先日、長崎県の大型リゾート施設「ハウステンボス」が香港の投資会社に売却される方向であることが報じられ、大きな話題を呼びました。
1992年に開業したハウステンボスは、2003年に経営破綻し、2010年に旅行会社HISが買収し経営の立て直しを図っていました。
しかしHISもコロナ禍での旅行需要の低迷で過去最大の赤字となり、数百億円にのぼるとみられるハウステンボスの売却により、資金を確保する狙いがあります。
このように日本のリゾートやホテル・旅館が海外の投資家・投資会社に売却されることは、珍しいことでは無くなってきています。
外国人の受け入れを目指してコロナ禍に完成したホテルが、オープンしないまま売却されるケースも出てきています。
こうした流れの背景には、コロナ禍での業績悪化以外にどんな要因があるのでしょうか。
また日本のホテル・旅館が外貨に買われることで、インバウンドへのポジティブな影響はあるのでしょうか。
本記事では、いくつかの事例をもとに考察していきます。
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「コロナ×円安」で加速する外資への売却
コロナ禍で多くのホテルや旅館が業績悪化に苦しむ中、日本は記録的な円安に直面しています。
これにより、業績悪化で資産を手放したい売り手側の需要と、円安で「お買い得」となった施設をコロナ後を見据えて買い叩きたい買い手側の需要がマッチするという状況が生まれています。
巨大ホテルにも「持たざる経営」の波
日本の名門ホテルである西武ホールディングスは2022年2月、プリンスホテルなど31施設をシンガポールの政府系ファンドに売却すると発表しました。
日本のホテルでは、所有と運営が一体となっていることが一般的ですが、世界的には「投資は投資家に任せ、ホテルの運営に集中」するのが効率的とされています。
実際に、全世界に約7,600ものホテルを擁する最大手マリオット・インターナショナルは、ホテルオーナーと運営委託契約を結び、売上に応じて手数料を受け取る「持たざる経営」で成長を続けています。
人件費や光熱費などはオーナー負担となるためコストを削減でき、コロナ禍においても黒字を維持しています。
アメリカを中心とする海外のホテル業界では「所有と運営の分離」で成長するのがカギとされており、西武ホールティングスによる売却はこのトレンドにマッチしているといえます。
老舗旅館も苦しい「後継ぎ不足×コロナ禍」
ホテルや旅館の相次ぐ売却には、コロナ禍での業績低迷に加えて、後継ぎ不足という問題も影響しています。
帝国データバンクの調査によれば、2021年1月~9月の観光関連の休廃業は前年から大幅に増加しました。
特に「ホテル・旅館」は143件と前年を上回り、2015年以前と比較しても過去10年で最多、2008年のリーマンショック発生当時に次ぐハイペースで推移しています。
また同社が2020年に行った調査によれば、旅館・ホテルにおける後継者不在率は60.7%にのぼり、後継ぎ不足が深刻な問題となっています。
特に中~小規模の旅館では後継ぎ不足とコロナ禍の打撃により、資産を維持することが困難となっており、そこへ買い手が現れれば売却は避けられない流れとも考えられるでしょう。
日本人は経営にあたり銀行で借入をしている場合が多いため、豊富な現金を持っている外国人への売却を希望することが少なくありません。
長年にわたり後継者不足に悩んできたホテルや旅館が、コロナ禍で増えてしまった借金を売却により一気に返済しようとするケースも見受けられます。
ホテルが外資に買われることで、インバウンドが増える?
ホテルや旅館が外資系企業に買われることで、インバウンドの増加を期待することもできます。
例えば日本人から人気の観光地であるハワイは、日本資本が多数進出することでインバウンドが大きく発展しました。
オアフ島のロイヤルハワイアンや、モアナサーフライダーなど、歴史ある高級ホテルは世界中の観光客が利用していますが、実は箱根の富士屋ホテルなどを手掛ける国際興業が所有しています。
従来は米国本土の観光客が中心だったハワイでは、日本資本のホテルが数多く進出したことで、日本人観光客のニーズに対応した整備が進められ、航空会社や旅行会社と提携したキャンペーンも積極的に行われました。
観光客の増加に伴う「観光公害」についても、日本企業の現地法人が地元住民と話し合い解決していきました。
現在では、日本法人の多くがハワイの発展に寄与したとして、多くの地域の人々から受け入れられているという現状があります。
外資系企業がホテルを買うことは、外国人客の集客に起因する関係人口の増大、多様性の確保、そして日本人にはない視点がサービスに加わるというメリットがあります。
日本のローカルな文化をどう残すか
日本の旅館やホテルが外資系企業に買われることは、必ずしも悪いことばかりではありません。本記事ではポジティブな影響を中心に紹介しました。
ただし多様性の確保という面が失われ、日本での観光が「画一化」されてしまうことは望ましくありません。
グローバル化に伴い国際的な競争が激化する観光業において、旅行客の取り合いに勝つためには、日本のローカルな魅力を打ち出して行く必要があります。
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2024年、訪日外国人による旅行消費額は過去最高の約8兆1,257億円を記録。 そのうち中国は1.7兆円超(全体の約21%)と圧倒的な1位を占めており、宿泊日数や訪問者数でもトップクラスの存在感を示しています。
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