観光庁がまとめた日本全国における6月の外国人延べ宿泊者数は、745万人泊。 調査を開始した平成19年における同時期と比較すると約3.8倍となっており、6月としては調査開始以来の最高値をたたき上げました。
東北地方の6月の外国人延べ宿泊者数(第2次速報値)は前年同月比38%増の7万2560人となり、2018年前半を終え、訪日外国人客数も順調に数を伸ばしています。2018年上半期の東北6件の「インバウンド通信簿」を見ていきましょう。
※)平成19年6月は176万人泊、平成30年6月は672万人泊。なお、平成19年は従業者数10名以上の施設のみ調査対象としていたため、平成30年6月との比較においては、従業者数10名以上の施設で行っています。
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- 特にアジアからの訪日外国人観光客に注目を浴びているのは「東北」
- 東北6県 各県別にみるインバウンドの現状と今後の動向①:アジア8地域における 訪日外国人観光客からの東北の認知度及び訪問意欲
- 6月の外国人延べ宿泊者数(地域別/国別統計)から見る東北インバウンドの現状
- 2018年上半期 東北6県 各県別にみるインバウンドの現状と今後の動向
- 東北6県 各県別にみるインバウンドの現状と今後の動向①:青森県
- 東北6県 各県別にみるインバウンドの現状と今後の動向②:岩手県
- 東北6県 各県別にみるインバウンドの現状と今後の動向③:宮城県
- 東北6県 各県別にみるインバウンドの現状と今後の動向④:秋田県
- 東北6県 各県別にみるインバウンドの現状と今後の動向⑤:山形県
- 東北6県 各県別にみるインバウンドの現状と今後の動向⑥:福島県
- まとめ
目次
特にアジアからの訪日外国人観光客に注目を浴びているのは「東北」
東北6県 各県別にみるインバウンドの現状と今後の動向①:アジア8地域における 訪日外国人観光客からの東北の認知度及び訪問意欲
株式会社日本投資銀行東北支店が発表した「2017東北インバウンド意向調査」によると、アジア8地域における「東北」の認知度は12.6%と相対的にみると低位となっていますが、同社における前回調査では11.6%、前々回調査では10.4%だったことから徐々に認知度は上がっていると言えます。
また、アジア8地域における訪問意欲調査によると「東北」は3.5%、と認知度と同様に低位ながらも同社前回調査よりも伸びが見られ、訪問意欲は「青森県」が6.2%と最も高くなっています。
6月の外国人延べ宿泊者数(地域別/国別統計)から見る東北インバウンドの現状
観光庁から発表された6月の外国人延べ宿泊者数(第2次速報値)は、前年同月比35%増の8万6470人となりました。県別の訪日外国人延べ宿泊者数は以下の通りです。
県 | 外国人延べ宿泊者数 | 前年比 |
---|---|---|
青森県 | 27,790人 | +67.6% |
岩手県 | 13,570人 | +46.5% |
宮城県 | 27,500人 | +81.8% |
秋田県 | 5,640人 | +28.2% |
山形県 | 6,320人 | +7.3% |
福島県 | 5,650人 | −23.6% |
都道府県別、国籍別外国人延べ宿泊者数の構成比は以下の表の通りです。
それでは、現在東北6県のインバウンドにおいて何が起こっているのが県別に検証してみたいと思います。
2018年上半期 東北6県 各県別にみるインバウンドの現状と今後の動向
東北6県 各県別にみるインバウンドの現状と今後の動向①:青森県
青森県は前述のとおり訪問意欲が東北6県の内で最も高いという結果になりました。震災前の2010年では訪日外国人観光客数は東北6県の内5位でしたが、青森県は北海道新幹線開業をにらみ、「青函圏(青森市、弘前市、八戸市、函館市)」を最大限活用して交流人口を増やす「立体観光」戦略を推進しました。
また空路では、中国定期便となる中国・奥凱航空の青森―天津線が就航し、大韓航空は高い搭乗率を受け、青森―ソウル線を10月から週5往復に増便することが発表されました。
さらに、2018年は青森港に寄港するクルーズ船も25隻を予定しており、内16隻が外国船となるため、ますます青森人気が高まることが予想されます。
青森県では訪日客宿泊者数80%増に:復興庁による新しい東北事業を軸とした民間・自治体からのインバウンド対策をおさらい
三大都市圏及び地方部における外国人延べ宿泊者数比較:観光庁より引用訪日外国人観光客に人気の旅行先は、以前であればゴールデンルートに偏っていましたが、最近では地方にもスポットライトが当たり始めています。観光庁が2016年11月30日にリリースした宿泊旅行統計調査によると、三大都市圏に宿泊した訪日外国人観光客数は、去年と比べて約1.4%アップと微増を記録。一方、地方部に宿泊した訪日外国人観光客数は、去年と比べ約7.8%アップとなっており、地方部を滞在先として選ぶ訪日外国人観光客が増えていること...
東北6県 各県別にみるインバウンドの現状と今後の動向②:岩手県
岩手県は群を抜いて訪日台湾人観光客が多いことが特徴です。
その理由として、一つは、昨年9月から台湾の格安航空会社(LCC)であるタイガーエア台湾のチャーター便が就航したことが要因と考えられます。また8月1日にはいわて花巻空港と台湾の桃園国際空港を結ぶ定期便が就航したことにより、岩手県のインバウンド促進に拍車がかかると予想されます。
岩手県では国際定期便は台湾線が初となり、これからの動向に注目が集まります。
東北6県 各県別にみるインバウンドの現状と今後の動向③:宮城県
東北随一の地方都市・仙台がある宮城県は、外国人延べ宿泊者数も青森県に次いで2位となっています。
県内におけるDMO活動も活発化しており、(株)VISIT東北と(一社)宮城インバウンドDMOは、宮城県への訪日外国人観光客の誘致を目的に、9月から「酒造ツアー」を販売するなど、旅ナカコンテンツの作成にも力を入れており、ポテンシャルの高さが伺えます。
また、2年前の仙台空港の民営化により就航路が広がったことや、東京から県内へのアクセスの良さも人気が高い要因と考えられます。さらに、仙台空港内にはムスリム向けの礼拝室を設けるなど、近年成長しているムスリム市場への準備もちゃくちゃくと進めています。そのため、ムスリム圏への認知度が上がるにつれ、今後宮城県内のムスリム市場は広がりを見せるだろうと考えられます。
東北初!仙台空港で礼拝堂を設置:地方空港がムスリム受け入れに注力する理由が意外?背景には「入国経路の変化」と「ムスリム市場の好調ぶり」が
多くの訪日外国人観光客の玄関口となっている空港。法務省の出入国管理統計統計表によると、訪日外国人観光客のうち97.4%が国際空港から入国しています。訪日外国人観光客を最初におもてなしする場所でもある空港とだけあって、国や地域に偏らない多岐にわたるインバウンド対策に取り組んでいます。仙台国際空港でも、最近あらたなインバウンド対策を実施しました。インバウンド受け入れ環境整備の資料を無料でダウンロードする「翻訳・多言語化」の資料を無料でダウンロードする「多言語サイト制作」の資料を無料でダウンロー...
東北6県 各県別にみるインバウンドの現状と今後の動向④:秋田県
秋田県は訪日外国人観光客の訪問率や訪問者数、外国人延べ宿泊者数など全体的に低めの数値となっており、まだまだインバウンド戦略に関しては課題が多いと言われています。
近年はGoogle検索で秋田犬を表す「Akita」は非常に多く検索されているため、「秋田犬ツーリズム」を考案し、秋田犬アイドルグループ「MOFUMOFU☆DOGS 」によるミュージックビデオを制作するなど、嗜好を凝らしたPRを行っています。
『コト消費』進む今だからこそ地方の特色が活きる 2018年に404億円の消費を狙う「秋田犬ツーリズム」とは?
近年、買物中心の「モノ消費」から体験型の観光を楽しむ「コト消費」へと需要が移ってきています。実はこうした「コト消費」は比較的似た風景になりがちな大都市圏ではなく、特産品、伝統工芸品、特徴的な気候、風景が魅力となる地方都市に適している とも言えます。今回はそうしたツーリズムの1つである「秋田犬ツーリズム」について詳しく見てみましょう。<関連>目次秋田犬ツーリズムの目的は、ブランド化による交流人口増加による地域経済の活性化と地域社会の持続的な発展大館市・北秋田市・小坂町エリアの観光客の実態は年...
また、今秋は秋田空港への台湾チャーター便による外国人観光客の到着に合わせて、国際線ターミナル到着ロビーにて、なまはげによる「賑やかし」や、観光レディによるプレゼント配布等の歓迎の「お出迎え」を行う予定になっており、秋田県の認知度の向上やリピーターの獲得に力を注いでいます。
東北6県 各県別にみるインバウンドの現状と今後の動向⑤:山形県
山形県は、今年10月から来年2月にかけて台湾と山形空港、庄内空港を結ぶ国際チャーター便を約140便までに増便すると発表しました。チャーター便は台湾の中華航空が運航し、台湾の桃園国際空港発着で、山形空港に約110便、庄内空港にも約30便の運航になるとのことです。
2017年に山形県を訪れた訪日外国人観光客は19万1300人で、中でも訪日台湾人観光客が全体の半数を占めています。今回の施策により、蔵王温泉の樹氷見学やスキーツアーを中心に、インバウンドのさらなる拡大が期待されます。
東北6県 各県別にみるインバウンドの現状と今後の動向⑥:福島県
東日本大震災・原発事故以降、風評被害等により観光客数が震災前を下回る状況が続いていましたが、ようやく2017年の外国人延べ宿泊者数が震災前の水準を上回りました。
福島県は2010年比7.8%増の9万6千人泊となり、震災前に比べると、訪日韓国人観光客が大幅に減少していますが、台湾、香港、タイ、豪州、スペインなどから訪れる訪日外国人観光客が増加しています。
また東京を起点に、福島・茨城・栃木の4都県を結ぶ観光ルート「ダイヤモンドルート」の開発や、動画や観光PRサイトの構築などデジタルプロモーション事業に注力しており、観光資源大国福島の今後の動向に目が離せません。
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インバウンドにおいて一躍脚光を集めた「ゴールデンルート」。日本の観光の”美味しいところ”を全て楽しめるということで特に初訪日の訪日外国人観光客から人気を集め、インバウンド市場を狙うビジネスにおいては重要なラインとして未だその存在感を残しています。しかしながら、インバウンドの「コト消費」化、そして地方周遊が進むにつれて、ゴールデンルート一辺倒ではないインバウンドが広まりつつあります。今回は、「ゴールデンルート」の対抗馬として登場した、福島・栃木・茨城・東京を結ぶ観光ルート「ダイヤモンドルート...
まとめ
2016年に東北6県の知事・副知事が台湾にてトップセールスを行ったことを初め、継続したPR活動が功を奏し、東北地方全般的に訪日台湾人観光客が増加している傾向にあります。
また東北観光推進機構が、東北6県+新潟県の広域的な活動を精力的に行っているほか、県をまたいだDMOが設立されていたりと、インバウンド施策の出足が遅れていた東北ですが、今後の巻き返しに期待したいところです。
訪日客の地方誘致に重要なのは、まず「知ってもらうこと」。効果的なインバウンドプロモーションを資料で詳しくみてみる
<参考> - 観光庁:宿泊旅行統計調査 - 株式会社日本政策投資銀行 東北支店:2017 東北インバウンド意向調査 - 青森港国際化推進協議会事務局:青森港クルーズ客船寄港予定・寄港実績 - 日経新聞:外国人客、青森県へ続々 アクセス向上など奏功 - 朝日新聞:岩手)台湾への定期便就航、花巻空港でセレモニー - 山形新聞:台湾-山形チャーター、100便超計画 10月~来年2月に運航 - 一般社団法人秋田犬ツーリズム:秋田犬を活用したインバウンド戦略 - 秋田県:台湾秋季チャーター便の秋田空港でのお出迎えについて - 福島県商工労働部:福島県観光客入込状況 平成29年分 - https://www.kankokeizai.com/2017%E5%B9%B4%E5%A4%96%E5%9B%BD%E4%BA%BA%E5%BB%B6%E3%81%B9%E5%AE%BF%E6%B3%8A%E6%95%B0%E3%80%81%E7%A6%8F%E5%B3%B6%E3%83%BB%E7%A7%8B%E7%94%B0%E3%81%8C%E9%9C%87%E7%81%BD%E5%89%8D%E4%B8%8A%E5%9B%9E/
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