10月13日に大阪・関西万博の閉幕を控える中、次回2030年の万博の開催地となるサウジアラビア王国が、大阪・関西万博のナショナルデーに際して「サウジ・ビジョン2030フォーラム」と題したイベントを9月22日に開催しました。
このフォーラムでは、サウジアラビアのトップリーダーが集い、「ビジョン2030」の目標達成に向けたパネルディスカッションやプレゼンテーションなどが披露されました。本記事では、その様子をお届けします。
サウジアラビアの課題と未来のビジョンを語るパネルディスカッション
このフォーラムでは、サウジアラビアの人材・資源とビジョンをテーマとしたパネルディスカッション「動き出すビジョン：サウジアラビアの人材力と共通の繁栄を拓く」が行われました。
サウジアラビアにおける人材や資源のよい面として、アフリカ、アジア、ヨーロッパの3地域がつながる場所にあることが挙げられ、それをしっかりと有効活用して国の価値を上げていく必要があると述べられました。また、通信環境については国の99％以上が4G環境下でモバイルの平均通信スピードは世界でも上位となっており、インフラは職場でも家庭でもかなり整っているとされています。
一方で課題としては、交通事故の発生率が増えてきていることや、女性の社会進出が挙げられます。特に女性の労働参加率は36％に上昇してきているもののまだ伸ばす必要があり、フリーランスや在宅勤務でも働きやすい環境、管理職に女性が増えていく世の中づくりを進める必要性が指摘されました。
サウジアラビア内の映画館が急増、興行収入トップは日本の「鬼滅の刃」エンターテインメントにも力入れる
文化面では日本とのつながりも。実は2018年まで、サウジアラビアには映画館が1つもありませんでした。エンターテインメントに力を入れ始めた結果、現在は640以上の映画館が存在しています。また、今サウジアラビア国内で興行収入トップは「鬼滅の刃」なのだといいます。
なお、大阪・関西万博内で行われたサウジアラビア・ナショナルデー記念コンサートにはアーティストのLiSAが招かれ、映画「鬼滅の刃」の主題歌「炎」を披露したことも話題となりました。
ほかに今伸びている産業としてはe-sportsが挙げられ、新たな街「キディヤ・シティ」にエンターテインメントの首都を作り、ゲームとeスポーツのハブとなる場所を目指す構想があると述べられました。
サウジアラビア国民全体に「国力を高める」意識が必要
議論は最後に、サウジアラビアの国としてのビジョンは明確だが、国力を高めるという意識を国民全員が自分ごととして持たないと成長はできないため、一人ひとりが協力し合っていかなければならない、との話に発展。今後は横のつながりを強くし、協力し合いながら活気あふれる社会にしていくとの思いが語られました。
また、地球規模のビジョンとしては環境保全についての話があり、国として脱紙プロジェクトを行っており、全ての行政機関において紙を使わずに全てデジタルで解決する取り組みを促進していると言及。地球に対しても短期的な解決策ではなく、長期的にメリットがあることを行っていく必要があり、環境保全でも世界を率いる国にしていきたいと述べられました。
リヤドで世界最大級の空港「キング・サルマン国際空港」建設中、そのビジョンとは
また、キング・サルマン国際空港開発 最高経営責任者 Marco Mejia氏によるプレゼンテーションも行われました。
サウジアラビア・リヤドで2030年までに建設予定のキング・サルマン国際空港は、既存のキング・ハーリド国際空港を大規模拡張するもので、年間1億2,000万人を受け入れる世界最大級の空港となることを目指しています。
Marco Mejia氏は「空港はこれまで旅行する人のみが来る場所だったが、今後は近隣の人が飛行機を見ながら食事をしたり、エンターテインメント要素もある『街の一角』としての要素を持った空港にしていく。プライベートジェット向けの滑走路や施設を含め、6本の滑走路、居住施設、レクリエーション施設、小売店が入る」「空港はグリーンエネルギーと再生可能エネルギーを念頭に設計するので、地域社会の生活の質の向上のみでなく、持続可能そして再生可能な物資循環の促進や、地球における気候変動への貢献も行っていく」と、新たな空港の計画をアピール。
また、「この空港の建設で、サウジアラビアは輸送、貿易、観光を更に促進させて世界一の貿易国になる」「サウジアラビアの『サウジ・ビジョン2030』に沿って、本空港の開港は、リヤドを世界の都市経済トップにするだけでなく、数多くの労働者に雇用を提供し、女性の地位を上げていくきっかけにもなることが予想される。また、国内総生産や賃金、そして所得を更に上げていくことも狙いとしている」とビジョンについても言及した上で、「EXPO2030リヤドが2030年に行われる。絶対に来てください」と呼びかけました。
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