日本政府観光局(JNTO) では重点22市場において、海外旅行に関する意向や旅行形態等に関するアンケート調査を実施し、市場規模や地方誘客の可能性等に関する分析が行われました。
調査結果から、訪日旅行の潜在的な市場規模は約3.3億人だと推計されています。
訪日ラボでは、この調査について前編・後編の2記事にわけて紹介します。
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JNTO、世界22市場で訪日旅行意向に関する独自調査を実施
JNTOは、2021年3月~6月にかけて、オンラインによるアンケート調査を中心に、ビジット・ジャパン重点22市場においてアンケートを実施しました。
調査対象者は、20歳以上のレジャー目的での海外旅行経験者です。
対象市場の人口45億6,475万人のうち、訪日旅行の潜在的な市場規模は約3.3億人(約7%)だと推定されました。
なお、実際に訪問したことがある人は推計1億1,700万人であり、今後約2.8倍に増えると予想されています。
前編では、各エリアごとの訪日意向について紹介していきます。
東アジア、訪日旅行経験率も高く地方への訪問意向も高い
海外旅行経験者のうち、中国では訪日旅行経験者が全体の約4割でした。人数では3,000万人で最も多くを占めているものの、訪日客のリピート率も他の東アジア地域と比較して低く、改善の余地があると考えられます。
一方、訪日旅行経験者が韓国では約8割、台湾では97.9%、香港では90.6%にのぼりました。
韓国では、2,000万人超が訪日旅行の経験があり、そのうち訪日2~3回の中程度のリピート層が最も多くを占めています。
台湾、香港では、海外旅行経験者のうちほとんどが日本に行ったことがあり、そのうち訪日4回以上のファン層とも呼べる人々が40%以上と最も多くを占めています。

JNTOでは、これらの調査に続けて、将来的な意向を示す「訪日ファネル」の調査も行われました。
各地域で、旅行先の日本として無認知、認知(日本といえば○○が分かるが関心はない)、興味関心(日本の旅行に興味はあるが、旅行プランの検討はしていない)、比較検討(航空券検索をするなど旅行プランについて検討)に分けられています。
いずれの国でも、興味関心が最も多く、中国を除いて半数以上を占めています。また、認知度でも、韓国・香港・台湾では約9割を上回っています。
ただし、比較検討で見ると、東アジアでは最も中国が高く約37.3%、それ以外の地域でも韓国を除き30%を上回っています。

また東アジアでは、東京都・大阪府・京都府というゴールデンルートにまたがった都市部を除外した「地方エリア」の訪問意欲も高まっています。
台湾は全22市場の中で最も「地方エリア」への訪問意欲が高く、全体の87.3%を占めています。東アジアで最も低い韓国でも71.3%の人が「地方エリア」に訪問意欲を示しており、全体として関心が高い様子がうかがえます。
東南アジア、訪日旅行経験率は低いものの地方訪問意欲は高め
東南アジアの重点地域はタイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナムです。インドについては、次のカテゴリーで紹介します。
東南アジアでは、シンガポールが突出して訪日旅行経験率が高く、約75%の人が訪日経験があります。リピート率も50%を超えるなど、日本に長期的に関心を示している様子がわかります。
一方、他の国々では訪日旅行経験率が2割~3割と、未だ低い水準になっています。またリピート率も、初訪日の数とほぼ同数であり、リピート率を高めることも課題となりそうです。
訪日ファネルにおいては、最も訪日旅行経験率が高いシンガポールが関心も高く、比較検討も全体の38.5%を占めていました。
一方、特色だっているのがフィリピンです。訪日旅行の経験率は低いものの、認知度は約9割、比較検討も全体の41.4%を占めていることから高い関心がうかがえます。
インドネシア、ベトナム、タイでも訪日旅行の経験が2~3割にもかかわらず、訪日旅行への意欲は7割以上と高まっています。
なお、認知率が最も低いマレーシアでも70%の人に認知されているなど、日本についての関心が東南アジアでも高いことが分かります。

地方エリア訪問希望率については、東南アジアではタイが最も高く、83.1%となりました。インドネシア、シンガポール、ベトナムでも80%を超えるなど、訪日経験が少ないにもかかわらず地方部に高い関心があることが分かります。
東南アジアではフィリピンが最も地方エリア訪問希望率が低くなりましたが、76.8%と比較的高い水準になっています。ただし、フィリピンでは比較検討率が高く、より現実的に考えると、訪日旅行が再開されたらまずは都市部を訪れたいという意向が示されているとも考えられます。
欧米豪・インド・中東市場、訪日旅行経験数も低く認知度も低い状態
東アジア、東南アジアでは比較的訪日旅行への関心が高い状態でしたが、欧米豪を中心とした市場では未だ認知度も低い状態が続いています。
ここでは、インド、アメリカ、カナダ、メキシコ、オーストラリア、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ロシア、中東地域に対して調査が行われました。
なお、調査は2021年に実施されているため、現在のロシア・ウクライナ情勢は加味されていません。またこの調査では、日本からの距離を加味し中長距離の海外旅行者が対象となっています。
この市場では、アメリカで最も訪日旅行経験率が高く、約6割となりました。次いでオーストラリアが約45%、カナダが約33%となっています。
その他の市場では、ほとんどの国が1割前後という結果になりました。
またアメリカ、オーストラリアではリピート率が初訪問を上回っていますが、それ以外の地域ではリピート率も低い状態が続いています。

訪日ファネルについても、訪問率が少ないことから「無関心」の層が多くを占めています。
特に、中東地域では無関心が73.1%でした。しかし、調査後ドバイ万博が開かれ、日本館や日本食レストランが人気を博したことも報道されており、無関心層が少しずつ減っていることが期待されます。
なお、比較検討率が最も高かったのはアメリカで35.6%でした。メキシコも、訪日旅行経験率は約16%ですが、認知度はこのエリアで最も高く約75%、興味関心も45.4%を占めています。
イギリス、ドイツ、中東地域を除いて、認知率は6割を上回っていることから、これらの市場でも一定程度の認知率はあると考えられます。以下に比較検討率を高め、訪日旅行の経験につなげるかが今後の課題となりそうです。

地方エリア訪問希望率では、インドが最も高く79.5%を占めました。中東地域も、認知度は低いものの、地方エリアへの関心は高く68.5%となっています。
しかし、アメリカ、カナダ、ドイツ、イギリス、フランス、イタリアなどG7に名を連ねる各国が地方エリアへの訪問希望率が低くなっています。GDPも比較的高い国々が占めているため、これらの国々をどのように地方エリアに呼び込むかが、今後の地方誘客の鍵となりそうです。
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<参照>
JNTO:往来再開を見据え、世界 22 市場で訪日旅行意向に関する独自調査を実施
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