「ゼノフォビア」とは?「外国人が怖い…」外国人観光客に怒鳴られ2500万円をごまかした事件の背景

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「ゼノフォビア」とは、外国人を受け入れた社会が直面する感情的な軋轢で人種差別とは異なります。

訪日外国人の数が増えるにつれ、日本人スタッフが外国人対応を迫られる場面も増えています。しかし、外国人に慣れていない日本社会が急激な外国人受入れをする中で「怖い・イヤだ」という反応をする人々も一定数いる事実をどう考えればいいでしょうか。

都内の人気観光スポット新宿御苑で元職員が「外国人が怖い」という理由で、分かっているだけで2500万円以上の入園券を無料配布していたというニュースは、日本でインバウンド産業にたずさわる人にとって、他人事ではありません。外国人恐怖症「ゼノフォビア」の原因と、その対策を移民大国の前例から見てみましょう。

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外国人恐怖症「ゼノフォビア」とは?

ユネスコのホームページにある「社会・人間科学>国際的な移民との共生を考える」のページに外国人恐怖症「ゼノフォビア」の意味と概要が記されています。

要約すると、ゼノフォビアとは「見知らぬ人を恐れる」というギリシャ語源を持つ言葉であり、外国人を受け入れた社会が直面する感情的な軋轢です。いわゆる人種差別との違いは、人種や身体的な特徴よりも、自分の属する社会に異質なものをもたらすことに反応する点だとされています。

ゼノフォビアは海外ではしばしば異文化を持つ人々への暴力として発露しますが、大人しい日本人気質もあり、日本においてはより静かな形で潜伏し、間接的に表現される可能性が高いといえるでしょう。

なぜ外国人におびえるのが「ゼノフォビア」なのか?

ひるがえって、新宿御苑での外国人からの入場料未徴収事件を考えてみましょう。

外国人におびえて入場料を取らないだけでもゼノフォビアと考えるのはなぜか、それは「コミュニケーションを一方的に断絶した」発露として入場料未徴収事件が起きたからです。

事の発端は外国人観光客に入場料をめぐって怒鳴られたことが原因だといいます。他人に対して少々のトラブルで声を荒らげたりすることが少ない日本では、外国人にお金のことで怒鳴られるショックは想像に難くありません。この点について対応した職員は本当に気の毒です。

しかしインバウンド対応をする立場として考えれば、別の見方ができます。日本人の常識が外国人には通用しないことを前提に、なんとかコミュニケーションを成り立たせて料金を徴収するべきなのです。

この職員は外国人の入場数をもみ消すために、システム改ざんなど間違った努力を必死に行い、結果的に公の施設である新宿御苑に巨額の損失を与えてしまいました。

この努力を多言語対応の貼り紙をつくる」「英語・中国語のアナウンスを導入する」など、別の方向に振り向ければまったく違った結果となったことでしょう。

ゼノフォビアを乗り越える第一段階「多言語対応」

ユネスコが全世界で提供してる「異文化コンピテンシー」のプログラムでは誤解や排斥などを防ぐために「共感と寛容をもってよく聞き理解する」ことを勧めています。

まずは相手の言うことをよく聞き、大きな心で理解することが必要です。そのためにはコミュニケーションも多言語対応をしていることが必須となります。このために移民大国のアメリカやオーストラリアで取り入れられている制度が公共サービスの通訳(public service interpreter)です。

国策として訪日外国人数を増やしている現状をみると、なんらかの公的な通訳派遣があってもいいのかもしれません。日本には通訳案内士という、観光と言語の両面の知識をもった有資格者がいますので、彼らの活用も大きな可能性があるでしょう。

ゼノフォビアに圧し潰されないための心構え

日本で現在インバウンド業界周辺に見られ始めている「外国人はマナーが悪い」といった意見は、自分と相手の「マナー」が同じものだと考えるから起きる批判です。「マナーが悪い」という言葉も、日本人の思う「マナー」と外国人の思う「マナー」がそもそも異なるかも知れない、と考えてみるべきでしょう。

日本人が欲しい「マナー」をきちんと説明することから始めずに、相手が知りもしない「日本のマナー」を知らないからと外国人を批判するのは理不尽です。批判しないまでも、コミュニケーションの回避を重ねて自分のやり方と相手のやり方が違うことを不愉快に感じているのもゼノフォビアの一種かもしれません。

「相手と自分の常識が異なる」「言わなければ伝わらない」ということを前提として、接客サービス訪日外国人の受入れシステムを作ることの重要性は増しています。

海外旅行の魅力の1つが文化や考え方の違いを超えてコミュニケーションすることと思えば、この「伝える」努力を怠ってしまってはいけないでしょう。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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