日本の水際対策が緩和され、1日あたりの入国者数上限が撤廃された2022年10月以降、訪日外客数はおおむね右肩上がりの回復をみせています。
2023年8月の月間訪日外客数は、215.7万人まで伸びをみせました。これは、コロナ前の2019年の同月比で85.6%にあたる数値であり、中国を除く実績では2019年同月比118.0%となっています。

そんな訪日外国人は今、日本のどこを訪れているのでしょうか?観光庁の最新データをもとに、アフターコロナのインバウンド動向をチェックしていきましょう。
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インバウンド宿泊者数1位は東京、コロナ前超え:地方は苦戦続く、要因は?
「インバウンドが多い都道府県」のデータとして、観光庁が公表した「都道府県別 外国人延べ宿泊者数(2023年1-7月)」を参照してみましょう。
都道府県により宿泊者数の回復率には開きがありますが、圧倒的な回復率の高さをみせたのが東京都です。東京都は外国人宿泊者数1位となっており、回復率も2019年同期比で130.0%の高水準となっています。

続いて外国人宿泊者数が多いのは、大阪府と京都府です。1位から10位までランキングにすると、以下のようになっています。
<外国人宿泊者数が多い都道府県>
- 東京都
- 大阪府
- 京都府
- 北海道
- 福岡県
- 沖縄県
- 千葉県
- 神奈川県
- 愛知県
- 長野県
いわゆる訪日旅行の「ゴールデンルート」上に訪問が集中していることがわかります。
このゴールデンルート上の地域への訪日客の集中には、2つの要因が考えられます。
1つ目は、「コロナ禍を経ての久しぶりの日本旅行になる訪日客が多いこと」です。コロナ前にすでにゴールデンルートを訪れたことがある訪日客であっても、「コロナ禍を経て、人気の観光地にも変化があったのではないか」という思いから、再びゴールデンルートを訪れているのではないかと考えられます。
そして2つ目は、「リピーターが多い東アジア市場(特に中国)の回復が遅れていること」です。

コロナ前の傾向では、東アジアからの訪日客はリピーターが多く、「ゴールデンルート上はすでに行ったことがある」訪日客が多くなっていました。そのため、ゴールデンルート以外の地方部にも関心を持ち、それに従って地方宿泊数も多くなる傾向にありました。
そんな東アジアからの訪日客、とりわけ中国からの訪日客の回復がまだ鈍いことで、地方部への訪問数が少なくなっているというのも要因としてありそうです。
地方の訪日客獲得に向けて、リピーター層の回復に期待
ゴールデンルート上を周遊することで、訪日外国人は一度の旅行で日本の有名観光地を効率よく満喫できます。そのためゴールデンルートは、団体ツアー客や初めて日本を訪れる外国人旅行客から、高い人気を集めています。
しかし、今後さらにインバウンドの回復が進み、個人旅行客や訪日リピーターが増加していったときには、ゴールデンルートだけでは体験できない、新たな魅力が求められるようになっていくとも考えられます。
事実、2回以上日本を訪れている訪日リピーターは、ゴールデンルート上の主要観光地には行き尽くしていることが多いため、訪日旅行の回数を重ねるごとに地方都市にも足をのばすようになります。
この傾向は、観光庁が平成29年(2017年)に発表した「訪日外国人旅行者の訪日回数と消費動向の関係について」からも読み取れます。韓国、台湾、香港からの訪日客については、地方への延べ訪問率が100%近くまで上昇しています。
関連記事:今更聞けない「ゴールデンルート」とは
「継続的な情報発信」がカギに
こうした層を地方に呼び込むためには、まず「地方の魅力を知ってもらうこと」が肝要になります。ですので、将来的な来訪者とのつながり得るための「継続的な情報発信」は非常に重要といえるでしょう。
ここには、アフターコロナの消費者の心理が大きく作用しています。消費者は旅行先を選ぶにあたって「その土地ならではの体験など強い動機(個人的な目的や意義)」を、コロナ前よりも一層強く求めています。そのため、旅行先として有力候補のひとつとなるためには、SNSやWebサイト等におけるデジタルマーケティングを通じて地域の魅力を訴求し、継続的なコミュニケーションを取っていくことが重要になるわけです。
そこでJNTOは、観光立国推進基本計画を踏まえ、「持続可能な観光・消費額拡大・地方誘客促進」の実現に向けて、きめ細やかにプロモーションを展開するために、市場別のマーケティング戦略を策定しています。

また、地方誘客促進に向けて、インバウンド向け情報発信に取り組む自治体・観光地域づくり法人(DMO)・民間企業等を対象としたデジタルマーケティング支援メニューも展開しています。プロモーション方針の相談を受けたり、JNTOが保有するデジタルメディアやデータ、ノウハウを活用し、日本各地の観光情報発信をサポートしたりしています。
JNTOの情報発信方針も参考にしながら、「今、日本に対して興味・関心を持っている層を主たるターゲットとした継続的な情報発信」を実施してみるとよいでしょう。
JNTOデジタルマーケティング支援メニュー概要
先に挙げたJNTOのデジタルマーケティング支援メニューについて、簡単に紹介します。
1. ジャパン・マンスリー・ウェブマガジン(Japan Monthly Web Magazine)記事広告
訪日旅行に関連する様々な記事を原則毎月、4言語5種(英語・韓国語・簡体字・繁体字(台湾向け) ・繁体字(香港向け))で制作し、JNTO ウェブサイトに「JAPAN Monthly Web Magazine」(英語版:https://www.japan.travel/en/japan-magazine/ )として掲載しています。ジャパン・マンスリー・ウェブ マガジンの1記事として、ご希望に沿った内容(JNTO 掲載規約に沿う必要があります)の記事を制作し、発信するメニューです。
※掲載本数は毎月最大 5 本としています。お申込み状況によっては掲載タイミングの調整をさせて頂くことがあります。
2. JNTO デジタル広告商品
JNTOのウェブサイトや、外部データ(属性、興味・関心、購買データ等)など、JNTOが保有するデータやノウハウ等を生かし、それらを地域に還元することを目的としたメニューです。ターゲットとする市場を選定した上で、デジタル広告による情報発信ができます。
詳細はこちら:JNTO「デジタルマーケティングの活用支援」
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【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」
インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
本イベントでは「顧客への情報アピール」「顧客体験(ゲストエクスペリエンス)」「運営のデジタル化」など、施設運営に必要なをテーマを、市場の最前線を走るエキスパートたちが集結。お客様が施設を見つける「旅マエ」から、実際に滞在する「旅ナカ」まで、あらゆるフェーズにおける最新戦略と成功事例を徹底解説します。
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【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
→「THE INBOUND DAY 2025」特設ページを見てみる
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
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