【連載:マーケティング用語・施策の基礎解説】 |
アンケート調査とは、企業や団体が、商品・サービスに対する顧客の意見、市場のニーズ、消費者の行動や意識の傾向などを把握するために、様々な質問を通して情報を収集する方法の1つです。
特にマーケティングにおいては、顧客の「リアルな声」や「潜在的なニーズ」を可視化し、的確な意思決定を行う上で不可欠な存在となっています。
効果的なアンケート調査は、顧客満足度の向上、新商品開発のヒント、サービス改善の方向性、そして競合他社との差別化など、多岐にわたるビジネス課題の解決に貢献します。
たとえば、飲食店や小売業では、商品やサービスに対する顧客満足度を測ったり、新商品を開発する際のニーズを探ったりする際に大いに役立ちます。
本記事では、アンケート調査を行う手順や調査の種類、実施する際の注意点について解説します。特に、初心者が調査前に最低限やっておくべきことをわかりやすく解説していきます。
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アンケート調査とは
アンケート調査とは、ターゲットとなる顧客や消費者の行動、思考傾向、ニーズ、満足度などを把握するために、体系的に質問を投げかけ情報を収集する調査手法です。単に漠然とした意見を集めるだけでなく、統計的なデータとして分析することで、客観性や信頼性の高い情報を得られる点が大きな特徴です。
商品やサービスに対する顧客の満足度調査、新商品の開発に向けた潜在ニーズの探索、ブランドイメージの把握、あるいは消費者の生活状況や購買行動の分析など、その活用範囲は非常に多岐にわたります。
アンケート調査で得られるメリット・デメリット
アンケート調査の実施を検討する上で、その利点と留意点を理解することは非常に重要です。
アンケート調査がどのような場面で強力なツールとなるのか、また、どのような点に注意して活用すべきなのかを把握することで、より効果的な調査設計に繋がります。
メリット1. 広範な情報収集と定量的なデータ活用
アンケート調査の最大のメリットの一つは、一度に多くの対象者から効率的に情報を集められる点です。
例えば、インターネット調査を活用すれば、地理的な制約なく、短期間で数千人、数万人といった大規模なサンプルから意見を収集することが可能です。これにより、市場全体の傾向や多様な層の意見を網羅的に把握し、より客観性の高いデータを得ることができます。
さらに、アンケートは「はい/いいえ」や「5段階評価」といった数値で集計できる質問形式を多く用いるため、定量的なデータとして分析しやすい特性があります。
これにより、統計的な根拠に基づいた意思決定が可能となり、例えば「顧客のX%が新商品を良いと評価している」といった具体的な数値をビジネス戦略に活かすことができます。匿名性が確保されることで、回答者が本音を伝えやすいという側面も、質の高い情報収集に繋がります。
メリット2. コスト効率と体系的な分析のしやすさ
特にWebアンケートは、調査費用や時間を比較的抑えて実施できる大きなメリットがあります。会場の準備や調査員の派遣が必要な対面調査と比べ、システム利用料や謝礼のみで実施できるため、予算が限られている場合でも導入しやすいでしょう。
さらに、質問項目が統一されているため、回答の集計や分析を効率的に行えるのも利点です。データの傾向を素早く把握し、グラフ化することで、社内での情報共有や意思決定のスピードアップに貢献します。
デメリット1. 回答の深掘りや本音の把握に限界がある場合も
アンケート調査で最も留意すべきは、回答が表層的になりやすく、個々の回答の背景にある真の動機や深層心理を詳細に探ることが難しい点です。
事前に設定された質問に回答する形式のため、想定外の意見や、なぜそう思うのかといった「Why(なぜ)」の部分を深掘りするには限界があります。本音を引き出すためには、質問の設計に工夫が必要で、時にはインタビュー調査などの定性調査を併用することも検討すべきでしょう。
デメリット2. 質問設計の難しさと回収率の課題
アンケート調査の成否は、質問の設計に大きく左右されます。曖昧な表現や専門用語の使用、あるいは回答を特定の方向に誘導するような質問は、誤解を生み、不正確なデータに繋がる可能性があります。
誰にでも理解できる簡潔で公平な質問を作成するには、専門的な知識や経験が求められます。
また、長すぎるアンケートや回答者の負担が大きい内容は、途中で離脱者を増やし、十分な回答数が得られない(回収率が低い)という課題も生じます。質の高いデータを獲得するためには、回答者の目線に立ち、質問数や設問順序、謝礼の有無などを慎重に検討することが重要です。
2種類のアンケート調査
アンケート調査には次の2種類があります。- 定性調査
- 定量調査
それぞれの特徴やおすすめの活用シーンを解説します。
定性調査
定性調査は、対象者一人ひとりに対して質の高い回答を得たいときに活用する調査方法です。アンケート調査だけでなくインタビュー調査や行動観察調査も定性調査の1つです。多数の回答を分析し大衆意見を見る調査とは異なり、1つの回答の密度をあげられるため、新たな発見が得られることもあります。数値では表現できない、顧客個人の価値観や評価を知りたい場合は、定性的な調査を行うのが良いでしょう。
関連記事:定性調査とは?定量調査との違いや特徴、5つの調査方法を徹底解説
定量調査
定量調査とは、調査結果を数値や割合で集計し分析する調査です。多数の回答を得られるため、根拠のあるデータとして活用できます。ただし、定量調査は事前に設定されている質問のみに回答するため、臨時的に新たな質問を追加するのが難しい点に注意が必要です。全体的な大枠を掴みたいときに活用すると、調査が有効なものになります。関連記事:「定量調査」とは?「定性調査」との違いや8つの調査方法を紹介
アンケート調査の5つの手順
アンケート調査は次の5つの手順で進めます。- 調査目的を明確化
- 調査方法を決定
- 調査票の作成
- データ集計・分析
- データ活用
各項目のポイントを踏まえながらそれぞれ解説します。
1. 調査目的を明確化
アンケート調査を始める上で、最も重要なのが「調査目的の明確化」です。「何のためにアンケートを行うのか」「この調査でどのような課題を解決したいのか」「最終的に何を得たいのか」を具体的に言語化することで、調査の方向性が定まります。
目的が曖昧なまま調査を進めると、質問内容がブレたり、必要なデータが収集できなかったり、あるいは集計したデータが有効活用できないといった事態に陥りかねません。
調査の全体像を事前にイメージし、現状理解、課題抽出、必要データの把握、そしてデータ活用方法までを見据えることで、費用対効果の高い効果的な調査を実現できます。
2. 調査方法の決定
アンケート調査をどの媒体で実施するか決定します。オンライン上で完結するものや会場調査など多くの種類があるため、予算やメリット・デメリットをもとに決めると良いでしょう。3. 調査票の作成
調査票を作成する際はMECEを意識します。MECEとは「もれなくダブりなく」という意味で使用されています。アンケート調査に当てはめると、論理的かつシンプルに質問項目を切り分けると解釈できます。MECEと言えない質問項目では、データの集計時も非効率になり、良い調査とは言えません。またアンケート調査では、なるべく数値や割合がわかる「定量調査」を意識します。数値的データが出ない定性調査を行う際は、意図を明確にしておくと良いでしょう。
4. データ集計・分析
アンケート実施後は、データを集計し分析します。回答漏れや記入ミスなどのチェックを行い、有効な回答だけを抽出します。その後、集計したデータをグラフや集計表に落とし込みます。その際、データ結果をどのように解釈するかも重要なポイントです。5. データ活用
集計が終了したら、そのデータを効果的に活用することが重要です。営業資料のデータやマーケティングに活かすなど、始めに設定した目的にあわせて柔軟に使用方法を決定します。アンケート調査の種類
アンケート調査には様々な手法があり、それぞれに特性があります。目的や予算、ターゲット層に合わせて最適な方法を選ぶことが、調査成功の鍵となります。
ここでは、代表的な8つのアンケート調査方法と、その選び方のポイントを紹介します。
- インターネット調査
- 会場調査
- 電話調査
- 郵送調査
- ホームユーステスト
- 訪問調査
- ミステリーショッパー(覆面調査)
- 街頭調査
メリット・デメリットを知った上で、最適な調査方法を選びましょう。
インターネット調査
インターネット調査はネット上でアンケートを実施する方法で、Web上にアンケートを作成します。もっとも手軽に実施できる調査で、コストを抑えられることも特徴です。実施費用が比較的安いので、大人数の対象者に実施できるというメリットがあります。一方で、回答者の顔が見えないため、どんな人が回答しているのかわからず信頼性に欠けるというデメリットもあります。また高齢者などオンラインツールの使用頻度が低い方をターゲットにしたい場合は、十分なデータを得られない可能性もあります。
会場調査
会場調査とは、対象者を会場に集めて調査を行います。グループでディスカッションやインタビューを行えるので、気になる質問を深掘りできるメリットがあります。会場の予約費や謝礼費、回答者の交通費など、他の調査方法に比べると費用がかかるため、会場で実施する必要があるのかよく検討します。電話調査
電話調査とは、調査員が対象者に直接電話をして調査を行う方法です。電話調査は、調査に時間や人員を割く必要があるため、費用対効果の面で課題があります。ただし、電話調査は外注もできるため、予算にあわせて効率よく調査を行えます。電話調査もその場で深掘りができるので、より質の高い回答を得られる可能性が高いです。コミュニケーションを取りながら情報収集を行うので、回答の本質を見抜く力やヒアリング力が必要になります。郵送調査
郵送調査は、アンケートを直接回答者の自宅に送付する方法です。郵便物さえ作成してしまえば、発送作業には時間がかかりません。しかし、資料や郵便物は徐々にオンライン化され馴染みが薄いものになってきているので、回答率は低いことが予想されます。高齢者や主婦層など、郵便物のチェック頻度が高いターゲットには適した調査方法と言えます。ホームユーステスト
ホームユーステストとは、商品のサンプルやテスト品を実際に使用してもらい、その感想や意見を調査する方法です。利用者に回答してもらうことで、信頼性があり、改善案にもダイレクトに影響する有効な意見を獲得できます。サンプル品の送付に費用がかかることや、調査結果が出るまでに時間がかかることを事前に留意した上で計画を練ることが大切です。訪問調査
訪問調査とは、調査員が対象者の自宅や勤務先に出向き、対面でアンケートを実施する方法です。回答者の理解度に応じて質問を進められるため、複雑な内容や細かな情報を正確に収集できる点が大きな強みです。
また、言葉以外の反応や生活環境を観察できることも、深い分析に役立ちます。ただし、調査員の派遣に費用や時間がかかる点や大規模な調査には向かない点はデメリットと言えるでしょう。
ミステリーショッパー(覆面調査)
ミステリーショッパーとは、調査員が一般客になりすまして店舗や施設を訪れ、サービスの質や接客態度、店内の清潔さなどを評価する調査方法です。
実際に顧客として体験することで、現場の状況を客観的に把握できる点が特徴です。たとえば飲食店では、料理の提供スピードやスタッフの応対、店内の雰囲気などが評価項目となります。
現場の「リアルな姿」を確認できるのがメリットですが、一方で調査員の感じ方に左右されるリスクや、調査できる範囲に限りがある点には注意が必要です。
関連記事:ミステリーショッパー(覆面調査)とは?店舗が実施するメリットや調査の流れを紹介
街頭調査
街頭調査は、調査員が駅前や繁華街などの公共スペースで通行人に直接声をかけ、アンケートの回答を依頼する方法です。
この方法は、特定エリアや特定時間帯における一般消費者の意見やリアルな反応を素早く集めるのに適しています。たとえば、新製品の認知度を把握したり、イベント参加者の感想を集めたりする際に活用されます。
短時間で多くのデータが集められる点がメリットですが、通行人の協力を得る難しさや、天候・時間帯による影響を受けやすい点には注意が必要です。
アンケート調査時の注意点
アンケート調査を効果的に実施するためには、いくつかの注意点があります。ここでは、調査の信頼性を高めるためのポイントを解説します。
事前に十分リサーチを行う
アンケートの目的を決めたら、ターゲットや市場全体、競合について、十分にリサーチを行いましょう。最近では、行政や企業サイトで統計データが公開されているので、ネットリサーチでも十分な情報が得られます。
リサーチを行うことで、市場の全体像がつかめるため、質の高い質問項目を設定できます。
わかりやすい設問を設計する
質問を作成する際は、専門用語やあいまいな表現を避け、誰でも理解できるよう簡潔にまとめることが大切です。複雑な文章や長すぎる質問は、回答者を混乱させ、正確な回答が得られないリスクを高めてしまいます。
また、最初に答えやすいシンプルな質問を配置することで、回答者の心理的な負担を減らし、離脱を防ぐ効果が期待できます。さらに、回答を特定の方向に誘導するような質問や、選択肢に偏りがある設問は避けましょう。
回答者の目線で調査を実施する
アンケート調査では、「回答者の目線で調査を実施しているか」という点に注意が必要です。回答者の負担を考えれば、アンケートの質問数や質問順序、また謝礼品の有無も決めやすくなるでしょう。また、調査者の都合だけ考えていると、回答者に負担がかかり悪いイメージを与えてしまう可能性もあります。個人情報の取扱いに注意する
アンケートで個人情報を取り扱う際は、個人情報保護法を遵守し、慎重な対応が求められます。具体的には、次のポイントに留意する必要があります。
- 利用目的の明示:収集する情報がどのような目的で使用されるのかを明確にし、事前に回答者へ説明することが重要です。
- 第三者提供の制限:取得した個人情報を、本人の同意なく第三者へ渡すことは原則として禁止されています。
- 問い合わせ窓口の設置:個人情報に関する質問や苦情に迅速に対応できる窓口を用意し、安心してアンケートに協力してもらえる環境を整えましょう。
これらの対策を講じることで、回答者の信頼を確保し、同時に法的トラブルのリスクも回避することができます。
アンケート調査で顧客のリアルな声を集め、店舗運営に活用しよう
アンケート調査は、多くの対象者に実施できるため非常に説得力のあるデータを獲得できます。特に飲食店や小売業では、顧客とのコミュニケーションはファン獲得のきっかけにもなるので、積極的に活用したいツールです。マーケティングでは、インターネットの情報だけでなく顧客のリアルな声を聞くことも重要です。質の高いアンケート調査を実施し、店舗運営に活かせると良いでしょう。インバウンド対策にお困りですか?
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