京都市が所有・管理する世界遺産の二条城が「ベスト・プロデュース賞」を自治体で初めて受賞しました。「ベスト・プロデュース賞」とは、関西の企業や文化人で構成される日本生活文化推進協議会が主催した賞です。二条城は、伝統文化の価値を高めるためのさまざまな活動から、今後の文化財の正しいあり方の指針となったと評価されました。二条城が実施した訪日客の受け入れ態勢の整備を例に、今後さらなるインバウンド誘客を促進するにあたり、重要になってくる文化財のあり方を見ていきましょう。
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二条城の入城者が約50年ぶりに過去最高を記録
二条城は2017年度に入城者数が243万9079人を記録し、約50年ぶりの過去最高を達成しました。前年度比で見ても、28.1%という驚異的な伸びとなっています。二条城で最後に最も多い入城者数を記録したのは大阪万博が開催された1970年で、入城者数は211万4754人でした。しかし、1970年をピークに次第に減少していき、過去20年は110〜170万人で推移しています。入城者数の大幅な増加に伴い、二条城の収入も飛躍的に伸びました。2014年度に10億円を突破して以降順調に伸び続け、2017年度は14億4,000万円に到達する見込みです。
訪日客の満足度を高めるための5つの取り組み
二条城における入城者数と収入の大幅な増加といった成功は、国の観光戦略の一環として周到に計画されたプロジェクトに起因します。二条城事務所長にはヘリテージマネジャーとして世界的にも超一流と言われる北村信幸氏が就任しました。北村氏を筆頭に幅広い分野から参加者を募った有識者会議を実施し、文化財の活用と保存の両立について徹底的に議論をしています。議論の結果、入城者の6割以上が外国人という現状をふまえて実施された、訪日客の満足度を高めるための5つの取り組みを見ていきましょう。
1. 二条城敷地内の案内板の多言語化
2016年10月から2017年3月までの間に真っ先に取り組まれました。具体的には、二の丸御殿内85カ所、屋外307カ所に新しいデザインの多言語の解説案内板を設置しています。
2. パンフレットを計8ヶ国語の多言語対応に
以前は英語・中国語(簡体字)・韓国語の3ヶ国語を1冊にまとめたパンフレットのみで、内容も十分とは言えない状態でした。今回の改革では、まず内容の一新から取り組み、あまり日本の歴史に詳しくない訪日客にも理解しやすいよう1つ1つの用語を詳しく説明しました。二条城の歴史はもちろん、お城の各部屋の説明や使われ方など、より深く二条城の魅力が伝わる内容となっています。現在は上記の3ヶ国語と日本語に加え、中国語(繁体字)・フランス語・スペイン語・ドイツ語も作成され、計8ヶ国語が揃えられています。
3. 英語の公式ガイドツアーを実施
2017年11月より、日本語と英語の公式ガイドツアーを実施しています。所要時間は90分で、毎日2回行われており、ツアーに参加すると通常は非公開の西門桝形も見学できるといった特典もあります。英語ツアーは1人2,000円で参加可能です。事前予約は必要ないため、訪日客も気軽に参加できます。
4. 従来のコインロッカーに加え手荷物預かり所も設置
二条城の敷地内はほとんどが砂利道ということと、二の丸御殿にはベビーカーやスーツケースを持ち込めないということから、コインロッカーに加え2018年2月から手荷物預り所を設置しました。大きな荷物を持っている訪日客にとっても、利便性が向上したと言えます。
5. 夏季限定で開城時間を延長
通常は開城が8時45分閉城が17時ですが、2018年は7月〜9月までの夏季限定で、開城を8時とし7月と9月は閉城を19時まで延長しました。開城時間の延長により、より多くの訪日客が足を運べるようになりました。
文化財を観光施設としてうまく活用
2018年6月に文化財保護法が改正され、二条城は文化財を活用するために保護するといった好循環を生み出した例として注目されています。
これまで国宝の二の丸御殿などでは、損傷のリスクを考慮し火や水の使用を避けてきました。しかし、2016年10月に実施された東京オリンピック・パラリンピックの文化プログラムのキックオフイベントをきっかけに生け花を解禁するなど、文化財の活用を積極的に行っています。
2017年から、通常は非公開の香雲亭で夏季限定の朝食サービスを実施し、「美しい日本庭園を眺めながら食べられる朝食」として話題になりました。夏の京都は昼間は非常に暑い一方で朝は比較的涼しいとった特徴を生かし、集客に繋げた企画です。
文化財の維持や管理にはもちろん莫大なお金がかかりますが、国から充てられる予算は潤沢にあるわけではないというのも事実です。よって、文化財自身が維持管理費用を稼げるようになる必要があるといち早く気づき、改革を起こしたのが二条城でした。文化財の保存のためには、まずは文化財の魅力を高めるための投資をし、手間はかかるものの長期的に見れば入城者の満足度も向上し、収入の増加に繋がるということを証明したと言えます。
まとめ:文化財に観光施設としての付加価値を
二条城の改革の特徴は、ブランディングやPRを強化したわけではなく、二条城自体の魅力を高めるべく整備に力を入れたところです。多くの観光地はホームページやSNSなどを通じた情報発信ばかりに注力しがちです。しかし、二条城では元々価値の高い文化財にさらなる付加価値を与える取り組みを実施した結果、大きな経済効果を生み出すことに成功しました。文化財自身が稼ぐ力を身につけたことで、さらなる魅力向上に向け、訪日客の受け入れ態勢整備を強化できるようになりました。二条城のケースより、文化財は保護や既存の魅力発信に力を入れるだけでなく、文化財自体の価値を高め観光施設として活用することが、今後の文化財の正しいあり方と言えます。
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- 産経WEST:京都の二条城にベスト・プロデュース賞 自治体で初
- 東洋経済ONLINE:二条城が「半世紀ぶりの集客」に成功したワケ
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