中国最新トレンド「コーヒーのある生活」に見る「ゆとり」を求める中国人の姿〜デリバリーコーヒー「ラッキンコーヒー」の登場と苦戦

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こんにちは、クロスシー編集部です。新年度を迎え、新たな職場で、また新たに社会人としての一年を始める方も多いのではないでしょうか。本連載では中国のインターネットに関連した最新情報を隔週でお届けしています。新年度第1回目の今回は、日本の職場でも飲む機会が多い「コーヒー」の中国における最新事情をお届けします。

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スターバックスは20周年!上海には世界で2番目の「スターバックス リザーブ ロースタリー」

チェーンのコーヒーショップの代表ともいえるスターバックスコーヒーは、今から20年前の1998年に中国に進出しています。日本の第1号店は1996年にオープンしており、進出のタイミングはたったの2年差です。当時の経済状況から考えれば、非常に早い中国進出といえるでしょう。

北京、上海といった大都市には2014年以降「スターバックス リザーブ」の出店を進めており、コーヒーを手で淹れて提供する形式のこの店舗は、2017年の夏の時点ですでに90店舗以上が存在します(日本には65店舗、4/8確認)。店内は日本以上に広々としており、さすが人の多い中国といった感じです。今から2年前の2017年には、世界で2店目となる「スターバックス リザーブ ロースタリー」を上海に出店しました。スターバックス リザーブ ロースタリーは焙煎工場を併設した店舗で、2019年4月現在、世界で5店舗のみの展開で、上海は2014年のシアトルに続きオープンしました。

▲北京のスターバックスリザーブの店内。1階と2階がある。
▲北京のスターバックスリザーブの店内。1階と2階がある。

コーヒー×デリバリーへの挑戦…ラッキンコーヒーの登場

中国におけるコーヒー需要はこのように、大手チェーンが20年の年月をかけて徐々に高めてきたともいえます。そのような中、一昨年、コーヒーショップにも変化が起こりました。飲食店においては以前から利用されてきた「デリバリー」=中国語で「外売」(ワイマイ)サービスが、コーヒーショップにおいても提供されるようになってきたのです。

スターバックスでは昨年9月からデリバリーのサービスをスタートしました。それよりもはるか前から中国にはデリバリーフードの文化が存在し、取り立てて珍しい取り組みともいえません。しかし、このデリバリーの力を利用し、わずか約1年でスターバックスを店舗数において上回る勢いのコーヒーチェーンが誕生しています。スターバックスよりも1年早い2017年10月、銭治亜氏が創業した瑞幸咖啡(luckin coffee、ラッキンコーヒー)です。

▲ラッキンコーヒーのミニプログラム
▲ラッキンコーヒーのミニプログラム

銭氏はもともとレンタカー大手の「神州租車」の経営者でしたが、2017年に同社を離れラッキンコーヒーを創業します。

ラッキンコーヒーは創業から約1年後の2018年7月にAラウンド2億ドル(220億円)の資金調達を完了し企業価値は10億ドル(約1,100億円)に、続く同年12月にはBラウンド2億ドル(220億円)の資金調達も完了し企業価値も22億ドル(約2,420億円)に膨れ上がります。この時2,000店舗目の出店を果たしており、設立から1年でスターバックスの3,300店舗にという店舗数をものすごいスピードで追い上げていることがわかります。

ラッキンコーヒーは「ニューリテール」を利用し急速に拡大 8億元超える純損失も「想定の範囲内」

ラッキンコーヒーは2019年も引き続き店舗数を増やす計画で、今年は合計2,500軒の展開を目標にしています。2018年9月までの9か月間の累計販売数は3,670万杯、売上は3.75億元(約62億円)、純損失は8.57億元(約141.4億円)となっています。

この損失の理由は、店舗の急速な拡大と、そのPR戦略にあります。

ラッキンコーヒーは一昨年より中国で話題となっている「ニューリテール」の一つの形です。オンライン上のアプリでのみ注文を受け付け、オフラインの実店舗または配送で商品を受け取ります。これにより店舗運営のコストを下げるという狙いです。ただ実際にはかなりの数の店舗を出店しているため、費用がかさんでしまっているとみられています。

またPR戦略とは、企業側にほとんど利益が残らないような割引率や無料クーポン券をユーザーに多くばらまく「焼銭」戦略を指します。現地では、これを利用して安く(または無料で)コーヒーを飲むというユーザーも少なくありません。ラッキンコーヒーは設立から1年弱の2018年下半期には、既に1,200万人のユーザーを有するまでになりました。

▲新規ユーザーは無料券、既存ユーザーは半額券が利用可能。友人に無料で1杯プレゼントできる。
▲新規ユーザーは無料券、既存ユーザーは半額券が利用可能。友人に無料で1杯プレゼントできる。

直近でもシェアサイクル2強のうちの1社「ofo」が経営危機というニュースがありましたが、ラッキンコーヒーでも先日、機材の押収報道がありました。銭氏は巨額の損失については「想定の範囲内」と述べ、資金調達の額を理由に心配はないと説明、機材の押収については資産価値の最大化を図るための一手法とも回答しています。

まとめ:変わりゆく現地トレンドから消費者心理を読み解き、インバウンド市場への応用を

スターバックスコーヒーは中国各地で、店舗の「サービス・雰囲気」とセットで、コーヒーの認知を高めています。日本と同じく、くつろいだ雰囲気や、自宅でも職場でもない第三の場所としての価値をコーヒーの中に見出す人々も少なくないでしょう。ゆとりあるライフスタイルにあこがれを持つ中国人も多く、こうした需要とマッチするアイテムや存在は、コーヒーに限らずこれからも売上を上げていくと予想されます。

コーヒー市場は年間700億元(1兆1,550億円)程度と言われており、茶葉は少なく見積もって2,000億元(3兆3,000億円)、果実を利用した清涼飲料水は1,000億元(1兆6,500億円)、炭酸飲料は900億元(1兆4,850億円)というデータもあり、まだまだ拡大の余地のある市場です。特にコーヒーの中でも「ドリップコーヒー」は市場の10%にも及びませんが、今後のライフスタイルの多様化により、需要が高まる可能性も十分にあります。

コーヒーそのものの味わいも確かに中国人消費者の心をとらえています。ベトナムやタイと近接する中国南西部の雲南省はコーヒー豆の産地でもあり、ここの豆を使ったコーヒーは、観光地、そして地域密着型のやはりミニプログラムを使った「ニューリテール」のデリバリーコーヒーでも売りになっています。

ニューリテールの技術的側面はもちろん注目に値しますが、その向こうに見えてくる消費者心理にはインバウンド市場に応用できるヒントが多く隠れています。訪日中国人心理の理解にも役立つ現地の最新情報には、常にキャッチアップしていくべきでしょう。

〈参考〉

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この記事の筆者

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株式会社クロスシー編集部。中国語圏向けに日本情報の提供をするインターネットメディア運営・レップ事業を展開すると共に、訪日観光客向けのマーケティング・ソリューションを提供しています。日本の観光立国を実現すべく、メインターゲットとなる中華圏への観光情報、サービス、商品について、日中間の情報格差を埋め、観光客にとって最高の日本体験の提供を目指しています。

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