こんにちは、TUMOCA Expressです。
弊社は、全国各地で発生するインバウンド訪日客の忘れ物を海外のご自宅までお届けしております。今回は、そんなインバウンド訪日客の忘れ物が、ホテルや旅館の大きな負担となりつつある現状についてお話したいと思います。
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ホテルと旅館に立ちはだかる2つの大きな問題
2018年7月18日、観光庁は今年上半期(1~6月)のインバウンド訪日客(以下、ゲスト)の数が前年同期比15・6%増の1589.9万人で、上半期として過去最多だったと発表しました。
(※)これは観光立国を目指す日本にとって喜ばしいニュースではありますが、一方でゲストの増加によって、ホテルや旅館(以下、総称してホテル)ではゲストの忘れ物対応の負担が大きくなってきております。
では実際どのような問題が発生しているのでしょうか。現在、ゲストの忘れ物が発生した時、日本人旅行者の忘れ物の場合と異なり、2つの大きな問題が発生するため、ホテルとしては「費用持ち出しで配送する」もしくは「依頼があっても断る」という2つの選択肢を迫られることが多いです。その問題というのが①料金決済の問題と②郵便局や宅配業者が受付できない問題です。
① 料金決済の問題
国内宅配とは違い、国際宅配では着払いが基本的に不可能なため、多くのホテルはどうしてもゲストから配送に係る料金を海外送金してもらう必要があります。
しかしその際、ゲストはわざわざ銀行に出向く必要がある上、金額によっては送金理由の根拠となる書類(請求書など)を求められることも少なくありません。さらに、送金手数料がどの銀行も最低3000~4000円ほどかかるため、ゲストがそれらを割高に感じ料金を支払わないことが多いのです。
また、もし仮に支払ったとしても、今度は送金額の受取人であるホテルが中継銀行の手数料及び受け取り銀行の手数料を支払うことになるため、ホテルの手元にお金が残らないなんて事態も起こります。
さらに別のケースでは、「荷物が到着した後に送金するので先に荷物を送ってほしい」と依頼したにもかかわらず、荷物を受け取った後送金せずにそのまま連絡が取れなくなるゲストもいるようです。
結果として、現在多くのホテルではゲストの忘れ物が発生した場合、うまく料金決済ができなかったがために、自己負担もしくは貯めていたチップを使って配送しているのがほとんどです。
② 郵便局や宅配業者が受付できない問題
国際宅配というのは、荷物の受付後に安全検査や税関検査が行われ、その際問題があれば荷物は送り主のもとへ返されるようになっています(場合によっては、税関まで出向く必要があります)。
しかし、もちろんゲストが日本の住所を持っているはずがありません。それゆえ郵便局や大手宅配業者は、返還先のないゲストが送り主になっている荷物を受け付けしようとはしません。そうすると、ホテルはゲストから依頼があったとしても配送することができないのです。
ただ、ホテルの中には、自身が送り主となって忘れ物を差し出している店舗もあります。しかし、これにはリスクがあります。送り主になるということは、もし配送途中に問題が起こった場合は全て対応することになるからです。
荷物行方不明時の調査依頼、荷物破損時の配送業者への損害賠償請求はどちらも送り主にしかできません。さらに極端な例をあげると、危険物が入っていた場合の責任も送り主にあるということです。
つまりホテルは、ゲストから配送依頼があったとしても断る、もしくは上記のリスクを負ってまで配送するという形で対応しているのです。
料金についての折衝から口座確認まで。。。ホテルの現場では上記以外にもまだまだすることがたくさん。
上記2つの問題以外にも、ホテルの現場ではゲストの忘れ物の対応のため苦労することが多いと言います。
- 料金の説明から決済についてのやりとりを行う手間、
- 配送後の荷物に関する問い合わせ対応の手間、
- そしてバッテリー内蔵の電子機器や食品のように、そもそも海外に送ることができるのかを確認する手間
などさまざまです。さらに複数の店舗を持つホテルでは、ゲストから入金があったかどうかを確認するために本部の経理にわざわざ問い合わせる必要もあるでしょう。したがって、ゲストの忘れ物対応において多くのホテルではサービスという名のもとに大きな負担がかかっているのです。
非常に手間のかかる忘れ物は何?
私たちがよくホテルから、「どうすればいいのか困っている」と相談を受けるゲストの忘れ物は「現金」です。
財布ごと忘れてしまったり、部屋の金庫の中に入れたまま忘れてしまったりと経緯は様々ですが、非常に多い忘れ物です。
ホテルで現金の忘れ物が発生した場合、お返しする主な手段は海外送金になりますが、これは口座からお金の出入りが発生しますので経理の方と協力して対応する必要があります。
また、ホテルは現金をどの国の通貨建てで送金すればいいのか、そして海外送金にかかる各種手数料(支払い銀行、中継銀行、受取銀行など)はどちらが負担するのかをゲストと折衝しなければいけません。
さらに、金額によっては銀行に海外送金を行う根拠となる書類(請求書など)を求められるのでその書類も作成する必要があります。これらを全てクリアしてようやく現金をお返しできるのですが、一人のゲストの忘れ物のために、これだけの人手と手間がかかっているのが現状です。
まとめ
着払いで対処できる日本人旅行者の忘れ物とは全く異なり、「非居住者の荷物」という性格を持つインバウンド訪日客の忘れ物は、上記の2つの問題により非常に対応しづらく、手間がかかるものです。
政府が、2020年にインバウンド訪日客4000万人を目標としていることから、忘れ物の数はこれからますます増え、その分ホテルや旅館の負担も大きくなると予想されます。次回は、「インバウンド訪日客の忘れ物を受け付ける際に気を付けるポイント」をお話ししますので、少しでも皆様の忘れ物対応のお役に立てればと思います。
<参照>
【インバウンド情報まとめ 2024年11月後編】中国、タイの2025年祝日発表 ほか
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