フードダイバーシティ対応の新常識:「ハラール料理」や「ベジタリアン料理」なんて実は存在しない!?

フードダイバーシティ対応の新常識:「ハラール料理」や「ベジタリアン料理」なんて実は存在しない!?

昨今インバウンドが増える中で確実に問題となる食事。

ハラール、ベジタリアン、コーシャ、グルテンフリーなど様々な言葉が現場では飛び交っています。食に禁忌を持たない日本人においてはなかなかピンとこないかもしれませんが、例えばイスラム教徒で世界16億人、ベジタリアンで世界9億人の市場があり、インバウンドの数自体は順調に推移しているものの、観光消費額を考えると今後これらの対応がとても重要になってきます。

食の対応で成功するか失敗するかは二極化が進んでいます。成功するお店はとことん突き抜けた実績を出し、失敗するお店は全く成果が生めていません。

様々な要素がありますが、私の見解では成功するお店はハラールやベジタリアンのことを「調理方法(食材選びも含む)」と整理します。失敗するお店はこれらを「料理のジャンル」と整理します。

事例1:ハラールを用意したら旅行者にがっかりされた!?

例えばこういった事例をご紹介しましょう。

【事例1】とある和食の飲食店が、マレーシア人から要望があったということで「ハラール」を用意することとなりました。早速ネットでハラールのことを調べて大体どのような料理かを見て、その次に「ハラールフードショップ」にいき食材・調味料を揃えて、立派な“マレーシア料理”を完成させたところ、旅行者にとてもガッカリされました。

そうです。彼らはハラールを求めていましたが、マレーシア料理を求めているわけではありません

ネットで「ハラール料理」や「ハラールレストラン」などと調べると、カレー、ケバブ、ナシゴレンなどの情報が出てくるので、その飲食店はハラール料理をそのような料理と捉えてしまったわけです。

ちなみに「ハラールフードショップ」ではマレーシア、インドネシア、中東など、それぞれの国の現地料理を作るための食材・調味料が置かれているので、それで作ると必然的にそういった料理になってしまいます。

旅行者においては確かに「Can eat」な食べ物であったわけですが、旅行者のニーズは「Can eat」で満足するステージは終わっていて、成功しているお店は、その先の食べたいものや満足度を見ています。とてもシンプルな話で、和食店にハラールの依頼をしたお客様のニーズは、「ハラール対応した和食」だったわけです。

事例2:ベジタリアン向けに野菜メニューを豊富にしたら「お残し」が多かった!?

【事例2】イギリス人からベジタリアン料理の要望を受けたある和食の飲食店。いろいろ考えて用意したメニューは生野菜サラダ、温野菜、焼き野菜、フルーツといったメニューで、残念ながら多く残されてしまったようです。

こちらも同様で、「ベジタリアン=野菜料理」だと誤解してしまったシェフは、このように米や麦や大豆などの穀物すら使ってはいけないと思っていたようです。

よくよく聞くと彼らが食べたかったものはベジ寿司、ベジ天ぷら、ベジお好み焼きなど日本食のベジタリアンアレンジだったのです。同じくこの市場も「Can eat」では通用しないところまで来ています

つまり図にまとめるとこういったことです。


冗談のようで本当の話ですが、各国の大使などが参加するような国際的なイベントおいても、「ハラール料理」コーナーにはマレーシア料理や、アラブ料理などが提供されているケースは少なくありません。

確かにそれを求めている方もいらっしゃいますが、イスラム諸国の大使たちは豪華なお寿司や和牛なりを横目に、用意してくれた手前上「ハラール料理」を食べているケースもあります。もしそこで、お寿司や和牛なりがハラール対応されていたら、彼らはこの上ない喜びを得るはずです。しかし、食事を手配する側がおそらく「ハラール料理」をジャンルと整理してしまうとそれ以上のことは実現することはありません

このように、ハラール、ベジタリアン、コーシャ、グルテンフリーなどの食の禁忌を対応する場合は、最初の一歩として、ジャンルではなくしっかりと調理方法(食材選びも含む)として整理をするところがとても重要になりそうです。最初にここで躓くと、なかなか軌道修正ができなくなります。

まとめ:成功するか失敗するかは最初の一歩次第。

こういうことに気をつけよう1:食の禁忌対応≠全て新しい仕入れではない

⇒今ある食材・調味料でできるところまで対応して、どうしても足りないものを仕入れましょう。例えばハラール対応においても、ハラール商品のカタログを取り寄せ、その中の食材・調味料で1からレシピを考えるお店が確実に失敗しています。

こういうことに気をつけよう2:食の禁忌対応はゴールではなくスタートライン

⇒食の禁忌対応はあくまでも「Can eat」におけるスタートラインでしかありません。そこからお客様のニーズ嗜好などを知り、どこまで満足度を上げられるかが重要になります。

こういうことに気をつけよう3:ホール、料理現場、購買、セールス、経営の連携無くして成果なし

⇒食の禁忌対応は、上記5プレイヤーの連携無くして成果はありえません。例えば料理現場がどれだけ対応を頑張っても、説明しクローズさせる力がセールスになければ案件化はとても難しいと思います。社内研修などを入れてしっかりと体制構築することが望ましいです。

こういうことに気をつけよう4:予約を入れてくる旅行会社が「ハラール料理」や「ベジタリアン料理」と整理してるケースが多いです

旅行会社と適切なコミュニケーションを取って、分かりやすいメニューやポリシーなどを提示し、お客様のニーズをしっかりと引き出しましょう。

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この記事の筆者

フードダイバーシティ株式会社

フードダイバーシティ株式会社

フードダイバーシティ株式会社 代表取締役 守護 彰浩。千葉大学卒。2007年楽天株式会社入社。2014年に日本国内のハラール情報を多言語で世界に発信するポータルサイトHALAL MEDIA JAPANをサービスイン。またハラールにおける国内最大級のトレードショーであるHALAL EXPO JAPANを4年連続で主催し、2万人以上動員。現在ではフードダイバーシティをコンセプトにハラールだけでなく、ベジタリアン、ヴィーガン、コーシャなどありとあらゆる食の禁忌に対応する講演やコンサルティングを行う。流通経済大学非常勤講師も務める。