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【連載:訪日ラボマーケティングトレンド話】 本連載では、ローカルビジネスコンサルティング・店舗マネジメント業を行い、 デジタル、アナログ両面で小売・飲食・宿泊業、観光業に豊富な経験を持つ、株式会社ユニットティ代表取締役 永山氏と、株式会社mov 訪日ラボ副編集長 石橋が、「観光・インバウンド × マーケティング」をテーマに、ざっくばらんにあれこれ議論していきます。 |
<これまでの連載>
- 第一回:AIによって旅行者の検索行動はどう変わり、我々はどう対応しなければならないのか
- 第二回:「Googleビジネスプロフィールをやっていれば、各種予約サービスは不要なのか?」に対する専門家の答え
- 第三回:SNS時代の店舗集客戦略!「他発信」を活用した集客の新常識とは
石橋:今回は、先月9月から日本でも提供を開始した、Googleの「AIモード」について議論していきたいと思います!
※AIモードとは…AIを活用したGoogleの新たな検索機能。従来は複数回の検索が必要だったような、長く複雑な質問を一回の検索で回答することができる。
6月に公開した連載第1回で「AIによって旅行者の検索行動はどう変わり、我々はどう対応しなければならないのか」をテーマにしたところではあるんですが、早くもその当時以上にAIが検索に組み込まれてきている状況にあるので、再度取り上げさせていただこうと思っております。
永山:わかりました。非常にホットなトピックですね。まだ仕様などが定まっていないところもありますが、現時点の動向を話していければと思います。よろしくお願いします!
<プロフィール>
永山卓也:株式会ユニットティ代表取締役

ローカルビジネスコンサルティング、店舗マネジメント業を行い、 デジタル、アナログ両面で小売・飲食・宿泊業、観光業に豊富な経験。各都道府県の地方自治体、地域団体などを中心にセミナー、講演実績多数。株式会社ユニットティ代表取締役。観光庁 インバウンドの地方誘客促進のための専門家。Googleビジネスプロフィール(Googleマイビジネス)ダイアモンドプロダクトエキスパート。Google Maps, Google広告プロダクトエキスパート。東京観光財団 観光おもてなしアドバイザー。京都府観光連盟 観光アドバイザー。株式会社movが運営するお客様の声のDXサービス「口コミコム 」テクニカルアドバイザー&インバウンド業界最大級メディア「訪日ラボ」アドバイザー。
石橋美奈子:訪日ラボ副編集長

株式会社movが運営する業界最大級のインバウンドビジネスメディア「訪日ラボ」副編集長。訪日ラボでは官公庁や自治体・DMO、民間企業など数々の先進事例を取材し、年間計2,000件以上のインバウンド情報記事を配信中。デジタルマーケティング領域にも知見を持ち、書籍編集の経験も:永山卓也氏(株式会社ユニットティ 代表取締役 / Google ビジネス プロフィール ダイアモンド プロダクト エキスパート)の著書『Googleビジネスプロフィールですごい集客力を手に入れる』(2024年8月発売)
日本でも開始したGoogleの「AIモード」どんな機能?
石橋:早速ですが、このAIモードというのは、従来の検索と比べてどんな違いがあるんでしょうか。
永山:従来型のWebサイト検索の場合、利用者が自分でサイトを見にいき、複数の情報ソースを見る際には行ったり来たりする必要がありました。一方でAIモードは、複数のソースから情報を集積した上で、利用者の条件に基づいた提案をしてくれるという大きな強みがあります。お店探しにおいても、非常に便利に検索ができるようになります。
石橋:具体的にはどういう検索をする際に便利になるのでしょうか。
永山:そうですね。「渋谷 ランチ」など従来の検索語句でも十分に活用できます。以下のスクリーンショットを見てみてください。検索の仕方や検索するアカウントにもよるかもしれませんが、「安く、おいしく食べたいなら」「おしゃれな雰囲気でランチを楽しみたいなら」といったテーマをAIが勝手に設定して、それに合わせたお店を紹介してくれているのがわかります。


石橋:GoogleマップやSNSで探す前の取っ掛かりの検索として良さそうですね。
永山:そうですね。さらに言えば、もう少し応用的な検索の仕方もあります。
これまでのGoogleマップの検索機能では、「ラーメン」と検索したらラーメンが出てくるというレベルで、細かな指定に対して答えてくれる機能は持っていませんでした。たとえば「博多系とんこつラーメン、かつランチメニューがあって、徒歩500m以内」といった複数の条件を、現状の検索機能が読み取ることは難しかったんです。しかし、AIモードはこれが可能になってきています。
さらに、「渋谷でランチを食べた後、銀座で買い物をして、夜は上野で飲みに行く」といった検索もできるので、観光ルートを考える際にも非常に使いやすいんです。
石橋:検索ユーザーがざっくりとした要望を打ち込むだけで複数のソースから情報を探してくれるのって、かなり便利ですよね。検索体験がかなり大きく変わりそうです。
AIモードによって店舗・施設がやるべきことはどう変わるのか?
石橋:そうなると、お店側(オーナー)が対策すべきことも変わってくるのでしょうか。今までのいわゆる「MEO」や「ローカルSEO」では、検索語句を意識して対策してきましたよね。
永山:今後はそうではなくなってくるかもしれません。今までは、たとえば「老舗」のように検索する人が少ない語句や、「創業50年」といった情報が軽視されがちでしたが、AIは「文脈」を拾ってくれます。専門用語では「クエリファンアウト(Query Fan-out)」といいますが、検索した語句をAIが複数の関連する語句に分解し、網羅的な回答を生成するという仕組みなので、これまで能動的には検索されてこなかった語句にも光が当たるようになるんです。
石橋:確かに自分では「老舗」と検索することはないですが、別の検索語句であってもこのような情報が考慮され、検索結果に「創業50年の老舗で〜」とAIにオススメされたら、行こうってなるかもしれませんね。そういう検索されづらい情報も出していくのが重要になるということですね。
永山:はい。あと変わることがあるとすれば、「小樽のカフェ オススメ教えて」という検索に対して、これまでは「オススメ」というワードが入っているものが表示される傾向にあったと思います(検索語句によってはそうではないかもしれませんが)。これが、AIになると単に「オススメ」というキーワードが入っているページを拾うだけではなく、さまざまな形で「オススメ」されているものを認識して、取り上げるようになってきています。
このとき、AIがお客様にオススメされているものを認識するための要素として、口コミが大事になります。オーナーが思いもしなかったお店の良い点、悪い点も、GoogleのAIに伝わるわけです。これまでも口コミを集める重要性は訪日ラボのセミナーや記事などでもたくさん取り上げてきたと思いますが、今後AI時代においても非常に重要な取り組みになってくるでしょう。
ちなみに、Googleは自前で持っている口コミを参照していますが、Yahoo!やBingは通常は参照していません。ただ、GoogleだとYahoo!の口コミもインデックスされるので、参照することがあります。ですのでGoogleのAI検索対策を行いたいということであれば、Google以外の口コミも考慮しておく必要がありますね。

インバウンド対策(多言語対応)にも変化はあるのか?
石橋:今後、外国人旅行者もAIモードを使うようになるのではないかと思いますが、多言語対応などの進化についてはいかがでしょうか。
永山:AIモードは、地域検索における言語の問題を飛び越えられる部分があります。Googleマップの検索では、日本語と英語は別物として認識されていましたが、AIモードでは言語間を飛び越えて翻訳され、理解される進化が見られます。これは、Google検索とGeminiが混ざったことで補完されている面も大きいでしょう。ローカル検索だけを見ていた人にとっては、いきなり視界が広がった感があると思います。

石橋:なるほど。メリットも大きい一方で、AI検索の弱点やお店側のリスクはありますか?
永山:まず、AI検索の弱点としてハルシネーション(誤情報の生成)が挙げられます。ローカル検索においては、AIがあまり使われていなかったためハルシネーションは少なかったのですが、今後は誤った情報をもとに来店してしまうということが起こり得ます。
また、ユーザー側がWebサイトを参照しなくなるのが怖い点です。検索結果に表示された情報が公式のものでなくても、「検索結果に表示されたから」と絶対正しいと思い込んでしまう可能性があります。ハルシネーションや間違いがあった際に気づきにくいのです。
石橋:オーナーとしては、表示されるすべての情報をコントロールするのは非常に難しいですよね。
永山:「どうにかしにくい」というのが正しいかもしれません。もちろん、日々発信に気を遣い、口コミの記述に間違いがないようにしてもらったり、あらゆる情報について間違っているなら直しに行ったりといった究極的な対策は可能ですが、そこまで手が回る人はなかなかいないと思います。
石橋:うーん、なかなか難しい問題ですね…。少なくともAIによってこういうことが起こることがあるというのを認識し、SNSや店頭でのお知らせなどでできるだけフォローして、クレームなどに繋がらないように工夫していくのが大事なのかもしれませんね。
Google以外のAI検索の動向と、今後の見通し
石橋:GoogleのAIモードは始まったばかりですが、今後についてはどう考えておけばいいでしょうか?
永山:注意して見ておいていただければと思うのは、Google以外の動向ですね。シェア率なども考えると、どうしてもGoogleのAIモードに注目が集まりがちですが、実はYahoo!検索にもAIアシスタントが入っていますし、BingにもCopilotの検索機能が搭載されています。
これらは今はあまり注目されていないかもしれませんが、今後どうなるかはわからないので、マーケティングに関わる方はぜひ使ってみて現状を把握してみてほしいんです。


石橋:Google以外にもこういった機能があるんですね…!ただ、お店探しという点で考えると、やはりGoogleのほうが利用されやすいですよね。
永山:それは間違いないと思います。とはいえ、これまで「Googleビジネスプロフィールをやっていればローカル検索は大丈夫」という時代から、見るべきポイントが広がってきました。これはオーナーにとっては、手間が増えるなどのマイナスの側面があるとも言えるでしょう。世の中の流れがそうなっていますから、受け入れてフォローしないといけない時期が来ていると言えるかもしれません。
石橋:この流れはもう止められないということですね…。今後、AIモードはさらに強化されていくのでしょうか。
永山:その可能性は高いです。個人的には、GoogleマップにAIモードが搭載される可能性もあると考えています。もし搭載されれば、「とんこつラーメンが美味しい店」といった検索に対して、「ここは博多系です」「ここは醤油豚骨です」といった「特徴」をテキストで明確に示してくれるようになり、検索は非常に楽になります。現状のGoogleマップでは、店舗情報を行ったり来たりするのは面倒ですから。
石橋:では最後に、私たち利用者がAI時代のローカル検索とお店探しをどう活用すべきか、アドバイスをお願いします。
永山:このAIの進化のスピードは非常に速く、AI Overviewが登場してからまだ1年も経っていません。この新しい技術を商売や地域づくりに利用していくためには、情報の精度、確度、そしてボリュームが必要になります。また、評価の「角度」(例:「おいしい」「濃厚」「東京人の舌にも合う」など)も重要になってきます。
とはいえ今はまだこれらの検索は発展途上にあり、仕様もどんどん変わっていくでしょう。今はとにかく「現状を把握するために、ガンガン使ってみましょう」というのがアドバイスですかね。使ってみないと、BingやCopilotがトリップアドバイザーから情報を取ってきている、あるいは動画から引っ張ってきているといった、それぞれの「癖」を理解することはできません。この新しい検索の波を楽しみ、ワクワクする気持ちで活用を進めていただきたいと考えています。
石橋:ありがとうございます。今回はAIモードについて議論させていただき、連載第1回からさらに広がったAI検索の世界を見渡すことができました。次回もよろしくお願いします!
永山:ありがとうございました!
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