2020年までに訪日外国人の数を4000万人、旅行消費額を8兆円という目標を掲げた観光立国推進基本計画のもと、あらゆる業種・業界で訪日外国人をターゲットとしたビジネスが展開され始めています。
このような動きの中、インバウンド事業への取り組みにおいて、ITやモバイルはどのように活用されるべきなのでしょうか。既に取り組まれている事例などを交えて、関連業界の有識者の方々が集まり講演を行ったのが、App Annie Japan株式会社(以下App Annie )主催「DECODE」セミナーです。
本公演では、訪日ラボを運営する株式会社movの代表渡邊も登壇。当日の講演についてのレポートをお伝えします。
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App Annie主催「DECODE」セミナーとは?
アプリ市場データを提供するApp Annieが主催する「DECODE」セミナー。アプリ市場や最新のビジネストレンドについての講演会を行っております。年に数回開催しており、2018年8月1日(水)に開催されたものは「インバウンド」をテーマに開催されました。
第一部講演では、訪日ラボを運営する株式会社代表、渡邊による「インバウンドビジネスのデジタル戦略」。
第二部講演では、App Annie セールスディレクター向井俊介氏による「インバウンド事業をモバイルの側面から紐解く」。
第三部では、「旅行者を取り巻く環境の変化とビジネス機会の発掘」というテーマのもと、スペックホルダー株式会社取締役であり、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会ITアドバイザーである大野 泰敬氏、株式会社ワイヤ・アンド・ワイヤレス、取締役副社長喜地 弘志氏、JapanTaxi株式会社 代表取締役社長川鍋 一朗氏、mov渡邊によるパネルディスカッション。
このような内容で開催されました。それでは、当日の講演の内容をレポートしていきたいと思います。
インバウンドビジネスのデジタル戦略:株式会社mov(訪日ラボ)代表渡邊
第一部講演では、訪日ラボを運営している株式会社mov代表渡邊が「インバウンドビジネスのデジタル戦略」というテーマで講演。
インバウンドニュースメディアという、事業者側でもなく、ソリューションを提供する立場ではない第三者というポジションを活かし、これまで、400社以上ものインバウンド対策の相談や事例を聞いてきた渡邊。
そのインバウンドの知見と、元々行っていた大企業向けのデジタルマーケティングの知見から見る、今のインバウンド業界に必要なデジタル戦略について渡邊が講演をしました。
2018年に入り、インバウンド業界はさらに加速してきている
講演の出だしは、インバウンド業界の動きについての解説。2017年までは、各業界が様子を見ながらインバウンドに対して取り組んでおり、イノベーター理論でいうと、イノベーターやアーリーアダプターが動き出している状態でした。
そのため、インバウンドに興味のある各社は、情報収集段階の企業が多く、予算もついてない状態だったとのこと。
しかしながら、2018年に入り、ますます訪日外国人が増えてきたこと、民泊新法やIR法、通訳案内士法などの動きがあり「各業界が本格的にインバウンド対策に乗り出してきており、インバウンド業界はさらに盛り上がってきた」と渡邊が解説しました。
アメリカ人は口コミが大好き:今後のトレンドは欧米豪
「今後のインバウンド対策のトレンドは欧米豪になる」と渡邊が説明。理由としては、2018年6月12日に策定された「観光ビジョン実現プログラム2018」にもある通り「欧米豪を中心とするグローバルキャンペーンの推進」で日本政府が、欧米豪からの訪日外国人を増やす動きを行っています。
今年の2月からは「enjoy my Japan campaign」と題して、欧米豪向けの訪日無関心層に対して、デジタルマーケティングを駆使した取り組みが行われ始めています。この事により、地方自治体も、欧米豪向けの訪日施策に対して予算が付くようになり、欧米豪向けのマーケティングが活発になります。
さらに「アメリカ人は口コミが大好き」と渡邊が解説。訪日ラボがまとめているインバウンドデータによると、訪日前の情報収集源で、トリップアドバイザーや友人や知人、日本に住んでいる人の情報を参考にして、訪日前の情報を集めているというデータがあります。
アメリカ以外の英語圏、イギリス、カナダ、オーストラリアでも同じような傾向になっています。
そうすると「欧米豪向けにはトリップアドバイザーやGoogleマイビジネスといった口コミサイトをうまく活用することが重要なデジタル戦略になる」と渡邊が語りました。
インバウンド事業をモバイルの側面から紐解く:App Annie Japan 株式会社エバンジェリスト向井氏
第二部講演は、App Annie Japan 株式会社エバンジェリスト向井氏による「インバウンド事業をモバイルの側面から紐解く」というテーマで講演。App Annieの持っているデータを元に、世界のアプリ市場を解説。インバウンドとの関係性について向井氏が説明しました。
App Annieとは?
App Annieとはわかりやすく解説すると、世界中のアプリマーケットの市場データを収集し、そのデータを用いた分析ツールを提供するサービスです。例えば、App StoreやGoogle Playなどのアプリマーケットから国・カテゴリー別のアプリランキングを収集し、特定アプリの過去から現在に至るランキング推移を簡単にチェックできます。
App Annieを活用すると、アプリ市場全体の動向を知ることができ、戦略を立てる事ができるでしょう。アプリを開発して、広めていきたい場合にはぜひ、App Annieを活用し、情報を集めてから実施することをオススメいたします。
インバウンドの文脈にApp Annieを絡めると、各国のアプリ利用やトレンドが把握することができます。例えば、インドではモバイルウォレットアプリが流行っているというデータがApp Annieで取得することができます。
そうすれば、インド向けのインバウンド対策をする場合には、決済対応をできるようにして、現金がなくても支払いをできるようにすることが大切だという仮説をApp Annieを活用して導き出すことができます。
アプリ活用がインバウンド対策に必要になってくる
App Annieのデータを元に全世界のアプリ市場を知り尽くしている向井氏が改めて、全世界のアプリ市場について解説しました。2015年〜2017年の2年間で全世界のアプリダウンロード総数は1.6倍に伸び、アプリの平均使用時間も1.3倍に増加。全世界で1日3時間もアプリに時間を使っているというデータが出ています。
さらに、2015年〜2017年の2年間でアプリストアにての課金が2倍に増加しています。特にアジア圏でのアプリへの課金は2.5倍になっております。
日本へ訪れる訪日外国人もアジア圏からが多く、アプリを活用したマーケティングや販売は注目する必要があるでしょう。
さらに、App Annieのデータを活用することにより、全世界のアプリ市場のデータが分かりますが、各国ごとのアプリのトレンドがわかるのも強みです。例えば、ブラジルであれば、今でもPokemon GOが大変人気だったり、韓国ではセルフィーアプリがダウンロード数をかなり伸ばしているとのこと。
これらの各国のアプリトレンドを理解することにより、訪日につなげるマーケティングや、旅ナカの訪日外国人に向けたPRにつなげることができる仮説を考えることができるでしょう。
パネルディスカッション:旅行者を取り巻く環境の変化とビジネス機会の発掘
第三部は「旅行者を取り巻く環境の変化とビジネス機会の発掘」というテーマでパネルディスカッションを行いました。司会進行にスペックホルダー株式会社取締役で、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会ITアドバイザーでもある大野 泰敬氏、各モデレーターとして登壇したのが、株式会社ワイヤ・アンド・ワイヤレス、取締役副社長喜地 弘志氏、JapanTaxi株式会社 代表取締役社長川鍋 一朗氏、訪日ラボ運営会社株式会社mov渡邊の3名でした。
各業界のプレーヤー、インバウンドニュースサイト運営者といった立場から、インバウンドとアプリを活用したマーケティングや、2020年に向けた動きなどについてディスカッションしていました。
インバウンド対策において決済対応は必須科目!
決済対応の重要性について、司会を務める大野氏が質問をしました。そこでJapanTaxi株式会社の川鍋氏が回答。「タクシーにおいては決済対応が重要。決済対応するだけで利用者が増えた」とコメント。AlipayやWeChatPayを導入したことを、タクシーの外側にステッカーを貼るなどして、アピールした所、訪日中国人の利用者が増えたと川鍋氏が説明しました。
株式会社ワイヤ・アンド・ワイヤレス喜地氏も、決済対応について重要であると解説。株式会社ワイヤ・アンド・ワイヤレスでは、Wi-Fiと決済、セキュリティーという観点から、地方の商店街などを支援している事業も行っているという。その場合は国からの補助金も出ることがあり、スムーズに訪日外国人受け入れの環境整備が整うとのこと。
まだまだ、日本全体では、クレジットカードも使えない飲食店も多く、全世界的にキャッシュレス化が進んでいる中、日本は遅れていると、登壇者3人は示唆しました。
2020年に向けて、必要となってくるインバウンド向けアプリとは?
そして最後に、司会を務める大野氏が3人に対して「2020年に向けて必要なアプリは?」という質問を投げかけました。
訪日ラボを運営するmov代表渡邊は「収益化しにくいアプリを国に行ってもらいたい」とコメント。民間で行う場合は、事業として収益化しなければ運営できません。そのため、国で行うのであれば、収益化を度外視して、訪日外国人のためになるアプリを開発するのがいいのではないかと説明しました。
株式会社ワイヤ・アンド・ワイヤレス喜地氏は「旅行者の趣味嗜好に合わせた正確な情報を届けるアプリ」と回答。株式会社ワイヤ・アンド・ワイヤレスではWi-Fi情報を元に訪日外国人の動向情報を保有しており、将来的にはかなりの精度の情報を訪日外国人に届けていけるようになると説明しました。
JapanTaxi株式会社川鍋氏は「一点突破型のアプリ、オリンピックを見に行くだけに特化したアプリは面白い」と回答。交通機関の乱れや、入り組んだ、地下鉄などの影響で訪日外国人が、オリンピックの各会場に到着することが困難になると川鍋氏が予想。
それらを解決するべく「オリンピックを見に行くだけに特化したアプリがあってもいいのでは」と解説していました。
まとめ:オリンピックまで残り1年半を切る!デジタルを活用したインバウンド対策は急務か?
本公演では、インバウンドとデジタルマーケティングやアプリを活用したお話がメインでした。オリンピックまで残り、1年半を切り、訪日外国人の受け入れ体制も、徐々に進みつつあります。しかしながら、デジタルを活用したインバウンド対策はまだまだ進んでいないことも事実です。
このような最前線のインバウンド対策の情報が得られるセミナーに参加し、積極的に自社のインバウンド対策に活用していきましょう。
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