近年、ディスカウントストアやドラッグストアでは、棚にある商品をごっそり買っていく中国人客の姿をしばしば目にします。彼らの多くは、内外価格差を利用して、日本で安く買い、中国で売りさばく転売業者「ソーシャルバイヤー」です。
彼らは、中国国内で人気の「目薬」「熱さまし用シート」「傷薬」「鎮痛剤」など、多くの日本人になじみのある日常薬を爆買いしています。これらの医薬品が人気な理由は「安全でよく効く」という強いイメージがあるためだと言われています。実際、中国国内で製造販売されている医薬品には不信感を抱く人も多く、たとえば中国製の目薬などを直接目にさすことに不安を覚える人も少なくないと言います。
しかし、そうした転売業者による爆買いは終焉しつつあります。中国の景気減速も一因だと思われますが、関係者が指摘する最大の理由が、2019年1月1日に施行された中国電子商取引法(通称 電商法)の影響です。
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中国人の「爆買い」は副業=ソーシャルバイヤーによる購買が多い
中国はおよそ12兆ドル超のGDPで世界第2位(2017年時点)の経済大国です。しかしながら、13.8億人という世界1位の人口のため、1人あたりの名目GDPでは、未だ88万円程度に過ぎません。平均年収で見ても、経済都市の上海でさえおよそ100万、中国全域だと30万程度しかありません。こんな経済レベルの中国人が、日本に爆買いを目的に観光に来るのはなぜなのでしょうか?
それは、副業が盛んで「表に出ない金」を持っているからと言われています。副業というと中国でも真っ先に株や不動産投資などが挙げれますが、それ以外にも本業の合間に別の仕事をする場合も多くあります。
中国人の元々の気質として、自分にとってメリットがあるかどうかをまず第一に考える傾向にあるので、会社に依存しません。そのため、その会社が気に入らなければすぐ転職するし、本業以外で自分の時間をうまくコントロールすることで副業に励む中国人が多いのです。
中国電子商取引法(電商法)とは?
中国電子商取引法(電商法)とは、電子商取引の事業者や消費者の権益、責任などを規定した法律です。同法では、電子商務経営者が経営活動に従事する場合、関連する行政許可の取得が必要であることが規定されており、また本法の施行により納税義務が発生します。
この「電子商務経営者が経営活動に従事する場合」には、ソーシャルバイヤー的な代理購入も該当するため、同法の施行により、ソーシャルバイヤーにも行政許可の取得や納税義務などが発生することから、代理購入を行う事業者や個人の減少につながっています。
転売業者の7割が撤退し、正規ルートでの販売が活発化?
バイドゥ株式会社は、中国電子商取引法の影響を調査するため、転売業者へアンケートを実施し、2月27日に結果を公表しました。(調査時期:2018年12月18日~ 2018年12月26日、有効回答:103サンプル)中国電子商取引法を認知していた業者は68.0%で、施行後も業務・取引を「継続する」業者は29.1%、「休止する」業者は70.9%という結果でした。
中国の消費者の需要はこれまでと変わらないため、これまでグレーゾーンにいた転売業者が排除され、正規ルートで中国国内に販売していく動きが活発化していくと期待されています。
実は今回の同法施行で中国政府は、越境ECで購入できる制限額の上限を増やしています。その狙いは、税関経由の正規の越境ECルートはむしろ拡大させる方針であり、越境EC自体を否定しているわけではないということです。販売ルートを大手に集約すれば、税収はもちろんのこと、市場に出回る商品の品質管理や購買データの取得も容易になることも期待しています。
中国電子商取引法(電商法)施行の背景は税収アップ
Analysys易观という中国リサーチ機関によると、2018年には、中国の国境を越えた輸入および小売Eコマース(越境EC)の取引額は421.67億元(7,019億円)に達し、前年比の16.1%増加すると推定されています。2020年までに、中国の国境を越えた輸入と小売Eコマース(越境EC)取引は547.72億元(9,120億円)に達すると推定されています。(2017年12月時点)
マーケットの急成長と共に、海外から商品を代理で購入し、中国で販売する組織化された転売業者や、一個人が海外旅行先で大量に商品を購入し、帰国後に商売をするような出品者が増えていくに従い、年商数億円を稼ぐような転売業者が台頭し始めました。
そして、非正規の販売ルートで荒稼ぎをするこれら転売業者は、貿易を行っているという認識は薄いため商品にかかる税金は払っていません。同法施行の背景は、これら転売業者から正しく税金を納めてもらい、税収の大幅なアップを見込んでのことでした。
まとめ:「爆買い」に頼らない、本格的な越境ECが重要になってくる
これまでは、多額の宣伝広告費を投じずとも転売業者が中国国内にインターネットで宣伝してくれ、旅アトに越境ECで日本ブランドを指名買いしてくれる消費者も生まれました。
しかし、爆買いというバブルが終わった今、日本のメーカー、小売店は、中国巨大市場での生き残りを懸けた正念場を迎えています。割安な現地ブランドの品質が向上する中、日本ブランドの価値を高めなければなりません。そのために、越境ECをうまく使い、中国国内のトレンドに合わせて情報発信する必要がありそうです。
例えば、最近の中国トレンドとして「空巣青年」という就学や就職のために故郷を離れ、北京や上海、深センなどの大都市で一人暮らしをする人が多く、この層をどのように取り込むかが、中国国内でも重要視されているようです。もしくは、小紅書(RED)など中国で人気が高まりつつあるSNSで話題になるような施策も行う必要がありそうです。
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