訪日外国人観光客が増加することは、日本の観光立国において、また2020年の東京オリンピックに向けて取り組んでいかねばらなないことです。しかしながら、訪日外国人観光客が増える事で発生するリスク、問題もないわけではありません。このような観光によって発生するリスク・問題を 「観光公害」 と呼びますが、今回はそんな中から少々変わり種の、訪日外国人観光客が日本で病院を受診した際の医療費の未払いに 関する問題をご紹介します。
「観光公害」とは何か?京都の夜桜ライトアップ中止に見る実際の観光公害事例
近年日本を訪れる訪日外国人の数は急増していますが、その中でも、京都を訪れる訪日外国人の伸びは他県に比べても圧倒的です。平成27年度の京都観光総合調査によると、平成27年1月〜12月に京都を訪れた外国人の年間外国人宿泊客数は初めて300万人の大台を突破し、過去最高となる316万人を記録 しました。これは 対前年比+約73%(+133万人)の増加 となり、訪日外国人観光客1974万人のうち、約6.2人に1人が京都に宿泊していた ことになります。こうした状況は観光収入という面ではありがたいのは...
そろそろ本気で考えなければならない『観光公害』 京都 増えすぎた訪日客による混雑解消のため、市バスの1日乗車券が値上げへ
今年3月に、京都を訪れる訪日外国人観光客のマナーが悪化したことが問題で京都の祇園の夜桜のライトアップが中止になったという話題がありました。最近はこのような形で増えすぎた訪日外国人観光客による弊害、つまり 「観光公害」 がときおり報告されるようになってきましたが、今度は京都市の市バスが混雑しすぎて乗れないという問題が発生しています。インバウンド対策にお困りですか?「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!訪日ラボに相談してみる...
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訪日外国人観光客が、医療費を未払いのまま帰国してしまう「医療費の未払い問題」
日本政府観光局(JNTO)の調査によると、7月時点で日本を訪れた訪日外客数は約1,643万人となっており、現時点での昨年対比での伸び率は17.3% となっています。2017年は7月まで訪日外客数は毎月プラス成長を続けており、今後は2020年の東京オリンピックなどを目処にこの数字が加速するものと考えられます。
7ヶ月連続で前年超え 好調が続く2017年のインバウンド市場:7月の訪日外客数は268.2万人と単月過去最高に
日本政府観光局(JNTO)より7月の訪日外客数が発表されました。これによると、訪日外客数は 前年同月比+16.8%の268万2千人 となるなど好調な数字となっています。平成29年については、1月に前年同月比+24.0%、2月に+7.6%、3月に+9.8%、4月に+23.9%、5月に+21.2%、6月に+18.2%と、毎月前年同月比を上回る形 となっています。それでは7月の詳しい内訳を見ていきましょう。目次7月の訪日外客数は、前年同月比16.8%増の268万2千人東アジア地域のインバウンド市...
また、観光庁によると、訪日旅行中に怪我や病気にかかる人の割合は約4% とのことですが、訪日外国人観光客の約3割は旅行先の怪我や病気の費用をカバーする旅行保険等に未加入 となっています。このうち、国にいる親族等から送金してもらい病院に支払うケース、帰国後に病院に支払うケースもありますが、中には治療を受けたにも関わらず、そのまま支払い手続きをせずに帰国、音信不通となってしまう訪日外国人観光客もいる とのこと。
実際のところ、訪日外国人観光客による医療費の未払い金がいくらあるのかはわからない
医療費の未払いに関しては訪日外国人観光客だけが関係する問題ではありません。日本人であっても高額な医療費が払えずにそのままとなっているケースも存在します。こうした事態を受け、厚生労働省は全国7000カ所の病院を対象として、訪日外国人観光客が関連する医療費の未払いの実態調査に乗り出すことを決定しました
。来年3月までに報告書をまとめる予定とのことですが、現時点では問題があることは把握しているが実態が掴めていない状態 と言えます。なお、日本病院会がまとめている「平成27年度医療の国際展開に関する現状調査」によると、病院側が外国人患者受入れについての課題として感じているものとして、「治療費の不払い」は43.7%となっており、約4割の病院でこうした問題を認識している のだと言える結果となっています。
そもそもなぜ医療費の未払いが発生するのか?
日本病院会がまとめている「平成27年度医療の国際展開に関する現状調査」の病院側が外国人患者受入れについての課題として感じているものとして、トップの理由となっているのは「言語・会話」の95.8%。そして同様に「医療通訳の提供体制」に関しても44.6%が課題としています。 この背景には 日本の医療と海外の医療の事前説明に関する感覚の違い があるようです。
翻訳や通訳などの多言語対応についてより詳しい資料のダウンロードはこちら
海外の場合は治療の前にどのような治療を行うか、手順、医療費などについて詳細な説明があるのが一般的です。医療費も比較的高額であること、日本のように国民皆保険制度ではない場合が多いために、患者側が自分が支払える限度での医療について「ここまでの治療を希望する」という形で合意となるケースが多いようです。
一方、日本の病院の場合、外国人患者が救急で来た場合などは当然受け入れ体制が確保出来ていないため、「言語・会話」による旅行保険の加入有無の確認、クレジットカードのコピーを取るなどせずに治療を開始してしまう。そしてその結果として「不要な検査だった」と主張されて支払いを拒否されることなどの理由によって医療費の未払いが発生している というわけです。
一度未払いになった医療費を、訪日外国人観光客から回収するのは難しい
一般的な未払い医療費の取り立てはどのようにして行われているのでしょうか?少々古いですが、平成20年の厚生労働省の報告書によれば、医療機関が行っている主な対策は「電話による督促」(94.3%)、「一般的な文書による督促」(93.7%)、「訪問」(54.7%)とのことです。
ただ、訪日外国人観光客の場合、そもそも 電話番号はプリペイド携帯の番号、文書を送るにも日本の住所は宿泊先、訪問するにも旅行中のために1箇所に留まっているわけではないなどに加えて、受け入れの段階から問題となっている言語の壁が、再び大きな問題となります。 そのため、訪日外国人観光客が、悪意の有無はさておき医療費の支払いが出来なかった場合に、それを追っていくことは非常に困難です。
地方自治体の取組みもあるが、根本的な解決策ではない
地方自治体では、外国人患者が止むを得ない事情で医療費が払いきれない場合、その医療費の一部を都道府県が補てんするという緊急医療制度救済制度を設けています。 厚生労働省による平成20年当時の資料によると、外国人未収金対策の取組みを独自におこなっている都道府県は東京都の他6県(茨城県、栃木県、埼玉県、千葉県、神奈川県、長野県)でしたが、実際のところは医療機関のための救済策であって、問題の解決策ではありません。
まとめ:まずは旅行者への訪日旅行保険への加入の促進が一歩。医療機関は診療開始前に確認を
それではどうすればこの問題を解決出来るのでしょうか?まず足元の対策として効果が大きいのは、こうした訪日外国人観光客に訪日旅行保険への加入をしっかりと呼びかけ、加入によるメリットをしっかりと説いていくこと。また、地域、自治体、国などが一体となって旅行保険加入者への優待を手厚くするなども一定の効果があるでしょう。
医療機関側が出来る自衛策としては、ホテルなどの宿泊施設が受付時にパスポートの確認、コピーを取る、クレジットカードの番号を控えるなどの作業を「受付」として行うのと同様に、医療機関を受診する際もこうした手順を確立し、各国語でのマニュアルなども合わせて整備していくこと。医療行為を行う際も、医療通訳を立てて、医療費についてきちんと説明しながら進めていくことが大事でしょう。
アメリカなど一部の国の場合は、患者が病院側が提携している保険会社の保険に加入していない場合、100%実費となることを事前に理解した上で治療が行われるなど徹底しています。日本でもこうしたやり方が正しいとは言えませんが、何もせずに手をこまねいていては、訪日外国人4000万人となった暁には大変な問題となる可能性もあるでしょう。
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<参考>
【インバウンド情報まとめ 2024年11月後編】中国、タイの2025年祝日発表 ほか
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