最近のインバウンド関連ニュースで「免税」というキーワードをよく目にします。読者の方にも海外旅行や海外出張をする時に空港の免税店でのお買い物を楽しみの一つにしている方が多いのではないでしょうか。
先日のニュースで、観光庁が、訪日外国人観光客が酒造やワイナリーなどで日本で製造された酒類を購入した場合、酒税を免除する制度を2017年度税制改正要望に盛り込む方針を固めた、との報道がありました。そもそも、「免税」とは「税金を免除すること」の総称であり、この場合の酒税の免除も「免税」と言えます。
この「免税」というキーワード、「免税店」という言葉がメディアで取り上げられるようになったことで「消費税を免除することでしょ?」「いや、関税を免除することじゃないの?」と、いまいちわかりづらいものとなってしまっている印象があります。
そこで今回は、[前編]として訪日外国人観光客にかかわる「税金」と、[後編]としてそれに対する「免税」の制度、用語についてまとめます
<後編>
免税とは?タックスフリーとデューティーフリーの違い・制度・税金 [後編]
[前編]では、主に訪日外国人観光客の消費行動に関わる税金の種類や課税額について紹介しました。[前編]でも触れたように、インバウンド関連ニュースにおいては「免税」や「免税店」というキーワードを多く目にします。しかし、免税の制度やその意味については周知されていないのが現状です。[後編]では、タックスフリーとデューティーフリーの違いを中心に、免税店の種類や、免税されている税金の種類について解説します。インバウンド受け入れ環境整備の資料を無料でダウンロードする「翻訳・多言語化」の資料を無料でダウン...
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訪日外国人観光客の消費行動に関わる税金まとめ
現在日本の税金のは所得にかかる「所得課税」、資産にかかる「資産課税等」、そして消費行動にかかる「消費課税」の3本柱で成り立っています。その中で訪日外国人観光客にかかわるのは、基本的には最後の「消費課税」です。
そして、消費課税には消費税(含:地方消費税)、酒税、たばこ税(含:たばこ特別税、地方たばこ税)、揮発油税(含:地方揮発油税)、石油ガス税、自動車重量税、航空機燃料税、石油石炭税、電源開発促進税、関税、とん税(含:特別とん税)、ゴルフ場利用税、自動車取得税、軽油引取税、自動車税、軽自動車税、鉱区税、狩猟税、鉱産税、入湯税があります。
このなかで訪日外国人観光客の消費行動に関わる主な税は、
- 消費税
- 酒税
- 入湯税
- 関税
の4つが考えられます(注:間接的に関係するものなどについては省いています)。これらの税金がどれくらい課されているのか、そして「免税」制度とどのように関わっているのかについて説明します。
<参考>
財務省 国税・地方税の税目・内訳:http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/001.htm
消費税:消費することにかかる税金
消費税とは、その名のとおりモノやサービスを『消費』したときにかかる税金です。現在、日本では消費額の8%が消費税として徴収されています。もちろん、訪日外国人観光客にも適用されており、免税手続きをとらなければ、訪日外国人観光客の消費行動全てに消費税が課税されています。
タイトル | 内容 |
---|---|
課税額 | 消費額の8% |
課税対象 | モノやサービスを消費すること |
仮に内税で10,000円の消費をした場合は、約740円の消費税が含まれています。消費税が免税されると、およそ7.4%OFFで買い物ができることになります。
<参考>
国税庁 消費税:https://www.nta.go.jp/zeimokubetsu/shohi.htm
酒税
酒税とは、アルコール分1%以上の飲料に課される税金です。酒類の販売価格に含まれているため、訪日外国人観光客が日本で酒類を買ったり飲んだりした場合に適用されています。
課税方法は、酒類の分類とアルコール分によって決まっているため、安いもので、みりんや雑酒で1キロリットルあたり20,000円、最高ではアルコール度数96%のスピリッツの場合1キロリットルあたり960,000円の課税がされるなど、ものによって差があります。
タイトル | 内容 |
---|---|
課税額 | 1キロリットルあたり20,000円〜960,000円 |
課税対象 | アルコール分1%以上の飲料 |
冒頭でご紹介した観光庁の方針は、この酒税を訪日外国人観光客が酒造などから購入した場合には免税しよう、というものです。訪日観光土産として日本酒を購入した場合、日本酒は「清酒」カテゴリーなので、課税は1キロリットル当り120,000円。一般的な日本酒の販売方法である一升瓶はおよそ1.8リットル。以上から、日本酒の一升瓶を購入した場合、一律216円の酒税がかかっている事になります。
訪日外国人観光客の酒税免除が実現した場合、例えば、お土産としてお手頃な税込3,000円の日本酒を購入したとすると、酒税免除+消費税免税すれば2,561円で購入できることになり、訪日外国人観光客はおよそ14%OFFで購入できるようになります。
<参考>
財務省 酒税の税率:http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/123.htm
入湯税
入湯税とは、鉱泉浴場、つまり温泉施設を利用する場合に課せられる税金です。通常、温泉施設の入浴料や温泉をもつ宿泊施設の宿泊代に含まれています。入湯税は地方税のため、入浴した温泉のある自治体によって課税額は様々ですが、おおよそ150円に設定されていることが多いとのこと。
タイトル | 内容 |
---|---|
課税額 | 利用または1泊につき70円〜300円 |
課税対象 | 温泉施設(宿泊・日帰り含む)の利用 |
訪日外国人観光客の訪日目的においても温泉に入ることは非常に人気があります。ゴールデンルートに所属する箱根町の場合、宿泊を伴うものの場合1人1泊につき150円、宿泊を伴わないもの(日帰り入浴)の場合1人につき50円の入湯税が課せられています。
現在では訪日外国人に対する入湯税の免税は検討されていません。また、免税したとしても日帰りの場合入浴料1000円〜2000円程度が相場ですので、50円〜150円割引されたとしても、その手続きを考えると、あまりメリットがないように思われます。
<参考>
スパビジネス研究 入湯税を考える:http://www.c-c.co.jp/onsen3.html
関税
関税とは国境を超える貨物に対して課せられる税金です。輸入関税とも言われ、海外から日本に輸入したものに対して課税されています。訪日外国人観光客が日本で海外製の製品などを購入した場合は、間接的にこの関税が課せられていることになります。
タイトル | 内容 |
---|---|
課税額 | 品目、輸出国によって様々で、概ね5%〜20%ほど。 詳細は実行関税率表参照 |
課税対象 | 日本に輸入された貨物 |
訪日外国人観光客が関税を免税される買い物としては、国際空港出国ゲートにある免税店(デューティーフリーストア)での買い物があります。現在では日本国内での海外製品の買い物については、関税が免税されることはありません。また、訪日外国人観光客に関連する関税としては、日本で買い物したものを自国に持ち帰った時の「自国での関税」があります。
2016年4月に中国政府が訪日中国人観光客の爆買い行動を抑制しようと、関税を引き上げたニュースがありましたが、この場合の「関税」は、「中国政府が徴収する関税」ですので、日本の税制や免税制度とは別枠の話になります。
<参考>
税関 関税のしくみ:http://www.customs.go.jp/shiryo/kanzei_shikumi.htm
まとめ:訪日外国人観光客が払っている税金は消費税だけではない
以上のように、訪日外国人観光客が日本でのショッピングで支払っている税金は、消費税に限ったものではありません。また、今回はご紹介を省略したものの、その他ゴルフを楽しめばゴルフ場利用税、たばこを購入すればたばこ税(含:たばこ特別税、地方たばこ税)がかかります。
これら全てが酒税のように免税対象として検討されるとは限りません。例えば先述の入湯税のように、免税したところでそこまで割安感がなく、あまり消費促進にならないものもあるため、免税の議論には慎重になるべきでしょう。
しかしながら、今回の酒税免税検討のケースを見るに、今後訪日外国人にかかる税制について何かしらの免税などの特例が検討される可能性は大いにあり、今後チェックしていく必要があります。
次回の[後編]は、以上の税金を免除する「免税」とは何なのか、また「免税」とは何なのかについてご紹介していきます。
<後編>
免税とは?タックスフリーとデューティーフリーの違い・制度・税金 [後編]
[前編]では、主に訪日外国人観光客の消費行動に関わる税金の種類や課税額について紹介しました。[前編]でも触れたように、インバウンド関連ニュースにおいては「免税」や「免税店」というキーワードを多く目にします。しかし、免税の制度やその意味については周知されていないのが現状です。[後編]では、タックスフリーとデューティーフリーの違いを中心に、免税店の種類や、免税されている税金の種類について解説します。インバウンド受け入れ環境整備の資料を無料でダウンロードする「翻訳・多言語化」の資料を無料でダウン...
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