日本の優れた医療を求めて訪日旅行の際に医療行為を受けにくる医療ツーリズムはよく知られていますが、通常の旅行時に怪我をした、もしくは急病になったなどで、日本の病院で医療行為を受けた訪日外国人の医療費の未払いが度々話題になってきました。
訪日中国人観光客が人間ドッグを受けるために日本に?医療ツーリズムとは
訪日中国人観光客といえば、流行語大賞にもなった「爆買い」。現在、ほとんどの日本人がそんなイメージ持っているのではないでしょうか。爆買いする訪日中国人観光客は、主に買い物を旅行プランのメインに据えている人たちで、実際にはまったく異なる目的で日本を訪れている人も少なくありません。分かりやすい訪日中国人観光客の旅行目的のひとつは、寺社仏閣巡りに時間を割く京都観光。京都の文化財の中には中国のかつての王朝・唐などの建築様式に影響を受けているものが数多くあります。訪日中国人観光客にとっては外国のような...
新たな観光公害 訪日客の「医療費未払い問題」…解決策はあるのか?
訪日外国人観光客が増加することは、日本の観光立国において、また2020年の東京オリンピックに向けて取り組んでいかねばらなないことです。しかしながら、訪日外国人観光客が増える事で発生するリスク、問題もないわけではありません。このような観光によって発生するリスク・問題を 「観光公害」 と呼びますが、今回はそんな中から少々変わり種の、訪日外国人観光客が日本で病院を受診した際の医療費の未払いに 関する問題をご紹介します。目次訪日外国人観光客が、医療費を未払いのまま帰国してしまう「医療費の未払い問題...
こうした背景を受けて、政府は医療費の未払いを過去にしている訪日外国人について、医療費未払いを繰り返す恐れがあるものに対して、再入国を禁止することとしました。
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医療費未払いの訪日客の再入国を拒否
訪日外国人の医療費未払いの問題から、日本政府は6月14日、過去に医療費未払いとなっている訪日外国人、今後も医療費の未払いを起こす可能性がある訪日外国人の再入国を拒否することを盛り込んだ対策を策定しました。
これは厚生労働省で把握している未払い情報を法務省に情報提供し、入国審査時に水際で入国を食い止めようというもの。今後は2020年の東京オリンピックで訪日外国人が増加することが予想されることから、来年度に実施される予定です。
実際の医療費未払いに関してどの程度の件数が発生しているのか
今後は厚生労働省が全国の病院に対して、未払いの履歴がある訪日外国人の情報を提供するように求めていくわけですが、厚生労働省の調査によると、平成27年度に全国の医療機関で訪日外国人を受け入れた1,378の病院で、35%が医療費の未払いを経験。
近畿運輸局が行った平成28年度の調査によると、大阪試合の147の病院で、20病院で27人分の未払いが発生いているとのこと。この未払い総額は1,547万円にもなり、1人あたりの未払い金額が800万という例もあるそうです。
医療費未払いがなぜ発生するのか?
訪日外国人による医療費未払い発生の理由として大きいのは、医療現場側の善意によるところが大きく、多くの病院では眼の前で病気で調子が悪い、怪我をしている訪日外国人に対して「治療後に支払い能力があるのか?」という点を厳密に確認せずに医療行為を行ってしまっている背景があります。
医療費未払いを避けるには、訪日外国人が旅行保険に加入しているのか?またクレジットカードのコピーを取る、パスポートのコピーを取り身元の確認などをする必要があります。
しかし、こうした確認を行わずに医療行為を行い、いざ請求の段階になると、「実は医療保険に入っていないので高額な医療費が支払えない」「こんな高額な治療は望んでいなかったなどとして支払いを拒否される」「そのまま帰国されてしまう」などで医療費未払いが発生しているのです。
一度未払いになった医療費の回収は困難
こうして未払いになった医療費は訪日外国人に支払う意志がなく、支払い能力がなく、さらに帰国されてしまうなどとなると、回収は実に困難になります。
日本滞在時に関してもプリペイド携帯を使っていたり、日本の住所はあくまで宿泊先であること、宿泊先も一箇所にとどまっているわかではないこと、そもそも言語の壁があるため、電話、手紙の内容を理解されていないという可能性もあります。
さらに一度帰国してしまうと、そもそも治療段階で住所を確認していなければ請求書を送ることも叶わず、電話番号も確認せずに治療を行ってしまえば連絡も出来ず、さらに電話番号を知っていても、言語の問題、時差の問題など多くの課題が存在します。
実際に支払いを行わせる手段はあるのか?
医療費が支払われなかった医療機関に対して、未払い医療費の補填事業を行っている都県も存在はします。しかし、そういった仕組みがない地域では、患者を相手に日本の裁判所に医療費支払い請求の民事訴訟を起こすしかありません。
この訴状は当該国にある管轄官庁、在外日本大使館、領事館が送付などの作業を行うこととなります。このためにも医療行為を行う時点で、相手の住所をパスポートで確認する必要が出てくるのです。しかし、多くの場合、口頭弁論期日に、患者、代理人が法定に出席することはなく、請求どおりの判決が言い渡されます。
そうなると強制執行となるわけですが、この場合は、患者の海外の財産がどこにあるのかを突き止める必要があり、渡航費用、現地に精通した弁護士などに依頼する際の委託料、翻訳料などを考えていくと、莫大な時間とコストがかかることから、多くの医療機関では泣き寝入りになってしまっている現実があります。
医療費未払いを食い止めるには水際対策と現場での対策が必要
今回は政府が入国時審査を厳しくするとう方策をとりますが、注意したいのはこれはあくまでも「過去に未払いの履歴がある人」のみが対象になるということで、過去の医療機関への未払い履歴がなく、新たに入国する訪日外国人に関しては、入国時に手の内ようがありません。
そこで求められてくるのは、医療機関が医療行為を行う現場でしっかりと医療保険加入の有無、保険内容の確認を行うこと、パスポートやビザなど、相手の身元と住所などをしっかりと確認すること、クレジットカードなどの支払い情報を確認しておくことです。また、当然こういった話を行うには、外国語対応も求められるでしょう。
なお、東京都などでは「東京都外国人患者受入れ体制整備支援事業」において、多言語対応ツールの導入、院内文書の多言語化、院内文書の多言語化、案内表示の多言語化、ホームページの多言語化、外国人患者の受入れに対応するためのシステムの導入などに対して、補助上限額5000万円までの補助金の仕組みが存在します。訪日外国人が今後多く見込まれる医療機関においては、こうした補助金の活用も視野に入れるべきでしょう。
<参考>
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