成田空港周辺で、タクシー営業に必要な認可を受けずに営業するタクシー、いわゆる「白タク」行為が横行しています。主に外国人観光客をターゲットとしているようです。
白タクは違法行為であるだけでなく、正規のタクシー事業者と比べて安全確保が不十分であることから、千葉県警などが安易に利用しないよう注意を呼びかけています。
一方、アプリなどを通じて一般のドライバーが有償かつ正規で客を運ぶのが「ライドシェアサービス」です。政府は国内での導入に向けて前向きな姿勢を示していて、白タク問題と合わせた議論が進んでいます。
本記事では成田空港における白タク行為の現状と横行する背景、ライドシェア解禁に向けた政府の見解について解説します。
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そもそも「白タク」とは?
「白タク(白タクシー)」とは、個人が自家用車を使い、乗客を有償で運ぶ行為のことです。営業許可を受けたタクシーのナンバープレートが緑色なのに対し、自家用車は白色であることから白タクと呼ばれています。
本来、タクシー事業者は国から認可を受ける必要があり、ドライバーは二種免許を取得しなければいけません。二種免許を持つドライバーであっても、自家用車を使ってタクシー業を営むことは法律で禁止されています。違反した場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金、もしくはその両方が科されます。
また、違反行為であることに加えて、安全確保の難しさも白タクが問題視される理由のひとつです。
認可を受けたタクシー事業者の場合、関連する法律に則りドライバーの健康管理や車体の整備・点検を行う義務が発生します。しかし白タクの場合、安全管理などはすべてドライバー個人の裁量に委ねられ、適切に行われているかどうかを把握する方法はありません。
そのため、白タクを利用して事故に遭った場合、保険が適用されないケースなども発生してしまうため、安易に利用しないよう注意する必要があります。
成田空港近辺における白タク行為の現状
成田空港が発表した空港運用状況によると、2023年9月における国際線の外国人旅客数は128万人で、コロナ禍前2019年比の96%まで回復しています。
インバウンド需要の急拡大を背景に、成田空港近辺で外国人観光客をターゲットとした白タク行為が増加。国土交通省 千葉運輸支局と千葉県警が啓発活動を強化しています。
11月1日には成田空港内で外国人旅行者に対し、英語や中国語で「白タクは違法で、危険です!」と書かれた啓発用チラシとポケットティッシュを配布。安全管理が行き届いたタクシーやハイヤーの利用を促しました。
白タクはコロナ禍前から問題視されていた
成田空港近辺ではコロナ禍以前より、インバウンド需要の拡大に合わせて、訪日外国人をターゲットとした白タク行為が増加傾向にありました。
とくに日本在住の中国人が訪日中国人観光客を乗せる「中国式白タク」が横行。2018年に通訳案内士法が改正され、資格を持たない人でも観光案内ができるようになったことも“外国人向け白タク”の増加に拍車をかけました。以来、観光ガイドが無資格で訪日外国人を自家用車に乗せ、格安で観光案内をする白タク行為が横行するようになったからです。
一方で海外では、アプリなどを通じて一般ドライバーと乗客をマッチングさせるライドシェアサービスが一般化している国も多くありますが、ライドシェアサービスは白タクと似て非なるものです。白タクが違法であるという認識を持たない外国人が多いことも、白タクが増加する大きな要因となっています。
ライドシェアサービスと合わせた議論が必要
日本国内でもライドシェアサービス解禁に向けた議論は活発化しています。9月に菅前総理が「早急な対応が必要だ」と発言したことをきっかけに、政府与党内ではライドシェアに対する前向きな意見が頻出しました。
岸田総理も10月23日に行われた臨時国会の所信表明演説でライドシェアについて言及し、導入に向けた課題に積極的に取り組む姿勢を示しました。
また、千葉県の熊谷俊人知事も10月19日に開かれた定例記者会見で白タク問題について言及。実態が把握しづらく、行政として対応に苦慮しているとしながらも、社会の変化に合わせて「ある程度柔軟に対応していくしかない」とライドシェア導入について前向きな発言をしています。
一方で、タクシー業界からの強い反発もあることから、法整備と合わせて安全管理の方法について慎重に議論する必要があります。インバウンド需要の拡大に合わせて、人気観光地のタクシー不足や交通機関の混雑は深刻な社会問題になっています。過疎化が進む自治体では、統廃合の進む公共交通機関の代替サービスとしてライドシェアサービスに期待が高まっています。
「白タク問題」にどう取り組むべきかについては、活発化するライドシェアの議論と合わせて、多角的に検討していくことが必要となるでしょう。
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<参照>
成田国際空港株式会社:2023年9月 空港運用状況
関東運輸局千葉運輸支局:令和5年10月25日プレスリリース
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