「訪日ラボ」を運営する株式会社movは、8月5日にインバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を開催しました。
会場には、インバウンド事業に携わる企業・団体・自治体・個人などが来場し、多くの講演が満席となる盛況ぶりを見せました。
本記事では、当日行われた講演「地域から日本、そして世界へ:獺祭のブランドストーリーとインバウンド戦略」の様子を特別にご紹介します。
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「THE INBOUND DAY 2025」とは?
訪日ラボが培ってきた業界ネットワークを活かし、各領域のトップランナーや第一線で活躍する事業者が一堂に会するカンファレンスです。初開催となる今回は、TODAホール&カンファレンス東京にて行われました。基調講演では、元大阪府知事 橋下 徹氏と現大阪観光局理事長 溝畑 宏氏の初対談が実現。そのほかにも、アパグループやUber Japan、大衆点評など、多彩な顔ぶれが登壇しました。
地方の“負け組酒蔵”からの再起
「地域から日本、そして世界へ:獺祭のブランドストーリーとインバウンド戦略」と題して講演を行ったのは、株式会社 獺祭の社長・桜井 一宏氏。
獺祭は今でこそ日本酒を代表するブランドとして広く知られていますが、かつては地元で“負け組”と称されるほどの苦境に立たされていました。
そこからどのようにして逆境を乗り越え、成長への道を切り開いたのか──その転機が語られました。
山口の限界集落で生まれた獺祭
獺祭の酒蔵は山口県岩国市の小さな集落にあり、周囲には20人ほどしか住まない限界集落に位置しています。見渡せば山々に囲まれ、人より自然の方が多い環境です。そこから生まれた獺祭は、昨年195億円を売り上げ、今期は200億円超が見込まれています。
2024年日本酒輸出額435億円のうち、獺祭は56億円を占め、全体の約13〜14%。海外展開で最も存在感を持つ銘柄の一つとなりました。

純米大吟醸への挑戦と数々の失敗
今では世界に誇る日本酒の代表的存在となった獺祭ですが、かつては冬だけ杜氏(とうじ:日本酒の醸造工程を行う職人)を招く典型的な地方蔵で、大手や近隣蔵に押され“負け組”と見られていました。
打開策として挑んだ東京向けの純米大吟醸造りは経験不足で失敗続き。さらに地ビール事業は大損失を招き、杜氏も去って存続の危機に陥りました。
社員醸造への転換と“見える化”による進化
苦境の中で酒造りは社員主体に移り、これが転機になりました。当時の社員は経験が浅かったため過去のやり方にとらわれずに考えることができ、純米大吟醸と山田錦に絞る方針を受け入れます。
発酵度や温度、米の溶け具合などを数値で記録して可視化し、毎日のテイスティングと合わせて改善を続ける仕組みを作りました。
その結果、杜氏制度が抱えていた「製造と経営の分離」を克服し、品質を常に更新するブランドへと成長しました。桜井氏が「iPhoneのようにバージョンアップを繰り返す」と表現した通り、その姿勢が獺祭の強みとなったのです。

東京進出、そして世界へ
地元での販売が厳しいなか、獺祭は販路を東京へ広げました。東京には「良いものにはお金を払う」消費者が多く、さらに地元酒が少ないという独特の市場環境があったため、高品質な日本酒が受け入れられやすかったといいます。
やがて東京市場で存在感を示すようになり、この成功を足がかりに国内へ、さらには世界の主要都市へと展開を進めていきました。
ニューヨーク「獺祭Blue」の誕生
2023年、獺祭はニューヨーク郊外に海外初の醸造拠点を開設しました。日本から精米機を持ち込み、日米混成チームが「獺祭Blue」を醸造。現地の米や気候を生かし、“日本産よりうまい酒”を目指しています。
米はアーカンソー州で山田錦の栽培に成功し、現在は日本産と併用しつつ米国産を主軸に。背景には、日本酒のシェアが米国市場で0.2%と小さく、「和食の時だけ飲む酒」というイメージを変えたいという思いがあります。

先行者だからこそ得られた機会
海外展開の成果を象徴する出来事が、ホワイトハウスでの乾杯でした。安倍元総理の訪米時、オバマ元大統領がサプライズで獺祭を用いたのです。複数の蔵に声がかかったものの、現地に流通網を持っていた獺祭だけが即座に対応できました。
この続きから読める内容
- 海外展開の舞台裏
- 市場を変えるために打った“博打”
- 日本市場は「ショールーム」海外輸出との循環を意識
- 「THE INBOUND DAY」では、他にも豪華ゲストが登壇
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