東京都心部のタクシーの初乗り運賃は730円。この金額は諸外国の都市に比べて非常に高いことをご存知でしょうか。ニューヨーク、ロンドンは300~400円と半額程度になっており、日本のタクシーは訪日外国人観光客から見ると割高感のある交通手段なのです。
この問題を解決すべく、国土交通省は平成28年(2016年)8月から東京都内で「東京のタクシー初乗り運賃410円に係る実証実験」を行い、10月17日に結果を発表しました。日本のタクシーは今後、どのように変わっていくのか。実証実験の調査結果から探ってみましょう。
訪日ラボのメールマガジン登録はこちら>(無料)
訪日外国人観光客だけでなく、日本人のタクシー利用者増も狙い
タクシーの初乗り運賃値下げには、さまざまな狙いがあります。1つは上述の通り、インバウンド需要に対応すること。訪日外国人観光客の金銭感覚に合わせることで、利用増大が狙える可能性があります。
また、日本人の利用者数を増加させる狙いもあります。日本では世界に類を見ない速度で高齢化が進展しており、流通機能や交通網の弱体化に伴って発生している「買い物弱者」が問題視されています。その人数は約700万人にのぼるとされ、なんとしても高齢者の生活の足を確保する必要があるのです。
そこでタクシー大手・日本交通は平成28年(2016年)4月5日、一部を除く東京都内の運賃変更申請を国土交通省に提出。現在の初乗り運賃は2kmで730円であるのに対し、申請された運賃は1.059kmで430円。初乗り区間後は237mごとに80円を加算し、約2キロ乗ると従来の初乗り運賃同様、730円になります。
実は日本におけるタクシー利用者のうち、2km未満しか乗車しない人は全体の約4分の1。余分にお金を払っている人が少なからず存在しました。重い荷物を持っているとき、病気のときなどに「歩くのは大変だけど、近いからタクシーはやめておこう」と我慢した覚えがある人も多いのではないでしょうか。
日本交通はこの初乗り運賃の改変を”運賃の組み換え”と表現しており、2km以上乗車する場合の運賃はほとんど変わりません。1万円分以上走行すると数百円程度値上がりするものの、こういったタクシーの利用は全体のうち約1%。日本交通にもユーザーにもほとんど影響しない例外的な事態と捉えてよいのではないでしょうか。
「東京のタクシー初乗り運賃410円に係る実証実験」の結果は?
以上のような背景から、行われたのが「東京のタクシー初乗り運賃410円に係る実証実験」。平成28年8月5日~9月15日まで東京都新橋駅、浅草駅、新宿駅、東大病院前の4ヶ所で実施されました。23社のタクシー40台が初乗り運賃410円で走行し、利用回数は約1万5000回にのぼり、約1万のアンケート回答を得ました。なお、そのほとんどが日本人で外国人は167人にとどまっています。
日本人の回答
アンケートに回答した日本人のタクシー平均利用回数は、月に4.8回。410円タクシーはさらに2.2回多く、約45.8%増という結果になりました。料金はそこまで変わらないはずなのですが、大きな成果があがっていることが分かります。
また、410円タクシーに関する利用意向調査も行われ、初乗り運賃の変更に伴い、利用回数が増えるかどうかという意見も調べられました。全体結果は以下のとおりです。
- 6回以上増える:15.8%
- 月に3~5回程度増える:20.3%
- 月に1~2回程度増える:23.9%
- ほとんど変わらないと思う:29.7%
- 月に1回以上減る:1.8%
- 不明:8.5%
※回答者数:日本人10201人
「増える」という回答は全体の約6割にのぼる一方で、「減る」と答えたのはわずか1.8%。ここでも410円という初乗り運賃の安さに対する好意的な反応が見られます。
外国人の回答
外国人を対象とした調査は東京都新橋駅、浅草駅、新宿駅、東大病院前と実験場所ごとにまとめられました。
-
新橋
- 安価:39.6%
- 適当:39.6%
- 高価:2.8%
- 不明:17.9%
-
- 安価:0%
- 適当:41.7%
- 高価:25%
- 不明:33.3%
-
- 安価:37.8%
- 適当:43.2%
- 高価:5.4%
- 不明:13.5%
-
東大病院前
- 安価:44.4%
- 適当:22.2%
- 高価:0%
- 不明:33.3%
-
全体
- 安価:36.5%
- 適当:39.5%
- 高価:4.8%
- 不明:19.2%
場所ごとにアンケート結果が異なり、浅草では「安価」、東大病院では「高価」という回答が見られませんでした。しかし、全体としては約8割が「安価」「適当」と回答しており、おおむね良い結果を得られたといっていいのではないでしょうか。
まとめ:初乗り運賃の見直しで、利用拡大!
諸外国に比べて高いとされる日本のタクシーの初乗り運賃を下げる動きに伴い、国土交通省が実証実験を行いました。訪日外国人観光客の価値観に合わせてインバウンド需要の獲得に加え、日本人利用者を増加させる効果も見込まれています。
実証実験では約1kmで410円という初乗り運賃が設定され、実際約6割の日本人利用者が利用回数が増える、外国人の約8割が「安価」「適当」と回答。2km以上利用する場合、値下げ効果はほとんど発生しないのですが、絶大な効果が確認されました。
【11/26開催】インバウンドの受け入れを「仕組み化」で乗り切る!宿泊・観光業の人手不足を解消する革新的ソリューションを紹介

外国人観光客の爆発的増加に伴い、スタッフの人手不足に直面する宿泊・観光業界。
さらには多言語対応やあらゆるサポートも求められ、キャパシティが限界状態にある事業者も少なくはないでしょう。
そこで訪日ラボでは、「人手不足を補いながらインバウンド対応を強化する」実践策を紹介するセミナーを開催します。
DXによる業務効率化や自動化、多言語対応の仕組みづくり、24時間・22言語対応の医療通訳付きオンライン診療、そして多言語での口コミ・MEO対策の無理のない運用方法まで、“少ない人員でも安心して外国人観光客を受け入れられる仕組み” を解説します。
<セミナーのポイント>
- 人手不足の現場でも実践できる、インバウンド対応・業務効率化のヒントがわかる!
- 多言語対応や医療連携など、“安心・安全な受け入れ体制”を整える具体策が学べる!
-
集客から滞在サポートまで、インバウンド受け入れを総合的に学べる!
→【11/26開催】インバウンドの受け入れを「仕組み化」で乗り切る!宿泊・観光業の人手不足を解消する革新的ソリューションを紹介
【インバウンド情報まとめ 2025年11月前編】中国、日本への渡航自粛を要請 / 2025年冬の国際定期便、過去最高の便数に ほか

訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に10月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
※訪日ラボ会員にご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→中国、日本への渡航自粛を要請 / 2025年冬の国際定期便、過去最高の便数に ほか:インバウンド情報まとめ【2025年11月前編】
今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」
訪日ラボの会員限定コンテンツ「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!
その他、訪日ラボの会員になるとインバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い教科書コンテンツやインバウンドを分析したレポート、訪日ラボのコンサルチーム登壇のセミナーなど役立つコンテンツが盛りだくさん!



![【2025年最新】 インバウンド人気観光地ランキング[京都府編] いま訪日客に人気No.1のスポットは?](https://static.honichi.com/uploads/entry/image/13784/small_80521fe483d45c8ab18de281693a6581.jpg)






