こんにちは、クロスシー編集部です。
五月上旬には中国でも「五一」の4連休がありましたが、この期間に海外旅行に出かけた中国人は845万人と政府発表がありました。
昨年1年で日本を訪れた中国人は838万人でした。4日間でこの数を超える人数が旅行しているということになります。中国の海外旅行市場の大きさが感じ取れるのではないでしょうか。特に、北京、上海、広州、そして四川省成都の空港利用(国際線)が増加していたそうです。
今回は、こうした中国人の海外旅行の参考にされる情報源の一つであるSNS、「ショートムービー」アプリのDouyin(ドウイン/抖音)を用いた旅行客誘致のプロモーションと、投稿されている日本旅行に関するコンテンツを紹介し、中国人にとっての最新の「日本旅行」イメージを探ります。
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Douyin(ドウイン/抖音)のユーザー数、旅行業界との関係は?
Douyin(ドウイン/抖音)は15秒の動画を撮影・編集・アップロードできるスマートフォンアプリです。日本でもその海外版である「TikTok」を展開しています。北京や上海といった都市部のみならず、地方都市にまでその人気が広がっています。
運営するバイトダンス社が発表した「2018年ドウインビッグデータレポート」によれば、昨年12月までに中国国内でのDAU(デイリーアクティブユーザー)は2.5億、MAU(マンスリーアクティブユーザー)は5億人となっています。
中国で誰もが使うといっても過言ではないECサービス「タオバオ」のDAUが1.2億人、登録ユーザー数が約5億人ということを考えると、このショートムービーサービスの広まりが想像できるのではないでしょうか。(タオバオのユーザー数は2014年末の数字。2018年の年間アクティブ消費者数は、アリババの提供するBtoCプラットフォームTmallと合わせて6.01億人と発表されている。)
中国でシェア1位の検索エンジンを提供する百度(Baidu/バイドゥ)の最近の発表によば、中国のショートムービーサービスの利用者は5.94億人であり、ネットユーザー全体の74.19%となっています。
また年齢を30歳以下に絞れば、ショートムービーサービスの利用率は実に80%にも上ります。30歳以下は今後の旅行市場において消費が期待される層でもあります。ショートムービーサービスは彼らに接触することのできる窓口であり、旅行業界にとっても必然的に重要なツールとなってきます。
西安、重慶、南京の旅行客誘致のためのプロモーション
2018年にDouyin(ドウイン/抖音)は、西安市、重慶市、南京市等と協力し、旅行客誘致のためのプロモーションを行いました。昨年の「五一」の期間は、土日に連なる三連休でしたが、プロモーション活動を行った西安市では、旅行収入が139%増の45億元を記録しています。また重慶市では高低差の大きな市街地を映すコンテンツが人気となっています。西安市の「ドウイン映え」アイテムの一つが「毛笔酥」です。筆の形のお菓子で、まるで筆を食べているかのようなショートムービーは、ユーザーの投稿意欲はもちろん、見る人の「いいね」を押したくなる衝動を掻き立てたようです。
南京市でも昨年、Douyin(ドウイン)を活用したプロモーション活動を行っています。この結果、2018年末までにDouyin(ドウイン)には262万本もの南京市に関連したショートムービーコンテンツが投稿され、総再生回数が196億回を上回りました。認知度の向上及び旅行者の増加にもつながっています。
コンテンツで紹介された南京市の観光情報は多岐にわたり、風景やグルメが多数紹介されています。コンテンツは人気歌手である王力宏の『南京、南京』の曲をBGMにしたものがアップされました。またDouyin(ドウイン)で活躍するKOLとコラボレーションした簡単な振り付けもアップされ、これによりユーザーの投稿意欲がさらに高まったようです。こうしたDouyinと連動したプロモーションにより話題になった都市は「Douyin City」とも呼ばれるまでになっています。
さらに、南京市のある食堂は、昨年7月に上映されヒット作品となった『我不是薬神/我不是药神』の「聖地」として大勢の観光客が訪れています。
Douyin(ドウイン)を運営するバイトダンス社は、今年の2月末には中国において宿泊施設との連携も開始しています。大規模なユーザーの獲得に成功し、なおかつユーザーによるコンテンツの投稿が活発に行われている今、こうしたユーザーを異なる領域にも誘導し多角化が進められています。
中国で人気の「日本旅行」、Douyin(ドウイン)では交通情報や生活ルールなど基本情報が多め
日本企業など、Douyin(ドウイン)に公式アカウントを展開する日本の組織はまだ多くありません。しかし、Douyin(ドウイン)の中には「日本旅行」に関連したハッシュタグが複数存在します。
投稿されているコンテンツには「旅先としてどの地域に行くべきか」「何を買うべきで何を買うべきでないか」「どんなマナーがあるか」「100元(約1,650円)でどのくらいの食べ物が買えるか」といった、実際に旅行前、旅行中に役立つ情報が多く見られます。
実際に役立つ情報は多いものの、それらと比較すると、先に紹介した西安、南京のような「ここに行ってこれを見たい・撮りたい」と思わせるような「ドウイン映え」コンテンツは多くありません。いくつかは見られますが、そのコンテンツの総量は中国国内の観光地に比べると、それにはまだ及ばない状況と言えるでしょう。
Douyinのコンテンツから見てみると、日本は「見どころが複数あるので効率よく回るべき」「買い物」「ルールを守って過ごす場所」というイメージでとらえられているようです。
約一年前にはDouyin(ドウイン)に投稿された「花魁」が中国人ユーザーの心をつかんでいます。「八文字」と呼ばれる足さばきを真似する動画がいくつもアップされました。
こうした事象をヒントに、Douyin(ドウイン)を利用したより大規模なプロモーションを打ち出すことができれば、日本各地への今後の訪日中国人の集客にさらに勢いをつけることができるはずです。
まとめ ~ショートムービー×旅行コンテンツの融合~
ショートムービーサービスを用いて旅行業界を盛り上げようとするのは、何もバイトダンス社のDouyin(ドウイン)に限った話ではありません。同様に、OTAサイト大手「Ctrip/携程」や旅行記で人気の「Mafengwo/馬蜂窩」といったウェブサービスでも、ショートムービーサービスの機能を開始しています。
ただし、すでにショートムービーという形態を楽しむユーザーを5億も抱えているDouyin(ドウイン)は、やはり魅力ある短時間のコンテンツの制作という点でOTAにはない経験や強みを持っていると言えるでしょう。Douyin(ドウイン)では位置情報の付加も試験的に導入されており、今年もますます旅行市場での存在感が増していきそうです。
ショートムービーの特性の一つは「短時間で大量の情報を、受け手にストレスなく届けられる」という点です。海外旅行に高い予算を割けるような中国人は、日本と変わらず多忙な日常を過ごしていることも多く、ショートムービーは彼らにとって非常に適した情報収集の形式と言えます。訪日中国人の集客にも有効な手段となるでしょう。
〈参照〉
- https://baijiahao.baidu.com/s?id=1632749599259809610
- https://baijiahao.baidu.com/s?id=1632741283893299976
- http://nb.zol.com.cn/702/7023262.html
画像は以下および「ドウイン」アプリより
- https://www.sohu.com/a/234901891_100133811
- https://baijiahao.baidu.com/s?id=1596060144533883752
- https://baijiahao.baidu.com/s?id=1620734142880681641
- http://3g.163.com/dy/article/DIG97UQE0517PFUQ.html
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