4月9日13時すぎ、トランプ政権による「相互関税」が発動されました。日本を含む60の国・地域が対象で、日本には計24%の関税が課されます。
製造業をはじめとした輸出産業への悪影響、そして世界的な不況への突入も懸念される中、旅行業界にはどのようなインパクトがあるのでしょうか。
これについて米調査会社ツーリズム・エコノミクスは2月、トランプ政権による関税政策やその影響の拡大によって、米国を訪問する旅行需要が落ち込む可能性があることを示すレポートを公開しています。
本記事では同レポートの解説に加え、トランプ政権の動きが日本の旅行・観光業界に及ぼしうる影響についても考察します。
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トランプ関税政策で米GDP成長率は減速へ、旅行業界にも大きく影響

そしてGDPの低下は、米国の旅行業界にも大きく影響すると指摘。訪米インバウンド旅行者数は前年比5.1%減少、ホテルの客室需要は同0.8%減少し、成長を見込んでいた基準シナリオから大きく低下する見込みです。
また、米国へのインバウンド客による旅行支出も基準シナリオより3.7%低下すると見込んでおり、これは180億ドル(約2.6兆円)の損失に相当するとしています。
※ レポートでは、2025年の米国のGDPおよび旅行需要について、基準シナリオ(baseline scenario)と下方シナリオ(downside scenario)が作成されています。
基準シナリオでは、鉄鋼とアルミニウムへの25%の関税、カナダ・メキシコ・ヨーロッパ・台湾などからの輸入品、および銅、医薬品、半導体などのさまざまな重要産業に対する関税を想定。下方シナリオは、基準シナリオの関税に加え、カナダ・メキシコからの輸入品に25%の関税、EUからの輸入品に10%の関税を課し、貿易相手国が報復関税を実施すると仮定したものです。
これはトランプ政権による関税政策の詳細が決定される前の仮定であり、相手国からの報復関税の動きも不透明である点には留意してください。
貿易紛争は「旅行者心理・経済・為替」に影響
同レポートでは、トランプ政権の政策による貿易戦争の激化が、主に以下の3つの点で米国への旅行に悪影響を及ぼすとしています。
- 旅行者心理の影響:緊張した外交関係と経済の不確実性により、カナダ・メキシコ・EUなど主要な市場において、米国への旅行に対する関心が低下する可能性
- 経済的な影響:米国の経済成長の減速と、カナダやメキシコの景気後退も進み、旅行需要が抑制される可能性
- 為替レートの変動の影響:今回の政策の影響で、仮に米ドルが相対的に強くなった場合、海外からの旅行者にとって米国への旅行費用が高くなり需要が低下する可能性
過去のケースとして、米中貿易紛争の際、中国人の長距離海外旅行市場における米国のシェアが縮小したことがあるとも述べています。
訪日インバウンド旅行への影響は?
では、日本の旅行・観光業界への影響はどうなるのでしょうか。訪日インバウンド需要はこうした国際情勢の影響を受けることが多く、今回はレポートで言及されていた通り、経済的影響や為替レートが旅行需要を低下させる要因になり得ます。
まず経済的影響について、相互関税は米国民の家計も圧迫するため、個人消費が下落し、米国からの訪日旅行が減少する可能性があります。また、不況が全世界に広まった場合には、世界的に海外旅行を控える動きが起こることも考えられます。
続いて為替レートについては、日本経済新聞 4月8日付の報道によると、日米間の関税交渉において為替が交渉材料として浮上しています。議論の結果、円安・ドル高を是正することになれば、円安による訪日旅行の「お得感」が薄れ、旅行中の消費などが抑制される可能性があります。
一方、訪日旅行需要の増加要因があるとすれば、米国への旅行を忌避する旅行者が日本を選択するといった動きが考えられます。とりわけ累計104%もの関税がかかる中国との関係悪化は必至であり、米国ではなく日本を旅行先として選ぶ中国人旅行者が増える可能性はあるといえます。
今後、これらの要因がどのように訪日旅行需要へ影響してくるのかは不透明ですが、インバウンド関連の事業に携わっている方は、国際情勢を慎重に見極め、市場の選択や国内事業とのバランスをとる必要があるでしょう。
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<参照>
TOURISM ECONOMICS:Expanded trade wars scenario on US travel
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