【連載:マーケティング用語・施策の基礎解説】 |
近年、クレジットカード決済の導入が加速しています。背景には、政府のキャッシュレス推進政策に加え、消費者の非接触型決済へのニーズが多様化していることがあります。
特にコロナ禍以降、衛生面への配慮からキャッシュレス決済の需要が増加し、飲食店でも対応が求められるようになりました。
また、訪日外国人観光客の増加に伴い、国際的な決済手段への対応も重要となっています。
本記事では、クレジットカード決済の動向や、業種ごとの手数料相場、導入のメリット・デメリットについて詳しく解説します。
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クレジットカード決済の動向
経済産業省が2023年に公表した「消費者実態調査の分析結果」によれば、日常生活において「7〜8割以上キャッシュレス決済を利用している」と答えた人は全体の54%に上りました。
さらに、月々の支出におけるキャッシュレス決済の利用割合は47%に達しており、これに口座振込や口座振替を含めると、全体の67%をキャッシュレスが占めるというデータも発表されています。
中でも、百貨店や家電量販店、ホテル・航空券の支払いではクレジットカード利用率が50%を超えています。一方、コンビニエンスストアではコード決済が主流であり、電車賃の支払いには電子マネーの利用が中心となっていました。
業種ごとに決済手段の傾向には違いはありますが、クレジットカード決済が消費者の生活に広く根付いている実態が明らかになっています。
<参照>
経済産業省:消費者実態調査の分析結果
クレジットカード決済増加の背景
クレジットカード決済が急速に普及している背景には、いくつかの要因があります。
まず、スマートフォンの普及により、日常的にキャッシュレス決済を利用する消費者が増加したことが考えられます。
さらに、政府が実施したキャッシュレス・ポイント還元事業(2019年〜2020年)をはじめとする各種施策により、中小店舗でもクレジットカード対応が進んだことが挙げられます。
コロナ禍を経て非接触型決済へのニーズが高まったことも、クレジットカード決済利用率を押し上げた要因です。店舗側にとっては、クレジットカード決済手数料を考慮しながらも、キャッシュレス対応の重要性が一層高まっています。
主なクレジットカード
世界的に主要なカードは、下記の6種類です。- Visa
- Mastercard
- JCB
- American Express
- Diners Club
- 中国銀聯(ユニオンペイ)
クレジットカードにVisaやMastercardといった国際ブランドのマークが入っていれば、どこの銀行口座と紐づいているかに関係なく、世界各国のVisaやMastercardが使える店舗で利用することが可能です。
クレジットカード加盟店手数料の相場について
クレジットカード決済を導入する際には、費用負担が必要です。そのうちの1つとして、加盟店が支払う手数料が挙げられます。
以下では、加盟店手数料についての概要や加盟店手数料の相場について解説します。
クレジットカード加盟店手数料とは?
「クレジットカード加盟店手数料」とは、店舗からクレジットカード会社へ支払われる手数料を指します。
消費者がクレジットカードを店舗で利用する場合、消費者はまずクレジットカード会社へ代金を支払うことになります。
その後、消費者が支払った額から「クレジットカード加盟店手数料」を差し引いた残りの額を、クレジットカード会社が店舗へ支払うことにより、消費者から店舗への代金支払い、及び店舗からクレジットカード会社への手数料支払いが完了となります。
加盟店手数料相場は?
加盟店手数料は、取り扱っている商品やサービスにより未回収リスクや決済数が異なるため、業種ごとに異なります。
加盟するカード会社や業種によっても異なりますが、カード会社のホームページでは各業種の手数料を公開していないため、実際と異なる可能性があります。主要業種での一度の決済額に対する加盟店手数料率は以下の通りです。
加盟店の業種 | 加盟店手数料率 |
コンビニ | 1~1.5%程度 |
家電量販店 | 1~1.5%程度 |
デパートや百貨店 | 2~3%程度 |
2.5~4%程度 |
|
一般小売店や専門店 | 3~5%程度 |
飲食店 | 4~7%程度 |
クラブやバー、居酒屋 | 4~7%程度 |
ECサイト | 5~7%程度 |
サービス業 | 7~10%程度 |
加盟店手数料は、売上回収リスクの高さと比例する傾向にあります。
手数料以外に負担が発生するもの
クレジットカード決済を導入する際には、加盟店が負担する手数料以外にも、以下の費用が発生する場合があります。
・初期費用
決済端末の購入費用やシステム導入にかかる費用です。端末の種類や機能によって異なりますが、数万円から数十万円程度が一般的です。
クラウド型POSレジと連携するタブレット決済端末などは比較的初期費用を抑えられる傾向にあります。
・月額費用
システム利用料、サービス利用料、端末のレンタル費用、保守費用などとして毎月発生する費用です。
数千円から数万円程度が目安ですが、無料プランを提供する事業者もあります。
・端末費用
決済端末そのものの購入またはレンタルにかかる費用です。据え置き型、モバイル型、QRコード決済対応型などがあり、機能や種類によって大きく価格が異なります。
・振込手数料
決済された売上金が店舗の口座に入金される際に発生する手数料です。意外と見落としがちですが、入金の都度発生するため、積み重なると大きな負担となることがあります。
月間の振込回数や、振込金額に応じて無料になるサービスもあるため、事前に確認が必要です。
導入前には、これらの費用を十分に検討し、自店舗の収益構造に合った決済手段を選択することが重要です。複数の決済代行業者から見積もりを取り、自社の取引量や客層に最適な手数料率・費用体系を選ぶことが、コストを抑える鍵となります。
クレジットカード加盟店手数料の決定要因
クレジットカード決済手数料は、上記の業種による相場のほか、店舗の年間売上規模、導入する決済端末の種類、契約する国際ブランドの数、そして契約する決済代行業者によっても変動します。売上が大きい店舗ほど、手数料率を優遇される傾向にあります。
また、必ずしも全てのケースで可能とは限りませんが、複数の決済サービスをまとめて導入する際や、継続的な売上を見込める場合は、決済代行業者に対して手数料交渉の余地が生まれることもあります。
正確な手数料率を知るには、各カード会社や決済代行業者に直接問い合わせ、見積もりを取るのが最も確実な方法です。
関連記事:クレカ手数料の引き下げ相次ぐ、インバウンド増加などを背景に
クレジットカード決済導入のメリット
クレジットカード決済の導入は、手数料の負担はありますが、店舗運営に多くの利点をもたらします。以下に、主なメリットを詳しく解説します。
1. 顧客の利便性向上と集客力の強化につながる
クレジットカード決済を導入することで、現金を持ち歩かない顧客やポイント還元を重視する消費者に対応でき、来店のハードルを下げる効果が期待できます。
特に、訪日外国人観光客にとっては、普段使い慣れた決済手段を利用できることが重要視されます。
結果として、幅広い客層を取り込むことができ、集客力の向上につながります。クレジットカード決済手数料の負担はあるものの、顧客満足度を高める大きな要素となるでしょう。
2. 客単価の向上と売上増加が期待できる
現金に頼らず支払えるクレジットカード決済は、手持ち金額を気にせずに商品やサービスを購入できます。
そのため、高単価商品の購入が促され、客単価の引き上げが期待できます。特に飲食店や小売業では、現金決済のみの場合に比べ、カード決済対応後に売上が増加したという事例も少なくありません。
手数料の負担を考慮しても、この売上増加がそれを上回るケースも多く、投資対効果が見込めます。
また、クレジットカード利用者の購買情報を分析することで、マーケティングやターゲット層向けの商品・サービスの開発が可能になり、売上増加を見込めるでしょう。
3. 業務効率を改善できる
クレジットカード決済を導入することで、現金の受け渡しや釣銭ミスといったリスクが減り、レジ業務の負担が大幅に軽減されます。レジ締めにかかる作業時間の短縮も見込めます。
また、売上情報が自動的にデータ化されるため、帳簿記帳や売上管理もスムーズに行えるようになります。特にピークタイムにおけるレジ待ち時間の短縮にもつながり、スタッフの業務効率向上に役立つでしょう。
4. 代金未回収リスクを軽減できる
クレジットカード決済では、カード会社が立替払いを行うため、店舗側が売上代金を確実に受け取れるという大きなメリットがあります。
特に、後払い取引にありがちな未回収トラブルを防ぐことができ、資金繰りの安定にもつながります。
高額商品の取り扱いが多い業態や、ECサイトなどの通信販売においては、売上金の確実な回収が経営上のリスク低減につながるでしょう。
クレジットカード決済導入のデメリット
クレジットカード決済の導入は、消費者・店舗両者にメリットがある一方で、デメリットや導入の注意点も存在します。以下で詳しく解説していきます。
1. 初期費用や決済手数料の負担が発生する
クレジットカード決済を導入する際には、さまざまなコストが発生します。まず、決済端末の購入やレンタルにかかる初期費用が必要です。端末の種類や機能によって価格は異なりますが、数万円程度の費用がかかることが一般的です。
さらに、月額のシステム利用料や、決済ごとに発生する決済手数料も店舗側が負担する必要があります。
これらの手数料は、売上金額の数パーセントに設定されており、業種や取引規模によって異なります。特に、売上が低い時期や、客単価が低い商品が多い店舗では、決済手数料の割合が収益を圧迫する要因となる可能性があります。
導入前には、これらの費用を十分に検討し、自店舗の収益構造に合った決済手段を選択することが重要です。
複数の決済代行業者から見積もりを取り、自社の取引量や客層に最適な手数料率・費用体系を選ぶことが、コストを抑える鍵となります。
2. 入金までにタイムラグがある
クレジットカード決済では、売上金が即座に店舗の口座に入金されるわけではありません。一般的に、決済代行会社やカード会社の締め日から入金日までに一定の期間が設けられており、数日から数週間のタイムラグが生じます。
この期間中、店舗は仕入れや人件費などの支払いを現金で行う必要があるため、資金繰りに影響を及ぼす恐れがあります。
特に、キャッシュフローがタイトな中小規模の店舗では、このタイムラグが経営の安定性を損なう要因となり得ます。入金サイクルの短縮や早期入金サービスを提供する決済代行会社を選ぶことで、こうしたリスクを軽減することができます。
3. セキュリティ対策が求められる
店舗側に過失があった場合、クレジットカード情報が漏洩したり、不正利用されるリスクが一定程度存在します。
顧客に安心して利用してもらうためには、店舗側が高い安全性を確保し、信頼を築くことが重要です。
そのためには、セキュリティ基準の高いカード会社や決済代行業者を選定するなど、万全な対策を講じることが求められます。
4. 手数料上乗せは規約違反になる
クレジットカード加盟店手数料は、カード会社と加盟店との間で発生しているものであり、顧客に手数料分を上乗せすることは加盟店規約で禁止されています。
クレジットカードの導入時には注意が必要です。
実際に導入する場合の手続きの流れ
クレジットカード決済の導入には、カード会社と直接契約する場合と、決済代行業者を仲介する場合の2通りがあります。
カード会社と直接契約する場合
カード会社と直接契約する場合は、店舗が仲介業者を介さずに契約を行います。間に入る業者がいないため、決済手数料は抑えられるものの、この手法をとれる企業は売上額が大きい大手企業に限られます。
決済代行業者を仲介する場合
決済代行業者を仲介する場合は、決済代行業者が代理交渉を行い、管理システムを提供します。複数のカードブランドとの契約交渉、売上代金の決済管理・入金処理などの運用をすることができます。大手企業に限らず導入できますが、決済代行業者に支払う決済手数料がかかります。
両者を比較すると、売上額がそこまで大きくない企業の場合は、決済手数料はかかりますが業務効率化を図れる決済代行業者を利用する方法、売上額の大きい大手企業の場合は上記に加え、直接契約のいずれかの方法を取ることが望ましいといえます。
よくある質問(FAQ)
最後に、クレジットカードの手数料に関するよくある質問を紹介します。
Q1. クレジットカード決済手数料は交渉できますか?
A1. 一部のケースでは、売上規模や導入サービスによっては交渉の余地がある場合もあります。複数の決済代行業者に見積もりを依頼し、比較検討することをおすすめします。
Q2. クレジットカード決済導入の費用対効果はどのくらいですか?
A2. 初期費用や手数料はかかりますが、顧客の利便性向上による集客力アップ、客単価の増加、業務効率化、未回収リスク軽減などのメリットを総合的に考慮すると、売上増加につながり、費用対効果は高くなる傾向にあります。
Q3. 手数料を顧客に上乗せしても良いですか?
A3. クレジットカード加盟店規約により、手数料を顧客に上乗せすることは禁止されています。
顧客の傾向や、各会社の契約内容を踏まえて導入の検討が必要
2019年10月より政府が実施している「キャッシュレス・消費者還元事業」の影響もあり、近年クレジットカードによる決済は増加傾向にあります。クレジットカード決済は店舗のレジ締めなどの事務作業時間を短縮させるほか、マーケティングデータとして購買情報を有効活用することもできます。
また、不特定多数が手にした現金を触ることもないので、店舗の従業員・顧客両者にとってコロナウイルス感染予防にもなります。これらの理由から、クレジットカードは今後より一層利用者が増える可能性が高いといえます。
店舗がクレジットカード決済を導入する場合には2種類の契約方法が存在し、事業規模に合わせて適切な契約方法を選択する必要があります。また、顧客に対する加盟店手数料の上乗せは禁止されています。
店舗は、顧客単価や導入時の注意事項をふまえてクレジットカード導入を検討し、場合によってはPayPayなどのキャッシュレス決済の導入も検討していくことが必要です。
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