中国「薬用化粧品(薬粧)」宣伝文句が違法に…ECサイトから消えた日本の化粧品 今後求められる対応は?

中国「薬用化粧品(薬粧)」宣伝文句が違法に…ECサイトから消えた日本の化粧品 今後求められる対応は?

訪日中国人が好きな日本製品といえば…言わずもがな、化粧品でしょう。「コト消費」の広がりが伝えられて久しいですが、ECサイトの普及により、購入場所が店頭でなくなっただけで、まだまだ日本の化粧品は人気です。

その様な中、中国のECではこの1月、「薬用化粧品(薬粧)」の検索ワードが機能しなくなるという処置がとられました。本編では中国のEC事情と、中国のECサイトにおける日本の化粧品の販売スタイル、そして今回のNGワードが設定されるまでのいきさつと、現状について紹介します。


中国の主要ECサイト状況まとめ ~アリババ、京東(ジンドン)の二強とそれぞれの強みで差別化を図る個性派ECサイト~

本題に入る前に、中国のECサイト事情を簡単に整理しておきましょう。中国のECサイトといえば「タオバオ」をご存知の方も多いでしょう。

▲「タオバオ」のタオの文字。たくさんあるものから良いものを見つけ出す意味が含まれている。

「タオバオ」は上海にほど近い杭州に本社を構えるアリババが運営している、CtoCのECサイトです。アリババはBtoCのECモールである「天猫(Tmall)」「天猫国際(Tmall国際)」も運営しており、中国においてこれらのサービスを知らない人はいないと言えるでしょう。支払いには同社の関連会社が提供する「Alipay」が利用可能となっており、Alipayは支払いの状況に応じて利用者の信用度が蓄積されていく仕組みになっています。

アリババとしのぎを削っているのが「JD.com」を運営する京東集団(ジンドングループ)です。アリババ同様、配送のスピードや、大規模セールの開催などでユーザーを惹きつけ、報道によればアリババに迫る取引額を記録しています。そのほかにも、数々のECが立ち上がっており、実店舗とのリンクで成功をおさめている「蘇寧易購」や、コスメやファッションでユーザーを伸ばす「小紅書(RED)」、大都市以外でユーザーを拡大している「Pinduoduo」、越境ECでは「網易考拉」「唯品会(VIP)」などが有名どころとなっています。ただし、アリババやジンドンのような規模と継続年数を持つプラットフォームは今のところ2社の他には存在しません。

中国ECでの「コスメ」の取扱い状況は? 「出店」と「出品」の2つの選択肢

日本のドラッグストアはすでに中国のECサイトに進出しており、マツモトキヨシ(マツキヨ)やキリン堂が旗艦店を構えています

▲マツモトキヨシのTmall国際の旗艦店

中には資生堂やDHCの商品を取り扱う「阿部薬粧」や、日本含め海外の化粧品を販売する「86ショップ海外旗艦店」といった、現地のオンライン店舗も存在します。

▲資生堂やDHCの商品を取り扱う「阿部薬粧」Tmall国際の旗艦店

これは、日本の化粧品ブランドや小売店が「出店」ではなく、すでにECサイトで運営をしているオンライン店舗に対し「出品」を行っているため起こる現象です。日本から中国のECサイトへ商品を展開する場合には、「出店」し運営するのか、あるいは「出品」するのかという二つの選択肢があります。

両者のメリット・デメリットはそれぞれありますので、条件を比較、検討し、ブランドや小売店は「出店」あるいは「出品」の形態をとります。後者を選んだ場合、日本では全く知られていないオンライン店舗で、日本でメジャーな化粧品が販売されるという状況になります。

ちなみに、中では「日本輸入品」を標榜していながら、日本国内ではお目にかからないような商品を販売するオンラインショップもあります。


▲「ドクター森田」のブランド名で、日本からの輸入品を販売するオンライン店舗(Tmall国際)

1月、ある日突然「薬用化粧品」の検索がNGに。その理由は?

こうした「日本化粧品」の購入チャネルとして重要な地位を占める中国のECサイトですが、この中での「薬粧」(薬用化粧品)の名称がECサイトで検索できなくなるという事態が発生しました。

事の起こりは2019年1月10日、国家薬監局化粧品監管司が公式サイトで公開した「化粧品の監督管理によくみられる問題への解答」です。この中で当局は、『化粧品』として商品を登録したものに対し、『薬用化粧品(薬粧)』『医薬ケア用品』というコンセプトで販売することは違法との見解を示しました。報道によれば、1月30日現在、ECサイトの多くで「薬粧」の文字が検索不可となっているそうです。

実際に検索してみると、タオバオや小紅書(RED)では「検索結果なし」が表示されます。


▲タオバオのアプリで「薬粧」を検索


▲小紅書(RED)のアプリで「薬粧」を検索

ただし、天猫(Tmall)ではアプリ、ブラウザともに検索結果が問題なく表示されています。検索結果に表示される店舗は天猫国際の店舗です。

▲天猫(Tmall)ウェブサイトでの「薬粧」検索結果。いくつも商品がヒットする。

▲天猫(Tmall)のアプリで「薬粧」を検索した結果。いくつも商品がヒットする

※画像の検索はすべて1月31日に行った。

天猫(Tmall)でのみ検索がヒットするのは、海外の製品に対し、まだ対応が進んでいない状況、あるいはこれらの商品はそもそも「化粧品」ではなく「医薬部外品」として登録されているという可能性があります。

まとめ:化粧品と医薬部外品との境目が中国でも明確に~

もともと中国では、『化粧品衛生の監督条例』において、化粧品のラベルや包装、説明書に「適応できる症状」「治療効果」「医療用語」「医療作用」について表記してはいけないことが定められていました。また、化粧品と薬品をそれぞれ厳密に区別して取り扱うことは何も中国に限った話ではなく、日本でも同様に区別することを定められています。

「化粧品」は、使い方が同じでも 「医薬品医療機器等法」によって「化粧品」と「薬用化粧品」に分類されます。「化粧品」は肌の保湿や、清浄など、製品全体としてその効果が期待されています。一方、「薬用化粧品」は化粧品としての期待効果に加えて、肌あれ・にきびを防ぐ、美白、デオドラントなどの効果を持つ「有効成分」が配合され、化粧品と医薬品の間に位置する「医薬部外品」に位置づけられています。「医薬部外品」には、「薬用化粧品」の他に、染毛剤、パーマネント・ウェーブ剤、浴用剤、口中清涼剤やえき臭防止剤、あせもなどを防ぐてんか粉、育毛剤、除毛剤などがあります。

このように「化粧品」と「薬用化粧品」の大きな違いは「有効成分」が配合されているか、いないかということです。「薬用化粧品」の場合、容器や外箱に「医薬部外品」と表示されています。

また、「化粧品」は「医薬品医療機器等法」で全成分表示が義務づけられていますが、「医薬部外品」は日本化粧品工業連合会など業界団体の自主基準で成分表示をしているという違いもあります。

▲日本化粧品工業連合会の公式サイトより

今回中国で検索結果から排除されるようになった「薬用化粧品」は日本では医薬部外品の一部です。医薬部外品は日本では厚生労働省の指定するものであり、有効成分が含まれており、全成分は表示されていません。一方、化粧品には有効成分は含まれず、なおかつ全成分の表示が必要となっています。

日本でも、上記のカテゴリの商品の宣伝の際、厚生労働省が認めた効果効能以外に効果効能があることを表現し宣伝することや、化粧品に医薬品的、医薬部外品的な効果効能があるような表現は禁止されています。今回の中国での対応は、日本同様の基準が政府により明示されたものといえるでしょう。

中国語で「薬粧」は、「医薬部外品」「医学ケア用品」「効能性化粧品」の3つを意味していました。今回の措置は、この三者を意味するワードから「化粧品」にたどりつくことを禁止したものであり、決してEC自体から化粧品を追い出すようなものではありません。実際に「化粧品」で検索をすれば、数々のメイク用品、基礎化粧品が結果に出てきます。


▲小紅書(RED)アプリでの「化粧品」検索結果

天猫以外のECサイトで「薬粧」が検索結果なしとなる理由には、中国国内の薬用化粧品(医薬部外品)はECサイトでの販売が許可されていない、という可能性も考えられそうです。

ちなみに、中国人に人気の日本の「ドラッグストア」は中国語で「薬粧店」となります。「薬粧店」のワードで検索をかけた場合、もちろん化粧品はヒットしませんが、ECサイト内のユーザーの投稿記事はヒットします。このことからは、各ECサイトでは「薬粧」二文字の検索を無効にしているという状況も考えられそうです。

このように中国では市場ルールの変化も非常に速く、現地消費者の需要にこたえる新たな施策を打ち出すためにも、絶え間ない情報収集が重要といえるでしょう。

<参考>

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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