割合を占めています。

平均滞在期間も14日間と比較的長く、使用する用具や装備にもこだわる人が多いため、アドベンチャーツーリズムを通して総合的な経済効果が高い傾向にあります。

日本アドベンチャーツーリズム協議会によれば、北米、欧州、南米の例では、外国でのアドベンチャーツーリズムの消費額だけで推計6,830億ドル(日本円約76.5兆円)ともいわれています。

アドベンチャーツーリズムの行先を選ぶ際に重要になるのは、地域にどのような自然や文化があるかだけでなく、その滞在によってどのように地域に貢献できるかどうかです。

そのため、アドベンチャーツーリズムによる集客を目指すためには、多角的な視点から見た質の高いプランの構築が求められます。

経済的・環境的にも持続可能な観光の形態

アドベンチャーツーリズムは、自然や文化など、すでに地域に存在している観光資源を活用したツーリズムの形態です。

そのため、大きな経済効果を生み出す一方で、新しく観光施設などの建設を行う必要がないため、環境への影響を抑えられます

実際、Adventure Travel Trade Associationの資料によると、クルーズ等などのマスツーリズムで1万米ドル(日本円約107万円)の経済効果を生み出すためには100人の参加が必要といわれているのに対し、アドベンチャーツーリズムは4人で達成できる計算となっています。

さらに、アドベンチャーツーリズムを通して発生した消費のうち65%が地域に還元されるという調査結果が出ており、これはマスツーリズムの14%と比較すると、地域への貢献度が高い観光形態といえます。

アドベンチャーツーリズムとマスツーリズムの比較、経済効果
▲Adventure Travel Trade Association(2018)Upscaling the Adventure Travel Experienceより

アドベンチャーツーリズムの可能性

アドベンチャーツーリズムは、地方創生の取り組みや、近年の旅行のトレンドとの親和性の高い旅行形態で、海外ではすでにアドベンチャーツーリズムを取り入れる動きが高まっています。

ここでは、日本国内におけるアドベンチャーツーリズムの今後の可能性について紹介します。

地方創生との親和性が高い

アドベンチャーツーリズムは、地域に実際に足を運び、その土地にあるものを活用することをメインとした観光形態です。

そのため、地方創生との親和性が高く、観光客を呼び込みたいと考えている地方にとって魅力的な取り組みといえます。

さらにアドベンチャーツーリズムは単純な観光だけではなく、観光を通じて地方にどのような経済効果があるのかを重視しています。

観光による直接的なローカル経済への影響が大きいことからも、アドベンチャーツーリズムは地方創生の取り組みに繋がりやすいと考えられます。

コト消費のトレンド

かつて日本を訪れる外国人観光客の多くは「モノ消費」と呼ばれる、買い物を中心としたお金の使い方をしていました。

しかし、現在では物品を買うことにお金を使うよりも、そこでしか体験できないアクティビティなどを楽しみたいと考える人が増えています。

2019年の「訪日外国人の消費動向」において、訪日外国人に「次回日本を訪れた時にしたいこと」を尋ねた結果、「日本食を食べること」が57.6%でもっとも多く、「温泉入浴」(49.2%)「自然・景勝地観光」(45.0%)、「ショッピング」(42.9%)の順となり、上位にコト消費が占めていることがわかりました。

また、「今回の日本滞在中にしたことの満足度」では、「テーマパーク」(95.4%)、「日本の歴史・伝統文化体験」(94.9%) 、「自然・景勝地観光」(94.7%)、「日本の日常生活体験」(94. 5%)、 「温泉入浴」(94.4%)と、上位にコト消費があげられました。

アドベンチャーツーリズムは、この「コト消費」の傾向とマッチしており、今後のインバウンド対策のひとつとしても有効であると考えられます。

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オーバーツーリズムの対応策としても

アドベンチャーツーリズムは、観光客増加の大きな問題の一つであるオーバーツーリズム」対策としても注目されています。

オーバーツーリズムとは、観光客が急増し、地域住民の生活の質の低下や、民泊を目当てとした不動産投機による家賃の高騰、観光客によるゴミ問題の発生など、観光により、地域に悪影響が出ている状況を指します。

一般的な観光客誘致では、量産的な観光振興が目指され、このような問題が発生するケースも少なくありません。

一方、アドベンチャーツーリズムにおいては、地域に根差した自然環境保護の活動や経済効果創生が観光振興の目指すところとされています。

そのため、地域の環境を破壊せずに観光をする方法を模索する方法の一つとして、今後「観光先進国」を目指す日本が取り入れるべき観光形態でもあります。

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日本のアドベンチャーツーリズムの現状

日本におけるアドベンチャーツーリズムの例としては、北海道での積極的な取り組みが挙げられます。

特に、阿寒エリアではアドベンチャーツーリズムの整備が進められています。

ここでは、日本のアドベンチャーツーリズムの例として北海道の阿寒エリアの例と、今後の日本におけるアドベンチャーツーリズムへの参入の動きについて紹介します。

北海道の阿寒エリアでのアドベンチャーツーリズム

アドベンチャーツーリズムへの取り組みが進められている北海道の阿寒エリアは、手つかずの自然が残る地域です。

ここには、火山と湖と独特の自然景観が残っている阿寒摩周国立公園があり、四季によって異なる表情を楽しむことができます。

阿寒エリアには、アイヌ文化が深く根付く地域もあり、日本の歴史や民族文化に関心がある人にとっては興味深い地域です。

阿寒エリアは、気候の面でもアドベンチャーツーリズムに適しています。一般的にアジアにおける亜寒帯エリアの大半が亜寒帯乾燥気候であるのに対し、北海道エリアは積雪があるものの比較的過ごしやすい亜寒帯湿潤気候に属しています。夏場でもそこまで暑くならないので、通年を通して観光を楽しむことができます。

また、日本におけるアイヌ文化は珍しい先住民族文化であり、日本の文化的背景に関心のある人にとっては魅力的な点です。

アドベンチャーツーリズムにおける「異文化」の定義は幅広く柔軟であるため、アイヌ文化を持っている北海道ならではの観光PRを行うこともできます。

北海道だけでなく今後は他の地方でも

アドベンチャーツーリズムへの参入を進めているのは北海道だけではありません。九州地方でも、欧米豪からの訪日観光客に向けたアドベンチャーツーリズムの推進が行われています。

国内では、2019年7月9日より、「一般社団法人日本アドベンチャーツーリズム協議会」が設立されました。

現状すでにアドベンチャーツーリズムの導入が行われている地域に限らず、幅広い範囲に拡大していく可能性があり、地方創生観光立国に両面を兼ね備えるアドベンチャーツーリズムに期待が高まっています。

アドベンチャーツーリズム誘致の検討を

「モノ消費」から「コト消費」への消費動向の変化だけでなく、環境保護の観点や自然志向のなどの様々な理由で、サステナブルな観光を目指す傾向が強まっています。

アドベンチャーツーリズムは、環境や地元住民の生活、経済を大切にした上で観光を楽しむという、近年のニーズに適した観光形態といえます。

アドベンチャーツーリズムは、多くの観光客を集めてやみくもな消費を促すのではなく、ローカル経済や環境への影響にも着目していることから、観光公害などの問題に対する対策としても期待が集まっています。

地域独自の魅力を活かし、観光客誘致が行えるアドベンチャーツーリズムは、今後ますます可能性が広がる分野といえます。

2020年は「ノマドワーク」と「アドベンチャーツーリズム」の時代:観光コンテンツ開発の正念場を迎える日本(JTB総研)

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<参考>

日本アドベンチャーツーリズム協議会:アドベンチャーツーリズムとは

観光庁「訪日外国人の消費動向 訪日外国人消費動向調査結果及び分析」2019年年次報告書 

Adventure Travel Trade Association:Upscaling the Adventure Travel Experience

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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