【連載:マーケティング用語・施策の基礎解説】 |
シェアードメディア(Shared Media)とは、企業や商品・サービスに関する情報が、消費者の手によってSNSなどのソーシャルメディア上で投稿・共有されたコンテンツを指します。
これは、企業が直接コントロールする「オウンドメディア」や、広告費用を支払う「ペイドメディア」とは異なり、ユーザーの自発的な情報発信によって形成される、「信頼性」と「拡散性」が特徴の重要なマーケティングチャネルです。
本記事では、このシェアードメディアの基本的な定義から、その重要性、他のメディアとの違い、そして具体的なメリット・デメリット、効果的な活用方法までを分かりやすく解説します。
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シェアードメディア(Shared Media)とは
シェアードメディア(Shared Media)とは、企業や商品、サービスに関する情報が、消費者や一般ユーザーの自発的な投稿・共有によってソーシャルメディア(SNS、ブログ、口コミサイトなど)上に拡散されるコンテンツを指します。
「Shared(共有する)」という言葉が示す通り、企業が直接コントロールする情報ではなく、ユーザー間のコミュニケーションを通じて広がる情報である点が最大の特徴です。
このメディアが特に重要視される理由は、その「信頼性」と「拡散性」にあります。企業が発信する情報よりも、友人や知人、あるいは見知らぬ第三者の「生の声」は、消費者にとって高い信頼性を持ちます。
また、SNSのシェア機能などにより、良質な情報は予想以上の速さで広がり、低コストで認知度向上や集客に貢献する可能性があります。
シェアードメディアのPESOモデルにおける位置づけ
従来、マーケティングメディアは企業が「お金を払う」ペイドメディア、「自社で所有する」オウンドメディア、「信頼を獲得する」アーンドメディアの3つを総称して「トリプルメディア」と呼ばれていました。
しかし、SNSの普及に伴う消費者行動の変化により、このトリプルメディアに「共有される」シェアードメディアが加わり、4つのメディアを統合的に活用する**「PESOモデル(Paid Media, Earned Media, Shared Media, Owned Media)」が提唱されるようになりました。
PESOモデルにおいて、シェアードメディアは、アーンドメディアと密接に関連しながらも、特に「SNS上でのユーザー発信」という点を特化して捉えることで、その独自の影響力を強調しています。
企業が発信する情報が、いかに消費者の共感を呼び、自発的に共有されるかが、現代のマーケティング成功の鍵を握っていると言えるでしょう。
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シェアードメディアと他のメディア(アーンド・オウンド・ペイド)の違い
シェアードメディアを深く理解するためには、他の主要なマーケティングメディアとの違いを明確に把握することが重要です。
シェアードメディアとアーンドメディアの違い
アーンドメディア(Earned Media)は、「Earned(獲得する)」という言葉が示す通り、企業が自ら発信するのではなく、報道機関やインフルエンサー、一般消費者などが「第三者の目線」で情報発信を行い、信用や評価を獲得するメディアを指します。
具体的には、メディアに取り上げられるPR活動や、専門家によるレビューなどがこれに該当します。シェアードメディアは、元々このアーンドメディアの一部として扱われていましたが、SNSの普及と利用者の増加に伴い、特にSNS上でのユーザーの自発的な「共有」という側面に焦点を当て、独立した概念として区別されるようになりました。
つまり、アーンドメディアが「信頼の獲得」という広範な概念を指すのに対し、シェアードメディアは「SNSでの情報共有・口コミ」という、より具体的な情報拡散の経路に特化していると理解できます。

シェアードメディアとオウンドメディアの違い
オウンドメディア(Owned Media)は、「Owned(所有する)」という意味を持ち、企業が自社で運営・管理するメディア全般を指します。
企業ウェブサイト、公式ブログ、自社SNSアカウントなどがこれに該当し、企業自身が情報発信をコントロールできる点が大きな特徴です。一方、シェアードメディアは、情報の「発信元が消費者」であるという点で、企業主体のオウンドメディアとは明確に異なります。
シェアードメディアとペイドメディアの違い
ペイドメディア(Paid Media)は、「Paid(お金を払う)」という意味の通り、企業が費用を支払って情報を掲載するメディアです。Web広告、SNS広告、テレビCM、新聞広告などが典型的な例です。
ペイドメディアもオウンドメディアと同様、企業が情報発信の内容や掲載場所をコントロールできる点が特徴ですが、シェアードメディアとは異なり、情報拡散のために直接的なコストが発生します。
関連記事:ペイドメディアとは?広告の種類、効果的な活用方法について解説
シェアードメディアのメリット
シェアードメディアにはほかのメディアとの違う特徴を持っており、活用することであらゆるメリットがあります。そこで本記事では、費用、ユーザーの反応、集客の3つの側面からシェアードメディアを活用するメリットについて解説します。
1. 低コストで拡散が可能
ひとつ目のメリットは低コストでの情報拡散が可能である点です。
SNSの利用自体に費用はかからず、広告会社に依頼して費用を支払って情報を掲載するペイドメディアとは異なり、原則として大きなコストを必要としません。
そのため、中小企業や広告費に多くの予算を割けない場合でも、手軽に情報拡散に取り組むことが可能であり、非常にコストパフォーマンスに優れたマーケティング手法と言えます。
2. ユーザーの反応がわかる
ふたつ目のメリットは、ユーザーのリアルな反応を直接把握できる点です。
SNSでは「いいね」やコメント、シェア数といった機能が充実しており、発信された情報に対するユーザーの反応をリアルタイムで確認できます。X(旧Twitter)やFacebookのようなプラットフォームでは、コメント付きのシェアも可能なため、情報に対するユーザーの具体的な意見や感想を詳細に把握できる利点もあります。
これらの反応は、情報発信の内容を改善したり、商品やサービス自体をユーザーのニーズに合わせて改良したりするための貴重なフィードバックとして活用できます。
3. 消費者のリアルな口コミで集客増加が狙える
消費者のリアルな口コミによる集客増加が狙える点もメリットといえます。
シェアードメディアでは、SNSや個人のブログなど、消費者が情報発信元となり情報が拡散されます。企業が発信する情報と比較して、消費者からのリアルな口コミは商品やサービスに対する評価の信憑性が非常に高く、これが集客力や売上の向上に直結します。
さらに、ユーザー発信のポジティブな情報は、ブランドイメージの向上にも大いに貢献するでしょう。
シェアードメディアのデメリット
シェアードメディアには多くのメリットがある一方で、活用を検討する際にはそのデメリットも十分に把握しておく必要があります。
ここでは、活用における主なデメリットと、それらに対する対策について解説します。
1. 情報のコントロールが難しい
ひとつ目のデメリットは、情報のコントロールが難しい点です。
シェアードメディアでは情報の発信元が消費者であるため、企業側が発信される情報の内容やトーンを直接コントロールすることはできません。このため、批判的な情報や誤解を招く内容が広範囲に拡散され、いわゆる「炎上」に繋がり、企業や商品、サービスのイメージが著しく損なわれる可能性があります。
こうしたリスクを回避するためには、日頃からユーザーとの丁寧なコミュニケーションを心がけ、提供する商品やサービスの質を常に向上させ、ユーザーの満足度を高めておくことが極めて重要です。
また、危機管理体制を整え、万が一の際には迅速かつ誠実な対応を取れるように準備しておくことも不可欠でしょう。
2. 拡散の予測が難しい
情報拡散の予測が難しい点もデメリットのひとつです。
シェアードメディアの魅力的な拡散力は、同時にその予測不可能性を伴います。企業が意図したコンテンツが必ずしも期待通りに拡散されるとは限らず、逆に全く予期していなかった内容が急速に広まるケースも少なくありません。
また、SNSに投稿された全てのコンテンツが拡散されるわけではなく、期待したほどの反響が得られない場合もあります。
このように、情報の広まり方を企業側がコントロールしにくい点は、戦略的なマーケティング施策を設計する上で大きな課題となり得ます。そのため、成功の鍵は、ユーザーが共有したくなるような価値あるコンテンツを継続的に提供し、ユーザーエンゲージメントを高めることにあります。
シェアードメディアで活用できる5つのメディア
シェアードメディアにはさまざまなものがあります。ここでは、日本でもユーザーが多いとされているプラットフォームの中で、Instagram、X(Twitter)、Googleマップ、YouTube、TikTokの5つについてその特徴を解説します。
1. Instagram
Instagramは、文章よりも写真や動画がメインコンテンツとして投稿されるソーシャルメディアです。
そのため、視覚的に魅力のある商品やサービスであればInstagramとの相性が非常に良く、ユーザーの目に留まりやすく、拡散されたり話題になったりしやすいといえます。
とくに若い女性ユーザー層に強く、その層を取り込みたい企業や、その層をターゲットにしている商品やサービスにとって非常に有効なメディアです。
2. X(Twitter)
X(Twitter)は、かつて140字までの文章が中心でしたが、現在は画像や動画も投稿できるソーシャルメディアとして進化しています。
Xの最大の特徴は、「リポスト(旧リツイート)」と呼ばれる情報拡散機能です。タップひとつで気軽に情報が再共有されるため、瞬時に情報が広がりやすい特性を持っています。
ユーザーは幅広い年齢層にわたっているため、性別や年齢層にターゲットを絞らない場合や、広範な年齢層をターゲットとした商品やサービスを拡散したい際に活用できるでしょう。
3. Googleマップ
Googleマップは国内外で地図アプリとして圧倒的なシェアを獲得しており、非常に多くの人々がお店探しに利用し、同時に多くの口コミが日々投稿されています。
Googleマップのシェアードメディアとしての特徴は、口コミだけでなく、写真や店舗情報そのものをユーザーが編集・追加できる点にあります。
そのため、この施設・店舗情報を「オーナーや管理者が優先的に加筆編集できるサービス」であるGoogleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)を適切に活用し、口コミの管理や返信を積極的に行うことが、集客や情報整備において極めて重要となります。
関連記事:Googleビジネスプロフィールとは?インバウンド客を集客する方法やメリット、注意点など
4. YouTube
YouTubeは、動画をメインとしたソーシャルメディアであり、製品やサービスを視覚的に、かつ具体的に紹介できるため、使い心地や機能性、使用感などが非常に伝わりやすいというメリットがあります。
動画中に広告を入れることも可能で、YouTubeが定めた基準をクリアしたYouTuberのみが、登録者数の多い自身の動画に広告を貼り付け可能です。この特性から、YouTubeは純粋なシェアードメディアとしての側面だけでなく、企業が広告費を投じる「ペイドメディア」の要素も大きく持ち合わせているのが特徴です。
5. TikTok
TikTokは15秒から最長3分ほどの短い動画が中心のプラットフォームで、特に若年層を中心に爆発的な広がりを見せています。今や世界150か国以上で利用され、月間アクティブユーザー数は15億人ともいわれています。
音楽に合わせて短い動画を撮影・加工し、ハッシュタグなどを付けて共有する形式が主流で、扱われる情報は多岐にわたります。流行の音楽や新商品のレビュー、新サービスの体験動画など、話題のコンテンツがいち早く発信されるのが特徴です。
TikTokに出演しているユーザーの使用している製品が爆発的に売れるといった現象も頻繁に起こっており、特に若者向けの認知度拡大には非常に効果的です。
フォロワーが多くなくても「バズる」可能性が高いため、企業だけでなく、個人が発信する手段としても有効なプラットフォームです。
シェアードメディアの活用で商品拡散とともに信頼を獲得
シェアードメディアは、消費者によるSNSでの情報共有を通じて、商品やサービスの認知度と信頼性を高める現代の重要なマーケティングチャネルです。
近年、SNSユーザーの増加に伴い、リアルな口コミや情報が購買行動に大きな影響を与えるようになりました。企業が直接発信する情報とは異なり、第三者の視点からの評価は高い信憑性を持つため、集客力や購買意欲の向上に直結します。加えて、広告費用をかけずに情報が拡散されるため、コストパフォーマンスにも優れています。
効果的なシェアードメディア戦略のためには、ターゲット層が利用するプラットフォームを見極め、ユーザーが共有したくなるような質の高いコンテンツを提供し、良好な関係を築くことが不可欠です。
シェアードメディアは、ブランドの信頼を醸成し、長期的な顧客ロイヤルティを築く強力な手段となるでしょう。
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