「ドルガバ」炎上から我々が学ぶべき”中国的価値観”とは?/中国文化を侮辱する「辱華事件」としてECでも徹底排除へ

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経済成長著しい中国。ファッションのハイブランドのファンも多く、プラダやエルメスはもちろん人気ですが、SNSの口コミを見てみれば、日本のデザイナーではヨウジヤマモトや川久保玲に関心を抱いている中国人も少なくありません。そのような中、あるハイブランドが中国人消費者にまるで宣戦布告ともとれるようなメッセージを発信し、ブランドイメージを地に落としてしまう事件がありました。

結果として一大ファッションショーの企画を開催予定日当日(11月21日)にイベントの中止に追い込まれたのは、イタリアのファッションブランド、ドルチェ&ガッバーナです。ショーに出演する中国人一流モデルたちはこぞって出演を取りやめたと言います。なぜこのような事態になったのでしょうか?

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事件のいきさつからECサイトでの取り扱い中止まで

事の始まりはドルチェ&ガッバーナのインスタでした。「お箸を使って食べるシリーズ」と題された3つの動画が、上海でのファッションショーのカウントダウンに合わせて公開されます。

▲ドルチェ&ガッバーナinstagram公式アカウントより
▲ドルチェ&ガッバーナinstagram公式アカウントより

箸を使ってイタリア料理を食べるこの動画は、「ピザ」「小麦粉の生地でチーズと具を巻いたピザ」「トマトパスタ」の3編があり、記事執筆現在も視聴可能です。

動画はどれも、頭から終わりまで、箸を使って食べづらそうに食事をする女性が微笑む姿を映しだします。第1編のピザ編は「こんな小さな棒のカトラリーで、どうやって我々の偉大なイタリア料理を食べるのかお見せしましょう」というあおりで始まります。

3つの動画では共通して、女性は食べづらそうにしたり、箸を使ってどこから料理に手をつけたらいいのか戸惑う表情を見せたり、試行錯誤で食べようとします。これに対し「違う違うそうじゃなくて」「そうそう、はさんで、巻き取って」や、「これを食べたらイタリアにいるみたいに感じるでしょう?でも、中国なんですよ」「中国の麺と同じようなものと思うでしょ?全然違うんですよ」といったナレーターの声が入ります。

このコンテンツをナンセンスと感じ取る視聴者は少なくなかったようです。なかには英語で「フォークを使って寿司を食べたことがありますか?違いであってアドバンテージではないでしょうに…がっかりです」といったコメントもついています。各動画コンテンツからは、「箸は優れていない」「中国よりイタリアがすぐれている」というメッセージが発せられているかのようです。

動画に続くデザイナーの侮辱メッセージのリーク、モデルのボイコット

この動画はWeiboでも公開されましたが、そちらは現在すでに削除されています。この件が社会的に大きなインパクトのある事件となった背景には、動画だけでなく、デザイナーの発言にもあります。

21日の午前、デザイナーのStefano Gabbannaの個別のメッセージのやりとりがリークされます。このメッセージの中で彼は、中国のSNSから当該の動画が削除されたことに疑問を感じていること、今後国際社会で「中国はクソな国であること」「中国などなくても自分たちは生きていける」と伝えていくと述べており、また中国は汚いマフィアの国であると発言します。

このメッセージを受け、中国のモデルたちはショーへの出演の取りやめを即決します。出演予定だったモデルはチャン・ツィイー、李冰冰(Li Bingbing)、黄暁明といった世界で認知されている人物であり、今回の出来事が全世界からの注目を集めることになることが容易に想像できます。

こういった事態を受け、Stefano Gabbana氏は「当時自分のインスタグラムのアカウントは乗っ取りに遭っていた。例のメッセージでの発言は私のものではない」とし、メッセージに赤い「Not Me」の文字を載せた画像と共に釈明のメッセージを公開しました。しかし主張に真実味があるとは捉えられず、事態の沈静化には役に立っていないようです。

▲件のメッセージについて「乗っ取られていた」と主張するステファノ氏公式アカウント
▲件のメッセージについて「乗っ取られていた」と主張するステファノ氏公式アカウント

Weibo上では各地の報道機関もこの件を伝え、中には「日本人もこれに怒っている」として日本語で書かれたSNSの書きこみを紹介するものもありました。

Weiboの共青団中央(共産党青年団、フォロワー数735万超)アカウントでは、ドルチェ&ガッバーナへのメンションとともに「外資企業のみなさまの投資を歓迎します、中国そして中国人民への敬意を忘れないようお願いします」との書き込みと、「本当の中国のお箸とは」の動画を公開しています。

▲共青団中央のアカウントの書き込み。ドルチェ&ガッバーナにメンションを飛ばしている。27万4000の「いいね」がついている(2018年11月23日)
▲共青団中央のアカウントの書き込み。ドルチェ&ガッバーナにメンションを飛ばしている。27万4000の「いいね」がついている(2018年11月23日)

▲Weiboのホットトピックス。1位に『ドルチェ&ガッバーナ「辱華」が炎上』、5位に『京東DGの「辱華」に報復』
▲Weiboのホットトピックス。1位に『ドルチェ&ガッバーナ「辱華」が炎上』、5位に『京東DGの「辱華」に報復』

検索エンジン百度でもホットトピックスとなっています。

▲検索エンジン百度の「現在のホットトピックス」左上に『ドルチェ&ガッバーナ「辱華」が炎上』、その  2つ下には『京東DGの「辱華」に報復』
▲検索エンジン百度の「現在のホットトピックス」左上に『ドルチェ&ガッバーナ「辱華」が炎上』、その 2つ下には『京東DGの「辱華」に報復』

ECから姿を消すドルチェ&ガッバーナ

SNSや検索エンジンのホットトピックスには、京東によるドルチェ&ガッバーナ商品の販売停止も同じくランクインしています。

今回の事件を受けて、ブランド品の取扱いを中止したECサービス京東だけではありません。「Tmall」「京東」「蘇寧易購」「寺庫」「唯品会(VIP)」「1号店」「洋碼頭」「小紅書RED)」等、主要ECサイトではすでにドルチェ&ガッバーナの商品販売は停止しているようです。

▲ECプラットフォーム「京東」でドルチェ&ガッバーナを検索すると、検索結果はなしと表示された(2018年11月22日夜)
▲ECプラットフォーム「京東」でドルチェ&ガッバーナを検索すると、検索結果はなしと表示された(2018年11月22日夜)

ECサイトだけでなくもちろん店頭からも退場、類似ブランドは「我々はDG(ドルチェ&ガッバーナ)とは無関係」

ECサイトでは販売の中止だけでなく、店頭から商品を引きあげる動きも進んでいるようです。商品をダンボールに雑にほうりながら”整理”する様子を写した動画は、一般人によりSNSに投稿されています。BGMでは「我爱中国」(愛する中国…)の歌詞が流れており、この行動の意味が伝わってきます

また、ドルチェ&ガッバーナと同じ頭文字で靴を販売する「DGオフィシャルストア」では「本店はドルチェ&ガッバーナとは関係ありません」との声明を発表。消費者の直接の問い合わせにも同様の説明を返答し、購入を検討していた消費者は「それなら問題ない。購入する」と答えるやりとりも発生しているようでした。

▲もともとは「ドルチェ&ガッバーナ」のブランド名とかけて命名したと思われるシューズブランド「DG」のTmallの店舗
▲もともとは「ドルチェ&ガッバーナ」のブランド名とかけて命名したと思われるシューズブランド「DG」のTmallの店舗

まとめ:たった1日のうちにショー中止&EC排除までいたった中国市場のスピード感

一転して謝罪に転じたドルチェ&ガッバーナですが、今後中国市場でどのようにリカバリを図るのか、それが可能なのか、国際社会の注目が集まります。

今回の事件はデザイナーの発言が許されるものではないことは当然のことではありますが、これを受けてからの中国人モデルやタレント事務所の行動スピードは、通常の中国ビジネスにおける意思決定の速さにも共通してみられるところでしょう。また、今回の事件は、商業的価値だけでなく社会的イメージを大切にする中国人の価値観、愛国心の強さよく見えた出来事でした。

今回は世界的に著名なデザイナーが引き起こし注目を集める結果となりましたが、異文化を尊重する姿勢は小さな取引においてももちろん軽視するべきではありません

インバウンドでの事業展開においても、中国的価値観や異文化の価値に対しどのように尊重の意を表現することができるのか、よくよく検討することが大切でしょう。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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