総務省近畿管区行政評価局は、近年の訪日外国人観光客によるレンタカーの利用増加を受け、大阪府・京都府および兵庫県内の事業者や運輸局に対し、訪日客のレンタカー利用実態の調査を実施しました。
調査の結果、訪日客のレンタカー事故率が日本人の4倍という事実が発覚し、インバウンド誘客を促進する上での新たな課題として挙がっています。
訪日客のレンタカー利用の実態と調査対象地域で実施されているインバウンド向け安全対策をふまえ、訪日旅行サイトで実施されている取り組みにも触れた上で、今後求められる対応を見ていきましょう。
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訪日客のレンタカー事故率の増加と実態とは?
本調査は、近畿管区行政評価局と兵庫行政評価事務所により、近畿運輸局・大阪運輸支局・京都運輸支局・神戸運輸監理部兵庫陸運部をはじめ、関連調査対象機関として6つの消費生活センター・事業者団体・事業者に対し実施されました。調査実施期間は2018年4月~11月です。
訪日客のレンタカー利用実績が3年間で12.8倍に急増している営業所があるとともに、訪日客の事故率は日本人の4倍強という調査結果となりました。レンタカー事業者に対する直接の指導や監督を行っている3つの運輸支局等において、訪日外国人観光客の利用実績を把握していなかったことも判明しており、防止策の展開が遅れた原因の1つと言えるでしょう。
国土交通省訪日外国人流動データによると、2016年に関西国際空港から入国後、レンタカーを利用した訪日外国人観光客は9万9,100人、2年間で2.3倍に膨れ上がっています。
インバウンドの地方誘客が促進される一方で、レンタカーを利用する訪日客の受け入れ態勢や安全対策が十分でないことから、事故が後を絶たないという実態もうかがえます。
実際に発生している訪日客のレンタカー利用時の主なトラブルや事故例として、3つ挙げます。
- 左側走行に慣れておらず交差点を曲がった後に混乱
- 「一時停止」を示す標識の形が世界的には八角形だが日本は三角形のため見落とす
- 言葉の問題などから駐車違反を巡った苦情の発生
レンタカーだけでなく、訪日客に人気の公道カートによる事故の多発もあわせて問題となっており、国土交通省が道路運送車両法に基づく保安基準の改正が実施されました。
事業会社によるインバウンド向け安全対策の例と効果
調査対象機関の中のレンタカー事業者で実施されているインバウンド向け安全対策は、以下の3種類に分けられます。
- 多言語による貸渡約款・安全運転マニュアルを作成(各13事業者)
- 通訳サービスの活用(12事業者)
- 運転時の 注意事項等を英文チラシで作成(15事業者)
上記の対策の効果として、2つの例が報告されています。運転時の注意事項等を英語版で作成と配布を実施した1事業者では、訪日客のレンタカー利用実績が2年間で1.9倍に増加したにも関わらず、事故件数は増加していないとのことです。給油時の燃料の入れ間違い防止に対する啓発チラシを作成と配布を実施した1事業者では、対策後の燃料の入れ間違いの発生がほぼなくなったとししています。
3府県のレンタカー協会でも、会員事業者に対して以下の3つの取り組みを実施しています。
- 全国レンタカー協会が作成した「日本国内で運転が認められる国際・外国運転免許証の確認ポイント」の販売
- 日本の交通ルール等を解説した「Car Rental Guide」の英語・中国語繁体字・簡体字・韓国語版を会員事業者に販売
- 訪日外国人観光客が運転していることを後続車等に知らせるマグネットステッカーを作成し、会員事業者に販売
訪日旅行サイトでもレンタカー利用の注意喚起
訪日旅行サイトにおけるレンタカー利用時の注意点の情報発信例として、「Tabirai Japan」の例を紹介します。
本サイトでは、訪日客による交通事故を防止し安全に訪日旅行を楽しんでもらうことを目的とした特設ページ「Tabirai Japan租車比較・預約網(レンタカー比較・予約)」を2018年7月よりオープンしました。「Tabirai Japan」は、中国語繁体字・英語・韓国語の3ヶ国語で日本全国のレンタカー比較と予約ができるサイトです。特設ページは、レンタカー利用の多い台湾・香港からの訪日客向けに中国語繁体字で運営しています。
「Tabirai Japan」では、レンタカー利用時のよくあるトラブルや日本の交通ルール・標識の特徴・安全運転のポイントなどを解説しています。サイトは、レンタカー予約サイト「バジェットレンタカー」から共有された具体的な事故原因などの事例をもとに作成されています。
台湾の現地会社の協力のもと現地の交通事情の調査も実施し、車の設備をはじめ、台湾と日本の違いを具体的に把握し、ユーザー目線でわかりやすく伝わるよう工夫されています。サイト上では、3つのステップに分けシミュレーション形式で、安全にレンタカーを利用してもらうための注意事項を発信しています。
〜ステップ1〜
- レンタカーの受け取り
- レンタカーで出発
- ガソリンの給油/レンタカーの返却
〜ステップ2〜
- レンタカーの事故原因
- 運転のポイント紹介
- 事故の基本データをグラフで説明
〜ステップ3〜
- 日本の交通ルールの基礎知識
- 日本の標識まとめ
- 交通事故が発生したときの対処法
今後は随時韓国語版と英語版の公開も予定しているとのことで、より多くの訪日客への情報発信が期待されます。
まとめ:インバウンドの地方誘客に向け、レンタカー利用の安全対策が急がれる
インバウンドの地方誘客促進が叫ばれる中で、レンタカー利用時の安全対策が追いついていないといった現状が明らかになりました。一方、一部事業者では独自に取り組みを実施し、成果をあげているケースもあります。
近畿運輸局は今回の調査を通じ、訪日客のレンタカー利用の現状をふまえ、事業者等が取り組む参考事例をレンタカー事業者講習会等を通じて共有するなどし、訪日客によるレンタカー事故の防止に努めることを改善点として挙げました。
今後も利用者のさらなる増加が見込まれるため、事業会社や訪日旅行サイトなどさまざまな方面から、安全対策の情報発信が求められます。
<参考>
- 総務省報道資料:レンタカー事業に関する実態調査
- 国土交通省:訪日外国人流動データ
- 産経新聞:訪日外国人のレンタカー死傷事故、3年で3倍に 不慣れな「左側通行」、誘客優先で安全後回し…
- 株式会社パム:プレスリリース
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【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
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- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
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- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
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