「入国在留管理庁」新設 来年4月から/入国管理局を格上げ なぜ?「行政書士明るい総合法務事務所」が徹底解説!

「入国在留管理庁」新設 来年4月から/入国管理局を格上げ なぜ?「行政書士明るい総合法務事務所」が徹底解説!

今年6月に発表された『骨太の方針2018』で「働き手としての外国人の受け入れに積極的に向かう」という方向性が政府から示されました。外国人の受入れを担う入国管理局は来年2019年4月「入国在留管理庁」へと格上げされることが発表されました。入国管理局の「庁」への格上げで何が変わるのでしょうか?

外国人政策勉強会EDAS(イーダス)では、政府の「外国人材の受入れ・共生のための総合的対策」を読み解くために、数回にわたり専門家を招き、勉強会を開催します。今回のレポートは8月24日に開催された24回目の勉強会の後半部分です。

講師はEDAS評議員長岡 由剛(ながおか よしたけ)氏です。長岡氏は行政に関する申立代理人権限を持つ特定行政書士であり、「行政書士明るい総合法務事務所」代表です。今年6月のEDAS外国人政策勉強会では非常に分かりづらいとされる「在留資格ビザ」や入管法について分かりやすく説明し、好評を博しました。

新しい在留資格「特定技能」と「技能実習」の違いとは?外国人労働者受け入れに舵を切る日本。インバウンド担当者なら知っておきたい「在留資格(ビザ)」について「行政書士明るい総合法務事務所」が徹底レクチャー

2018年6月22日都内にて「『在留資格(ビザ)』で分かる、外国人受入れの今とこれから」セミナーが開催されました。外国人政策勉強会EDAS(イーダス)が主催したこのセミナーは、特定行政書士の長岡由剛(ながおかよしたけ)氏を講師に迎え、日本の在留資格(ビザ)について学ぶために催されたものです。2018年6月5日に先立って政府が原案を示した「骨太の方針」でも、外国人材の受入拡大路線が盛り込まれました。これから日本は移民政策や外国人労働者という、今まであまり語られてこなかった課題と向き合う...

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来年4月に「庁」へと格上げされる入国管理局。今後期待される役割とは?

入国管理局入管法第1条に基づき、出入国管理を執行するための役所です。来年2019年4月に法務省は入国管理局を「入国在留管理庁」へと格上げする予定です。

入国管理局の業務はその名の通り、出入国“管理”が主となっています。入国管理局で働く人々には「日本国民を守る」という意識があることは否定できないと思います。公安権力として公正・厳正・粛々と“管理”をしているのです。

EDASセミナー「外国人材の受入れ・共生のための総合的対策」を読み解く・第一回の様子」

EDASセミナー外国人材の受入れ・共生のための総合的対策」を読み解く・第一回の様子

厳しい対応も日本の公安秩序を守る上で大事です。しかし、今後日本の社会情勢、人口減少などを前提に政府が提唱する外国人との共生ということで考えていくと、このまま“管理”だけやっていて大丈夫でしょうか?

来年から入国管理局が「庁」に格上げになるのであれば、その役割はただ在留を“管理”するだけでは十分とはいえません。本日はそこを議論するための着眼点を提供したいと思います。

現在の「入管法第1条」「出入国管理行政」をおさらい

入管法第1条には、人の出入国に関する目的理念が書いてあります。

「出入国管理及び難民認定法は、本邦に入国し、又は本邦から出国するすべての人の出入国の公正な管理を図るとともに、難民の認定手続を整備することを目的とする。」

出入国管理行政は、以下のように定義されています。

憲法の理念とする国際協調主義を踏まえ、現在の国際社会秩序の下で認められている主権国家の権利の行使として、我が国の社会にとって有益である外国人は円滑に受け入れ、 他方、我が国の社会にとって有害である外国人を排除し、 もって我が国社会の健全な発展を維持して いくための行政作用である。」(出典「出入国管理法講義」)

日本社会での外国人との共生を考えたときに、この入管法第1条で、大きな変化に耐えられるのか?これで足りるのか?そういう議論があります。

官邸公表資料3「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」を読み解く

ここからは官邸が発表した資料における入管関連の記述を現状での問題点を中心に見ていきます。

官邸公表資料3「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(検討の方向性)(案)(平成30年7月24日)」9ページ5 新たな在留管理体制の構築をご覧ください。表紙の右下の緑の枠内です。

官邸公表資料3「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」表紙部分

官邸公表資料3「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」表紙部分

(1)在留資格手続の円滑化・迅速化

入管窓口は現在混みすぎである:待ち時間は現在、毎日3~4時間となっている。赤ちゃん連れ、高齢の外国人には過酷

電子政府入管手続き(入管オンライン化)は悪質ブローカー対策とセットで:仕事関連の入管手続きをオンライン化する方向になっているが、オンライン申請の安易な拡大はなりすまし申請など、悪質なブローカー暗躍の可能性がある。導入時に対策を用意しなくてはならないだろう

手続きだけでなく、審査の迅速化も必要:外国人に活躍してもらうためには一般社会で求められるスピード感を入管でも取り入れていかないといけない。「コックとして来日する予定だったが入管の審査が一年以上かかったため仕事がなくなってしまった」「入管の審査にあまりに時間がかかるので 、短期滞在ビザで来日してそのまま働き始めてしまう」などの事例は枚挙にいとまがない

現在の審査の方法は適切か:入管は日本全土にあるが、審査のクオリティ・方法にそれぞればらつきがあったりする

(2)在留管理基盤の強化

税務署との連携は今後どうするのか在留状況・雇用状況の把握法務省と厚労省の情報連携が示されている。しかし雇用状況の把握には税務署とも連携すべきでは。住民票のある中長期滞在の外国人住民にはマイナンバーが付与されており、税務署はマイナンバーを使って収入・就業先を把握するため、「留学生の28時間制限を超えた労働」「労働ビザで入国した外国人の長期離職」「入国時に申請した職種と実際の就労先が異なる」などの雇用ルール違反などがすぐにわかる

厳格な管理はかえって脱法行為を促す留学生1週28時間の就労制限がある)の複数職場の掛け持ちは珍しくない。日本社会がその労働力に頼っているという側面を考えると、厳格な管理は彼らを追いつめ、税法上不適切な処理を行う職場に留学生が集中して働く事態や、特定国籍の隔離されたコミュニティ化を促進する事態、ブローカーの暗躍を招く事態など、結果的に日本社会にマイナスの影響が出る可能性あり

日本人と外国人との非居住者の扶養に関する不均衡を是正すべき非居住者の扶養(海外に住む扶養家族への送金を控除するシステム)が在留外国人の非課税枠となってしまう可能性がある。人数を水増し申告していないか、送金先国の生活物価に応じた控除額はいくらか、税法改正したり、税務署による扶養実体把握の努力が必要

(3)不法滞在者等への対策強化

退去強制令書発布後の強制送還執行の明記不法滞在で摘発・取調べ後に退去強制が出た外国人強制送還せず国内で仮放免という形で放置、その後も日本で隠れ暮らし、家族もそして脆弱な生活基盤を日本に作り高齢化してしまうケースがあった。

退去強制が出た外国人に滞在ビザが発行される可能性は例外的ケースを除いて極めて低く、就労をしてしまう等の仮放免に関するルールに違反していることが見つかれば再度収容されることもあり、そうでなくとも入管にはいつでも当該外国人を呼び出し、強制送還することができる(仮放免状態はなんら退去強制を止める効果はない)。

就労を禁止されているため自立して生活出来ない、いつ強制送還されるかわからないという不安定な身分に置かれている退去強制令書発布済みの本邦残留外国人に対するあいまいな対応は公共の利益に反するばかりでなく、本国等での生活復帰・自立を遅らせることになる。

まとめ・外国人材の受入れ・共生に伴い、入国管理は「外国人の人生トータルに関わる役割」を担っていく必要がある

外国人は労働者であり、同時に生活者として一人の人間です。法務省の入国在留管理庁が外国人の人生トータルに対して携わっていく必要があるのではないかと思います。単独でケアできない部分については、関係省庁との連携も入管法に盛り込んで行かなければいけないのではないでしょうか。

外国人材への支援と在留管理等の議論の中で法務大臣が認める登録支援機関として「業界団体、民間法人、社労士等」を想定しているようですが、行政書士には労働だけでなく外国人の生活にかかわる側面まで支援できる強みがあります。今後積極的に活用して頂きたいと思う次第です。

また今回の「外国人材の受入れ」の前に、日本国内にいる外国人材の活用不足も解決すべきでしょう。留学生在留外国人の子供たちなどについてはいまだ在留資格に関する議論が足りていないと思われます。これについてはまた改めてまとめます。

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<取材協力>

「行政書士明るい総合法務事務所」代表・長岡由剛氏

「行政書士明るい総合法務事務所」代表・長岡由剛氏

長岡由剛(ながおか よしたけ)

特定行政書士(行政に対する不服申し立て代理人権限をもつ行政書士)。行政書士明るい総合法務事務所 代表

ビザや外国人関連法務を年間1,000件以上手掛ける。在東京タイ王国大使館(TNJ主催)、行政書士稲門会、東京都行政書士会品川支部等でも講師をつとめる。タイ人を中心に、外国人が安心して暮らせるための支援を行っている。モットーは「外国の方にとって、日本がもう一つの故郷になりますように、プロの矜持と共に敬意を込めて。」。

著書:「行政書士の業務展開」(共著 成文堂)

<取材協力>

EDAS(イーダス)は、日本に居住する外国人と、それを受け入れる日本人、日本のコミュニティが相互理解の絆を深めるとともに、外国人のみなさんが、日本語でコミュニケーションできる社会の実現を目指して、さまざまな取組を行ってまいります。

<参考>

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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