「ドルガバ」炎上から我々が学ぶべき”中国的価値観”とは?/中国文化を侮辱する「辱華事件」としてECでも徹底排除へ

完全無料 口コミアカデミー 「インバウンドの教科書」出ました! 国別・都道府県別データ・トレンドをカバー 見てみる

経済成長著しい中国。ファッションのハイブランドのファンも多く、プラダやエルメスはもちろん人気ですが、SNS口コミを見てみれば、日本のデザイナーではヨウジヤマモトや川久保玲に関心を抱いている中国人も少なくありません。そのような中、あるハイブランドが中国人消費者にまるで宣戦布告ともとれるようなメッセージを発信し、ブランドイメージを地に落としてしまう事件がありました。

結果として一大ファッションショーの企画を開催予定日当日(11月21日)にイベントの中止に追い込まれたのは、イタリアのファッションブランド、ドルチェ&ガッバーナです。ショーに出演する中国人一流モデルたちはこぞって出演を取りやめたと言います。なぜこのような事態になったのでしょうか?

訪日客の地方誘致に重要なのは、まず「知ってもらうこと」。効果的なインバウンドプロモーションを資料で詳しくみてみる


【訪日ラボは、8月5日にインバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を開催します】

会場での開催に加え、一部講演ではオンライン配信(参加費無料)も実施!さらに、チケットを購入した方限定でアーカイブ配信も予定しています。

ご来場が難しい方や当日ご都合が合わない方も、この機会にぜひご参加ください。

事件のいきさつからECサイトでの取り扱い中止まで

事の始まりはドルチェ&ガッバーナのインスタでした。「お箸を使って食べるシリーズ」と題された3つの動画が、上海でのファッションショーのカウントダウンに合わせて公開されます。

▲ドルチェ&ガッバーナinstagram公式アカウントより
▲ドルチェ&ガッバーナinstagram公式アカウントより

箸を使ってイタリア料理を食べるこの動画は、「ピザ」「小麦粉の生地でチーズと具を巻いたピザ」「トマトパスタ」の3編があり、記事執筆現在も視聴可能です。

動画はどれも、頭から終わりまで、箸を使って食べづらそうに食事をする女性が微笑む姿を映しだします。第1編のピザ編は「こんな小さな棒のカトラリーで、どうやって我々の偉大なイタリア料理を食べるのかお見せしましょう」というあおりで始まります。

3つの動画では共通して、女性は食べづらそうにしたり、箸を使ってどこから料理に手をつけたらいいのか戸惑う表情を見せたり、試行錯誤で食べようとします。これに対し「違う違うそうじゃなくて」「そうそう、はさんで、巻き取って」や、「これを食べたらイタリアにいるみたいに感じるでしょう?でも、中国なんですよ」「中国の麺と同じようなものと思うでしょ?全然違うんですよ」といったナレーターの声が入ります。

このコンテンツをナンセンスと感じ取る視聴者は少なくなかったようです。なかには英語で「フォークを使って寿司を食べたことがありますか?違いであってアドバンテージではないでしょうに…がっかりです」といったコメントもついています。各動画コンテンツからは、「箸は優れていない」「中国よりイタリアがすぐれている」というメッセージが発せられているかのようです。

動画に続くデザイナーの侮辱メッセージのリーク、モデルのボイコット

この動画はWeiboでも公開されましたが、そちらは現在すでに削除されています。この件が社会的に大きなインパクトのある事件となった背景には、動画だけでなく、デザイナーの発言にもあります。

21日の午前、デザイナーのStefano Gabbannaの個別のメッセージのやりとりがリークされます。このメッセージの中で彼は、中国SNSから当該の動画が削除されたことに疑問を感じていること、今後国際社会で中国はクソな国であること」「中国などなくても自分たちは生きていける」と伝えていくと述べており、また中国は汚いマフィアの国であると発言します。

このメッセージを受け、中国のモデルたちはショーへの出演の取りやめを即決します。出演予定だったモデルはチャン・ツィイー、李冰冰(Li Bingbing)、黄暁明といった世界で認知されている人物であり、今回の出来事が全世界からの注目を集めることになることが容易に想像できます。

こういった事態を受け、Stefano Gabbana氏は「当時自分のインスタグラムのアカウントは乗っ取りに遭っていた。例のメッセージでの発言は私のものではない」とし、メッセージに赤い「Not Me」の文字を載せた画像と共に釈明のメッセージを公開しました。しかし主張に真実味があるとは捉えられず、事態の沈静化には役に立っていないようです。

▲件のメッセージについて「乗っ取られていた」と主張するステファノ氏公式アカウント
▲件のメッセージについて「乗っ取られていた」と主張するステファノ氏公式アカウント

Weibo上では各地の報道機関もこの件を伝え、中には「日本人もこれに怒っている」として日本語で書かれたSNSの書きこみを紹介するものもありました。

Weiboの共青団中央(共産党青年団、フォロワー数735万超)アカウントでは、ドルチェ&ガッバーナへのメンションとともに「外資企業のみなさまの投資を歓迎します、中国そして中国人民への敬意を忘れないようお願いします」との書き込みと、「本当の中国のお箸とは」の動画を公開しています。

▲共青団中央のアカウントの書き込み。ドルチェ&ガッバーナにメンションを飛ばしている。27万4000の「いいね」がついている(2018年11月23日)
▲共青団中央のアカウントの書き込み。ドルチェ&ガッバーナにメンションを飛ばしている。27万4000の「いいね」がついている(2018年11月23日)

▲Weiboのホットトピックス。1位に『ドルチェ&ガッバーナ「辱華」が炎上』、5位に『京東DGの「辱華」に報復』
▲Weiboのホットトピックス。1位に『ドルチェ&ガッバーナ「辱華」が炎上』、5位に『京東DGの「辱華」に報復』

検索エンジン百度でもホットトピックスとなっています。

▲検索エンジン百度の「現在のホットトピックス」左上に『ドルチェ&ガッバーナ「辱華」が炎上』、その  2つ下には『京東DGの「辱華」に報復』
▲検索エンジン百度の「現在のホットトピックス」左上に『ドルチェ&ガッバーナ「辱華」が炎上』、その 2つ下には『京東DGの「辱華」に報復』

ECから姿を消すドルチェ&ガッバーナ

SNSや検索エンジンのホットトピックスには、京東によるドルチェ&ガッバーナ商品の販売停止も同じくランクインしています。

今回の事件を受けて、ブランド品の取扱いを中止したECサービス京東だけではありません。「Tmall」「京東」「蘇寧易購」「寺庫」「唯品会(VIP)」「1号店」「洋碼頭」「小紅書RED)」等、主要ECサイトではすでにドルチェ&ガッバーナの商品販売は停止しているようです。

▲ECプラットフォーム「京東」でドルチェ&ガッバーナを検索すると、検索結果はなしと表示された(2018年11月22日夜)
▲ECプラットフォーム「京東」でドルチェ&ガッバーナを検索すると、検索結果はなしと表示された(2018年11月22日夜)

ECサイトだけでなくもちろん店頭からも退場、類似ブランドは「我々はDG(ドルチェ&ガッバーナ)とは無関係」

ECサイトでは販売の中止だけでなく、店頭から商品を引きあげる動きも進んでいるようです。商品をダンボールに雑にほうりながら”整理”する様子を写した動画は、一般人によりSNSに投稿されています。BGMでは「我爱中国」(愛する中国…)の歌詞が流れており、この行動の意味が伝わってきます

また、ドルチェ&ガッバーナと同じ頭文字で靴を販売する「DGオフィシャルストア」では「本店はドルチェ&ガッバーナとは関係ありません」との声明を発表。消費者の直接の問い合わせにも同様の説明を返答し、購入を検討していた消費者は「それなら問題ない。購入する」と答えるやりとりも発生しているようでした。

▲もともとは「ドルチェ&ガッバーナ」のブランド名とかけて命名したと思われるシューズブランド「DG」のTmallの店舗
▲もともとは「ドルチェ&ガッバーナ」のブランド名とかけて命名したと思われるシューズブランド「DG」のTmallの店舗

まとめ:たった1日のうちにショー中止&EC排除までいたった中国市場のスピード感

一転して謝罪に転じたドルチェ&ガッバーナですが、今後中国市場でどのようにリカバリを図るのか、それが可能なのか、国際社会の注目が集まります。

今回の事件はデザイナーの発言が許されるものではないことは当然のことではありますが、これを受けてからの中国人モデルやタレント事務所の行動スピードは、通常の中国ビジネスにおける意思決定の速さにも共通してみられるところでしょう。また、今回の事件は、商業的価値だけでなく社会的イメージを大切にする中国人の価値観、愛国心の強さよく見えた出来事でした。

今回は世界的に著名なデザイナーが引き起こし注目を集める結果となりましたが、異文化を尊重する姿勢は小さな取引においてももちろん軽視するべきではありません

インバウンドでの事業展開においても、中国的価値観や異文化の価値に対しどのように尊重の意を表現することができるのか、よくよく検討することが大切でしょう。

インバウンド対策なにから始めたら良いかわからない?

「インバウンドコンサル」を資料で詳しくみてみる

「調査・リサーチ」を資料で詳しくみてみる

「インバウンドデータ」を資料で詳しくみてみる

「インバウンド研修」を資料で詳しくみてみる


<参考>


【7/9開催】消費額1.7兆円超!最新中国インバウンド市場の攻略ポイント

2024年、訪日外国人による旅行消費額は過去最高の約8兆1,257億円を記録。 そのうち中国は1.7兆円超(全体の約21%)と圧倒的な1位を占めており、宿泊日数や訪問者数でもトップクラスの存在感を示しています。

これだけ市場が大きく、経済インパクトのある中国インバウンド。 いま多くの企業が「中国向けに本格的な戦略を立てるべきではないか?」と検討を始めています。

しかし中国では、Googleをはじめとする多くのサービスに規制があり、中国現地のSNSや地図サービスを活用するなど、独自のカスタマイズされた対策が必要です。

本セミナーでは、インバウンド戦略の基本を押さえた上で、「中国市場の最新動向」と「具体的な対策」について、わかりやすく解説します。

<本セミナーのポイント>

  • インバウンド戦略の基本が学べる!
  • 中国インバウンド市場の規模と最新トレンドがわかる!
  • 中国特有のSNS・地図アプリを踏まえた対応策を学べる!

詳しくはこちらをご覧ください。

消費額1.7兆円超!最新中国インバウンド市場の攻略ポイント【7/9開催】

【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」

2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。

「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。

初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。

参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。

<こんな方におすすめ>

  • インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
  • 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
  • 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
  • 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
  • インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
特設ページを見てみる

【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか


訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。

この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。

※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。

口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。

詳しくはこちらをご覧ください。

「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月後編】

今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」

スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。

「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!

→ 【無料】「インバウンドの教科書」を見てみる

完全無料 口コミアカデミー 「インバウンドの教科書」出ました! 国別・都道府県別データ・トレンドをカバー 見てみる

関連インバウンド記事

 

役にたったら
いいね!してください

この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客インバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!

プロモーションのご相談や店舗の集客力アップに