世界に誇る日本ブランドといえば、トヨタ? ユニクロ? 中国では「無印良品」が両者と同じく日本発のブランドとして広く認知されています。そんな「MUJI」として愛される無印良品は今年、日本よりも早く中国でホテルをオープンさせました。中国人の無印愛とホテルの評判、強力な競合がいる中でのユニークな地位確立の方法を探ります。
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中国に広がる「MUJI」愛、ジャンル問わず商品を手に取る中国の無印良品ファン
1980年に誕生した西友のPB(プライベートブランド)である無印良品ですが、実はこの数年中国で非常に人気となっています。上海や北京といった大型の都市で店舗展開をしていることはもちろん、中国で消費の主流形態となりつつあるネット通販の普及に応じて、主要ECプラットフォームにも出店しています。
中国人の心をつかんだのは「日本」「質の高さ」「デザインの簡素さ」「使いやすさ」です。中国版Twitterと呼ばれるSNSのWeiboでは、1年ほど前は化粧水や衣類の投稿が、今年は布団カバーがよく見られます。カフェの利用、お菓子の購入、文房具など、商品のジャンルを問わず手に取る人が多いようです。
中国国内の店舗数は2011年には30数店舗でしたが、5年後の2016年の12月には200店舗目の出店を達成し、本年初頭には229店舗となっています。
現在も新店舗の展開を続けており、2014年12月には成都太古里店が、2015年には上海755旗艦店がオープンしています。そして今年2018年1月、中国南東に位置する香港にほど近い深センに、深業上城店という旗艦店をオープンしました。
「MUJIホテル」は日本よりも北京よりも先に、「深セン」に開業
無印良品の中国旗艦店である深セン深業上城店がオープンした2018年1月18日は、実は世界で初の「MUJI HOTEL」の開業日でもありました。そのため、深セン深業上城店は「無印良品の3つのサービスが一か所に集結」しているとして中国国内でもニュースとなります。3つのサービスとはつまり「旗艦店」「無印良品レストランMUJI Diner」、そして世界初の「MUJI HOTEL」です。
深センは北京、上海と並ぶ高収入な地域でありながら、新参者
MUJI HOTELは2018年1月の深セン開業後、6月末に世界2店舗となるMUJI HOTEL北京店をオープンしています。日本では来年2019年の春、銀座に同じくMUJI HOTELの開業を予定しており、同ホテルには売り場面積世界最大の旗艦店が併設されます。
店舗面積に着目すれば、結果として銀座店が世界最大となるとはいえ、ホテルは日本よりも1年以上先に中国で営業開始することになった無印良品。それほどまでに、中国では無印良品というブランドに存在感があるということがわかります。では、無印良品はなぜ、世界初のホテルを首都北京や上海ではなく、深センに出店したのでしょうか?
実は中国には「北上广深」という地域の呼称があります。これは「北京」「上海」「広州」「深セン」の頭文字を合わせたものです。前の3つの地名を見れば推測できる方もいるでしょうが、これは中国でもっとも経済力、社会的影響力のある地域の総称です。
季節ごとに発表される「都市別の給与ランキング」では、給与の高い地域として見出しにこの名称が現れてきます。それもそのはず、中国で今最も有名な企業の一つ「テンセント」の本社は深センにあるのです。ちなみに近年の給与ランキングでは、中国の巨大企業「アリババ」の本拠地を擁する杭州市や、次の無印良品の旗艦店候補地とのうわさもある南京市も上位に名前を連ねています。
ニュースでは、経済成長のスピードや高所得層の出現など「富める中国」を耳にする機会も増える昨今ですが、無印良品の提供するサービスに対し、その対価を支払い楽しめる層をターゲットにする場合、「北上广深」への進出は当然の選択だったと考えられます。
北京ではなく深センを先にオープンさせたことに戦略的な意図はないとの報道もありましたが、長さで言えば深センは、北京はおろか上海よりもずっと開発の歴史は浅く、約30年前には人口たった30万人程度の漁村でした。ところが、今日では1400万人という人口を有し、最新の技術や画期的なビジネスが生まれる地となっています。こういった点から深センは、北京や上海と比べた場合に相対的に競合する施設が少ないと判断され、その結果、初の開業地として選ばれた可能性もあります。
実際の価格や評価は? 満たせなかったMUJIファンの心
中国の無印良品ファンはブランドへのロイヤリティの高さも特徴です。ホテルがオープンした際には「いくらであろうと泊まりに行きたい」「自宅は無印の店舗みたいに、無印良品のアイテムで整えている」といったコメントがSNSで見られました。
MUJI HOTELにはタイプA~Eの部屋があり、以下のような料金体系になっています。最も安い部屋で最低料金は950元(1万6150円)、最も高級な部屋の最低料金は2500元(4万2500円)です。
この金額を宿泊者はどう感じているのでしょうか? ある無印良品ファンの宿泊体験談では、MUJI HOTELはそのコンセプトから「ラグジュアリーホテル」ではないはずが、この価格は間違いなくラグジュアリーホテルのそれだと断ったうえで、「ラグジュアリーホテル」というにはサービスには不満が残る様子を伝えています。 ※1元=17円で換算
この宿泊者は、施設のデザインや部屋のインテリアに対してかなり満足した様子はあるものの、レストランの皿の水分が拭き取られていなかった等、細部に目線を配るとあまり高い評価をつけられないとの感想を寄せています。また、ウェブサイトの予約システムについて、宿泊日程を選んだ後、宿泊不可能な部屋まで一覧に表示される点には大きな不満が残ったようです。
まとめ ~MUJIファンだけでない「シンプルで合理的」は中国での流行、ユニークな地位を確立するには体験談から視線を追うことも有効~
中国での2018年の月給ランキングでは、2トップの北京、上海は10,000元を超えますが、続く深セン、杭州は9,000元台、その後は7,000元台になります。その中で、1泊2500元のホテルは確かにラグジュアリーホテルです。
中国ではシンプルなデザインの人気は高まっており、検索エンジンでも「無印良品…」と入力すると、「無印良品に似た商品」「無印良品風の装飾」「無印良品風のブランド」といったキーワードが出てきます。
ネット通販が盛り上がる中、ナスダックにも上場するネットイースが手掛ける「厳選」シリーズは無印良品に似た雰囲気の衣類、インテリア、日用品の販売で人気を集めています。「厳選」はMUJI HOTELに先駆けること約半年、杭州にMUJI HOTEL同様、客室の設備にブランドの商品を利用したホテルを開業しています。
「厳選」や、先日より日本における展開拡大がクローズアップされている「MINISO」など、無印良品の模倣と目されるブランドは昨今存在感を増しています。本稿でご紹介した中国人によるMUJI HOTEL体験談には、無印良品が今後、中国で元祖「シンプル」「ナチュラル」のブランドの地位を確固たるものにするヒントが隠れています。今後は、ラグジュアリー層のニーズを満たすワンランク上のサービスを中国本土で実現していくことがポイントとなるのではないでしょうか。
また日本滞在中に中国人が特別に感じるポイントも、こういった中国人の声から学ぶことができると言えるでしょう。特に、インターネットサービスのシンプルなサービス設計は中国人に限らず海外からの旅行客に対応するには必須事項です。現地提供のサービスに対するものではあっても、ユーザーの声はぜひインバウンド対策にも生かしていきたいところです。
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<参考> - MUJI HOTEL(公式サイト) - 無印良品の中国での実験 - 北京MUJI HOTELついに開業 - 2500元でMUJI HOTELに宿泊するのはありえない - 2018年最新給与ランキング
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