日本政府観光局(JNTO)は11月15日、9月に開催されたATWS(アドベンチャートラベル・ワールドサミット)北海道のオンライン報告会を実施しました。ATWSの開催に関わった関係者より、大会で得た知見や、今後の展望などを共有する場となりました。
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JNTO市場横断プロモーション部長 藤内氏 挨拶
はじめにJNTO市場横断プロモーション部長 藤内氏より挨拶がありました。
藤内氏:
「地元北海道の皆様、全国各地のDMO、DMC等、皆様にご協力をいただき、ジャパンラウンジを通じたネットワーキングを行い、『オールジャパン』で日本のアドベンチャートラベルの魅力を発信してきました」
「今後もアドベンチャートラベル・ワールドサミットの成果、レガシーを引き継ぎ、持続的・中長期的にPRしていきます。そしてJNTOでのマーケティング戦略で掲げているATデスティネーションとして『2025年までにアジアNo.1』になる目標に向け、魅力を関係者の皆様と連携してPRを進めてまいりたいと考えています。
来年はアドベンチャーウィークを沖縄で開催します。また、アドベンチャートラベルの特設サイトでもコンテンツを拡充し、積極的にPRをしていきたいと考えています」
ATWS開催概要とアンケート結果の報告:JTB沖縄 井川氏
次にJTB沖縄 井川氏より、ATWS開催概要とアンケート結果の報告がありました。
井川氏:
「ATWS北海道は『調和』をテーマとして開催され、参加者は旅行会社、メディア、政府観光局、観光協会、DMO、ギアメーカー等、総勢773名となりました」
PSA(プレサミットアドベンチャー)やDOA(デイオブアドベンチャー)の開催については、大会前にツアーを実施することで、ネットワーキングが円滑に。コミュニケーションをはかり、お互いのことを知ることが最大の目的だとしています。
ジャパンラウンジでは、日本全国のATコンテンツの発信、バイヤーとのマッチングを促進。ATは広域で取り組むことが重要であり、全国一丸となってPRできる設計にしたといいます。
出展者へのアンケートでは、94%が概ね満足、どちらかといえば満足と回答しました。海外の参加者との交流に加え、出展した国内地域同士のネットワーク構築ができたとの声がありました。一方、「地域軸ではなくテーマ別がより効果的なのではないか」との意見もあったそうです。
海外参加者からも「日本の場所に関する優れた情報がある」など評価する声が多数。一方で「ミーティングが上手くできる仕組みがない」との声もありました。
日本におけるATで期待する体験については、ハイキングや地元民との交流、食事、伝統文化体験などが挙がりました。
一方、「強度のあるアクティビティを求める方々に相応のオプションを提供できることが望ましい」「体験時間に対して移動時間が長すぎる」といった課題も。
日本らしいATのテーマとして「文化をフィーチャーしながら、ハイキングや自然体験も盛り込む」ようなツアーが望まれていると考えられます。
今後はガイドの英語力向上に加えて、「価格に見合った価値があることを伝える」ことが必要になってきます。
今後取り組みたいエリアは北海道・沖縄に注目が集まりました。
今後の日本のAT推進に向けて井川氏は、「引き続き欧米豪市場を対象とした取り組み実施が求められます。FAMトリップを実施し、体験を通じて日本の魅力をしっかりと理解・把握してもらうと同時に、日本のAT関連事業者の情報提供を行うことで、実際の商談が進むための素地づくりを行うことであると考えられます。
他方で英語ガイドの確保育成、従業員トレーニングの実施など受入体制強化の取り組みも重要といえます」とまとめました。
講演
以降、各プレゼンターによる講演の内容をご紹介します。
ATTA ビジネスマネージャーアジア 國谷氏
國谷氏:
「従来はCMや動画、パンフレットといったものに触発されて旅行商品が売れていましたが、様々な時代の変化の中で、『地域のありのままのストーリー』を届けるSNS投稿や口コミなども重要になってきます」
國谷氏は、ATを推進してきた流れを以下のようにまとめました。
- ATについて知ってもらう
- 地域と議論する
- 戦略を明確化する
- 持続可能な構造を検討する
- 標準化する(ATGS:アドベンチャートラベルガイドスタンダード、ISOが定めたアドベンチャーツーリズム安全マネジメントシステム等)
- 面として考える(地域の外にも広げていく)
- 教育に組み込む
國谷氏は「地域でコミュニケーションし、その魅力を紐解くことは、それ自体が地域の活性化となります。ATがそのきっかけになれば」と話しました。
北海道アドベンチャートラベル協議会 荒井氏
ATWSで学んだことが3つあると荒井氏。1つ目は商品で差をつけるだけでなく、自分がやりたいことをやってくれという海外からのメッセージ。2つ目はサステナビリティは「最低ライン」であるということ。最後に3つ目は「ほんもの」は強いということ。
これに応じて、アドベンチャートラベルを推進しながらの経営として「コストを下げる」「売上を高める」にはどうしたらいいのかを考えてきたといいます。
そこで「日常の暮らしにアドベンチャーを」「日常の本物を"おすそわけ”する」を意識することが重要だと考え、地元の子どもたちに向けてガイドがアドベンチャーな体験を教える、定期的にアイヌの勉強会を行うといった取り組みを行っているそうです。
お客様が来たときに慌てて準備するのではなく、すでに旅行商品ができている状態を作り出すことで、コストを下げることにつながるのではないかと語りました。
国土交通省 北海道運輸局観光部 部長 水口氏、観光企画部 専門官 森氏
水口氏:
「アドベンチャートラベルの推進に取り組むにあたり、何からやったらいいのか教えてほしい、と正直に話したところ、ATTAから提案されたAT推進の動きが以下の資料です。
『このタイミングでサミットに立候補してはどうか』『この時期にこの取り組みをやってはどうか』などと提案をもらいました」
まとまった組織があるわけではなかったため、複数団体でも取り組みの方向性は合わせよう、と考え作ったのが下の表だそうです。
実際に以下のようなスケジュールで動いていきました。
ATWS開催が決定した後、契約書の締結など準備を進める上で、ネットワークや連携の重要性を感じたと語りました。
関係者が非常に多く「摩擦も衝突もあった」と水口氏。それでもその度に話し合い、協力して乗り越えてきたと語りました。
続いて森氏は、ガイドの質とツアーの満足度が相関していると指摘。
ATWSでも、PSAのツアーに台風が直撃。しかもその日がいわゆる「山場」だったそうなのですが、ガイドが行程を柔軟に調整し、天候が良い日を山場として持ってきたそうです。海外からの参加者からも「ガイドは決してNOと言わなかった」と絶賛されていたといいます。
課題として、「サステナブルな取り組み」については「いまいち」だったといい、「重点が置かれているようには感じられなかった」「最低限の試みさえなかった」との厳しい指摘もあったそうです。取り組みを進めるのはもちろん、実践していることをガイドの説明を通して伝えるのが重要だとも話しました。
水口氏は最後に「非常に高い評価を得たものの、環境への配慮などはまだこれから」として、今後も取り組みを続けていきたいと話しました。
九州観光機構 企画部 地域連携室 担当部長 花田氏
PSAで屋久島は、「水」をテーマにしたツアーを展開。
山から水が流れ、川や海へと繋がっていることを体験していただくため、山登りやカヤックを体験するツアーとしたそうです。
阿蘇・高千穂では「火山」をテーマにサイクリングなどを実施しました。
やはりアンケートでも指摘があった環境への配慮や、アクティビティへの耐性の差、安全確保、食事対応まで考慮する必要があると話しました。
北海道宝島旅行社 観光地域づくり事業部 雨池氏
ツアー造成等を提供する同社ですが、2021年頃までは全くAT関係の成約・問い合わせはなかったといいます。
そんな中、ATWSの成果について「実際に来ていただき、知っていただくよい機会になった」「誰も来たことがない、新しいデスティネーションとして求められている」と振り返りました。
Hiroshima Adventure Travel 佐藤氏
広島というフィールドに合ったテーマとして「平和」を選択。「What does PEACE mean to you?」をコンセプトとしてツアー造成を行ったそうです。
2022年6月には広島アドベンチャーツーリズム協議会を設立。民間主導でATを知っていただき、広島の価値を改めて考えながらツアー造成をしていく組織を始動しています。PSAにも参加して、関係性構築を行ったということです。
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