欧州は多数の国を含む大陸であり、長い歴史の中で定着した物流システムが存在します。
ここでは、欧州の物流の特徴や、SDGsに対する取り組みについて解説します。
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欧州物流の特徴|陸と水路の輸送
まずはじめに、欧州における物流の仕組みについて解説します。
輸送の主流である内陸水路
ヨーロッパでは、ローマ時代から歴史のある内陸水路が有名です。
大陸の河川であるため川幅が広く流れが緩いことに加え、水量が多く内陸部の運搬手段として適しているため、内陸水運がさかんとなっています。
ヨーロッパにおける輸送で重要な役割を担っており、37,000キロメートル以上にもおよぶ水路が、数百の都市や工業地域を結んでいます。
なかでも最も重要な流域であるライン川では、欧州内陸水路輸送による貨物輸送量の3分の2にあたる量が運ばれています。
内陸水路輸送されている商品は、主に金属鉱石やコークスのほか、精製石油製品や農業製品で、この3種類だけで2017年のEU内陸水路における物品輸送全体の半分以上を占めます。
さらに欧州委員会は、内陸水路交通におけるEUの自然保護法令の適用を支援することを目的にした「内陸水路とNatura2000に関するガイドラインーEU鳥類保護・生息地指令における持続可能な内陸水路の開発と管理」を公表しています。
このガイドラインでは、内陸水路と自然保護の全体論的アプローチが示され、内陸水路における活動と生物多様性の維持の政策上の関連性が解説されています。
トラック輸送
欧州における陸上輸送方法は、主に3つに分類できます。
1つ目は、日本でいう貸切便にあたる「フルトラックロード (FTL)」で、ひとつの荷主企業が荷台全体を利用するものです。
他の荷主の影響を受けないため、輸送時の停車地が少ないうえ破損リスクも低く、比較的リードタイムは短くなります。
2つ目は、日本でいう路線便にあたる「小口トラック輸送(LTL)」で、比較的小規模な貨物輸送に使用されます。
荷主のコストを削減するために、複数の異なる荷主の貨物が、ひとつのトラックに混載して輸送されます。
最後の3つ目は、上記のLTLとFTLを組み合わせた「部分的なトラック輸送(PTL)」です。
ひとつの荷送人の貨物が荷台のかなりのスペースを占めるものの、余ったスペースに異なる荷送人の貨物が積載されます。
国境のない地域|EUでの物流
欧州には、域内国境のない地域の創設での経済的・社会的発展を促進することを目標としたEUが存在します。
ここでは、EU圏内と圏外における物流について解説します。
TIR条約|関税や税金なしで輸送が可能
EUの輸送政策においては、加盟国間の障害を克服して、単一の欧州輸送地域を作り上げることが重要視されてきました。
国連欧州経済委員会は第二次世界大戦直後、戦後のヨーロッパ経済の活性化を支援するため、TIR(Transports Internationaux Routiers)トランジットシステムを開発しました。
統一されたEU内の道路輸送は、共通のEU規則に基づく一方で、EUとEU以外の国の間の道路輸送は、個々の加盟国と第三国間の二国間協定に基づきます。
ひとつの大きな規約として、1959年に採択されたTIR条約があり、EU国を含む70か国以上が加盟しています。
TIRシステムは、地理的に最も広い範囲をカバーする国際通関輸送システムで、他の通関手続きと同様、TIR手続きによって、通常は輸入(または輸出)時に支払われるべき関税や税金を支払うことなく、商品を国境を越えて通関管理下で移動させることができます。
TIRには、商品の移動手段として、トラックなど道路による輸送も含まれており、システムの利用にあたっては、トラックドライバーがTIRカルネットと呼ばれる通関書類を持つ必要があります。
TIRカルネットは、関税と税金の支払いに対する金銭的保証を提供するもので、これまで33,000を超える事業者がTIRシステムの使用を許可され、TIRシステムを活用した輸送は年間約150万にものぼります。
輸入付加価値税(VAT)
欧州には輸入付加価値税(VAT)というシステムもあります。
日本でいう消費税のようなもので、もともとのEU6か国は、異なる形態の間接税を使用していました。
そのため過大な税金を課すなど間接税に中立性がありませんでしたが、EUが設立され、効率的で単一の市場が存在する場合、輸出時に正確な税額を還付できる中立な税システムが必要となりました。
VATは輸出には課されず、輸入品は、EUの生産者にとってシステムを公平に保つために課税されます。
輸送の際は、VATの申告にも留意する必要があります。
持続可能な輸送
欧州では、輸送量が毎年増加しており、環境に対する影響が懸念されています。
持続可能な輸送|トラック輸送の見直し
現在、トラック輸送は陸上輸送の二酸化炭素(CO2)排出量の20%以上を占めています。
輸送や物流から排出量を削減することは、社会的責任と政策目標の一部であると同時に、サプライチェーン全体でビジネス価値を生み出す大きな可能性も示しています。
2019年に合意されたトラック輸送におけるCO2基準においては、2025年までに新規で導入するトラックの燃料効率を15%向上させる必要があります。
物流・ロジスティクス業界は2050年までに、気候中立経済に関する欧州委員会の戦略的長期ビジョンとパリ協定の目標を達成する必要があります。
SDGsに対するドイツ物流の取り組み
実際に、SDGsに対して取り組んでいるドイツ物流企業があります。
CO2排出量削減を目指す、ドイツの大手運送会社DHLは、2025年までに、全体の配達の約7割に自転車や電気自動車を用いるとしています。
またドイツのスタートアップ企業TiMMi Transportが展開する、P2P(Peer to Peer)のソーシャルデリバリーサービスは、目的地への移動を予定している人に徒歩や自転車、車によって荷物を運んでもらうというものです。
消費者や小売店が、独自に配達を手配する必要がなくなり、輸送によるCO2排出量削減が期待できます。
ドイツは、世界銀行が発表した2018年の物流パーフォーマンス指標ランキングで世界トップに輝いており、整備された交通網と国際的なネットワーク網のほか、追跡調査や時間厳守、顧客満足度といった物流パーフォーマンスの高さが評価されています。
これからの物流 SDGsが鍵か
欧州では物流の手段として内陸水路やトラックが使用されており、近年は環境悪化の観点から国をあげての見直しが進められています。
欧州は多くの国を含む大陸であったり、EU協定があるなど、日本とは異なる点が多数あります。
しかし国際的な傾向の影響を受けることが当たり前の現在においては、物流における持続可能性を意識するのは、日本も率先して取り組まなくてはならないことだといえるでしょう。
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