「アフター万博」の可能性を探る ── 2027年横浜花博・2030年IR開業に向け、イベントを「まちづくり」に繋げるヒントを関係者に聞いた

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9月16日、一般社団法人demoexpo主催の「アフター万博」をテーマとしたアイデア会議「demo!play NOODLE」が、大阪中央公会堂にて開催されました。

訪日ラボではセッションの様子に加え、主催者や登壇者の方へ「アフター万博×インバウンド」をテーマにインタビューしました。

demo!play NOODLE セッションの様子
▲demo!play NOODLE セッションの様子

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「万博の熱狂を“まちの当たり前”に」オープニングセッション

同イベントのオープニングセッションでは、「万博の熱狂を“まちの当たり前”に ― 共創DNAインストール宣言」というテーマのもと、大阪・関西万博のランドスケープデザインディレクターを務めた株式会社E-DESIGN代表取締役 忽那 弘樹氏、大阪商工会議所理事 玉川 弘子氏、さらに会場と会場外である地域(まち)が連携できる仕組みをつくる活動「まちごと万博」を始動させた一般社団法人demoexpo 代表理事 花岡氏の3名が登壇しました。

忽那氏は、万博についての情報がなかなか出てこない中「どうやってまちを盛り上げていくか」を考える人々の能動的な連携として「まちごと万博」という取り組みを実施してきたと語り、「以前『水都大阪プロジェクト』で官民一緒に前に進めたという過去の経験が、実は万博をうまく進める練習になっていた」「クリエイターも結集しておもてなしができる状態にするというのは、大阪だからできたことだった」と振り返りました。

玉川氏は「前回万博に行った層は、そのときの思い出から『万博でなんかしたろ』と意気込む方たちも一定数いて、それが今回の万博の成功につながったと感じている」とした上で、「今後は万博が終わったらもう終わり、ではなく、日常に“ミニ万博”的なイベントがあるのが理想」とコメント。

花岡氏は「(忽那氏、玉川氏が述べたような)横の連携も、世代の連携も大事。大阪は意外と“てんでバラバラ”に動いている部分もある一方で、文化と経済をうまく回している人たち、一緒におもしろいことがしたい人たちによる『まちごと万博』のような取り組みが生まれたりと、『おもしろがり精神』があるのは大阪ならでは」と話します。

最後に3名は、「しがらみも大変なこともたくさんあるかもしれないが、チャレンジすることがまちの活性化には必要。チャレンジし続ける大阪でありたい」「『やってみなはれ精神』を、これからの大阪の発展のために大切にしていきたい」と締めくくりました。

莫大な雇用・経済効果を生む「ナイトタイムエコノミー」がテーマのセッションに注目集まる

その他の多岐にわたるセッションの中で注目を集めたのが、「ナイトタイムエコノミー」をテーマとしたルッツ・ライシェリング氏のセッション。同氏によると、夜間のアクティビティ活性化がニューヨークでは30万人の雇用を生み、ベルリンでは15億ユーロもの経済効果をもたらしたとのこと。

さらに「Night Mayor(ナイトメイヤー)」という専門職が行政の中に作られている都市もあるなど、地域がナイトタイムの需要を取り込むための仕組みについても共有されました。

イベント登壇者へ「アフター万博」についてインタビュー

続いて、「アフター万博」に向けた考えやインバウンド市場の可能性などについて、一般社団法人demoexpo 代表理事 / 株式会社人間 変なプロデューサー 花岡氏、南海電気鉄道株式会社 まちづくりグループ・まち共創本部・グレーターなんば創造部 部長 寺田 成氏、阪急阪神不動産株式会社 執行役員 開発事業本部 副本部長 谷口 丹彦氏の3名にインタビューしました。

一般社団法人demoexpo 代表理事 / 株式会社人間 変なプロデューサー 花岡氏インタビュー

── 大阪・関西万博や、万博を会場外から盛り上げる「まちごと万博」の成果は。

万博では、まちを盛り上げたい人が見える化でき、次の大阪を担うのがどんな人たちなのかわかったのがよかった。「まちごと万博」では、万博会場だけでは見られない大阪の“B面”の部分を露出させようということで、アフリカ大陸、キルギス、タイなどとコラボして会場外でイベントができた。

民間でつくった会場外の万博というのは初めての試みだった。このあとは2027年の横浜でのEXPO(国際園芸博覧会)にぜひ繋げていってほしい。

── インバウンドの需要についてはどうだったか。

「まちごと万博」はインバウンドの中でも、ディープなカルチャー軸で旅行したい人(たとえば道頓堀のような定番の観光地ではない)や、地域の人と触れ合いたい人を対象にイベントを実施していた。さらにパビリオンスタッフなどにも楽しんでもらい、次は旅行客としてまた大阪に来たいと思えるような仕組みをつくるようにした。

大阪の人は遠慮せずに喋りかけたり、相手を喜ばせようという人が集まっているので、それがインバウンドの人たちの満足度を上げる要素だと思っている。

今後でいうと、観光ばかりを意識すると本来のまちが失われてしまう一方で、コロナ禍のような(観光客が来ない)状態になると、それもまちが死んでしまう。インバウンドと「うまいこと付き合っていく」必要がある。

── 今後の「まちごと万博」や大阪・関西の未来についてはどんな期待をしているか。

今回の取り組みを通して大阪の“変態”たちが暴れ回ってくれたので、その人たちが集まって結束したら、さらにまちを盛り上げることができるんじゃないかと思っている。

また、国における第二の都市は「カルチャーのまち」になることが多く、たとえばドイツタイでもそういった流れができている。大阪も今回の万博をきっかけに、日本のカルチャーの中心地として発展していくことを願う。

南海電気鉄道株式会社 まちづくりグループ・まち共創本部・グレーターなんば創造部 部長 寺田 成氏インタビュー

── 大阪・関西万博の結果や成果についてどう見ているか。

有志による「マップを作ったから使ってください」といったXTwitter)での流れなど、「来場者が万博の楽しさを発信し、拡散していった」のが特徴。また、1970年の万博世代の人たちが楽しんでいたのも印象的だった。

大阪周辺のローカルな人たちが楽しんで盛り上げていった、大阪だから成功することができたイベントだと感じている。

今後は、今回の万博で学んだことを、どうまちに“移植”していくかが大切だ。

── インバウンドの需要についてはどうだったか。

インバウンド万博に行っているか、インバウンドがどういう動きをしているかといったことは、実はそこまで気にしていなかった。ただ、道頓堀エリアの人の流れは明らかに減っているので、従来そうしたエリアを訪れていた人が万博に流れた可能性はあるのかなと思っている。

万博に限らず)大阪の観光客は「グリコの看板を見て、たこ焼きを食べて、通天閣の“映える”写真をとって帰る」みたいな定番の動きが多いが、これには危機感を持っている。ありがちな観光体験ではなく、もっとローカルな大阪の魅力を楽しんでもらいたい。

── 大阪のまちづくりの未来に対して、電鉄会社としてどうアプローチしていくか。

2030年に控えるIRに向けて、観光客だけでなく、施設で働く人に沿線に住んでほしいと考えている。南海電鉄の強みは関空とつながっていることであり、海外から移住してきて大阪で働く人にとっては、南海沿線に住んでもらうのがベストだと思う。

まちづくりについては、文化や歴史があるまちであるなんばを基点に、大阪の魅力をしっかりつくっていく。「なんば広場」を賑わいがあって夜でも安心して過ごせる場所として使ってもらい、来た人に居心地のよい空間を提供していきたい。

阪急阪神不動産株式会社 執行役員 開発事業本部 副本部長 谷口 丹彦氏インタビュー

── 大阪・関西万博の結果や成果についてどう見ているか。

実際に成果を感じたのは、万博に出展した国々から、万博外に対していろんな形で自分たちの国や産業のことを知ってもらいたいというアプローチがたくさんあったこと。仮に万博がなければ彼らからそんなアプローチをいただけていないので、それは非常に大きな効果になっている。大阪と繋がっていきたいと早くからアプローチしてくれていた国もあり、そういったところと日本で話すことができたのはよかった。

これから大阪が国際交流都市になる上で、いろんな国のビジネスが大阪に上陸してもらう必要がある。万博のおかげでできたいろんなネットワークを今後に活かしていきたい。

── インバウンドの需要についてはどうだったか。

私たちのグループにおいては、万博による効果は明らかにあったと見ている。大阪のインバウンドはやはりアジアが中心であることには間違いはないが、かなり距離感のある欧米系の人たちも大阪の良さを感じてくれている。

今日のセッションでは観光という部分にフォーカスしていたが、私たちが一番期待しているのは、やはりビジネスインバウンド。ここを伸ばしていくと、日本の社会課題をかなり解決できるのではないかと感じている。お互いの経済を伸ばせるようなビジネスをインバウンドと一緒に進めていき、それが実現できたらお互いを排除する感情もなくなっていく。今後も大阪だからこそできることを進めていきたい。

万博のレガシーを、まちの力に

今回のイベントでは、万博の熱狂を一過性の“お祭り”で終わらせるのではなく、まちの持続的な成長につなげるための具体的なアイデアやビジョンが共有されました。

2027年の横浜花博(国際園芸博覧会協会)や2030年のIR開業を控える今、今回の万博の「レガシー」が、次世代のまちづくりを加速させるヒントとなるでしょう。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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