- リピーター率の少なさ、今後の呼び込みが重要
- ハイシーズンは8月、夏に一点集中
- 観光目的では長期滞在する訪日スペイン人が多数
インバウンドにおけるスペイン市場の特徴とは
2019年の訪日スペイン人は13万人を超え、2014年と比較すると約2.2倍に増加しています。2019年、訪日スペイン人は一人あたり221,331円を訪日旅行時に使いました。2018年に訪日したスペイン人を年齢・性別ごとに見てみると、男女共に30代が大きな割合を占めています。また、訪日スペイン人のインバウンド市場で特筆すべき点は「リピーター率の少なさ」「ハイシーズンは8月」「観光目的では長期滞在が多数」の3つです。それぞれ詳しく解説していきます。
訪日スペイン人インバウンド市場、3つの特徴を解説
1. リピーター率の少なさ、今後の呼び込みが重要
ここ数年、訪日スペイン人は年々増加していますが、2019年の調査では約72%の訪日スペイン人が初来日でした。これは今回調査したヨーロッパ諸国の中では最も低いリピーター率で、特にリピーター率の高いイギリスやと比較するとその差は明確です。スペイン国内でのプロモーションを伸ばしたり、旅行会社などと提携することで更に多くのスペイン人を呼び込める機会が眠っていると言えるでしょう。
2. ハイシーズンは8月、夏に一点集中
訪日スペイン人数を月別に見てみると、2019年は8月に最も多くのスペイン人が訪日しています。2019年8月の訪日スペイン人は20,009人で、2019年度訪日スペイン人全体の約15%が8月に集中していることが分かります。8月はスペインでは夏季休暇となるため、家族連れなどで訪日旅行を楽しむスペイン人が多く存在すると考えられます。そのため8月にピンポイントでインバウンド対策を行うことで、効果的な集客が見込めそうです。
3. 観光目的では長期滞在する訪日スペイン人が多数
観光目的で訪日するスペイン人の約93%は、7〜90日間日本に滞在しています。スペインと日本は時差にして7時間離れているため、たまの訪日旅行を満喫するために滞在期間を長く取るスペイン人が多数存在するようです。一方、業務目的で訪日するスペイン人の場合は4〜6日間の滞在が約61%を占めており、3日以内の滞在も約5%と、観光目的での訪日と対象的になっています。長期滞在する訪日スペイン人向けに様々なサービスやアクティビティを提供できる市場が存在しているとも言えるため、インバウンド対策の際には意識してみると良いかもしれません。
スペイン人の特徴
スペイン人の性格・国民性
スペイン人の性格・国民性には、一般的に以下のような特徴があるといわれています。
- 華やかで情熱的
- 闘牛とフラメンコで有名なスペインに暮らす人たちも、同じように情熱的な性格・国民性を兼ね備えています。
- 関西人に近い?
- スペイン人の性格・国民性は、関東人が関西人に描くイメージに類似している点がいくつかあります。「陽気」「自由」「マイペース」「おせっかい」「大げさ」などがその例にあたります。また、スペイン独特の文化である「シエスタ(お昼寝)」もマイペースなスペイン人を象徴しているものです。
- 喜怒哀楽がはっきりしている
- スペイン人は喜怒哀楽といった感情を表現することに長けています。自分の感情を包み隠さずに、相手に表現できます。また、スペイン人は一般的に親切だといわれており、相手に気を遣うことに長けています。例えば、スペイン人は会話の途中で相手の気持ちを幾度となく確認します。相手が何を言おうとしているのかを、どうしたら自分の気持ちが相手に適切に伝わるのかを常に考えて行動しています。
<参照>
- 草思社出版:片野優須貝典子著「こんなに違うヨーロッパ各国気質 32か国・国民性診断」
スペイン人と接するうえで気を付けておきたいマナー
スペイン人と接する場合には、以下のポイントに注意しましょう。
- ドアを開けて先に女性を入れるなど、レディーファーストを心がける
- 初対面の人には家族や仕事の話など個人的なことを聞かない
- 食事の際は、食器を持ち上げない
- 食事の際は、音をたてないようにする
- 食事の際は、両腕は常にテーブルの上に出しておく
- 女性にお酌をさせるのは避ける
<参照>
- 明石書店出版:坂東省次「スペインを知るための60章」
スペイン人の親日度・日本語学習者数
スペインは電通「ジャパンブランド調査」の調査対象外のため、親日度について不明です。(*1) 国際交流基金「海外日本語教育機関調査」によると、スペインには2015年時点で80校の日本語教育機関と192人の日本語講師が存在し、5,122人が日本語を学習しています。(*2)
<参照>
(*1)電通 チーム・クールジャパン「ジャパンブランド調査2019」 (*2)国際交流基金 2015年度 海外日本語教育機関調査
スペイン人のスマホ事情:人気の機種やSNSは?
スペインはAndroidがiOSより人気で、約78%のシェアを持っています。スペインの平均月収は1,457.63米ドルと中水準であり、多くの人はAndroidスマートフォンを選んでいるようです。人気のSNSアプリはiOS・Android共にWhatsAppとTelegramrがランクインしています。WhatsAppはアメリカ企業のSNSアプリで、Telegramはロシア製のアプリです。また、アメリカのFacebookがiOSの第2位に、フランスの大学の学生によって開発されたオープンソースで作られているビデオ会議アプリ「Jitsi Meet」がAndroidの第2位にランクインしており、それぞれ人気のようです。
スペインのイベント・祝日カレンダー(2019年・2020年)
2019年 | 2020年 | |
---|---|---|
元旦 | 1月1日(水) | 1月1日(金) |
公現祭 | 1月6日(月) | 1月6日(水) |
グッド・フライデー | 4月10日(金) | 4月2日(金) |
勤労感謝の日 | 5月1日(金) | 5月1日(土) |
聖母昇天祭 | 8月15日(土) | 8月15日(日) |
スペインの日 | 10月12日(月) | 10月12日(火) |
諸聖人の日 | 11月1日(日) | 11月1日(月) |
憲法記念日 | 12月6日(日) | 12月6日(月) |
聖母受胎祭 | 12月8日(火) | 12月8日(水) |
クリスマス | 12月25日(金) | 12月25日(土) |
スペインの歴史
イベリア半島に位置するスペインは、もともとイスラム世界の一部でした。8世紀から15世紀まで約800年ほどイベリア半島は、中東・アフリカを中心に最盛期を迎えていたイスラム勢力の領土でした。そのため、今でもスペイン・イベリア半島には、そのときのイスラム文化の影響が色濃く残っています。例えば、首都のマドリードはアラビア語で「湧き水の場所、水に恵まれた場所」を表します。8世紀に侵攻したアラブ人が、拠点とすべきにふさわしい場所を探し出した背景が思い浮かびます。
当時隆盛を誇っていたイスラム勢力をイベリア半島、西ヨーロッパから追い出し、キリスト教の土地を守るという名目で行われたレコンキスタ運動(国土回復運動)の結果、15世紀にカスティリア王国とアラゴン王国が統合し、スペインが誕生します。
その後の大航海時代の主役となったスペインは、300年にわたる黄金時代を迎えます。徐々に覇権を失い、衰退化していくと19世紀にはナポレオンが侵攻すると国土はさらい衰退します。その後は、基本的に国内情勢は安定せず、1939年から1975年まではフランコによる独裁政治が続きます。彼の死後、スペインはようやく近代化の道を歩み始め、1982年には北大西洋条約機構(NATO)に,1986年にはヨーロッパ共同体(EC)に加盟。1992年のEU発足とともに加盟国となり、1999年にはヨーロッパ単一通貨ユーロの導入を始めました。
世界的に有名な観光地の多くが位置するスペインでは、現在、観光産業が好調であり、2016年には7,556万人の外国人観光客が訪れています。
<参照>
- 明石書店出版:坂東省次「スペインを知るための60章」
スペイン宗教観
キリスト教、なかでもカトリックと結びつきが強いスペインでも移民の増加ともに、宗教観は変わりつつあります。国立統計局発表の「数値におけるスペイン2012」によると、近年スペイン語圏ではなくそれ以外の地域からの移民が増えているとのこと。例えば、以前多かったエクアドル人やコロンビア人の移民は減少傾向にあり、その代わりにルーマニアやモロッコ、イギリスなどからの移民が増加しています。彼らが信仰する宗教は一般的にイスラム教や正教、イギリス国教など元来スペインにおいて根付いていた宗教とは違うものです。移民の増加とともに、新たな宗教がスペインに入ってきているという点は明らかです。
2010年時点でスペインに暮らすイスラム教徒は130万人となっており、年々その人数は多くなってきています。ただ、国民の多くは未だにカトリックを信仰しているという点には留意するべきでしょう。
<参照>
- 明石書店出版:坂東省次「スペインを知るための60章」