毎年春節の季節になると、訪日中国人の動向に注目が集まります。2015年~2016年上半期は「爆買い」が一世を風靡しました。2016年下半期以降、訪日中国人の消費動向は一辺倒であったモノ消費スタイルから、日本の文化体験を楽しむ「コト消費」まで多様化しました。
訪日中国人の旅行スタイルは、大まかに「爆買い」=「団体客」、「コト消費」=「FIT(個人旅行客)」が考えられます。とりわけFITによる旅行プランは、日本のディープスポットを求めて、全国津々浦々まで裾野が広がりつつあります。
昨今、FITの日本旅行において、「冷門(れいもん)」というワードがトレンド入りしています。「冷門(れいもん)」の意味を理解し、訪日中国人の動向をいち早くキャッチしましょう!
2018年訪日中国人は前年比増13.9%増の838万人!インバウンド牽引はまだまだ続く
2019年1月、観光庁の発表によると、「2018年訪日外国人消費動向調査(速報値)」において、年間の旅行消費額は過去最高の4.5兆円に達したことが明らかになりました。
そのうち、訪日中国人の旅行消費額は1.5兆円にのぼり、全体で最多の約3割を占めています。
訪日中国人の1人あたりの旅行支出額は22万3千円となり、費目別では買物代(11万)がもっとも高く、次いで宿泊費(4万7千円)、飲食費(3万9千円)の順で「モノ」と「コト」消費の人気の高さがうかがえます。
日本旅行の初心者は熱門(ねつもん)へ、リピーターは冷門(れいもん)へ
冒頭にある訪日中国人の旅行スタイルは、大まかに「爆買い」=「団体客」と「コト消費」=「FIT(個人旅行客)」があり、「団体客」はゴールデンルートと呼ばれる、日本の有名な観光地巡りを楽しむ傾向があります。
中国語で熱門とは「ブーム」を意味し、ここではいわゆる「日本観光の人気スポット」を指します。
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多くの訪日外国人観光客...
一方で熱門とは逆に、FITの目的は有名な観光地巡りではなく、よりディープな日本を体験できる場所へと赴く傾向が強いとみられています。
いわゆる冷門とは、FITなどによるディープな体験で巡り合う「意外な穴場スポット」を指します。
日本でも有名な中国最大級のソーシャルメディア、weibo(微博)には、「日本深度遊(ディープな日本旅行)」とハッシュタグで検索PVは1943万にのぼり、よりテーマ性の高いコンテンツ需要が高いことがわかります。
訪日中国人は、「LCCの玄関口」から「冷門」へと導かれる
昨今、香川県、佐賀県への訪日客数が軒並み上昇しており、これらの県に共通してLCC(格安航空)による訪日外国人誘致に成功しているといえます。
観光庁が発表した2017年香川県の訪日外国人延べ宿泊者数は、前年比34.6%増の48万人で四国エリア首位を記録しました。
2018年4月に民営化した香川県高松空港は、中四国エリア屈指のLCC拠点地としてインバウンド強化を図っています。
LCC国際線は、台北(桃園)便(チャイナエアライン(中華航空))と上海(浦東)便(春秋航空)、ソウル(仁川)便(アシアナ航空傘下のエアソウル)、香港便(香港エクスプレス航空)の4社が往復運航しています。
2017年香川県の宿泊者の国籍構成において、上位の台湾28%に次いで中国17%、香港15%、韓国14%を記録し訪日外客数増加に寄与したことが予測できます。
続いてLCCによる訪日外国人増加の事例として、佐賀県の九州佐賀国際空港が挙げられます。
同県は高松空港と同じく上海やソウル、台北、プサン、テグのLCC国際線が往復しています。
観光庁が発表した2017年佐賀県の訪日外国人延べ宿泊者数は38万人超となり、前年比伸び率は54.3%と驚異の上昇率を記録しました。
九州エリアの訪日外国人延べ宿泊数の上位は福岡県と大分県となりますが、LCCをきっかけに佐賀県の魅力を発見し楽しむ訪日外国人が増加しているとみられます。
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日本の穴場スポット佐賀県を中国が注目しています。インバウンド客が増加している佐賀県。上海から佐賀空港までLCCの春秋航空が就航。1時間半の近さです。佐賀県に海外インバウンドメディアが注目している理由は自然豊かで温泉がありグルメもおいしいところです。
FITが足を踏み入れた冷門スポットとは?香川県の事例でみる冷門への通じ方
香川県の観光スポットとして名高い直島は、草間彌生さんのカボチャオブジェがSNS映えすることで、多くの訪日外国人が訪れています。
2019年以降、直島を起点に、瀬戸内海に浮かぶ"小豆島"の日本三大渓谷の一つでもある寒霞渓や、日本の父母ヶ浜(ちちぶがはま)の南米ボリビア天空の鏡と呼ばれるウユニ湖のような写真がとれるなど絶景ポイントとして話題になっています。
日本のディープスポットを探すツールとして、SNSによる日本を専用的に紹介するアカウントに加えて、中国で有名なワンホン(网红)の投稿も拡散力が高く、情報源のひとつといえます。
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冷門の恩恵と課題は紙一重!?
日本三大茅葺屋根集落として1995年に世界文化遺産に登録された岐阜県・白川郷(荻町)は、国内外の観光客は年間約170万人を超える人気の観光地です。村内人口わずか1,700人弱の地域に多くの観光客が訪れ、オーバーツーリズム対策として完全予約制の導入が注目を浴びました。
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これにより、訪日中国人などの旅行客が予約なしが故に利用できず、そのまま他の日本三大茅葺屋根集落である京都美山町かやぶきの里へバス移動するというルートが確立されています。
現在、有名な観光地以外の冷門スポットに訪日外国人が訪れるケースが増えています。
受け入れ態勢が追いついていない場所への急激な訪日観光客の増加にともない、各地でオーバーツーリズムや観光公害といった課題に局面しています。
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「冷門」の需要背景には、旅行スタイルの「成熟化」
訪日リピーターの中国人にとって冷門の発見は、新たなコト体験への巡り合わせともいえます。前述のとおり、SNSによるネット収集による発見型と目的地から外れて現地にて偶然による発見型があり、LCCやクルーズ船などによる、日本への渡航手段の利便性が相まって、日本旅行への成熟化は加速しつつあります。
まとめ:「冷門」対策で訪日リピーターへと繋げることが重要
観光庁が発表した2018年の訪日外客数(推定値)は、前年比8.7%増の3119万人を超え、日本政府が掲げる2020年訪日外国人数4000万に早くも迫る勢いです。団体客やFITによる旅行スタイルの多様化がみうけられ、今後更に裾野が広がると予想されます。
訪日外国人が飽きないような仕掛けづくりが必要となり、周遊ルートの連携や交通インフラの強化などの対策しリピーターへと繋げることが重要になってくるといえるでしょう。
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日本政策投資銀行は、2018年12月に「2018東北インバウンド意向調査(アジア(地域・欧米豪4地域)」の結果を発表しました。2012年からアジア8地域の海外旅行経験者を対象とした「インバウンド意向調査」をインターネット上で実施しており、2016年からは欧米豪4地域を含め、全12地域を対象にしています。今回の調査より明らかになった訪日客が抱く最新の東北に対するイメージや実際の旅行の感想から、今後の東北地方におけるインバウンド誘客の課題を探っていきましょう。目次東北のインバウンド事情について...
<参考>
- http://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/syouhityousa.html 出典:観光庁
- https://www.takamatsu-airport.com/timetable/int.php 出典:香川県高松空港
- http://www.pref.saga.lg.jp/airport/ 出典:九州佐賀国際空港
- https://www.nozawayu.com/matinami/kayabuki.html 出典:日本三大茅葺屋根集落
- http://www.mlit.go.jp/common/001238096.pdf 出典:観光庁「観光ビジョン実現プログラム2018」
- https://www.dbj.jp/ja/topics/region/area/files/0000030481_file2.pdf 出典:日本政策投資銀行
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