「桜シーズン」に向けたインバウンド施策のポイント【セミナーレポート】

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2023年は2,500万人の外国人旅行者が訪れた日本のインバウンド市場。コロナ前の2019年に迫る勢いの回復をみせており、2024年の訪日外国人数は3,000万人を上回るとの予想もあります。日本を訪れる外国人旅行者の間で、特に人気が高いアクティビティが「桜の鑑賞」です。桜の開花時期に合わせて日本を訪れる外国人も多く、日本の重要な観光資源の一つとなっています。

そこで訪日ラボでは、「『桜シーズン』に向けたインバウンド施策のポイント」と題したセミナーを開催しました。

登壇者としては、インバウンドの動向に詳しい訪日ラボ インバウンド事業部長 川西哲平に加え、台湾に本社を置くビッグデータカンパニーVpon JAPAN株式会社営業本部 会田健介氏をお呼びし、「桜」に関するインバウンドデータをもとに、訪日外国人旅行者の最新動向と、「桜のシーズン」に集客を向上させるためのポイントを解説しました。

本セミナーは大好評につきアーカイブ配信を行っておりますので、ぜひご覧ください。

→【アーカイブ配信】訪日外国人が増える「桜シーズン」に向けたインバウンド施策のポイント

【第一部】インバウンド市場の最新動向

最新のインバウンド動向

セミナー冒頭では、弊社訪日ラボ コンサルティング事業部部長の川西より、最新のインバウンド動向について解説させていただきました。

訪日外国人 入国状況 2019 2023 比較
▲最新の訪日外国人の入国状況 2019.2023比較

2023年の訪日外国人は全体としては2506万人。2016年〜2017年の規模と同程度のところまでの回復を見せました。2024年は3300万人を超えるとの予測もあり、この数字が一つのベンチマークであると川西自身も考えているとのことです。特にインバウンド市場の回復が顕著だった2023年10月以降は、単月で見ると過去最高の訪日外国人数だった2019年と同規模の外客数を記録。この傾向が続けば2024年は予測の通りの市場の拡大が期待できると言われています。

コロナ禍前2019年と比較した際に、国別の構成が変わっている点が2023年の大きあトピックとして挙げられます。2019年は中国からの訪日客が960万人と全体の30%を占めていたのに対し、2023年は243万人と全体の9%程度に。代わりに韓国が696万人になり全体の約28%を占めて1位となり、2位が台湾、3位中国という形になっています。

2023年の中国人訪日客動向

中国人訪日客を見ると、2023年は242万人で、いわゆる「爆買い」が始まった2014年と同じ規模でした。中国人観光客はコロナ禍と前と比較して約3〜4割程度しか戻ってきていないのが現状です。

訪日中国人客数 10年間 2023
▲訪日中国人客数 10年間の推移

その理由としては、国際線の運行状況が影響しています。2023年11月に国土交通省が発表した冬ダイヤによると、中国便の回復率は2019年比較で46%。他の地域は80〜90%の回復率となっており、中国の航空便の回復が鈍いことがわかります。空港便数はすぐには回復が難しいものであり、2024年に入り新規就航や再会が増えていることは事実なので、今後の動向に注目です。今後のインバウンド市場においては、中国人観光客の回復が大きな要素となりそうです。

KKday 2024年 インバウンドに人気の都道府県ランキング
▲KKday「2024年インバウンドに人気の都道府県ランキング」(出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000134.000028214.html)

2024年の春節の動向を見ると、中国国内の旅行需要が高かったものの、日本へ旅行へ来る層にとっては地方人気も高まっている様子。KKdayの「2024年インバウンドに人気の都道府県ランキング」によると、都市圏の予約は減少し北海道や岐阜県が選ばれ始めています。また、ブッキング・ドットコム(Booking.com)の「アジア太平洋地域の旅行者が注目する旅行先1」では、大分県日田市が3位にランクイン。人気漫画の聖地として人気が高まっているようです。

2023年の桜シーズンの振り返り

訪日ラボを運営する株式会社movでは、Googleマップの分析事業も手がけていることから、2023年の桜の観光名所調査を実施。桜の名所として知られる都内五ヶ所のデータから、外国人の桜シーズンにおける需要分析を行いました。

桜の名所 外国人 口コミ 割合
▲桜の名所における外国人の口コミ割合

2023年3月のGoogleマップに入ってくる口コミデータを分析すると、外国語の口コミが3割以上。外国人にとって桜が人気の観光コンテンツになっていることがわかります。英語だけでなく繁体字(中国語)の口コミも多く、英語以外の多言語対応は今後必須のインバウンド施策と言えるでしょう。

また、日本人よりも外国人の方が口コミの平均評価が圧倒的に高いことも特徴です。海外の方の口コミを集めることで、施設の評価を押し上げることにもつながります。

今やるべきインバウンド施策

続いて、2024年にやるべきインバウンド対策について川西氏は「デジタルマーケティングをやりましょう」とのこと。

コロナ禍を経て、インターネットのトラフィックが急増。テレワークが進んだこともあり、zoomなどを用いたオンライン会議が主流になり、Amazonや楽天などのECサイトも活況に。TikTokやYouTubeなどの動画配信やSNSマーケティングも一般化しました。デジタルマーケティングの重要性は今後さらに増えていくと予想されています。

インバウンド デジタルマーケティング 対策
▲インバウンドにおけるデジタルマーケティング施策について

デジタルマーケティングでは顧客データを収集しやすく、データに基づき、より効果的なターゲットへのアプローチが可能になりました。しかし、デジタルマーケティングと言ってもその手法は様々。「一体、何から始めたらいいのか」と思う方も多いと思います。

川西氏はまずは「既存顧客の調査」が大切だと言います。加えて「地域にどこから何人くらいの外国人が来ているのかを調べること」もまずやるべきことの一つで、現在の状況を把握した上で、ターゲット設定を行い、ターゲットに合わせた施策を行っていく順番がいいそうです。特にSNSは国や地域によって使えるアプリケーションや、使われる頻度や方法も変わってくるので、それぞれのユーザーの特徴に合わせて使い分けることも必要です。

インバウンド 対策 受け入れ態勢の整備
▲受け入れ環境の整備について

また、受入環境の整備では、Googleマップと大衆評点の利用が推奨されます。旅中にお店を検索する際にこの二つを使う旅行者も多く、インバウンド対策としては必須だといえます。Googleマップには「Google Business profile」というGoogleマップ上のHPのようなものがあり、これを整備することは企業Webサイトを整備するのと同じくらい大切とのこと。

インバウンド市場が伸びる中で、差別化を図るにはデジタルマーケティングが最も重要と言われています。ただ闇雲に対策を行うのではなく、事前調査をきちんと行い、何が最適かを考えることが大切です。

【第二部】動態データから見えた「桜シーズン」集客のヒント

続いて、Vpon JAPAN株式会社営業本部 会田健介氏 により、春シーズンの人流や集客のヒントを解説していただきました。同社ではSDKというアプリに組み込む開発キットを独自に生産。台湾、香港、韓国などのアプリに組み込まれることが多く、位置情報や購買情報などのデータを分析することができます。こうして分析されたデータをもとに、訪日外国人の観光動態を分析・把握しているのだそうです。

Vponを活用したマーケティング施策について
▲Vponのサービスを活用したマーケティング施策について

春シーズンの日本国内の外国人観光客の流れ

冬シーズン(2023年1月・2月)と春シーズン(2023年3月・4月)のデータを比較し、それぞれの地域で特に人が集まっていた施設やエリアを分析していきます。セミナーでは会田氏より各地域ごとに分析結果事例が紹介されました。

訪日旅行者 マップ 北海道 Vpon
▲訪日旅行者マップ調査:北海道

北海道:函館市が人気。特に五稜郭や近隣のホテルエリアに人が集中しているのがわかります。

訪日旅行者マップ調査:長崎
▲訪日旅行者マップ調査:長崎県

長崎県:長崎市北部に人流が非常に集まってる傾向が読み取れます。桜で有名な金海利根川のエリアや近隣のリゾートホテルに集中してるようです。

訪日旅行者 マップ調査 福島県 Vpon
▲訪日旅行者マップ調査:福島県

福島県:二本松市に集まっている様子。岳温泉桜坂のエリアが非常にこの時期だけ人が収集しているのが読み取れます。

訪日旅行者 マップ調査 東京都 国別 Vpon
▲訪日旅行者マップ調査:東京都(国別)

東京都:都内では品川区と目黒川が特に増えてます。国別にデータを見ると、この二つのエリアは特に韓国からの旅行者が多いようです。大韓航空が羽田への路線を増便したことも影響していると考えられます。

今からできる春シーズンのインバウンド対策

インバウンド施策において、こうしたデータを見ながら効果的なアプローチを検討することが大切です。現在の状況はどうなってるのかを調べて、戦略を立てていく必要がありますが、これからすぐに対策を打てる施策としては、やはりデジタルマーケティングだと会田氏も話します。

今からできる春シーズンのインバウンド対策について
▲今からできる春シーズンのインバウンド対策について

同社ができるインバウンド施策としては、すでに日本へ旅行に来ている訪日旅行者への広告配信が可能とのこと。各エリアの情報などをスマートフォンを中心に広告配信を行うことが可能です。シーズン、シチュエーションに対してセグメントを作って配信することもできるので、戦略に合わせた多彩なアプローチができることが特徴だと紹介していただきました。

広告を打つタイミングとしては、単発ではなく、定常的にエリアに人が来てくれる地盤を固めることが大切だとのこと。まずは年間のプロモーションプランを検討し、どの時期にどんな旅行客を呼び込みたいのかを決めてから、各タイミングに合わせて広告を打つことが大切です。そして、受け入れ態勢においては、デジタルだけを拡充すればいいのではなく、デジタルとリアルの両方の側面で、旅行者の満足度を高めていく必要があるとのことでした。

【第三部】質疑応答

最後に視聴者の皆さまからいただいたご質問と、その回答を一部抜粋します。

Q. 商業施設でも行える、桜に関する施策のヒントなどがあれば聞いてみたい

会田氏: その施設がどこのエリアにあるのかでだいぶ変わってくるかとも思います。そのうえで、まずは現状を分析し、どの国の人がどの時期に来ているのかを把握することが大切です。ターゲットにしたい国などを決めながら、消費の傾向なども確認して、「本当に桜が訴求コンテンツとして刺さるのか」みたいなことも検討する必要があります。もし桜が刺さらないのであれば、アニメや別のもので補完して、効果的なアプローチを検討していく必要があるでしょう。まずはデータを見てそれを戦略化していくことが大事なんじゃないかなと思います。

川西:桜を目的に来る方々も桜を見ただけで帰らないので、桜はあくまでディスティネーションの1個だと思います。なので、例えば桜の観光名所から近い商業施設であれば、桜とのセットでのプロモーションはありかなと思います。例えば「桜で有名な上野公園まで30分でいけますよ」などをアピールしたりですね。立地関係や距離でなどと一緒にPRするといいのかなと思います。

Q. Googleマップとトリップアドバイザーなど、数が少なくても分散して口コミを集めるのか、口コミを一つのところにたくさん集めるのかどちらがよいでしょうか

川西:あまり答えになってないかもしれませんが、結論は両方やった方がいいと思います。Googleマップとトリップアドバイザーであれば、どちらか一方しか見ない人もいますし、使い方がそれぞれ変わってきます。トリップアドバイザーが比較的、旅前に見る人が多いのに対し、Googleマップは旅中で使われるケースが多い。使用する用途も変わってくるので、できるなら両方やった方がいいですね。

Q. 外国の旅行代理店との接点の持ち方が知りたい

川西:日本国内にいてな接点持つ機会は少ないと思うので、一つはJNTO主催のトラベルマートに出店する方法が一つ。ターゲットの国が絞れているのであれば旅行博に行って旅行会社と接点を持つやり方もあります。あとは海外の旅行代理店さんとネットワークを持っている代理店を使うというのも一つの手ですね。

Q. データがあった方がいい最大のメリットを教えていただきたいです

会田氏: 「振り返れる」というところが一番のメリットかなと思います。マーケティング施策の結果も全てデータになって戻ってくるし、何かを打ち出す際にもデータを参考にすれば、またこれもエビデンスになると思うんですよね。そうして、何を参考にして何をやったらどんな結果になったかというデータがさらに溜まっていって、それがトライアンドエラーになる。「過去こういうのをやっていたよ」というデータは後々、人材育成などにも紐づいてきて、組織をどう構築するかにも大きく関わってきます。「打てば終わり」ではない点がデータの最大のメリットなのかなと考えています。

セミナーアーカイブはこちら

本セミナーは無料でアーカイブ視聴が可能です。「桜シーズン」に向けたインバウンド施策を検討中の方々はぜひ動画もご視聴ください。

→【アーカイブ配信】訪日外国人が増える「桜シーズン」に向けたインバウンド施策のポイント

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客インバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!

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