CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?顧客の体験価値を向上させる3つの方法

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【連載:マーケティング用語・施策の基礎解説】

本連載では、国内外問わず通用するマーケティング施策を取り上げ、インバウンド対策にも役立つヒントをお届けします。

CX(カスタマーエクスペリエンス)は、「Customer Experience」の略称で、「顧客体験」を意味します。

商品やサービスの価値は、価格や機能だけで決まるものではなく、購入前から購入後までのすべての体験が重要です。CXは、こうした顧客が体験する一連のプロセスを価値としてとらえる考え方です。

近年、CXはデジタルマーケティングを中心に注目され、特に心理的価値を重視するアプローチが求められています。

本記事では、CXの基本概念、必要とされる背景、CXを向上させるための3つの方法、そしてCXを構成する5つの感情的価値について詳しく解説します。

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CX(カスタマーエクスペリエンス)とは

CXとは、英語では「Customer Experience」と書き、日本語では「顧客体験」あるいは「顧客体験価値」と訳されます。CXは、商品やサービスの購入前から購入後にかけて、顧客が価値として体験するすべての出来事を指します。

ここではCXが必要とされる背景や、類似する用語「CS(カスタマーサティスファクション)」との違いを解説します。

CXが必要とされる背景

CXが必要とされる背景は、主に次の3つです。

  1. 顧客が欲しい情報をみずから得られるようになった
  2. 競争が激化し、商品やサービスの差別化が難しくなった
  3. IT技術が発展し、顧客情報を活用できるようになった

今やWeb上で検索すれば、欲しい情報が簡単に手に入る時代です。顧客は商品の購入を考える際、企業のWebサイトだけではなく口コミなどさまざまな情報をチェックします。企業から顧客への一方的な情報発信だけでは、顧客のニーズを満たせなくなっているのです。

また、国内市場は成熟し、一つのニーズに対していくつもの類似商品が提供されています。似たような価格と機能の商品があふれ、購入の決め手となる要素を見つけ出すのが難しい時代になりました。

さらにはIT技術の発展で、顧客に関する情報が取得しやすくなりました。商品を購入した経緯のほか、顧客の属性や位置情報といった詳細なデータを得られるようになったのです。

こうしてさまざまな顧客像に合わせ、価値ある体験を提供できる環境が整いました。

「CS」や「UX」との違い

カスタマーエクスペリエンスと似た言葉に、CS(カスタマーサティスファクション)やUX(ユーザーエクスペリエンス)があります。

CX・CS・UXは、どれも顧客満足に関わる要素ですが、視点が異なります。ここでは、それぞれの違いについて説明します。

CS(カスタマーサティスファクション)との違い

CXと似た言葉に、CS(カスタマーサティスファクション)があります。

CSは、アンケートなどを通じて把握できる「顧客満足度」です。これは商品やサービスに対する満足度を数値化した指標です。一方CXは、顧客側の視点に基づく感情的な評価です。

その意味で、CXサービス全体、CSはサービスを細分化した一部分という捉え方もできます。

UX(ユーザーエクスペリエンス)との違い

UX(ユーザーエクスペリエンス)は、製品やサービスを利用する際の使いやすさや快適さに関する体験を指します。特に、Webサイトアプリの使いやすさ、デザイン、操作性に関連し、「ストレスなく使えるか?」が評価の基準になります。

UXが特定の製品やサービスの使用時の体験を指すのに対し、CXは企業全体との関わりを通じて得られる総合的な顧客体験を指します。

CX(カスタマーエクスペリエンス)を構成する感情的な価値

CXを向上させるには、「感情的な価値」への理解が必要です。コロンビア大学のバーンド・H・シュミット教授は著書の中で、感情的価値を次の5つに分類しています。

Sense:感覚的価値

感覚的価値とは、人の五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)に訴えかける魅力です。コンセプトにあった内装、安らぐ音楽、庭の木々の香りや美味しい料理など、知覚を刺激する経験から得られます。

感覚的に好みの価値を見出すと人は満足を覚え、「この店に訪れるとよい感情を持てる」と印象付けられます。感覚的価値が高い=顧客のリピーター化が期待できるのです。

Feel:情緒的価値

情緒的価値は、顧客の内面(感情)に働きかけることで得られます。質の高い接客や掃除の行き届いた店内、充実したアフターサポートのほか、社会活動への貢献など企業活動への共感も含まれます。

顧客の安心や信頼につながるサービスを提供することが大切です。

Think:創造的・認知的価値

創造的・認知的価値は、顧客の知的欲求に訴えかけるものです。好奇心を刺激し、商品やサービスを利用した際に「おもしろい」「もっと知りたい」という感動や高揚感を与えます。

創造的・認知的価値を高めるには、企業側の十分な情報開示が必要です。未体験の技術に触れることで顧客は自尊心を刺激され、企業への興味・関心を高めます。

Act:肉体的経験価値

肉体的経験価値とは、肉体や生活に関わる価値です。美容体験によって肉体に変化があったり、サービス利用で仕事の効率化が図れたりと、ライフスタイルに影響を及ぼすものを指します。

肉体的経験価値が高ければ、顧客は商品やサービスを日常の一部として認知し、生活に欠かせないものとしてリピート購入するようになります。

Relate:社会的価値

社会的価値は、特定の集団や文化、思想への帰属欲求を刺激します。顧客が属したい集団や文化と結びつけた商品・サービスの提供から生まれる体験です。

スポーツチームの応援にグッズを買う、芸能人の広告塔を見てファンが真似をするなど、応援・貢献したい気持ちが生まれます。社会的価値の向上により、競合他社への乗り換えリスクを減らせます。

CX(カスタマーエクスペリエンス)を向上させるメリット

CXの向上は、企業の売上・ブランド価値・顧客ロイヤルティの向上につながる重要な施策です。

たとえばECサイト運営においては、顧客が企業やブランドとのあらゆる接点で良い体験をすることが、リピーター獲得や口コミ拡散に直結します。

ここでは、CXを向上させることによる具体的なメリットを解説します。

1. 顧客満足度が向上し、リピーターが増える

CXを向上させることで、顧客が「また利用したい」と思う機会が増え、リピーター獲得につながります。

また、CXの向上は、企業のブランドイメージに良い影響を与えます。感情的価値を得る体験は、購入した商品に限らずブランド全体に良い印象を与えるからです。ブランドに対する愛着が高まると、顧客のファン化が期待できます。

競合他社との比較で上位を獲得し、売上アップや新規顧客の獲得につながるためです。

2. 口コミやSNSでの拡散が増え、新規顧客を獲得しやすくなる

CXが向上すると、高評価の口コミが広がりやすくなる傾向にあります。SNSやブログにおいて、顧客自身が購入時の体験を発信しようとするからです。高評価の口コミは、顧客からの信頼や愛着を意味します。

「サポートが手厚い」「外観がSNSに映える」といった感情的価値の共有は、類似商品を検討する新規顧客に対して高い宣伝効果をもたらすでしょう。

3. 価格競争に巻き込まれにくくなる

CXを向上させることで、価格だけでなく「体験の質」で選ばれるブランド構築が期待できます。

高級ホテル旅館が「おもてなし」や「特別な体験」を強化することで、価格競争を回避し、価格よりも付加価値で選ばれるブランドへと成長することが期待できるでしょう。

4. 従業員のモチベーションが向上し、サービスの質が向上する

CXの向上に取り組むことで、従業員が顧客に喜ばれる体験を提供する意識が高まり、結果としてサービス全体の品質向上につながるでしょう。

そのためには、従業員向けのCX向上研修を実施するのが効果的です。顧客視点での接客を強化したり、スタッフの接客対応のフィードバックを可視化し、改善サイクルを作ったりすることで、従業員のモチベーション向上が期待できます。

また、インセンティブ制度を導入し、CX向上に貢献したスタッフを評価することも効果的でしょう。

CX(カスタマーエクスペリエンス)を向上させる3つの方法

CXを向上させる方法は、3つに分けて説明できます。顧客情報の分析からペルソナを設定し、消費行動の図式化を経て、効果的な戦略につなげる流れです。

それぞれの方法について解説します。

1. 顧客情報の分析

顧客の属性(年齢・性別・職業・興味関心など)や購入に至るまでの行動を分析し、ペルソナを設定します。

ペルソナとは、典型的な顧客像です。「40代・女性・主婦」という漠然としたターゲットとは異なり、詳細に分析したリアリティのある人物像に落とし込みます。

1つのパターンにまとめることは不可能なため、さまざまなタイプのペルソナを作成します。

2. カスタマージャーニーマップの作成

カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品を選定する前から購入後に至るまでの行動経路を、時系列で図式化したものです。ペルソナの行動を理解・分析する際に利用します。

「どんな思考で商品を選んだのか」「どんなアフターサービスを求めているのか」などと、自社の接点を明確にして具体的な施策を検討できます。

関連記事:カスタマージャーニーとは?概要や作り方、メリットを紹介

3. 顧客へのアプローチ

顧客目線に徹してアプローチを展開します。ペルソナを想定し、カスタマージャーニーマップ上のどの時点でどんな施策を講じれば良いか、具体的な方策を検討します。

たとえば、購入後のサポートを充実させたい場合は、次のような施策が考えられます。

  1. インターネットのQ&Aを増やす
  2. 電話相談窓口を設置する
  3. 取扱説明書の記載を見直す

ペルソナが60代でパソコン操作が苦手だとすると、最適な方策は2か3です。顧客ニーズとのズレを発生させないアプローチが求められます。

CX(カスタマーエクスペリエンス)の向上は企業の成長に不可欠

インターネットの普及と市場の成熟により、商品やサービスの物質的価値のみで差別化を図ることは難しくなりました。

CXの考え方においては、購入前から購入後に至るまで、顧客のニーズを満たす体験を提供し続ける必要があります。たとえば飲食店の場合、顧客と店舗をつなぐためにポイントカードを導入したり、個別にメニューをカスタムしたりといったこともCXを向上させる施策の一例です。

ただし、こうした施策はただ行えばいいというものではなく、前述した手順を踏んで進めていく必要があります。

まずはCXの基本的な概念を理解し、自社の顧客に対して良質なCXを提供するための第一歩を踏み出しましょう。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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