訪日外国人が日本宿泊の際に選ぶ宿泊施設にはホテル、旅館、Airbnbなど民泊がありますが、こうした宿泊施設の中で一般的に良く選ばれるのがホテル、そして近年急激に伸びているのが民泊です。一方、実は昔ながらの旅館はインバウンドの取り込みに苦戦が続いています。 訪日外国人の宿泊先として旅館が選ばれにくい理由はいくつかありますが、インバウンドを見据えてすぐに改善出来る点、ビジネスモデルに関係するためすぐには変えられないが、インバウンドを見据えると改善が必要な点があります。詳しく見ていきましょう。
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- そもそも旅館の稼働率は非常に低く、2016年に若干上向いたものの37.1%となっている
- 旅館が訪日外国人を呼び込むため、すぐに出来るインバウンド対策とは
- 旅館がすぐできるインバウンド対策その①:無料Wi-Fiの設置
- 旅館がすぐできるインバウンド対策その②:英語、その他外国語での接客への努力
- 旅館がすぐできるインバウンド対策その③:海外に向けた情報の発信 まずは「個人ブログ」「SNS」をターゲットに
- 旅館がすぐできるインバウンド対策その④:ホームページの多言語化は、同時に写真を含めたわかりやすさを意識する必要あり
- すぐに対応することは難しいが、インバウンドを見据えると改善が必要な点
- まとめ:伝統を守ることも必要だが、宿泊施設全体で見た時に取り残されぬように、改善できる部分は早期改善を
目次
そもそも旅館の稼働率は非常に低く、2016年に若干上向いたものの37.1%となっている
観光庁が発表している平成28年度の「宿泊旅行統計調査」によると、2016年(平成28年)の1月~12月の施設別の客室稼働率では、
- シティホテル:78.7%
- ビジネスホテル:74.4%
- リゾートホテル:56.9%
- 旅館:37.9%
と、旅館の稼働率が他の施設と比べて圧倒的に低い ことがわかります。なお、この旅館の稼働率の低さに関してはmここ数年同様の傾向が続いており、
- 2012年(平成24年): 35.5%
- 2013年(平成25年): 33.4%
- 2014年(平成26年): 35.2%
- 2015年(平成27年): 37.0%
となっています。都道府県別に見ていくと 東京都 の旅館の稼働率は59.8%と、全国平均と比較すると高いものの、他の都道府県で旅館の稼働率が50%を超えているのは 石川県(52.6%) のみとなっています。
旅館が訪日外国人を呼び込むため、すぐに出来るインバウンド対策とは
訪日外国人に来てもらう、ホテルや民泊でなく旅館を選んでもらうためには、すぐに出来る施策と時間が掛かる施策とがあります。その中で、まずはすぐに出来る施策をいくつかご紹介しましょう。
旅館がすぐできるインバウンド対策その①:無料Wi-Fiの設置
今時はどこのホテルにも完備されているのが当たり前になりつつある無料Wi-Fi。最近は団体旅行ではなく、個人の訪日外国人が増えるに連れて空港でレンタルWi-Fiを借りるという層も増えているようですが、無料Wi-Fiの設置は、国内の観光客にも喜ばれます。 設置がまだであれば、今すぐに導入したほうが良いでしょう。
旅館がすぐできるインバウンド対策その②:英語、その他外国語での接客への努力
英語やその他の外国語を話して聞き取って、という接客は必要ありませんが、最近は外国語でのフロント業務を委託出来る「チャットコンシェルジュサービス」、テレビ電話で通訳対応をしてくれる「音声翻訳デバイス」、さらには訪日外国人にQRコードをスマホで読み込んでもらうこと多言語表示を可能にする「多言語化表示サービス」でなども各種登場しています。こうしたものを利用検討、トライアルせずに「英語は苦手だから。。」「中国語はわからないから。。」で片付けてしまうのは大きな機会損失です。
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旅館がすぐできるインバウンド対策その③:海外に向けた情報の発信 まずは「個人ブログ」「SNS」をターゲットに
海外に向けた対策としてすぐに浮かぶのはホームページの多言語化です。しかしながら、観光庁が発表している平成29年7−9月の「訪日外国人の消費動向」によると、出発前に得た旅行情報源で役に立ったものとして最も回答が多いのが 「個人のホームページ」(31.7%)、「SNS」(23.3%) の次に「旅行会社ホームページ」(18.3%)となっており、「宿泊施設のホームページ」が参考になったという回答は14.2%にとどまっています。
そのため、まずはターゲットとする国の インフルエンサーマーケティング を行う、海外向けのSNSアカウントの運用 を行う、運用の代行を依頼するなどの対策が考えられます。
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旅館がすぐできるインバウンド対策その④:ホームページの多言語化は、同時に写真を含めたわかりやすさを意識する必要あり
「宿泊施設のホームページ」が参考になったという回答はあまり多くありませんが、だからといってホームページの多言語化が必要ないというわけではありません。当然、多言語化していないホームページは、開かれても見られることなくすぐに閉じられてしまうでしょうし、そもそも日本人の感覚で見やすいと思っているホームページが見やすいとは限りません 。多言語化は前提として、それ以外の部分で旅館のホームページが外国人目線で「わかりにくい」と思われてしまう最も顕著なのが、「実際の部屋の様子が非常にわかりにくい」 ということでしょう。
これは最近飛ぶ鳥を落とす勢いで成長している 民泊大手のAirbnb で宿泊先を少し探してみるとわかりますが、部屋の間取り、コンセント、TVの有無、各種ルール、Wi-Fiの有無などの他、部屋の様子が良くわかる高解像度の写真、眺望が売りの部屋であれば部屋からの景色がわかりやすい写真でまとまっています。
対して日本の旅館の一般的なホームページはどうかというと、部屋の間取りに関する情報はあるものの実際の部屋の写真がない、設備類の説明の情報が少ない、他の部屋との写真を使いまわしている、半露天が売りの部屋でも、肝心の露天風呂からの外を眺めるとどのような景色なのか全く想像が出来ない、夜景が綺麗というような売りでも昼間の写真しかないなど、初めてその旅館を訪れる宿泊客が知りたいと思っている肝心の情報が載っていないことが少なくありません。
こうしたインターネットを使用した情報の発信、わかりやすさの発信方法に関しては、旅館業の経営者の高齢化 によるところもあるかもしれません。平成26年に厚生労働省が発表している「旅館業の実態と経営改善の方策」によると、経営者の年齢別施設数の構成割合を見た場合、「60〜69歳」が33.1%なっており、「70歳以上」が次いで26.8%となっています。その次が「50〜59歳」で22.4%となっており、旅館の経営者の高齢化が目立ちます。
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すぐに対応することは難しいが、インバウンドを見据えると改善が必要な点
日本的な旅館にとってすぐさまに変更することは難しいが、これから訪日外国人を迎えるにあたって改善出来るのであれば改善したほうが良い点をいくつかご紹介します。
旅館が検討したいインバウンド対策その①:宿泊メニューにバリエーションを持たせる
一般的な旅館の宿泊メニューは1泊2日、3泊4日で食事付きといったものです。しかし多くの訪日外国人にとって一般的な休暇のとり方というのは、数日間まとまった休暇を拠点となる宿泊先で取り、自炊したり好きな食べ物を好きな飲食店で楽しむ といった形です。そう考えていくと、 日本の一般的な旅館の宿泊メニューは多様性が乏しく 、さらに毎晩豪華な夕食が振る舞われる事もあって宿泊代が非常に高いために連泊には向いておらず、結果的に訪日外国人に選ばれないという悪循環になってしまいます。
例えば素晴らしい眺望と温泉が売りなのであれば、食事なしで宿泊代を抑えた連泊プランなどを用意する、飲食街までの送迎をオプション設定するなど、連泊したいが節約もしたい旅行者向けのプランがあっても良いでしょう。客単価は落ちるでしょうが、その分稼働率を高める事が出来る可能性があります。さらに思い切って朝食のみの連泊プラン、朝食は外部のケータリング業者に委託するなどすれば、調理に係る人件費を大幅に抑える事も可能です。
旅館が検討したいインバウンド対策その②:食事メニューにバリエーションを持たせる
ほとんどの旅館が売りにしているのは新鮮な海産物をふんだんに使った料理ですが、「寿司は食べられるが刺し身は苦手」、「魚の煮付け料理など魚の原型がわかる料理は苦手」といった外国人は少なくありません。さらにこうしたコース料理は固定であることが多く、「魚が苦手なので全て肉料理で」といったオーダーに柔軟に対応することが難しいケースもあります。
多くの訪日外国人は日本料理を楽しみに日本に訪れますが、訪日外国人にとって「日本料理=旅館で振る舞われる豪華なコース料理」とはなりません。 「訪日外国人の消費動向 平成28年10-12月期報告書」によると訪日外国人が最も満足感を感じた食事は「肉料理」(25.2%)となっており、その次に「寿司」(21.9%)「ラーメン」(14.6%)と続きます。その次は「その他日本料理」「そば・うどん」となっており、寿司を除く「魚料理」に満足したと回答したのは僅かに7.2%のみです。
旅館にとっては衝撃的な結果かもしれませんが、こうした結果からも、ほとんどの旅館で提供される魚料理を中心とした豪華な料理は、訪日外国人の胃を満足させていない可能性があります。 日本人にとっては旅館と豪勢な魚料理はセットと言えますが、訪日外国人にとっては料理なしで宿泊費を抑えたプラン、簡単な朝食のみが出るプラン、肉料理中心のプランのほうが求められていると言えます。さらに日本ならではの体験をしたいと考える訪日外国人が増えていることから、「旅館に宿泊して、伝統的な日本食を一緒に作る宿泊プラン」といった「コト消費」に絡めた宿泊プランも面白いかもしれません。
まとめ:伝統を守ることも必要だが、宿泊施設全体で見た時に取り残されぬように、改善できる部分は早期改善を
2020年を前に全国で訪日外国人の宿泊施設不足が叫ばれる中、旅館の稼働率は一向に改善しません。旅館自体のビジネスモデルに関係する部分をすぐに変えていくことは難しいでしょうが、訪日外国人が求めているのはどのような日本観光なのかという点を、旅館側も観光庁の発表する「訪日外国人の消費動向」などからしっかりと読み取る工夫、そしてそれに向けて改善していく努力が求められます。
考え方を変えると「無料Wi-Fiの整備」「外国語での接客努力」「SNSやインフルエンサーを活用した海外への積極的な情報発信」「写真を含め多言語でわかりやすいホームページ作り」「宿泊メニュー、食事メニューにバリエーションを持たせる」といった対策を取れば、まだこうした対策を取っていない旅館と大きく差別化を図る事が可能だとも言えるでしょう。
<参考>
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