外国人向けEコマース事業を手掛けるBEENOS株式会社は8月22日、「越境EC・訪日インバウンド×上半期トピックス発表会 2024」を開催。越境ECサービス「Buyee」の購買データに基づく海外消費者の消費トレンドについて発表しました。
また、発表会では訪日客向けショッピングサポートアプリを提供する株式会社Payke 代表取締役CEO 古田奎輔氏も登壇。同社が集計したアプリデータをもとに、外国人観光客に人気の商品など最新の消費動向について報告しました。
訪日ラボでは、発表会の内容を踏まえ、全2回にわたり訪日外国人の消費動向についてお伝えしていきます。前編となる本記事は「BEENOSの概要と上半期トピックスについて」。実際に外国人に人気の商品は何か、どのような購買傾向があるのかなどをまとめます。
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海外向け越境ECサービス「Buyee」とは
「Buyee(バイイー) 」は、BEENOS株式会社の子会社であるBeeCruise株式会社が運営する、海外ユーザー向けに日本の通販商品やオークションの入札サポート・購入サポートを行うサービス(海外向けECモール)です。
2012年にサービスの提供を開始し、世界約120か国/地域に対応。2024年7月末時点で海外ユーザー数は550万人を超えているといいます。
- Buyee(バイイー):https://buyee.jp/
旅行需要の回復で、越境ECの需要は「むしろ伸びている」
BEENOSの代表取締役執行役員社長 兼 グループCEO 直井聖太氏によると、「(Buyeeは)コロナ禍の最中に非常に数字が伸びた」とのこと。一方、旅行需要が回復した現在は、「越境ECの需要は減少するのではないか」と言われることもあるといいます。
しかし「我々はむしろ逆だと考えている」と直井氏。実際には訪日旅行をきっかけに、より日本のことを好きになった外国人ユーザーが、帰国後に越境ECを使う状態が増加。結果的にインバウンド需要が増えることによって、越境ECが伸びるという循環ができているとのことです。
円安を背景に越境ECでの購入機会が増加
また、Buyeeの外国人ユーザーに為替に関して調査を行ったところ、66.8%のユーザーが円安の進行により日本の商品を購入する機会が「増えた」と回答。また、63.2%のユーザーが「(商品を購入するなら)日本の方が安い」と答えています。
円安を追い風に、安くて質の良いものを買える日本はさまざまな分野で注目が高まっているようです。
越境EC×2024年上半期の人気カテゴリ
今回発表された2024年上半期の人気カテゴリは、1位トレーディングカード、2位おもちゃ・ホビー、3位ファッション雑貨、4位アニメ・コミックグッズ、5位CD・レコード でした。
エンタメコンテンツ関連の商材が人気ですが、スポーツ・レジャー(8位)や自転車・オートバイパーツ(9位)などコンテンツ関連以外の商品もランクインしています。
また、2024年上半期に特に伸びたカテゴリーは、1位アニメ・コミックグッズ、2位トレーディングカード、3位ファッション雑貨、4位フィギュア、5位DVD・ブルーレイ・映像ソフトでした。
6位にはカメラ・光学機器、7位に美術・工芸品もランクインしている点も、2024年の特徴です。
越境EC最新動向1.「エンタメコンテンツの人気が上昇!」
次に各カテゴリごとに、人気商品やメインユーザーなど詳細な消費動向をまとめていきます。
アニメ×越境EC
2022年のアニメ関連市場は過去最高の2兆9,277億円を記録。海外市場は国内市場と同規模に成長しており、海外消費は1.4兆円に到達しました。2500億円程度だった2012年頃と比べるとかなり大きく成長しています。
また、Buyeeのアニメグッズカテゴリの購入件数では、2021年上半期と比較して2024年上半期は約3.3倍を記録。2024年に入り特に増加傾向にあります。
古くからファンの多いアニメコンテンツは引き続き人気ですが、Buyeeでは2024年の上半期に放送が開始されたアニメの中で特に売れている作品を集計。その結果、1位は「鬼滅の刃 柱稽古編」、2位は「あんさんぶるスターズ!追憶セレクション『チェックメイト』」、3位は「僕のヒーロアカデミア第7期」、4位は「聖闘士星矢 Knights of the Zodiac バトル・サンクチュアリ Part2」、5位は「WIND BREAKER」でした。
日本のアニメが海外で放送されるまでのタイムラグが少なくなってきたことも、市場拡大を後押ししているようです。
メインユーザーは20代30代の男女
アニメ関連商材を購入しているユーザーは圧倒的に北米が多く、次いで東アジア、ヨーロッパが続きます。20代30代を中心に若い世代の男女がメインであり、若年層にアニメカルチャーが浸透していることがわかります。
海外でも進む「推し活」消費
アニメ関連の中で特に人気のある商品はフィギュアですが、フィギュア以外のアニメグッズも拡大傾向にあります。アクリルスタンドやキーホルダー、缶バッジなど低価格帯の商品の流通も増加。ライトユーザー向けの商品が非常に好調で、北米やヨーロッパ、アジアの女性に特に人気です。
日本でも「推し活」が人気ですが、海外でもその傾向は顕著で、うちわやクリアポーチなどの「推し活グッズ」の売上は3年間で1.4倍に拡大。購買ユーザーの86%を女性が占めています。20代を中心に推し活文化を取り入れるユーザーが増加し、購入国TOP3は、1位北米、2位台湾、3位香港でした。
これまではアニメグッズを購入するメインユーザーは男性でしたが。推し活カルチャーの浸透とともに女性ユーザーの取り込みが加速。こうした点も市場の拡大を後押ししています。
音楽×越境EC
50代には「レトロ商品」が人気
音楽市場は、ストリーミングやライブを中心に、2027年までに10兆円規模に成長すると見込まれています。
ユーザー層は地域によってばらつきがあり、ヨーロッパや東アジアでは、50代男性がメインユーザー。レコードや洋楽ロック、クラシックなど趣味のコレクションとして商品を購入する人が多いようです。日本でも「レトロ商品」が人気ですが、海外でもその傾向は顕著です。
20代は圧倒的にポップスがメイン
一方で、北米のメインユーザーは20代女性で、圧倒的にK-POPが人気です。一部J-POPの需要もあり、最新のポップスを楽しむ傾向があります。
なぜ日本の海外向けECモールからK-POP商品が買われるかというと、日本でしか販売されていないグッズを求めるユーザーがいるからです。日本の初回限定版や日本限定のパッケージなど、日本でしか売っていないアーティストのグッズを、全世界のK-POPファンが購入しています。
ゲーム×越境EC
世界のゲーム市場は右肩上がりで成長中で、市場規模は2026年までに47兆円まで拡大すると言われています。Buyeeのゲームカテゴリでは2021年上半期と比較して、2024年上半期は約2.5倍を記録しました。
全てのエリアで男性ユーザーが中心
ゲーム関連商品の流通は、すべてのエリアで30代・40代の男性がメインユーザーとなっています。北米とヨーロッパは流通量が多く、女性ユーザーも多い点が特徴です。購入エリアランキングは、1位が北米、2位がヨーロッパ、3位が中南米でした。
越境ECでは古いゲーム機が人気
ゲーム機の購入データを見ると、過去に発売された古いゲーム機ほど人気が高いことがわかります。最新のゲーム機は現地でも流通している場合が多いですが、古いゲーム機を購入したい場合はBuyeeなどの越境ECを使うユーザーが多いようです。
人気ゲーム機ランキングは、1位がPlaystation、2位がファミコン(ファミリーコンピューター)、3位がゲームボーイ、4位がスーパーファミコン、5位がPlaystation2でした。
ゲームソフトはポケモンが圧倒的人気
ゲームソフトは圧倒的にポケモンシリーズが人気。ポケモン以外では「スーパーマリオシリーズ」や「ファイナルファンタジーシリーズ」などの需要も高いようです。購入ユーザー層は、1~3位をアメリカの男性が独占。1位がアメリカ 30代男性、2位がアメリカ20代男性、3位がアメリカ 40代男性 という結果でした。
マンガ×越境EC
マンガカテゴリの人気商品は、1位が「ドラゴンボール・鳥山明」、2位が「ハイキュー」、3位が「ワンピース・尾田栄一郎」、4位が「呪術廻戦」、5位が「セーラームーン」でした。
2024年3月にドラゴンボールの作者である鳥山明氏が亡くなった影響もあり、鳥山明氏関連の商品の需要が高まったようです。
マンガは欧米圏での人気が得意高い
マンガは欧米系ユーザーの人気が高く、東アジアを抑えて1位が北米、2位がヨーロッパでした。男性が6割を占め、20代・30代・40代と比較的幅広い年代にユーザーが分散しています。
マンガ本は日本語で書かれてますが、アニメ化や映画化をきっかけに購入が増える傾向にあるようです。例えば2024年1月にアニメ化された「ダンジョン飯」は、放送開始後からすぐに流通が増加。アニメや映画の公開と流通量の相関関係が伺えます。
特撮×越境EC
特撮カテゴリの人気ランキングは、1位が「仮面ライダー」、2位が「ゴジラ」、3位が「ウルトラヒーロー」、4位が「スーパー戦隊」、5位が「ガメラ」・「モスラ」でした。1位〜5位までの上位6作品で全体の9割を占めています。
メインユーザーは圧倒的に男性
特撮関連商品のメインユーザーは男性で、購入エリアは、1位が北米、2位が東アジア、3位が東南アジアとなっています。購入される商品はフィギュアのほか、ソフビ人形やトレーディングカードも人気です。
平成や令和にテレビシリーズが放送された作品は20代に人気で、映画が好調のゴジラシリーズは30代からの支持を受けている様子。テレビ放送されていた時代とファンの世代には相関関係があると言えるようです。
越境EC最新動向2.「日本の品質の高さに需要増」
食×越境EC
インバウンド市場において日本政府も特に力を入れている「日本食」。クールジャパン戦略によると、2023年の農林水産物の輸出は1.5兆円規模にも上りました。さらに2030年には5兆円規模を目指すとされており、クールジャパン戦略の中ではコンテンツ、インバウンドと並ぶ柱の一つとして期待されています。
人気はジャパニーズウイスキー
Buyeeの食ジャンルで圧倒的な人気を誇るのはアルコールです。人気カテゴリランキングは、1位がウイスキー、2位がお菓子、3位がブランデー、4位が同率でワインと日本酒となっています。ジャパニーズウイスキーは世界中で高い人気を誇り、流通量も少ないことから、越境ECを活用して購買するユーザーが増えているようです。
お菓子は「まとめ買い」傾向
食カテゴリではユーザーの多くが男性ですが、アルコールを飲む文化のない中東は20代女性がメインで、お菓子を購入するケースが目立ちます。お菓子については、東アジアのほか、アメリカやイギリスからも購入されていて、まとめ買いで買われる場合が多いようです。
アート×越境EC
アート関連では、陶芸作品が圧倒的な人気を誇ります。ほかに浮世絵や掛け軸などの日本的な作品の需要も引き続き高いようです。ユーザー層は40代男性がメインで、配送料の関係もあり、購入エリアは東アジアが多くなっています。
ファッション×越境EC
Buyeeにおけるファッション関連商品の流通は2021年上半期と比較して2024年上半期は約1.7倍に拡大。全エリアで20代・30代のユーザーが多く、女性は52%、男性は48%でした。女性はバッグや小物、男性はTシャツやジャケットなどを購入する傾向が強いようです。
ビューティ×越境EC
ビューティー部門で人気のカテゴリは、基礎化粧品です。日本製品の品質が支持されていることがわかります。また、日本のヘアケアも注目が高まっており、全体の5位にランクイン。美容家電の人気ランキングではヘアドライヤーが1位となっていて、注目度の高さが伺える結果となっています。
海賊版・転売などの問題は…「高価でも公式サイトで購入したい」93.1%、消費者の意識に変化
最後に、海賊版・転売などの問題についてです。Buyeeが2024年7月に実施した「越境ECと日本コンテンツの購入意向に関するアンケート」によると、コンテンツのグッズ購入に関して、「高価でも公式サイトで購入したい」と回答したユーザーは全体の93.1%にのぼりました。
以前は海賊版や転売の被害にあった企業も少なくなかったコンテンツ市場ですが、消費者の意識は大きく変わってきている様子。高くても正規品を買いたいユーザーが多いというのは、商品を提供する側にとっては嬉しいニュースです。
海賊版の販売や転売を行うサイトが先に閲覧されている状態だと、顧客を取られる可能性が高くなるため、公式サイト・SNSでの情報発信やSEOなども重要となってきそうです。
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