• ヨーロッパ第3位のインバウンド消費額
    • ハイシーズンは3月、4月と10月、春と秋が人気
    • 観光目的では長期滞在する訪日ドイツ人が多数

インバウンドにおけるドイツ市場の特徴とは

2019年の訪日ドイツ人は23万人を超え、2014年と比較すると約1.7倍に増加しています。2019年、訪日ドイツ人は一人あたり201,483円を訪日旅行時に使いました。2019年に訪日したドイツ人を年齢・性別ごとに見てみると、男性は30代、女性は20代が大きな割合を占めています。また、訪日ドイツ人のインバウンド市場で特筆すべき点は「ヨーロッパ第3位のインバウンド消費額」「ハイシーズンは3月、4月と10月」「観光目的では長期滞在が多数」の3つです。それぞれ詳しく解説していきます。

訪日ドイツ人インバウンド市場、3つの特徴を解説

1. ヨーロッパ第3位のインバウンド消費額

2019年の訪日ドイツ人は、全体で約477億円を消費しました。これはヨーロッパではイギリス、フランスに次ぐ第3位の消費額で、多くのドイツ人が日本で消費をしているということだけではなく、安定した高水準の平均月収があるため訪日旅行に余裕を持って支出ができることも示しています。ドイツ人は特に宿泊費に多く支出をしており、全体の約45%を占めています。インバウンド市場としても大きなものとなっているため、訪日ドイツ人に向けたインバウンド対策は今後重要なものとなっていくでしょう。

2. ハイシーズンは3月、4月と10月、春と秋が人気

訪日ドイツ人数を月別に見てみると、2019年は3月に最も多くのドイツ人が訪日しています。2019年3月の訪日ドイツ人は28,659人で、次に人気のあった4月の27,829人、その次に人気のあった10月の26,276人と合わせると2019年度訪日ドイツ人全体の約35%が3月、4月、10月に集中していることが分かります。約半年ごとにハイシーズンを迎える形となっていますが、毎年この3か月に訪日ドイツ人数は大きく増加するため、ピンポイントでインバウンド対策を行うことで効果的な集客が見込めそうです。

3. 観光目的では長期滞在する訪日ドイツ人が多数

観光目的で訪日するドイツ人の約90%は、7〜90日間日本に滞在しています。ドイツと日本は時差にして7時間離れているため、たまの訪日旅行を満喫するために滞在期間を長く取るドイツ人が多数存在するようです。一方、業務目的で訪日するドイツ人の場合は4〜6日間の滞在が約46%を占めており、観光目的での訪日と対象的になっています。長期滞在する訪日ドイツ人向けに様々なサービスやアクティビティを提供できる市場が存在しているとも言えるため、インバウンド対策の際には意識してみると良いかもしれません。

ドイツ人の特徴

ドイツ人の性格・国民性

ドイツ人の性格・国民性には、一般的に以下のような特徴があるといわれています。

  • 規則重視/まじめ
    • ドイツ人はルールや規則を守ることを重視します。たびたび日本人に通ずる部分があるといわれますが、ドイツ人にとってまじめとは時間・効率性を重視し、義務を忠実にこなすということを意味します。対して日本でいうまじめとは「以下に他人に迷惑をかけないか」という点に重点が置かれているため多少の違いがあります。
  • 子供っぽい・羽目を外す
    • まじめで質実剛健というステレオタイプがあるドイツ人ですが、「子供っぽい」「羽目を外す」という意外な一面も持ち合わせています。まじめに物事に取り組むとき、羽目を外すとき、この2つのスイッチの切り替えの巧さもドイツ人の特徴といえるでしょう。
  • 掃除&整頓好き
    • ドイツ人は綺麗好きといわれます。ドイツの街は比較的清潔に保たれており、各家庭においても時期関係なく頻繁に掃除をする傾向にあります。
  • エコである
    • 自然志向のドイツは、エコ先進国でもあります。スーパーのレジ袋は有料化されており、エコバッグを持つのは常識となっています。リサイクルのためにゴミもきちんと分別して捨てる習慣が身についてています。また、ドイツ人は木製の商品や家具選びも好みます。

<参照>

  • 草思社出版:片野優須貝典子著「こんなに違うヨーロッパ各国気質 32か国・国民性診断」

ドイツ人と接するうえで気を付けておきたいマナー

ドイツ人と接する場合には、以下のポイントに注意しましょう

  • ドイツ人は時間を大切にするため、時間を厳守する
  • 失礼にあたるため、人を指ささない
  • 会話中は目をそらさないように心がける
  • 不快感を与えるため、鼻をすすらない
  • 隠し事をしていると思われるので会話中に口に手を当てない

<参照>

  • 明石書店出版:浜本隆志・高橋憲「ドイツを知るための62章」

ドイツ人の親日度・日本語学習者数

電通「ジャパンブランド調査」によると、ドイツは2019年時点で「親日度ランキング」全20か国のうち19位となっており、親日度が特別に高い訳ではないことが分かります。(*1) 国際交流基金「海外日本語教育機関調査」によると、ドイツには2015年時点で181校の日本語教育機関と457人の日本語講師が存在し、13,256人が日本語を学習しています。(*2)

<参照>

(*1)電通 チーム・クールジャパン「ジャパンブランド調査2019」 (*2)国際交流基金 2015年度 海外日本語教育機関調査

ドイツ人のスマホ事情:人気の機種やSNSは?

ドイツはAndroidがiOSより人気で、約70%のシェアを持っています。ドイツの平均月収は2,547.23米ドルと高水準なものの、多くの人はAndroidスマートフォンを選んでいるようです。人気のSNSアプリはiOS・Android共にWhatsAppとFacebook Messengerがランクインしています。これらは共にアメリカ企業のSNSアプリです。また、ロシアのTelegramもAndroidの第2位に入っており、広く使われているようです。

ドイツのイベント・祝日カレンダー(2019年・2020年)

2019年2020年
元旦1月1日(水)1月1日(金)
グッド・フライデー4月10日(金)4月2日(金)
イースター・マンデー4月13日(月)4月5日(月)
勤労感謝の日5月1日(金)5月1日(土)
キリスト昇天祭5月21日(木)5月13日(木)
ウィットマンデー6月10日(月)5月24日(月)
聖霊降臨祭5月31日(日)5月23日(日)
統一記念日10月3日(土)10月3日(日)
クリスマス12月25日(金)12月25日(土)
ボクシング・デー12月26日(土)12月26日(日)

ドイツの歴史

中世ヨーロッパにおいて、「神聖ローマ帝国」として確固たる地位を築き上げていたドイツは16世紀、ルターによる宗教改革が発端でキリスト教の新教・旧教に分かれて激しく対立し、30年戦争で有名な宗教戦争に突入します。結果、神聖ローマ帝国は崩壊し、プロイセン(現在のドイツ)とオーストリアの二大領邦に分かれてしまいます。現在のドイツにあたるプロイセンは、オーストリアとの戦争に勝利するにつれて、だんだんと領地を拡大していきます。この時点では、ドイツは統一されていなく、先述のプロイセンとオーストリアに加え、いくつかの領邦国家が存在しており、分裂状態になっていました。
同時期、隣国のフランスではナポレオンが登場し、国民国家の形成が一気に進みました。ナポレオン戦争に敗れたプロイセンでは、民族・社会構造の改革が必要不可欠との世論がまとまり、農民開放など近代化が進んでいくことになります。19世紀になると、ウィーン会議が開かれ35の君主国と4つの自由都市から成り立つ「ドイツ連邦」が成立しました。しかし、実際には国家としてまとまっているとはいいがたく、ドイツ統一というにはほど遠い状況でした。
こうした状況の中、プロイセンを中心に新たなドイツ統一への道が模索されることとなります。ビスマルクの登場によりドイツの統一は進み、「ドイツ帝国」が誕生しました。ビスマルク時代のドイツでは軍国主義化・重工業化が進み、産業革命および帝国主義の時代に突入しました。「世界政策」の名のもと、急速に植民地獲得に乗り出したのはこの時代です。
第一次世界大戦で敗戦国側に回ったドイツは、ヴェルサイユ条約にて多額の借金を背負わされます。賠償問題はドイツ経済に圧迫をもたらし、そこに訪れた世界恐慌の影響でドイツ経済は困窮します。そこで国民の支持を集めたのが、ナチ党を率いるヒトラーです。ヒトラー体制ではヴェルサイユ体制は破棄され、ユダヤ人排斥が行われます。ヒトラー政権下のドイツと同じくファシズム体制をとる日本・イタリアとともに第二次世界大戦に突入すると、最初は戦況は良かったものの、徐々に悪化していきスターリングラードの戦いでの敗北、連合軍によるノルマンディー上陸作戦でドイツの敗北は決定します。
1945年のヤルタ会談・続くポツダム会談によって、戦後のドイツは連合国側に分割統治されることになります。西側はアメリカ・イギリスを中心とする資本主義勢力、東側は社会主義の浸透を図るソ連によって統治されました。やがて、ドイツは西ドイツ・東ドイツの2つに分断することになります。米ソのイデオロギーの違いがドイツの国家体制に影響を与えたかたちです。次第に、東西で経済格差がはっきりと分かれたことから1961年、「ベルリンの壁」が建設され、ドイツの分断は決定的なものになってしまいます。
しかし、1970年代に入ると西ドイツ首相のブラントによる東方政策が始まり、両陣営には和解のムードが出てきます。1980年代には東ドイツの経済破たんはより顕著なものとなり、ゴルバチョフの改革等もあって1990年、ドイツの再統一が実現しました。その後は、経済復興も進み、戦後再編されたヨーロッパ世界において、中心となる役割を担っています。

<参照>

- 明石書店出版:浜本隆志・高橋憲「ドイツを知るための62章」

ドイツ宗教観

もともとキリスト教国であったドイツでは、南北でカトリックとプロテスタントがシェアを半分ずつ分け合っていました。
しかし、近年では無宗教者が増加傾向にあり、今やドイツの人口の33%から37%が無宗教者となっています。これは、人口でいうと2,700万人から3,000万人にあたります。無宗教の多くは若者であり、増加の要因としてはキリスト教の教会税が深くかかわっています。
教会税は、深い歴史を有し、協会運営などの財政基盤を支えてきたものです。子供が誕生した場合に洗礼を受けてキリスト教徒になったり、常民登録の際にキリスト教と記入すれば、教会税の納入が義務化されます。
一昔前であれば、教会に行かなければ無神論者とされ、世間から白い目で見られる傾向がありました。しかし、現在では、無宗教をあまり問題にしない風潮がドイツで広まっており、特に若者の間では出費を節約するために教会を脱退し、教会税を払わない選択をする人が増えています。
とはいえ、「教会は脱退していて敬虔なキリスト教徒ではないが、いちおうキリスト教を信仰している」といったドイツ人も一定数存在しています。2010年時点で、カトリックとプロテスタントの人数は2,400万人で比率はほぼ同率です。近年ではイスラム教徒も400万人前後(2010年時点)いるとされますが、ドイツにおいて基本的にマジョリティーを占めるのはキリスト教徒です。

<参照>

- 明石書店出版:浜本隆志・高橋憲「ドイツを知るための62章」