「訪日ラボ」を運営する株式会社movは、8月5日にインバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を開催しました。
会場には、インバウンド事業に携わる企業・団体・自治体・個人などが来場し、多くの講演が満席となる盛況ぶりを見せました。
本記事では、日本文学研究者 ロバート・キャンベル氏と脳科学者 茂木健一郎氏が登壇した「脳と文化で拓く日本の未来:インバウンドが呼び覚ます真の魅力」の様子を特別にご紹介します。

「THE INBOUND DAY 2025」とは?
訪日ラボが培ってきた業界ネットワークを活かし、各領域のトップランナーや第一線で活躍する事業者が一堂に会するカンファレンスです。初開催となる今回は、TODAホール&カンファレンス東京にて行われました。
基調講演では、元大阪府知事・元大阪市長 橋下徹氏と大阪観光局 理事長 溝畑宏氏の初対談が実現。そのほかにも、アパグループやUber Japan、大衆点評など、多彩な顔ぶれが登壇しました。
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日本が「来てもらえる国」であることの意味
「脳と文化で拓く日本の未来:インバウンドが呼び覚ます真の魅力」というテーマで、日本文学研究者のロバート・キャンベル氏と、脳科学者の茂木健一郎氏が登壇しました。モデレーターは、mov 専務取締役 COOである菊池が務めました。
両氏は冒頭、現在の日本のインバウンド市場について所感を語りました。
キャンベル氏:生活者の立場から感じるのは、インバウンドの増加によって日本の社会空間の見え方が変わっていくということです。変化への対応が求められる場面は増えますが、得られる価値や恩恵も大きいと思います。だからこそ、今日の「THE INBOUND DAY」のように、インバウンドについて多角的に考える機会を持つことは非常に大切だと感じますね。
茂木氏:アニメなどが世界的に人気を集めているように、私たちが気づかないうちに、日本は世界の中でも魅力的な国として認識されていますよね。オーバーツーリズムなどの課題は挙げられているものの、来てほしくてもなかなか観光客が来てくれない国が多い中で、多くの人が日本を訪れてくれるのはありがたいことじゃないかと思います。
キャンベル氏:茂木さんの「来てほしくても来てもらえない国がある」という指摘は重要ですね。先日、カナダから来日したアーティストと話したところ、彼らはアメリカに行った際、政治情勢などの影響で「歓迎されていない」と感じることがあったようです。為替や治安だけでなく、国全体の姿勢も旅行先選びに大きく影響するのでしょう。
私が来日した40年前は「日本ほど排他的な国はない」と言われていましたが、その後日本は大きく変化を遂げ、今では「日本は多様な国だ」と海外でも認識されるようになっています。神社仏閣や日本食などの伝統文化だけでなく、「味方が多い」と感じさせる日本の空気自体が魅力であるように思います。
「当たり前」が観光資源に 海外視点が示す新たな魅力
講演では、インバウンドにおける日本のポテンシャルについても触れられました。
茂木氏:先日ある映画を見直したのですが、歌舞伎町や渋谷など、東京の雑多な風景が映し出されていました。そうした、これまで私たちが猥雑に感じていた日本の光景が、インバウンドには観光資源として映る。食べ物についても、寿司や天ぷらのような伝統料理だけではなく、たこ焼きやラーメンといった日常的な食べ物が評価される。日本人にとって当たり前の生活が外国人には魅力的な体験になるというところに、近年の大きな変化を感じます。
キャンベル氏:各国の観光資源に関する調査では、日本は「日常の中で本物に触れられる」点が評価されています。作られた見せ物ではなく、日常の中に「日本」があり、それを体験できることにこそ魅力があると思います。
菊池:日本人にとっての「当たり前」には、実は大きな可能性がありますよね。新しい価値をつくるのではなく、もともとあるものを掘り起こし、どう見せていくかという点において、まだまだ課題はあると感じます。
詳しくは動画で公開中!
ほかにも講演では、産業としてのインバウンドの今後や、AI時代における訪日旅行のあり方についても取り上げられています。
詳しい内容を見たい方は、ぜひアーカイブ配信をご覧ください。
「THE INBOUND DAY」では、他にも豪華ゲストが登壇
「THE INBOUND DAY 2025」では、このほかにも豪華ゲストによる多彩な講演が行われました。その他のアーカイブ配信についてもぜひご覧ください。