収集したデータを分析し、分析結果に基づいてマーケティング戦略を立案・実行する「データドリブンマーケティング」。
NTTコミュニケーションズでは、NTTドコモグループが保有しているデータや企業・自治体の所有データ、そしてSNSのデータ等を掛け合わせて分析することで、企業や自治体のマーケティング活動を支援する事業を展開しています。
今回は、NTTコミュニケーションズのマーケティングソリューションの事業説明会と、2025年3月から行われている広島県での実証実験に関するパネルディスカッションの様子をお届けします。
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NTTの「データドリブンマーケティング」取り組みの経緯
まずは、NTTコミュニケーションズの徳田 泰幸氏より、事業の概要に関する説明がありました。徳田氏は法人営業や事業戦略などを担当していた経験から、社内のデータを活かすことができないかと考え、早い段階からデータドリブンセールスやマーケティングに着手してきたといいます。
そして「最近ではさまざまな企業からデータドリブンマーケティングをやりたいとお声がけいただくことが増え、BtoB領域だけではなくBtoC領域においてもご支援したいと、今回の事業に至りました」とその後の経緯を説明。「どうすればデータをうまく活用しコード化できるかについて純粋に着手してきたという部分では、非常に特色のある会社なのではないかと思っています」と、NTTの企業文化についても語りました。
NTTコミュニケーションズのデータドリブンマーケティング事業とは
続いては、NTTコミュニケーションズの新規事業の話題に。同社では、マーケティングの戦略策定支援・顧客データの基盤構築・顧客/市場の分析・顧客接点の高度化を提供しています。まず、マーケティングの戦略策定支援では、UXのコンサルティングなど顧客の事業成長に繋がるための戦略立案、データドリブンマーケティングをどのように定着させていくのかまで支援しています。
さらに、顧客データの基盤構築や顧客・市場分析を行い、これまで立てた戦略をもとに実際に施策を実行するフェーズまで伴走します。
インバウンド文脈での活用においては、ドコモ・インサイトマーケティングの『モバイル空間統計』によって集計されたローミングデータを用い、訪日外国人の滞在時間帯やエリアなどを分析。具体的な人の動きまでを数値化し、改善点を考えられるとアピールしました。
人流データを“面”で見る ── 広島県での実証実験の成果
続いてのパネルディスカッションでは、広島県での実証実験をテーマに、徳田氏に加えて広島県観光連盟(HIT)の山邊 昌太郎氏、早稲田大学 商学学術院教授の恩藏 直人氏の3名が登壇しました。
2025年3月から、広島県観光連盟、早稲田大学、NTTコミュニケーションズ、インテージ、電通総研が協力しての実証実験が広島県で行われています。この取り組みは、観光データを収集・分析して誘客と消費促進を目指すもので、インバウンド観光客向けには動態把握を行い、訪問者の宿泊・日帰り数やSNS評価を可視化。これにより、データを活用した施策の有効性が確認され、2025年6月から国内観光客にも展開されています。
広島県での現状について問われた山邊氏は、広島県は知名度が非常に高い地域でありながら、外国人宿泊者数が全国で15位前後と比較的低いことを指摘。訪日外国人観光客のうち、およそ8割が羽田空港・成田空港・関西空港・福岡空港を利用している一方で、広島空港の利用は0.3%と低いこともあわせて言及し、広島まで足を運んでもらうための導線をどのように作るかが課題となったと述べました。
加えて恩藏氏は、広島県の実証実験を始めたばかりのときに「観光地が“点”のように散らばっていて、“面”になっていないという話が印象的でした」と述べ、「徳田さんたちの取り組みである人流データの分析あわせて、“面”にするための取り組みによって新しい発見を得られるのではないかと思いました」と振り返りました。
徳田氏は、「人流データ」はもちろんのこと、訪日外国人観光客の動きを“点”で見るだけではなく“面”で見られるこの事業は画期的だと話し、観光地が抱えている課題に対する解像度をあげられるのではないかと話しました。
続いて、観光に求められることを聞かれた山邊氏は、「経済として、産業として自立していくこと」と話し、「たくさんのスポットを周遊してもらうとそれだけ観光客の消費額も増えるので、できるだけ多くのスポットを巡ってもらうことが1つのミッションになります」と続けました。
これまでは実際にどれだけの訪日外国人観光客が広島県内を巡ったのかはアンケートでしかわからなかったところが、人流データを確認することで訪日外国人観光客の動きを細かく追えると話し、「データによって人の動きがほぼリアルタイムで分かるので、打ち出した施策によってどのような効果が生まれたかという因果関係もはっきりしました」とも述べました。
施策の成果をデータで可視化する重要性
徳田氏が日本におけるデータドリブンマーケティングの進捗度合いや成熟度について問うと、恩藏氏は「直感的に見ると、相当遅れているような気がします」「ITやAIがどのくらい利用されているかといった調査はありますが、その処理や分析については遅れていると思っています」と答えました。山邊氏も同感だといい、データの連続性を重視しすぎるがゆえに、現在の流れを見ない傾向にあると言及。「観光業界においては、人流データを汲み取れるようになっているので、集めた現在の“動き”を適切に見る風潮が浸透していけば、広島だけではなく、日本中がいろんな恩恵を授かれると思います」と話します。
徳田氏は企業のデータドリブンマーケティングを支援する際の感想について、「分析と行動した成果の相関については、目をつぶっていた企業が多いと思います」と指摘。「たとえば顧客満足度であれば、どの施策が効果的で、どの施策が効果が生まれないかを明確に理解していないと、やみくもに手を打つケースに陥ってしまいます。そうならないためにも、今の流れを見る姿勢が日本では必要になるのではないでしょうか」と問題提起しました。
プロモーションだけではなく「社会的価値の向上」を目指す
山邊氏が、これまでの観光業界ではプロモーションが効果的だと言われていたものの、細かく分析をすると別の理由があるのではないかと話すと、恩藏氏は、インバウンドについては国が旗振りをしたことによって順調に伸びてきたと返し、プロモーションに限った話ではないと述べました。続けて、「ただ同時に、国の旗振りの結果、東京・京都・大阪の拠点に人が集中することになり、特定のエリアのオーバーツーリズムに関する問題も出てきましたよね。そうして、今は地方にも訪れてもらう次の“手”が必要になりました」と現状の課題を指摘しました。
そして、今後はただプロモーションを起こすのではなく、社会的な価値を上げていかなければならないとし、データドリブンマーケティングはそのきっかけとなる非常に重要な取り組みになるのではないかと述べました。
最後に山邊氏は「現実を正しく把握せずにいろんな施策を打つのは、地図を持たずにドライブをするようなものです。我々が行っている広島県の実験は全国の参考になるのではないかと思っています。特にインバウンドというと、周遊をするお客様がほとんどで1箇所に留まる方は少ない。この取り組みが広まれば、より循環した観光を案内できる国になると期待しています」と話しました。
また、恩藏氏は、研究者の立場として、「質の高いデータをいただいた上で、広島での実験を丁寧に取り組んで発見を重ねていきたいと思っています。発見を重ねることで解像度をあげ、さらなる提案をし、それが日本全体の観光を引き上げることになったらと思います」と締めくくりました。
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