【調査】訪日客には来てほしいけど、インバウンド対策には消極的…東北の宿泊施設の動向が分かる意識調査発表

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訪日外国人観光客数は年々増加しており、日本全体で見ると総消費額も上昇しています。しかし、一部にはインバウンド対策の遅れなどから、その恩恵を受けられていない地域も存在します。そのひとつとして言われている東北地方の訪日外国人観光客の受け入れ環境調査を平成29年(2017年)3月7日、日本政策投資銀行東北支店、東北観光推進機構が発表しました。

東北地方のインバウンド市場の実態が詳細に調査されており、たとえば「 8割超の施設で訪日外国人観光客の利用比率が5%未満 」と低調なことだけでなく、「 ほとんどの宿泊施設が訪日外国人観光客を受け入れたいという意見を持っているが、その多くは『自然体で受け入れたい』としており、積極的な対策を行っていない 」ことなども理解できます。他の地域でも、このような感覚を持っている事業者は多いのではないでしょうか。

今回は、インバウンド市場のリアルな実態が読み取れる資料「東北インバウンド客 受入環境調査」をご紹介します。

 

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新潟県を含む東北の都道府県を対象にアンケート調査

「東北インバウンド客 受入環境調査」は日本政策投資銀行東北支店、東北観光推進機構が発表した資料。平成28年(2016年)9月12~30日に東北地方の主要な宿泊施設を対象としたアンケート調査を行い、517施設から回答を得ました。

「東北インバウンド客 受入環境調査」回答者属性:東北インバウンド客 受入環境調査より

「東北インバウンド客 受入環境調査」回答者属性:東北インバウンド客 受入環境調査より

対象とされた都道府県は青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、新潟県の7つ。新潟県は正確には東北地方ではありませんが、近隣地域であることなどから含めているようです。

 

日本人とのトラブルなどを懸念して、積極策を取らない宿泊施設が多いもよう

インバウンド受け入れ比率:東北インバウンド客 受入環境調査より

インバウンド受け入れ比率:東北インバウンド客 受入環境調査より

調査では、 インバウンド客の比率が5%未満の施設が全体の約8割 という結果が明らかになりました。そのうち、約半数は1%未満となっており、インバウンド市場の低調さが伺えます。インバウンド受け入れ比率が10%以上の施設も各県に最低1つは存在しており、需要そのものがないというわけではないようです。

インバウンド客の受け入れ方針:東北インバウンド客 受入環境調査より

インバウンド客の受け入れ方針:東北インバウンド客 受入環境調査より

インバウンド客の受け入れ方針についてたずねる質問では、 91.7%が「受け入れていきたい」と肯定的な回答 をしています。しかし、そのうち「積極的に」としたのは35.4%で、 残りの56.3%は「自然体で」と答えており、消極的な態度 を見せています。

形態別 インバウンド客の受け入れ方針:東北インバウンド客 受入環境調査より

形態別 インバウンド客の受け入れ方針:東北インバウンド客 受入環境調査より

この原因のひとつとして推測されているのが、訪日外国人観光客と日本人客のあいだでのトラブル回避。 「シティホテル」「リゾートホテル」のほうが「積極的に受け入れていきたい」と答える割合が高い(ともに約50%が同回答) 一方で、 日本人ビジネス客の安定的な需要が見込める「ビジネスホテル」、日本人客に配慮する傾向がある「旅館」は約30%と低く なっています。「インバウンド宿泊客の需要が増えるのは悪いことではないものの、日本人客を失うリスクになりかねない」という心理があるようです。

インバウンド客の要望(クレーム対応含む)の頻度:東北インバウンド客 受入環境調査より

インバウンド客の要望(クレーム対応含む)の頻度:東北インバウンド客 受入環境調査より

しかし、 インバウンド客からの要望、クレーム対応については全施設の68.7%が「ほとんど無い」と答えており 、「とても多い」「やや多い」という回答はわずか2.9%。さらに注目すべきは、 インバウンド客の受入比率が20%を超える施設では「とても多い」「やや多い」という回答が無かった という点でしょう。 インバウンド対策をしっかり行えば、インバウンド客がトラブルの種になる可能性は低い ようです。

 

インバウンド対策は、訪日外国人観光客のニーズと自分の強みの把握から

訪日外国人観光客への訴求ポイントを問う質問で上位になったのは、順に「通信環境の整備」(56.8%)、「日本料理、地元の酒などの充実」(43.2%)、「観光施設へのアクセス」(37.4%)となりました。

インバウンド客への訴求ポイント:東北インバウンド客 受入環境調査より

インバウンド客への訴求ポイント:東北インバウンド客 受入環境調査より

しかし、これはあくまでも施設側の考え。訪日外国人観光客を対象とした別の意識調査では「日本文化の体験」「宿泊施設外で夕食を食べることを選択できる」「英語対応」などが上位に来ており、一部の項目ですれ違いが起こっています。なお、資料内では「アジアと欧米豪のニーズの傾向にも差があるため、全てのニーズに応えることは難しい」「訴求ポイントは(中略)施設ごとに異なる傾向を示す」といった考えから、「いわゆる『プロダクトアウト』『マーケットイン』の視点での取組検討が必要」とまとめられています。

<参考>

訪日香港人は和歌山県白浜町で320億円消費してる!?inbound insightでわかる本当のインバウンド消費

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調査対象ととなった「東北」の各県では、個人の訪日台湾人観光客が多い傾向が見られたものの、岩手県ではその団体客の比率が同程度に達していたり、宮城県では個人の訪日米国人観光客が多かったりと地域差があります。また、需要の違いにより、紅葉シーズンに強い地域、雪のシーズンに強い地域といった具合に訪日外国人観光客の繁忙期も異なります。インバウンド対策を行う際には、先行事例を単にまねるのではなく、自分の強み、訪日外国人観光客のニーズをしっかりと把握してそれぞれに合ったアプローチを採用する必要がありそうです。

 

まとめ:しっかりやれば、うまくいくインバウンド対策

東北観光推進機構らが「東北インバウンド客 受入環境調査」を発表。インバウンド市場の盛り上がりによる恩恵を受けられていないと言われている東北地方を中心に、宿泊施設の意識調査を行ったもの。

日本人客とのトラブル回避などを懸念して、消極的な姿勢を取っている施設が多い一方、しっかりとしたインバウンド対策を行っているところでは要望、クレームが少ないことなどが明らかにされています。

 

<参考>

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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