【スペイン・マドリード】民泊95%減めざす異例規制を強行した理由とは/観光公害による住民からの苦情殺到で

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2019年3月26日、スペイン マドリードにある民泊の95%を減少させる異例の強行策が市議会で可決されました。

インバウンド大国スペインの首都・マドリードでは、民泊の増加による弊害から近隣住民の苦情が殺到したことを受け、市が厳しい民泊規制を設けることとなりました。地元住民の生活の質向上や高級ホテル誘致を狙いとし、民泊軒数を95%減少させる見込みという強行策に、世界中から注目が集まっています。マドリードの民泊増加で浮かび上がった諸問題の現状をふまえ、市が踏み切った観光公害対策について、海外事例の1つとして見ていきましょう。


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民泊の95%を減少させる異例の強行策

地元住民からの苦情殺到等を受け、2019年3月26日にマドリード市議会は、市内の1万軒以上の観光客向けマンスリーマンションの貸し出しを規制することを可決しました。とりわけ中心地のマンションへの規制を強化する見込みで、3つのエリアごとに規制内容を変えます。

中でもすべてのエリアに共通する内容が、民泊ビジネスをする際は、住民用と別に観光客向けの専用出入り口を設置するという点です。しかし、現状スペインのマンションの作りから、新たに出入り口を設けることはリフォームが必要な場合がほとんどのため、民泊ビジネスを諦めざるを得ないケースが多くなることを、市は狙っています。

年間90日以上部屋を貸し出す場合は営業許可書の取得が必要ですが、今後は申請の際に、前述したリフォームなど住民の迷惑にならないよう対策がされているかといった条件をクリアしていなければなりません。以上のように、民泊ビジネスを開始・継続するためのハードルを大幅に上げることで、市は観光客向けのマンションの95%を減少させることを目指します。

違反した場合も、市はマンション所有者に罰則を与えることはできませんが、法的に訴えることは可能とのことです。現在マドリード市内の観光客向けマンションは約1万5,000軒あるとされている中で、今回の規制強化により9,944軒が継続困難となると見込んでいます。

マドリード市の民泊滞在人数、4年で20倍に

マドリード市によると、中心地のインバウンド客向けマンションの滞在人数は、2012年から2016年までに約20倍増加しています。中心街のホステルが1泊約80ユーロ(約1万円)である一方、マンション宿泊費は、1人あたり1泊27ユーロ(約3500円)だったことから、民泊は旅行者にとってかなり安価な宿泊施設と言えるでしょう。

2019年3月末時点で、マドリード中心部のマンションでは、滞在者の半数が外国人観光客となっている地区もあります。スペイン旅行をより手頃な価格で楽しむために、外国人観光客向けの安価な民泊の利用者数は、増加の一途を辿っています。

民泊増加による地元住民からの苦情が殺到

民泊の増加による、地元住民の生活の質低下やマンションの賃貸物件減少に対し、苦情が殺到したことが、マドリード市が民泊規制に取り掛かった大きな理由の1つです。ベネチアや京都など、今世界中で問題となっている観光公害が、民泊増加によりマドリードでも引き起こされたと言えるでしょう。

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マドリードでは、インバウンド客が宿泊する民泊の部屋を持つマンションにおいて、騒音被害や共用部の清掃への負担増加、玄関やエレベーターの損傷が激しいといった、住民の生活の質低下を引き起こす問題が顕著となっています。

民泊ブームにより、不動産業者がマンションを買収し、インバウンド客向けのマンションとして運営する動きも後を絶ちません。マンションの家賃を不当に値上げすることで、実質住民を追い出す事態となった例もありました。マンションの部屋を観光客へ貸し出す民泊は、マンション所有者や不動産業者に経済的メリットがある一方、観光業自体の発展には繋がらないとの見方が強くなってきています。

5つ星ホテルが続々進出!量より質重視のインバウンド政策

マドリード市は民泊の規制を強化する一方で、高級ホテルの誘致に力を入れ始めました。同じくスペインの一大観光都市・バルセロナ市が新たなホテル建設の規制を強化したこともあり、高級ホテルもマドリードへの進出を狙っている状況です。マドリードにはすでに8軒の5つ星ホテルが進出していますが、現在フォーシーズンズやマンダリン・オリエンタル、オラヤングループなどが名乗りをあげています。

マドリード市は、観光産業のGDPを上昇させるためにも、安価なマンションを利用するインバウンド客を多く誘致するよりも、高級ホテルに滞在するような富裕層の誘致強化に重点を置いていると言えるでしょう。ホテル誘致で雇用も増やし、スペインの社会問題の1つ、失業率の上昇を抑えるといった効果も期待されています。

量より質でインバウンド誘客促進を狙うマドリード

民泊を利用するインバウンド客急増の影響で、地元住民の生活の質低下やマンションの賃貸物件減少といった問題が表面化したマドリードでは、民泊の95%を減少させることを目的とした、厳しい規制を設けることとなりました。民泊の規制を強化する一方で、高級ホテルの誘致を本格化させ富裕層を誘客するといった、量より質のインバウンド政策となっていくでしょう。今回の規制強化がどのように効果を発揮するのか、今後もマドリード市の民泊規制の動向から目が離せません。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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