[前編]でも触れたように、インバウンド関連ニュースにおいては「免税」や「免税店」というキーワードを多く目にします。しかし、免税の制度やその意味については周知されていないのが現状です。
[後編]では、タックスフリーとデューティーフリーの違いを中心に、免税店の種類や、免税されている税金の種類について解説します。
今さら聞けない「免税」とは?インバウンド担当者が知っておきたい訪日外国人消費に関わる税金まとめ
最近のインバウンド関連ニュースで「免税」というキーワードをよく目にします。読者の方にも海外旅行や海外出張をする時に空港の免税店でのお買い物を楽しみの一つにしている方が多いのではないでしょうか。 先日のニュースで、観光庁が、訪日外国人観光客が酒造やワイナリーなどで日本で製造された酒類を購入した場合、酒税を免除する制度を2017年度税制改正要望に盛り込む方針を固めた、との報道がありました。そもそも、「免税」とは「税金を免除すること」の総称であり、この場合の酒税の免除も「免税」と言えます。...
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タックスフリー(TAX FREE)の意味とは
タックスフリー(TAX FREE)とは、消費税が免税になるシステムのことです。
本来「tax」は政府に納める税金のことですので、消費税以外も含まれる意味のため、混乱をよびがちです。
近年インバウンドがらみのニュースなどで「免税店」といわれるものは、基本的には「タックスフリーショップ(タックスフリーストア)」であり、「消費税の免税手続きができる店鋪」を意味します。
消費税免税制度とは:市中免税店で消費税の免税手続きができる制度
前述のようなタックスフリーで買い物ができる店舗のことを、「市中免税店」または「消費税免税店」といいます。店鋪は、国税庁に免税店の申請をし、許可を得ることで「市中免税店」として物品を販売することができるようになります。
市中免税店で消費税の免税を受けることが出来るのは「非居住者」のみです。つまり、基本的には訪日外国人観光客がその対象となります。
また、免税の対象となる消費は「輸出する、通常生活の用に供される物品(一般物品、消耗品)の消費」に限られます。つまり、輸出することを前提として一般消費者として購入した「物品」であることが要件です。
そのため、化粧品をはじめとした消耗品は国内で使うことが出来ないように専用の袋に入れる、といった対応があり、また、事業用として購入したものや、形のないサービスについては、この消費税免税を受けることはできない、という制度になっています。
<市中免税店の例>
ドン・キホーテ、多慶屋などのディスカウントストア、マツモトキヨシなどのドラッグストア、大手百貨店など、街中で「免税」とか掲げている店鋪全般
デューティーフリー(DUTY FREE)の意味とは
デューティーフリーとは、消費税、関税、酒税、たばこ税などの諸税が免除されることです。
本来「duty」は輸入物品に課せられる税金、つまり関税を指しますが、「デューティーフリー」という用語においては、関税以外の諸税も免除されることを意味します。
海外旅行の際に、空港で安くお酒やたばこ、海外ブランド品を買うことができるのは、この「デューティーフリー」の意味での「免税店(デューティーフリーショップ/デューティーフリーストア)」です。この意味での「免税店」は「空港型免税店」とも呼ばれます。
デューティーフリーは「出国手続き後の空港内出国エリアは、制度上、日本国外 → だから日本の税金が課されない」という仕組みで免税されます。そのため日本においては、国際空港の出国エリアにしか「空港型免税店」は存在しません(後述の「空港型市中免税店」および「沖縄型特定免税店」を除く)。
「空港型免税店」では、消費税にかぎらず、酒税やたばこ税、関税(日本に輸入された商品の場合)といった諸税が免除されています。消費税免税のみの「市中免税店」とちがい、免税される税金の種類が多いため、割引率は「市中免税店」以上となります。
<空港型免税店の例>
全日空系列の「ANA DUTY FREE SHOP」をはじめとした、成田空港、羽田空港、関西国際空港といった国際空港の出国エリア内の店鋪全般
最近になって登場し始めた「空港型市中免税店」
「空港型免税店」は、その割安感から消費行動の促進をはかりやすいものの、名前の通り空港でしか買い物が出来ないという不便さがあります。
それを解決すべく登場したのが「空港型市中免税店」です。市中にありながら「空港型免税店」と同様の免税を受けることができます。今年1月に銀座三越内にオープンした「Japan Duty Free GINZA」は、この「空港型市中免税店」に該当する初の免税店です。
免税の仕組みは「空港型免税店」と同様で、「Japan Duty Free GINZA」での買い物は日本国外での消費扱いになるというもの。利用するにはパスポートと、羽田空港または成田空港発の国際線搭乗券(1ヶ月前〜前日までの搭乗)が必要です。そのため、これから海外に飛び立つ日本人に限らず、これから帰国する訪日外国人観光客も利用対象になります。
「Japan Duty Free GINZA」で購入した商品は、その場では受け取ることができません。日本国内での横流しを防ぐため、出発の空港まで配送され、出発当日に空港で受け取りをする、という手順を踏みます。
そのため、訪日外国人観光客にとっては、空港までの荷物を少なくすることができ、手ぶら観光の促進にも期待されます。
<空港型市中免税店の例>
現存では東京・銀座の「Japan Duty Free GINZA」と福岡・天神の「FUKUOKA DUTY FREE TENJIN」のみ。その他、東京・新宿と大阪・ミナミに建設予定。
<関連記事>
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沖縄にも空港型のような免税店がある「沖縄型特定免税店」
沖縄においては1998年(平成10年)に施行された沖縄振興特別措置法にもとづき、「沖縄型特定免税店」というタイプの免税店が存在しています。
この「沖縄型特定免税店」は、本来の意味の「デューティーフリー」に近しく、「関税」のみを免税する免税店です。
そのため、海外製の商品などの輸入品を安く購入することができます。利用できる対象者は日本人、訪日外国人観光客問わず、「沖縄県以外の日本の地域に行く人」です。
購入の際に「沖縄発、日本のどこかへの搭乗券が必要」であったり、「受け取りは空港」である点を考えると、前述の「空港型市中免税店」に非常によく似た制度であるといえます。
なお、この「沖縄型特定免税店」は現状「Tギャラリア沖縄 by DFS」のみで、こちらの店鋪は「消費税免税店」とはなっていないため、まさしく関税のみの免税の「デューティーフリーストア」となっています。
<沖縄型特定免税店の例>
「Tギャラリア沖縄 by DFS」のみ
タックスフリーショップ?デューティーフリーストア?免税店?
訪日外国人観光客が負担している税金は、[前編]でも解説したとおり、主に
- 消費税
- 酒税
- 入湯税
- 関税
の4種類があります。これらの税金を免除する「免税」という制度や「免税店」とはどのようなものなのでしょうか。
日本語では「免税」とひとくくりになってしまっていますが、「免税」には「タックスフリー」と「デューティーフリー」の2種類があります。それぞれの詳細な説明の前にざっくりとまとめると、
- タックスフリー= 消費税のみを免税 する
- 市中免税店(消費税免税店)が該当
- デューティーフリー= 消費税以外にも関税、酒税、たばこ税を免税 する
- 空港型免税店が該当(派生系として空港型市中免税店がある)
となります。
インバウンド担当者なら免税店の種類を知っておこう
「免税店」といっても、以上のように大きく分けて
- タックスフリー:消費税のみを免税する「市中免税店(消費税免税店)」
- デューティーフリー:消費税以外にも関税、酒税、たばこ税を免税する「空港型免税店」
の2種があり、またデューティーフリーの派生として
- 街中にあるのに空港型免税店と同様の免税をする「空港型市中免税店」
- 沖縄に存在する関税のみを免税する「沖縄型特定免税店」
が存在しています。
[前編]でも触れたニュースの通り、今後、酒税に限らず訪日外国人観光客向けの免税制度が広がりを見せる可能性は大いにあります。そのニュースを読み解くには、前提知識として、今の日本の税制と免税制度を把握しておく必要があります。
<前編はこちらから>
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<参考>
- 国土交通省 免税店とは:http://www.mlit.go.jp/kankocho/tax-free/about.html
- 国土交通省 免税店になるには:http://www.mlit.go.jp/kankocho/tax-free/howto.html
- 免税店.jp 市中免税と空港型免税:https://taxfree.jp/announce/topic20160324/
- 千葉日報 銀座で買い物→受け取りは成田 三越に空港型市中免税店 訪日客向け新サービスきょう始動:http://www.chibanippo.co./news/economics/300602
- 沖縄地区税関 沖縄型特定免税店制度 :http://www.customs.go.jp/okinawa/11_tokumen/
- TAX FREE OKINAWA:http://taxfree.okinawa/
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