POINTS.SG PTE LTDの山本です。さて前回のTV&ラジオ編に続き、シンガポールの新聞、雑誌、フリーペーパーについてそれぞれ見ていきましょう。
【海外のテレビCMっていくらかかるの?】最新!海外メディア事情 シンガポール編:第1回 シンガポールのメディア概要(TV&ラジオ編)
こんにちは。初めまして。私、POINTS.SG PTE LTD代表を務めております山本と申します。私は、2003年から約10年間、東京の広告代理店に勤務し、2012年にシンガポールに居を移して2016年に独立しPOINTSを設立、日系企業の東南アジアにおけるマーケティング支援、特に広告、プロモーションの領域のお手伝いをしています。2017年から、インバウンド関連の方々からもメディア情報に対するお問い合わせが増えてきたこともあり、次年度に向けて シンガポールにおけるメディアの概要と効果的なメ...
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シンガポールの新聞概要:もっとインバウンド集客で活用すべき媒体
個人的には、シンガポールを攻略するうえでもっと活用すべきと思うのが実は新聞です。主要な新聞は下記の通りとなります。全ての新聞はSPH(Singapore Press Holdings)が発行しており、広告の取り扱いにはライセンスが必要 となります。
出典:「Singapore Press Holdings Annual Report 2017」を加工して作成
※デジタル版の計算→新聞のデジタル版の登録者数
※赤字:発行部数・登録者数の減少
※緑字:発行部数・登録者数の増加
新聞の紙版の発行部数は、全体的に落ちましたが、『Berita Harian』以外、全てのタイトルのデジタル版の登録者数が増えました。特に中国語の新聞の増加が顕著で、これはおそらく年配の方々のスマートフォンやモバイルインターネットの利用率増加を起因としています。
メディア信用度調査で新聞は圧倒的な1位 で、日本の新聞と同様に日替わりで様々な特集があります。訪日観光視点で言えば、『The Straits Times』の日曜版、『Sunday Times』の観光特集や、火曜日のLIFESTYLEセクションの中にもBon Voyageという観光特集があり、そこで紹介されると旅行代理店への問い合わせが増える と言われています。
新聞は、特に 富裕層を含む、40代以降にはリーチしやすいメディア で、読者の 平均月収は7,365SGD(約61万円/記事執筆時) と、全国平均の5,637SGD(約47万円/記事執筆時)を大きく上回ります。ただし、広告料金が高いのはネックといえるでしょう。
シンガポールの新聞への広告出稿の相場は?
※通貨はSGD
※全ての料金はフルカラー印刷の料金に基づく
※追加アドオン(特定ポジションなど)を含まれていない
ネットの登場によって情報の無償化が進み、2000年にメディア会社Mediacorpは、出版社Singapore Press Holdingsの『Streats』という無料新聞と競うため、『TODAY』という無料新聞をローンチしました。2004年から2017年にかけて、『TODAY』はシンガポールで2番目に読まれている英語新聞に成長し、発行部数は30万部、読者数は50万~60万にも拡大しました。
しかし、無料新聞ということで広告だけでコストを賄うビジネスモデルをとったこと、また読者のニーズ変化、デジタル化の流れもあり、2017年8月25日に、TODAYは紙版の発行を止め、完全にデジタル化に移行 する判断を下しました。
この流れは、今後のシンガポールの新聞を考えるうえで象徴的な流れ であったように感じます。
シンガポールの雑誌概況:細分化されているがゆえに、PR対象と広告出稿先のマッチングが重要
上述のSPHなど大手、準大手出版社の発行する雑誌も数多く存在します。カテゴリーごとに有力紙は異なるものの、日系企業は日系のフリーペーパーなどへの出稿が多かったり、ローカルの有料雑誌はカテゴリーも明確で活用の甲斐があったりなど、その活用の幅が広い印象があります。「日本が好きな人」という大雑把なカテゴリーではなく、「美容」「ファッション」「健康」「旅」「食」などより細分化されたテーマと、PR対象を合致させることでより大きな成果が見込めます。
シンガポールの雑誌への広告出稿の相場は?
下記、いくつかカテゴリーごとに雑誌を抜粋し、参考価格を提示します(※2016/2017のデータ)。
※通貨はSGD
※全ての料金はフルカラー印刷の料金に基づく
※追加アドオン(特定ポジションなど)を含まれていない
価格は交渉次第でディスカウントが得られたり、もしくはデジタル版をパッケージしたり、SNSへのサポートが付加されたり、取材・記事制作が含まれたりと多様なため、クライアントのニーズごとに調整をしています。
また、彼らの編集能力を活用して、商品開発に関わらせる方法 もありえます。コラボレーションした旅行パッケージを醸成して、誌面でPRするという切り口は面白いのではないでしょうか。
ちょっと補足、雑誌のオンライン版ってどうなってる?
ほとんどの雑誌にはオンライン版があり、読者数は誌面のおよそ2~3倍となっています。また、オンライン版のアクセスが多いため、広告費は誌面よりデジタル版が高くなることが一般的です。
例えば、シンガポールの最も人気の高い女性誌『Her World』の 発行部数は10万部 ですが、オンラインのリーチ数*は78万で、SNSのフォロワーは16.8万人 です(※ウェブサイトのユニークユーザー、タブレット版、EDMの合計)。
今や雑誌は、雑誌自体の発行部数ではなく、コンテンツとしての記事の制作能力、ブランド力、オンラインでの影響力などの複合的なバリューで勝負している ということになります。
<Her Worldの紙版とオンラインの広告費の比較例>
- 誌面
- 1頁の純広告: SGD 4,800〜
- オンライン版
- トップページ広告枠、4枠:SGD 7,500〜
- 記事広告+掲載:SGD 6,500〜/週
- フェイスブック投稿、3回:SGD 5,500
シンガポールのフリーペーパー概況:雑誌と同じく対象セグメントが細分化されている
シンガポールには多くのフリーペーパーが存在します。雑誌とは異なるアプローチで力を持つメディアもあります。日本関連のもの多く、在シンガポール日本人を対象としたメディアも数多くあります。下記はローカルを対象とした有力なフリーペーパー。
※2016/2017のデータ
訪日観光メディアとして有名なのは『WAttention』です。シンガポール発で現在は世界各国で日本の魅力を発信する現地語対応の日系フリーペーパーで、アジア各国に同時展開する場合に有効性の高いメディアです。
ローカル向けでセグメントや内容がしっかりしているものもあります。訪日観光という視点で我々がお勧めしたいメディアをいくつかご紹介します。
① 旅行者をターゲットにするなら『aspire』
シンガポールの大手旅行会社、ダイナスティ・トラベル・インターナショナルが2017年に旅行専用雑誌『aspire』を創刊しました。本誌は、観光情報を中心に、新しいホテル、新しい旅行先、市場のトレンド、旅行に役に立つポイントなどのコンテンツを提供しています。
発行回数は年2回 発行部数は各20,000部でデジタル版の配信も行っています。このフリーペーパーの強みは、その配布先にあります。
自社の顧客(51,000人)だけではなく、HSBC(The Hongkong and Shanghai Banking Corporation)のプレミアムカード所有者に配布されており、ダイナスティ・トラベルの強みでもある高価格帯の旅行手配をするターゲットにリーチすることが可能 です。
また、シンガポールの2/3月と8月の旅行博NATASでも配布され、旅行プランニングのシーズンに照準を当てて、御社のサービスや商品をプロモーションできるというタイミング的な意味でもメリットがあります。更に、通常の広告とは異なり、ダイナスティ・トラベルの店舗と連携するような企画も調整・提案が可能となります。
② 富裕層をターゲットにするなら『Priority』
インバウンド担当者が、「シンガポールでプロモーションする意味」を問われた場合、「富裕層」「準富裕層」へのアプローチと答える方も多いと思います。どのようにそういったターゲットにリーチするかというのは最も重要なテーマの一つです。
その一つの答えとしてあるのが、シンガポール航空プレミアムクラブ「PPS Club」。これはシンガポール航空のビジネス、ファースト、スイートクラスをよく利用するお客様専用の会員制度です。当然、メンバーは経済的にゆとりがあり、かつ海外に行く頻度の高い顧客層を網羅しています。
この「PPS Club」向けに配布されるのが『Priority』です。配布方法は会員への郵送、チャンギ空港のVIPラウンジ、機内(ビジネス、ファースト、スィート限定)。発行回数年4回で、読者数は機内で読む方を含めて合計で毎号915,000人へのリーチできます。
広告価格は少し強気で、1頁純広告SGD 10,000からとなっています。富裕層へ継続的にアピールするという意味では有効なコラボレターかもしれません。また、会員の中に対してのアンケートや、トライアルツアーの実施などは要交渉ですが、重要なデータが取れるかもしれません。
③ 旅行検討客をターゲットにするなら『The Straits Times』
最近は2~3月、8月の年2回の旅行博の前後で、プロモーションをしたいというご要望をインバウンド系のお客様から相談されることがあります。様々な方法がありますが、旅行博に参加するターゲットはF.I.T客ではなく、旅行代理店で購入するお客さんがメインです。
既に旅行商品が造成されており、現地旅行代理店と共同で広告を投下する場合には『The Straits Times』の旅行企画への広告出稿は効果的と言えそうです。
デジタル版を含めると、1,200,000人にリーチが可能で、特に、30代~50代をターゲットにした商品であればマッチ します。広告料金は、1ページカラーで30,000SGD(約250万)ですが、1/2、1/4のサイズでも十分な訴求力があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?次回は、OOHとネットメディアの概要、いくつかお勧めのメディアもご紹介できればと思います。POINTSでは、シンガポールだけではなく東南アジアの国々と日本をつなぐマーケティングサービスを提供しています。現地を知るからこそのプロモーション、メディアの活用、イベント運営など幅広いソリューションを提供しておりますのでお気軽にお問合せください。
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