中国でUber超えの配車アプリ「滴滴出行」とは?ソフトバンクと提携で日本進出、インバウンド影響は

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中国ではライドシェア、配車サービスを提供するアプリ「滴滴出行」(Didi Chuxing/ディディチューシン)が広く普及しています。一方日本ではタクシー業界の抵抗もあり、ライドシェアはまだ法律に抵触するため展開が難しい状況です。

中国人含めインバウンド旅行客に人気の京都ですが、2017年のインバウンド旅行客のタクシー利用は数パーセントにとどまっており、路線バスの混雑緩和が課題ともなっています。日本では複数の配車アプリが独自のサービスを展開しており、利便性は高まりつつあるもののインバウンド旅行客にとってはどのアプリを使えばよいのか悩ましいところです。

こうした課題の解消に貢献しそうなのが中国の滴滴出行です。本編では中国現地での利用風景と、同サービスの日本への進出が訪日中国人にとっていかに役に立つかを解説します。

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滴滴出行(Didi Chuxing/ディディチューシン)とは?

滴滴出行(Didi Chuxing/ディディチューシン)はタクシー、私用車及び指定のドライバーをスマートフォンを通じて雇用できる中国のアプリケーションです。スマートフォン用のアプリだけでなく、中国の日常生活の様々なシーンで利用されているアプリ「WeChat」内部にも下位メニューとして備わっています。

「ライドシェア(相乗り)企業」と分類されますが、実際に同社が提供しているのは配車のプラットフォームで、ライドシェアを含む後述するような等級の異なる5つのタクシーサービスを提供しています。

▲滴滴出行のアプリで配車を依頼した際の画面
▲滴滴出行のアプリで配車を依頼した際の画面

中国配車サービス最大手「滴滴出行(Didi Chuxing)」

中国の配車サービスの大手は、3大IT企業のテンセント、アリババそれぞれの支援を受けた配車サービス「嘀嘀打車」(ディーディーダーチャー)と 「快的打車」(クアイディダーチャー)の2社が存在しました。2社は2015年2月に合併し「嘀嘀快的」(ディーディークアイディ)を発足させ、同年9月にさらにリブランドを行い、滴滴出行(Didi Chuxing - ディディチューシン)が誕生します。

滴滴出行(Didi Chuxing - ディディチューシン)の本社は北京市にあり、現在中国400都市で4億人以上のユーザーが利用しています。同社の発表によると 2015年1年間で10億回の配車をしており、中国のタクシー配車サービス市場の87%を占めました。

このように滴滴出行は中国の配車サービスとして最大手となっています。同様のサービスを世界70カ国・地域の450都市以上で展開している米国発の「Uber」も、中国では天下を取ることができなかったどころか、滴滴出行により買収されてしまいます。

滴滴出行は海外の同様のサービス(Grab、Lyft、Ola及び99)と提携しているため、中国国内でそれらのアプリを用いて滴滴出行を利用することも可能です。

滴滴出行が提供する5つのランクの配車サービス

同社の提供するサービスは「配車サービス」であり、ユーザーは以下の5種類のランクの車を利用することができます。

  1. 順風車(乗り合い):ライドシェア。サラリーマンが副業として運転手をしていることもある。最も安い価格で利用できる。
  2. 出租車(タクシー):一般のタクシーをアプリ経由で呼び出し利用する。料金はタクシー会社のメーターに基づく。
  3. 快車(専属タクシー):通常快車と優良快車があり、優良の料金は出租車よりやや割高となる。
  4. 礼燈専車(高級タクシー):セダンだけでなく6人乗りなどもある。料金は通常快車の1.5倍程度。座席にペットボトルの水が用意されている。
  5. 豪華車(超高級タクシー):ベンツなど。料金は最も高く、通常快車の9~10倍。ペットボトルの水とお菓子が提供される。
滴滴出行の順風車(乗合)
▲[滴滴出行の順風車(乗合)]:滴滴出行HPより引用

滴滴出行のタクシー
▲[滴滴出行の出租車(タクシー)]:滴滴出行HPより引用
滴滴出行の快車(専属タクシー)
▲[滴滴出行の快車(専属タクシー)]:滴滴出行HPより引用
滴滴出行の礼燈専車(高級タクシー)
▲[滴滴出行の礼燈専車(高級タクシー)]:滴滴出行HPより引用
滴滴出行の豪華車(超高級タクシー)
▲[滴滴出行の豪華車(超高級タクシー)]:滴滴出行HPより引用

滴滴出行の中国での利用方法

配車サービスの利用では、アプリを起動すると地図上に現在対応可能な車の位置が示されるので、運転手に依頼をかけます。運転手が承諾すると、車種・車の番号・運転手の名前が通知されます。基本的に、車が到着する前に電話で連絡があり、現在地を再度口頭で確認されます。到着後にオーダーの確認があり、その後乗車するという流れです。

支払いはアプリを通じて行うため、現金でのやり取りは発生しません。また、運転手の評価がユーザーからも簡単に確認できます。こうしたサービス設計は評価の悪い運転手が淘汰されることを意味します。運転手は自分の評価を高く保つ必要があるため、後述するような問題はあったものの結果として質の高い配車サービスの提供に成功しています。

また、最後の電話のやりとりは中国語で行う必要はあるものの、基本的にはアプリ上の操作ですべて完結し、メッセージは英語への翻訳機能も備わっているため、中国を旅行する外国人が利用するにも便利なサービスとなっています。

▲滴滴出行を利用してタクシーに乗車し移動中のアプリ画面
▲滴滴出行を利用してタクシーに乗車し移動中のアプリ画面

日本ではソフトバンクと提携しサービスを開始

2017年、ソフトバンクグループ滴滴出行約50億ドル(約5,650億円)を出資しました。これは同時期に滴滴出行が調達した資金のおよそ9割に相当します。滴滴出行の株主構成は明らかにされていないため、この出資でソフトバンクグループの出資比率がどのくらいになるかは明らかではありませんが、大株主となるとみられています。2019年3月にはソフトバンクが16億ドル(約1,808億円)の追加投資をするとの報道もありました。

両社は2018年6月末に合弁会社であるDiDiモビリティジャパン株式会社を設立しています。

同年9月に第一交通との提携を開始し、大阪でのサービス提供を開始しました。2019年4月には東京(23区内と武蔵野市、三鷹市、成田空港)と京都でも提供開始したことが発表されています。引き続き、2019年度中に北海道、兵庫、福岡など10都市でもサービスを始める予定となっています。

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滴滴出行の日本での利用方法

DiDiモビリティジャパンがタクシー会社に提供するプラットフォームは、事業者向けの管理システムと、運転手と利用者向けのアプリです。人工知能とデータ分析技術を活用し効率的なタクシー配車を実現します。

日本では法律でライドシェア(営業許可のない運転手による乗客の輸送)が禁止されているため、DiDiモビリティジャパンはタクシーの配車のみに対応しています。

DiDiモビリティジャパンは訪日中国人に対し、中国国内同様、ユーザーがアプリで出発地と目的地を入力するとタクシーが配車されるサービスを提供します。利用には日本版のアプリのダウンロードは不要で、中国で利用しているアプリから直接サービス利用が可能となっています。

決済もこのアプリを通して行えるため、訪日中国人にとって利便性の高いサービスです。支払いはクレジットカード決済Alipayアリペイ)、WeChatPayなどに対応しており、現金で支払うこともできます。

DiDiモビリティジャパンは昨年、日本語版のアプリ「DiDi」もリリースし、日本人の利用拡大もすすめています。

需要予測・売上管理・翻訳などの機能を搭載したAndroidタブレット

ドライバー側はAndroidタブレットに搭載されたドライバー用のアプリを使って配車依頼を受ける形になっています。

ドライバー側の大きなメリットは、集客を効率化できることです。運転手はAndroidタブレットに表示された需要予測を参考に、効率よく乗客を探せます。

その他、売上の管理や訪日外国人向けの翻訳機など、さまざまなツールを利用できます。

ドライバーの稼働状況を一元管理することが可能に

DiDiモビリティジャパンの配車サービスを利用する事業者には、独自のWebコンソールを通じて車両やドライバーの稼働状況を一元管理できるというメリットがあります。

訪日中国人へのインバウンド対応強化に

DiDiモビリティジャパンの配車サービスは、事業者・ドライバー・乗客の3者にとって使いやすいものであることがわかりました。

では、このサービスが訪日中国人観光客の集客にどのように寄与していくのでしょうか。

訪日中国人が慣れているアプリなので使いやすい

DiDiモビリティジャパンのサービス中国の滴滴出行アプリから利用できるため、訪日中国人が自国と同じ感覚で日本のタクシーを呼び出せるというメリットがあります。

慣れないバスや電車に乗ることに困難を感じる訪日中国人でも、使い慣れたアプリを使い公共交通機関ではアクセスしづらい観光スポットに効率よくたどりつくことができます。結果、観光地での消費拡大にもつながるでしょう。

キャッシュレスに対応した決済機能

滴滴出行を通じて配車したタクシーの決済には、Alipayアリペイ)やWeChatPayといった中国で普及している決済手段が使えます。

日本のインバウンド対策の大きな課題の一つとなっている「キャッシュレス化」を、タクシー業界においては一気に進展させた形になっています。

滴滴出行は訪日中国人にとって快適なサービス

中国のライドシェアサービス最大手の「滴滴出行」のサービス構造と、ソフトバンクとの合弁会社による日本でのサービス展開、そのサービスが訪日中国人にもたらすメリットについて解説しました。

実は中国の滴滴出行では、昨年5月と8月に、順風車(乗合)サービスを利用した女性が運転手に殺害される事件が起きています。これに対し3か月の同サービスの提供中止と安全対策への投資が行われてきました。こういったいきさつにより同社の業績は悪化し、2018年の赤字額は109億元(約1800億円)、全従業員の15%に相当する約2,000人の削減が報道されています。

一方で安全技術、ドライバー管理、グローバル展開への投資を強化し、これらの分野で2,500人を新たに雇用する見込みを立てているといいます。また、日常生活でなくてはならない存在となっていることもあり、比較的短時間でサービスの再提供が開始されています。

日本では法規制により、事件の現場となった「乗合サービス」は提供されていないため、こうした面でも中国人利用者にとって安心して利用できる環境といえるでしょう。何よりも、母国と同じ条件でタクシーを呼び出し支払いが完結できるサービスには手間がかかりません。訪日中国人にとって非常に歓迎されるサービスです。

また訪日中国人を乗せるタクシードライバーにとっては、運送の効率アップや乗客とのコミュニケーションに役立つサービスとなっています。同時に事業者にとってはドライバーの稼働状況を一元管理できるだけでなく、中国で滴滴出行が積み上げてきた経験やデータをもとに、事業の効率化と収益の拡大を図ることができます。

あらゆる立場から見て使うメリットがある滴滴出行は、今後日本でも広く普及していくと考えらえれます。特に利用者である訪日中国人にとってメリットがあるという点は、インバウンド対応の原点とも言えます。訪日客の国や地域がどこであろうと、こうした利用者目線を忘れずにサービス設計をしていくべきでしょう。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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