イギリスで2016年6月23日、EU離脱を焦点とした国民投票が行われました。マスコミ各社で大々的に報じられたので結果はご存知かと思いますが、僅差で離脱支持者数が上回り、イギリスはEU創設以来、初となる離脱国になることが決まりました。
イギリスが実際にEUを離脱するのは数年後にもかかわらず、日本ではこの影響により株価の乱高下、1ドル100円を下回る急激な円高が発生。イギリス国民の選択は、遠い異国の地・日本にまで大きな衝撃を与えています。自動車をはじめとした輸出力の高い製造業はもちろん、訪日外国人観光客を対象にインバウンドビジネスに取り組む観光業、宿泊業などの今後が懸念されています。
このような事態はいったいいつまで続くのでしょうか。今回は、イギリスのEU離脱によるインバウンドビジネスの影響について解説していきます。
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イギリスはなぜ、EUを離脱したのか
EU設立の背景には、平和への願い
EU設立の背景には、1929~1945年まで続いた第二次世界大戦があります。主戦場となったヨーロッパでは多くの人が亡くなり、経済的な困窮を経験しました。また、この戦争の一部にあたる太平洋戦争に参加していた日本には原子力爆弾が投下され、世界にショックを与えました。
終戦後、ヨーロッパでは二度とこのような悲劇を起こしてはならない、と平和を望む声が高まりました。1946年、イギリスのウィンストン・チャーチルはヨーロッパ合衆国構想を提唱。1949年、人権保護や民主主義の発展、文化協力などを図り、経済的、社会的進歩のためにヨーロッパ各国が団結することを目指す「欧州評議会(Council of Europe)」が設立されました。
また、フランスやイタリア、ベルギー、西ドイツなどによる欧州石炭鉄鋼共同体が1951年に誕生。当時のヨーロッパではこのような超国家的組織が必要視されており、この他にも超国家的な組織がいくつも現れています。頓挫したものの、欧州防衛共同体、欧州政治共同体を設立しようとする動きもありました。
こうしてヨーロッパに生まれた複数の組織を統一する形で、EC(欧州共同体)が誕生。当初はベルギー、ドイツ、フランス、イタリア、ルクセンブルグ、オランダの6ヶ国でしたが、徐々に拡大。1986年には12ヶ国になりました。ECは1993年に、EU(欧州連合)へと発展。2016年現在は28ヶ国が加盟しています。
イギリスがEUを離脱した大きな原因は、移民
第二次世界大戦後、ヨーロッパに超国家的な組織が誕生したのは、世界平和、経済発展などのために各国の団結が必要とされたため。EUでもこの傾向は引き継がれており、加盟国内では人や物、サービス、資本が自由に移動できます。2004年、東欧諸国が加盟して以降、経済的に豊かで、手厚い社会保障制度を持つイギリスには国外からの移民が集まるように。外国人犯罪件数が増加し、国民からは「移民が職を奪う」「福祉予算を圧迫する」と不満があがり始め、キャメロン首相は2010年の総選挙で、2015年に年間移民数を10万人以下にすることをマニフェストに掲げました。また、キリスト教国であるイギリスで、多くのイスラム教徒が生活するようになり、文化、宗教的な摩擦が発生したのも原因のひとつとして挙げられています。
移民を問題視する声が高まったとしても、EUに加盟している限り対策をとることは困難です。イギリス保守党は、2015年の総選挙で、同国がEUに残留することの是非を問う国民投票を実施することを公約に。過半数を越える議席を獲得したため、2016年6月23日に国民投票が行われ、その結果としてEUを離脱するになりました。
イギリスのEU離脱によるインバウンドビジネスへの影響
イギリスのEU離脱によるインバウンドビジネスへの影響としてまず挙げられるのは、円高です。日本円は信頼が高く、今回のような緊急事態に陥ると買われる傾向があり、必ずといっていいほど円高になります。そうすると訪日外国人観光客が日本旅行しにくくなるだけでなく、景気動向への不安から日本人観光客にも出費を控えるようになります。
影響は一時的なものと見られており、1週間~1ヶ月ほどで市場は安定すると言われています。しかし、EU離脱国が現れるのは史上初のこと。今後もさまざまな問題が現れることが考えられ、再び円相場は大きく動く可能性があります。
また、イギリスと日本の経済的な繋がりが深いことから、別の問題が発生するとも言われています。英語は国際語と言われているものの、英語を母国語とするEU加盟国はイギリスのみ。「EUの窓口」としてイギリスの企業と取引したり、工場を設立したりする日本企業は少なくありません。まだ離脱していないものの、今後の影響が懸念されています。
まとめ:円高の発生を想定したうえで、インバウンドビジネスに取り組む
イギリスのEU離脱は日本経済にまで大きな影響を及ぼしました。特に円高になったことは、インバウンドビジネスに不利な状況をもたらしています。国民投票の結果発表による混乱は一時的なものですが、今後、別の問題が表面化する可能性もあります。
訪日外国人観光客を対象とするインバウンドビジネスには、金融市場の動向が大きく影響します。毎年のように円高が報道されていることを考えると、今回のようなトラブルはこれからも発生するでしょう。常に緊急事態を想定しながら、取り組んでいく必要があるのではないでしょうか。
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