大阪・野田に日本食レストラン「祭」があります。同レストランは、20席という決して多い席数ではありませんが、年間3万人の外国人が訪れています。しかもそのほとんどが、ムスリムやベジタリアンだそうです。
ムスリムやベジタリアンから非常に人気を得ている日本食レストラン「祭」ですが、昨年の11月頃、横浜に2号店となる「MINATO」をオープンさせました。そこで今回、訪日ラボが2号店である「MINATO」に足を運び、オーナーであるスリーピース株式会社代表取締役、佐野嘉紀氏にムスリムやベジタリアン集客の秘訣をきいてきました。
【訪日ラボは、8月5日にインバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を開催します】
会場での開催に加え、一部講演ではオンライン配信(参加費無料)も実施!さらに、チケットを購入した方限定でアーカイブ配信も予定しています。
ご来場が難しい方や当日ご都合が合わない方も、この機会にぜひご参加ください。
「ハラールフード・ベジタリアンフードはマズイ」という考えは、古い!
ハラールフード・ベジタリアンフードはマズイと考えている人は多いのではないでしょうか?事実、筆者もあまり美味しいイメージを持っていませんでした。数年前まではハラール・ベジタリアン対応しているお店はまだ少なく、ただ対応をしているだけで集客できてしまいました。
しかし、近年ハラール・ベジタリアン対応をしているお店が増えており、競争が激しくなりました。今までのようにただ、対応しているだけで集客することが難しくなってきています。
ハラール対応やベジタリアン対応のコンサルティングをしているフードダイバーシティ株式会社でも、「対応するだけではなく、味も求められるようになった」と伝えているそうです。
フードダイバーシティ対応の新常識:「ハラール料理」や「ベジタリアン料理」なんて実は存在しない!?
昨今インバウンドが増える中で確実に問題となる食事。ハラール、ベジタリアン、コーシャ、グルテンフリーなど様々な言葉が現場では飛び交っています。食に禁忌を持たない日本人においてはなかなかピンとこないかもしれませんが、例えばイスラム教徒で世界16億人、ベジタリアンで世界9億人の市場があり、インバウンドの数自体は順調に推移しているものの、観光消費額を考えると今後これらの対応がとても重要になってきます。食の対応で成功するか失敗するかは二極化が進んでいます。成功するお店はとことん突き抜けた実績を出し、...
ハラールフード・ベジタリアンフードと言われないとわからない美味しさ



2号店である「MINATO」で料理を食べてみた所、ハラールフード・ベジタリアンフード言われなければわからないほど、美味しかったです。平日のランチタイムでは、サラリーマンで埋め尽くされるほど賑わっています。来店されるサラリーマンの方々はハラールフード、ベジタリアンフードだとわからずに注文されているそうです。
「祭」「MINATO」にムスリム・ベジタリアンが集まる理由:SNSによる発信がポイントか?
初めは訪れているムスリムの方々に許可をもらい、写真を撮り、お店のSNSアカウントに写真を投稿していたそうです。しかし、あまり自社のSNSで発信しても、集客に影響は無かったとのこと。ある時から「旅の思い出を残す」ということで、ムスリムの方々のスマホを借り、写真を撮ってあげるようにしました。そこから、訪れた方々がSNSで発信をしてくれるようになり、訪れるムスリムの方々が増えたと、佐野氏が話していました。
訪れるムスリムの方々にお店を知った理由を聞いてみると「SNSで友人が上げていて、楽しそうだったから訪れた」とのことでした。これを聞いた佐野氏はSNSを研究し始めました。すると外国の方々は日本人よりも良いものに触れたり、体験したりするとSNSを通じて発信することに気がつきました。
だからこそ、徹底的に来ているムスリムの人たちを楽しませて、満足した姿を思い出に残し発信してもらうことが集客の鍵になることに気がついたのです。「祭」「MINATO」ではSNSに写真を上げると割引をするキャンペーンを行っています。

ちなみに、「祭」も「MINATO」もハラール認証は取得していません。ハラール認証を取得しないとムスリムは訪れないと思われますが、違います。ハラール認証はあくまでも特定の機関が認めた基準です。
特定の機関が定めるお墨付きだから食べられるということであり、この基準については、各機関でバラバラです。統一の基準を定めることは難しく、ムスリムの個々人によって、基準が違います。だからこそ、知り合いのムスリムが訪れているから自分も食べられるという事実が、ハラール認証を取るよりも、優れた信頼性だということだと考えられます。

フードダイバーシティという考え方
「日本は国策により、以前よりも訪れやすくなっています。しかし、日本に来て食事も満足にできなかったら旅行を楽しめない。だからこそ、食に禁忌のある人達にも日本食を楽しんでもらいたいです」と佐野氏は語りました。
2016年5月に「祭」をオープンしてからムスリムを対象に料理を提供していましたが、2018年からはベジタリアン向けの料理も提供し始めました。もちろん「MINATO」でもベジタリアンが食べられるメニューがあるため、「祭」も「MINATO」も食に禁忌のある人が楽しめる飲食店になっています。
忘年会などのシーズンになると、ムスリムやベジタリアンの方々を雇用している企業の忘年会が開催されることがあるそうです。一つの飲食店でムスリム、ベジタリアン、一般の方が楽しめるお店は多くはありません。1つの食を囲み、コミュニケーションが生まれる同店はまさにフードダイバーシティ、食の多様性が実践されている場所と言えるでしょう。
佐野氏は、1つの食を囲み、ムスリム、ベジタリアン、日本人の方々がコミュニケーションを取っている姿を見て「平和な空間だなと思います笑。だからこそ、私も頑張れます。」と話していました。
まとめ:徹底的に満足してもらい、ムスリム・ベジタリアンが楽しんでいる雰囲気を発信してもらうこと
近年、訪日観光メディアや雑誌媒体など様々な媒体が乱立しています。たしかに、そういった広告媒体に情報を載せることも重要な施策の1つと言えるでしょう。しかし、広告をする前に、目の前に来てくれている訪日外国人の方々に、丁寧に接客し、満足してもらうこと。そして、その気持をSNSで拡散してもらい、口コミをしてもらいうことが、インバウンド対策する上でまず行うべきことなのではないでしょうか。
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インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
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2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
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【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
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