訪日旅行、潜在的な市場規模は約3.3億人 JNTO、世界22市場で調査実施

完全無料 口コミアカデミー 「インバウンドの教科書」出ました! 国別・都道府県別データ・トレンドをカバー 見てみる

日本政府観光局JNTO) では重点22市場において、海外旅行に関する意向や旅行形態等に関するアンケート調査を実施し、市場規模や地方誘客の可能性等に関する分析が行われました。

調査結果から、訪日旅行の潜在的な市場規模は約3.3億人だと推計されています。

訪日ラボでは、この調査について前編・後編の2記事にわけて紹介します。


【訪日ラボは、インバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を8月5日に開催します】

カンファレンスについて詳しく見てみる

JNTO、世界22市場で訪日旅行意向に関する独自調査を実施

JNTOは、2021年3月~6月にかけて、オンラインによるアンケート調査を中心に、ビジット・ジャパン重点22市場においてアンケートを実施しました。

調査対象者は、20歳以上のレジャー目的での海外旅行経験者です。

対象市場の人口45億6,475万人のうち、訪日旅行の潜在的な市場規模は約3.3億人(約7%)だと推定されました。

なお、実際に訪問したことがある人は推計1億1,700万人であり、今後約2.8倍に増えると予想されています。

前編では、各エリアごとの訪日意向について紹介していきます。

東アジア、訪日旅行経験率も高く地方への訪問意向も高い

東アジアの重点市場地域は中国韓国台湾香港です。

海外旅行経験者のうち、中国では訪日旅行経験者が全体の約4割でした。人数では3,000万人で最も多くを占めているものの、訪日客のリピート率も他の東アジア地域と比較して低く、改善の余地があると考えられます。

一方、訪日旅行経験者が韓国では約8割、台湾では97.9%、香港では90.6%にのぼりました。

韓国では、2,000万人超が訪日旅行の経験があり、そのうち訪日2~3回の中程度のリピート層が最も多くを占めています。

台湾香港では、海外旅行経験者のうちほとんどが日本に行ったことがあり、そのうち訪日4回以上のファン層とも呼べる人々が40%以上と最も多くを占めています。

海外旅行実施者数と訪日旅行経験率(推計)ー 東アジア市場:JNTO調査より訪日ラボスクリーンショット
▲海外旅行実施者数と訪日旅行経験率(推計)ー 東アジア市場:JNTO調査より訪日ラボスクリーンショット

JNTOでは、これらの調査に続けて、将来的な意向を示す「訪日ファネル」の調査も行われました。

各地域で、旅行先の日本として無認知、認知(日本といえば○○が分かるが関心はない)、興味関心(日本の旅行に興味はあるが、旅行プランの検討はしていない)、比較検討(航空券検索をするなど旅行プランについて検討)に分けられています。

いずれの国でも、興味関心が最も多く、中国を除いて半数以上を占めています。また、認知度でも、韓国香港台湾では約9割を上回っています。

ただし、比較検討で見ると、東アジアでは最も中国が高く約37.3%、それ以外の地域でも韓国を除き30%を上回っています。

海外旅行実施者の訪日ファネル:JNTO資料より訪日ラボ一部編集
▲海外旅行実施者の訪日ファネル:JNTO資料より訪日ラボ一部編集

また東アジアでは、東京都大阪府京都府というゴールデンルートにまたがった都市部を除外した「地方エリア」の訪問意欲も高まっています。

台湾は全22市場の中で最も「地方エリア」への訪問意欲が高く、全体の87.3%を占めています。東アジアで最も低い韓国でも71.3%の人が「地方エリア」に訪問意欲を示しており、全体として関心が高い様子がうかがえます。

東南アジア、訪日旅行経験率は低いものの地方訪問意欲は高め

東南アジアの重点地域はタイシンガポールマレーシアインドネシアフィリピンベトナムです。インドについては、次のカテゴリーで紹介します。

東南アジアでは、シンガポールが突出して訪日旅行経験率が高く、約75%の人が訪日経験があります。リピート率も50%を超えるなど、日本に長期的に関心を示している様子がわかります。

一方、他の国々では訪日旅行経験率が2割~3割と、未だ低い水準になっています。またリピート率も、初訪日の数とほぼ同数であり、リピート率を高めることも課題となりそうです。海外旅行実施者数と訪日旅行経験率(推計)ー 東南アジア市場:JNTOより訪日ラボスクリーンショット

▲海外旅行実施者数と訪日旅行経験率(推計)ー 東南アジア市場:JNTOより訪日ラボスクリーンショット

訪日ファネルにおいては、最も訪日旅行経験率が高いシンガポールが関心も高く、比較検討も全体の38.5%を占めていました。

一方、特色だっているのがフィリピンです。訪日旅行の経験率は低いものの、認知度は約9割、比較検討も全体の41.4%を占めていることから高い関心がうかがえます。

インドネシアベトナムタイでも訪日旅行の経験が2~3割にもかかわらず、訪日旅行への意欲は7割以上と高まっています。

なお、認知率が最も低いマレーシアでも70%の人に認知されているなど、日本についての関心が東南アジアでも高いことが分かります。

▲海外旅行実施者の訪日ファネル:JNTO資料より訪日ラボ一部編集
▲海外旅行実施者の訪日ファネル:JNTO資料より訪日ラボ一部編集

地方エリア訪問希望率については、東南アジアではタイが最も高く、83.1%となりました。インドネシアシンガポールベトナムでも80%を超えるなど、訪日経験が少ないにもかかわらず地方部に高い関心があることが分かります。

東南アジアではフィリピンが最も地方エリア訪問希望率が低くなりましたが、76.8%と比較的高い水準になっています。ただし、フィリピンでは比較検討率が高く、より現実的に考えると、訪日旅行が再開されたらまずは都市部を訪れたいという意向が示されているとも考えられます。

欧米豪・インド・中東市場、訪日旅行経験数も低く認知度も低い状態

東アジア東南アジアでは比較的訪日旅行への関心が高い状態でしたが、欧米豪を中心とした市場では未だ認知度も低い状態が続いています。

ここでは、インドアメリカカナダ、メキシコ、オーストラリアイギリスフランスドイツイタリアスペインロシア中東地域に対して調査が行われました。

なお、調査は2021年に実施されているため、現在のロシア・ウクライナ情勢は加味されていません。またこの調査では、日本からの距離を加味し中長距離の海外旅行者が対象となっています。

この市場では、アメリカで最も訪日旅行経験率が高く、約6割となりました。次いでオーストラリアが約45%、カナダが約33%となっています。

その他の市場では、ほとんどの国が1割前後という結果になりました。

またアメリカオーストラリアではリピート率が初訪問を上回っていますが、それ以外の地域ではリピート率も低い状態が続いています。

中長距離海外旅行実施者数と訪日旅行経験率 ー欧米豪・インド・中東市場:JNTOより訪日ラボスクリーンショット
▲中長距離海外旅行実施者数と訪日旅行経験率 ー欧米豪・インド・中東市場:JNTOより訪日ラボスクリーンショット

訪日ファネルについても、訪問率が少ないことから「無関心」の層が多くを占めています。

特に、中東地域では無関心が73.1%でした。しかし、調査後ドバイ万博が開かれ、日本館や日本食レストランが人気を博したことも報道されており、無関心層が少しずつ減っていることが期待されます。

なお、比較検討率が最も高かったのはアメリカで35.6%でした。メキシコも、訪日旅行経験率は約16%ですが、認知度はこのエリアで最も高く約75%、興味関心も45.4%を占めています。

イギリスドイツ中東地域を除いて、認知率は6割を上回っていることから、これらの市場でも一定程度の認知率はあると考えられます。以下に比較検討率を高め、訪日旅行の経験につなげるかが今後の課題となりそうです。

中長距離海外旅行実施者の訪日ファネル:JNTOより訪日ラボスクリーンショット
▲中長距離海外旅行実施者の訪日ファネル:JNTOより訪日ラボスクリーンショット

地方エリア訪問希望率では、インドが最も高く79.5%を占めました。中東地域も、認知度は低いものの、地方エリアへの関心は高く68.5%となっています。

しかし、アメリカカナダドイツイギリスフランスイタリアなどG7に名を連ねる各国が地方エリアへの訪問希望率が低くなっています。GDPも比較的高い国々が占めているため、これらの国々をどのように地方エリアに呼び込むかが、今後の地方誘客の鍵となりそうです。

インバウンド対策にお困りですか?
「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!
訪日ラボに相談してみる

<参照>
JNTO:往来再開を見据え、世界 22 市場で訪日旅行意向に関する独自調査を実施

【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」

インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。

本イベントでは「顧客への情報アピール」「顧客体験(ゲストエクスペリエンス)」「運営のデジタル化」など、施設運営に必要なをテーマを、市場の最前線を走るエキスパートたちが集結。お客様が施設を見つける「旅マエ」から、実際に滞在する「旅ナカ」まで、あらゆるフェーズにおける最新戦略と成功事例を徹底解説します。

<本セミナーのポイント>

  • 変わりゆく市場の状況と、今後注目のトレンドを把握できる
  • 旅マエの顧客行動を理解し、集客・予約率アップのヒントが得られる
  • 旅ナカの接客品質を高め、顧客満足度向上に繋がる実践的な対応を学べる
  • 各分野の専門家から、ビジネスを加速させる具体的な戦略や成功事例が聞ける

詳しくはこちらをご覧ください。

宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」【7/3開催】

【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」

2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。

「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。

初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。

参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。

<こんな方におすすめ>

  • インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
  • 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
  • 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
  • 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
  • インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生

「THE INBOUND DAY 2025」特設ページを見てみる

【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか


訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。

この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。

※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。

口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。

詳しくはこちらをご覧ください。

「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月後編】

今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」

スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。

「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!

→ 【無料】「インバウンドの教科書」を見てみる

完全無料 口コミアカデミー 「インバウンドの教科書」出ました! 国別・都道府県別データ・トレンドをカバー 見てみる

関連インバウンド記事

 

役にたったら
いいね!してください

この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客インバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!

プロモーションのご相談や店舗の集客力アップに