【アジア・中東編】JNTOが語るインバウンド市場の動向とは?:2025年「インバウンド旅行振興フォーラム」を取材

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日本政府観光局JNTO)は9月、「第28回 JNTOインバウンド旅行振興フォーラム」を開催しました。

本フォーラムは、海外全26拠点の海外事務所長などが一堂に会し、各市場における訪日旅行市場の最新動向を解説するものです。

訪日ラボでは、2日間にわたるフォーラムの様子を取材。今回は、2日目の内容をお届けします。

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各国の市場概況と訪日マーケティング戦略について

2日目は、アジア・中東市場の各担当者より、各国の最新動向とインバウンド誘客に向けたJNTOの取り組みについて解説がありました。

台湾市場

はじめに日本台湾交流協会 台北事務所 経済部主任 平澤 友紀氏から、台湾の市場概況と訪日マーケティング戦略について解説がありました。

▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋
▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋

平澤氏は、台湾における海外旅行者数がコロナ禍以降着実に回復していると説明。2024年の海外旅行者数は年間1,685万人に上り、2025年も5月までの統計では、過去最高水準で推移していると報告しました。

旅行先の選択にも変化が見られ、日本を目的地とする割合は、2019年の28.7%から2024年には35.6%に上昇したといいます。一方で、日本に次ぐ目的地である中国は割合が縮小傾向にあり、需要が他地域へ流れている可能性があると指摘しました。

さらに足元の市場環境の課題として、米国の関税政策を背景に、家計支出を抑える動きが広がっている点を挙げました。

関連記事:台湾市場の最新インバウンドデータを徹底解説【2025年上半期】

香港市場

続いて香港事務所長・丸山 智惠弥氏より解説がありました。

▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋
▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋

香港居民の海外旅行市場の動向について、コロナ禍前の2019年水準の月平均値の90%と高水準にあり、コロナ禍と比べて着実に回復していると説明。また、日本と競合する韓国台湾はコロナ禍前の水準を超えた一方でシンガポールへの旅行者数も増加しており、特に7月から8月の夏休み期間には家族旅行が多い傾向にあると指摘しました。

さらに話題となった7月の地震予言についても触れ、香港では日本旅行への関心は高く、南海トラフ地震の発生確率や各地の地震報道が多数取り上げられ、SNSやオンラインでメディアでも拡散されたと述べました。

訪日香港人旅行者の訪日回数10回以上の割合は35%程度であり、現在個人旅行が9割を占める状況になっていることも踏まえ、BtoC(消費者向け)にも取り組んでいくと述べました。

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韓国市場

続いて韓国市場について、ソウル事務所長・清水 雄一氏より解説がありました。

韓国からの海外旅行については、2024年の出国者数が2,800万人に達し、そのうち約881万人が日本を訪れました。これは過去最高の訪日人数であり、訪日客全体の23.9%を韓国からの旅行者が占めています。この結果から、日本が韓国人にとって特に人気の高い旅行先であることが示されています。

清水氏は、訪日韓国人が増加した要因として2010年代の「LCC格安航空会社)の拡大」、コロナ禍を経て国際往来が再開して以降の急激な復便・増便・新規就航を挙げ、さらにアニメやJ-POPなど文化的な交流も重要な役割を果たしているとしました。

▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋
▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋

地方への誘客については、地方路線の拡充が大きな特徴になると指摘。直行便が就航する地方空港自体は拡大している一方で、関西空港・福岡空港成田空港の3空港で全体の約8割を占めており、便数の偏りが課題であると述べました。

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中東地域市場

続いて中東地域市場について、ドバイ事務所長・小林 大祐氏より解説がありました。

小林氏は、訪日プロモーションの対象国をGCC(湾岸協力理事会)に加盟する6か国(アラブ首長国連邦、オマーン、カタール、クウェート、サウジアラビア、バーレーン)、トルコ、イスラエルに絞っているとしました。その中でもGCC6か国の海外旅行の状況については、富裕層の比率が高く、海外旅行の頻度や旅行に対する消費意欲も高い傾向があるといいます。

▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋
▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋

また旅行先での消費力が高いとも話し、中東地域はこれから注目すべき市場であると続けます。

▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋
▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋

さらに、現状では中東地域に暮らす外国人の多くがヨーロッパを旅行先として選んでいる一方で、今後訪れたい国として日本を挙げる人も多いと指摘。そのうえで「ヨーロッパに繰り返し旅行している層をいかに日本に誘致するかが重要になる」と強調しました。

関連記事:中東市場の最新インバウンドデータを徹底解説【2025年上半期】

タイ市場

続いてタイ市場について、バンコク事務所長・中杉 元氏より解説がありました。

タイ人の海外旅行需要については、多くの市場で訪問者数がコロナ前の水準に戻っていない状況です。その要因としては経済の低迷が長期化していることや、不安定な政治・外交状況が挙げられます。

日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋
▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋

一方、訪日タイ人の動向を見ると徐々に回復もみられており、2025年1〜6月には68万500人(前年同期比で約10%増)となりました。

なかでも女性の比率が高く、特に30〜40代女性の構成比は34%で、主要20市場の中で最も高いといいます。そのため、ターゲットに関わらず女性を意識したアプローチが重要であり、具体例として「フォトジェニックな場所」などが挙げられています。

さらに訪日プロモーションでは、旅行会社各社と連携しながら、他国向け商品や他社商品との差別化を価格面以外で追求する必要があると述べました。

▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋
▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋

関連記事:タイ市場の最新インバウンドデータを徹底解説【2025年上半期】

インド市場

続いてインド市場について、デリー事務所長・文野 領氏より解説がありました。

訪日客数は比較的少ない市場ですが、世界一の人口を誇ることもあって今後の成長が期待できる市場です。訪日可能層のペルソナとしては「上位中間層」が挙げられています。

▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋
▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋

4月から6月にかけて夏休み期間があり、インドからの訪日客が多い時期となっています。日本ではゴールデンウィーク後5〜6月に閑散期となりますが、この期間にも誘致が可能な市場だとしています。

旅行形態については、現在ゴールデンルートを中心としたパッケージ商品がまだまだ人気であり、個人で旅行を手配する旅行者は他の市場と比較して少ない状況にあります。パッケージ商品を提供する上で、旅行会社とセラーを仲介するDMCが各地域に不足していることを課題の一つとして挙げ、顧客満足度の向上に貢献する優秀なDMCの重要性を強調しました。

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ベトナム市場

続いてベトナム市場について、ハノイ事務所長・松本 二実氏より解説がありました。

▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋
▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋

市場概況については、昨年のベトナムからの出国者数は約530万人で、コロナ前の半数程度にとどまっており、回復途上にあると説明。海外旅行先としては中国タイ、ラオス、カンボジアなどの近隣国が依然人気であるといいます。

ここ数年は多様な観光ルートも増えており、中国に加えてインドオーストラリア、ドバイも直行便の就航により注目されていると述べました。

さらに日本の競合国としては韓国台湾を挙げ、ベトナム観光局を設置し、旅行博への出展やイベント開催、SNSを活用した誘客プロモーションに力を入れているとしました。

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シンガポール市場

続いてシンガポール市場について、シンガポール事務所長・白石 拓也氏より解説がありました。

はじめに白石氏は、シンガポール市場において訪日旅行がブームとなっていると説明。2024年には約69万1,100人が日本を訪れ、シンガポール国籍人口のおよそ「5.3人に1人」にあたるという驚くべき数値であると述べました。

▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋
▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋

さらに、2024年の訪日旅行における1人当たり消費額はアジアで最も高く、宿泊日数の伸びは三大都市圏より地方都市のほうが大きいことも特徴だとしました。訪日旅行への関心が高まっている理由として、シンガポールが一年を通して高温多湿であることに触れ、日本の四季への関心が高いことを挙げました。

また最近では、三大都市圏に限らず九州北陸も人気を集めており、地域分散型のプロモーションを展開していきたいと意気込みを語りました。

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フィリピン市場

続いてフィリピン市場について、マニラ事務所長・林 伯亮氏より解説がありました。

▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋
▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋

フィリピンからの海外旅行は、2024年時点で約81万8,000人となり、2019年と比べて34%増加。訪問先としては香港シンガポールタイ韓国台湾が続く中で、訪日フィリピン人は特に著しい増加を示しており、今後も期待できるとのことです。

また、個人手配で訪日するフィリピン人が9割に達しており、複数の子連れ家族が一緒に旅行するケースも多いといいます。

今年の4月より日本VISA申請センターが開設し、査証代理申請機関として指定されていた旅行会社以外の旅行会社、および一般消費者からも直接査証申請が可能となり、査証申請における取り扱い方法が拡大した一方で、申請書類の作成やセンター予約などの手間は旅行会社を通じて行うことが多く、引き続き旅行会社が重要なタッチポイントとなっていると述べられました。

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インドネシア市場

続いてインドネシア市場について、ジャカルタ事務所長・畠中 環氏より解説がありました。

▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋
▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋

インドネシアからの訪日者数は2024年51.8万人と過去最多であり、2025年はそれを上回り60万人が視野に入っています。訪日目的は、観光が約8割、ビジネスと技能実習がそれぞれ約1割で、技能実習生は増加傾向にあります。また、インドネシア人の海外旅行がコロナ前の76%とまだ戻っていない中で訪日は増加傾向であり、訪日が占める割合は全体の6%に上昇しているとしました。

滞在日数は1〜2週間、20〜40代を中心に家族と共に訪日しており、そのうち87%が個人手配であるといいます。ただし、旅行博やオンラインツール等により、旅行会社担当者とのやり取りを経て情報入手や手配をすることも多いため、旅行会社に新しい情報やモデルルートを提供することは引き続き有効であると述べました。

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マレーシア市場

続いてマレーシア市場について、クアラルンプール事務所長・尾崎 健一郎氏より解説がありました。

マレーシアからの訪日者数は2024年時点で50万7,000人となり、2023年と比べて約22%増加し、過去最高を記録しました。さらに、2025年1月〜6月では前年同期比で34%増となり、今後もさらなる伸びが期待されます。

▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋
▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋

また訪日航空路線の影響については、2025年9月現在、直行便数はコロナ前の90%程度と回復傾向にあると話したほか、人口・所得ともに増加傾向にあることからもマレーシアは非常にポテンシャルが高い国であると続けました。

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中国市場

最後に中国市場について、上海事務所・薬丸 裕氏、北京事務所・佐藤 絵美子氏、広州事務所・原口 健司氏、成都事務所・佐藤 仁氏、より解説がありました。

▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋
▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋

はじめに薬丸氏は、市場の最新動向として、中国国内の消費傾向調査などから、「旅行意欲」や「旅行消費」に関して積極的との回答が多く、目下の訪日中国人数は史上最高を記録した2019年を上回る好調なペースで、1人1日あたりの消費額も世界1位となっていると説明。

また、団体ツアー客の爆買い中国人観光客が注目された10年前と比較すると、現在は個々人の訪日目的を重視する個人旅行化が急速に進み、定着しているだけでなく、年に3回以上訪日する高頻度リピーターが7人に1人以上もいることなど、コロナ禍を経て大きく変化した市場の動向やトレンドを具体的なデータや事例を挙げながら解説しました。

▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋
▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋

続いて北京事務所・佐藤氏は、個人旅行化が進む中国で重要なSNS戦略を紹介。リピーターが増えるにつれ、「混雑を避け」「知られていない」等のニッチな旅行先の情報が求められており、旅行者はグーグルマップ等を駆使して日本を回っていると語りました。

原口氏は、華南地域(特に広東省から)の地方誘客のカギは香港発着便にあると指摘し、地方便の人気路線として沖縄、静岡、小松、高松が挙げられると述べました。さらに、誘客を拡大するためには、「その土地ならではのテーマに特化した特別な体験コンテンツを可能であれば動画で紹介する」「観光スポットまでの詳細なアクセス情報を発信する」といった取り組みが有効であるとしました。

最後に成都事務所・佐藤氏は、成都・重慶を中心とする中国西南地区のポテンシャルと同地域において有効な旅行業界を対象としたBtoB施策の重要性を紹介したほか、中国でも地域によって訪日旅行の成熟度や志向・狙うべきターゲット層が異なると述べ、「現地に根ざした効果的な事業を展開し、訪日旅行のすそ野の拡大や地方誘致・消費拡大に向けた適切なアプローチを進めていくべき」と呼びかけました。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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